Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

完了不定詞、関係副詞の非制限用法、関係詞の先行詞が離れている場合(アンネ・フランクの同級生)

今回の実例は、「歴史の生き証人」の活動についての文章から。

アンネ・フランクという少女の名前を聞いたことのない人はまずいないだろう。ドイツの都市フランクフルトのユダヤ人の家にアンネが生まれたのは1929年だったが、1933年1月にアドルフ・ヒトラーが首相となってからほどなく、一家はドイツを脱出してオランダのアムステルダムに逃れた。そこでアンネは幼稚園に上がり、モンテッソーリ学校で明るく楽しく子供時代を過ごしていたが、1939年9月にドイツがポーランドに侵攻して第二次世界大戦が始まると雲行きが変わる。

1940年5月にはドイツ軍がオランダに侵攻。それから1週間もしないうちにオランダはドイツ軍に占領されていた。以降、オランダのユダヤ人たちはじわじわと、ナチス・ドイツの「反ユダヤ主義」にさらされ、しめつけられていく。子供たちはユダヤ人学校に通わされることになり、アンネたちはモンテッソーリ学校には通えなくなった。

そしてついに、ドイツ支配下にある国・地域で「ユダヤ人狩り」(絶滅作戦)が始まると、アンネの父親は経営していた会社が入っている建物に「隠れ家」を準備して、元のように暮らせる日々まで潜伏して待つことにした。そして、1942年7月にアンネたちフランク家の人々と、その友人のファン・ペルス一家の人々など8人が、建物の外には一切出ず、それどころかそこに人が住んでいる気配を見せることもせずに潜伏生活を始めることになったのである。

そのような日々のなか、10代前半となったアンネが書いた日記は、これまでに世界の60の言語に翻訳され、3000万部以上が売れている

増補新訂版 アンネの日記 (文春文庫)

増補新訂版 アンネの日記 (文春文庫)

 
完全版 アンネの日記 (文春文庫)

完全版 アンネの日記 (文春文庫)

 

彼女の日記は、何度か改訂され増補されるなどして、読み継がれつつ内容を充実させてきたが、2019年5月にCollected Worksとして英語の新訳が出たとのことで、今回見ているガーディアンの記事が出たわけだ。 

Anne Frank: The Collected Works

Anne Frank: The Collected Works

 

 記事はこちら: 

www.theguardian.com

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「結論が先」の英語の書き方、分詞の後置修飾の二重限定、形式主語、挿入、助動詞+完了形(エベレストの大混雑)

今回の実例は、エベレストの大混雑についての報道記事から。

ここ数日、見事な青空をバックにしたエベレストの白い稜線に登山家(登山者)たちが列をなしている衝撃的な写真が話題になっている。この写真は元英軍人(それも特殊部隊SBS)でMBE持ちのNirmal Purjaさんが、Facebookにアップした写真だ。彼は現在は冒険家として活動しており、現在は7か月の間に14の高山に登頂するという "Project Possible - 14/7" を行なっている。そのプロジェクトのためにエベレストに行っていて、見たまま、ありのままを撮影した。詳細はNirmal PurjaさんのFB投稿を参照(2019年5月22日付)。 

www.facebook.com

今回見る記事は、この「過酷な環境下での長蛇の列」という状況の中で、何人もの登山者が命を落としているということを報じる記事である。

www.theguardian.com

記事の最初の文で、このようなことが起きている背景について、"in a season marred by poor weather and overcrowding on the world’s highest mountain" とざっくり説明している。英語で文を書くときは「結論を先」というルールがあるが、このように最初にざっくり説明をしておいて、具体的なことはおいおい述べる、という形を取るわけだ。この記事はその例としても大変優れているので、全文のご一読をお勧めしたい。

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so ~ that ... 構文, 英国内の言語的多様性, さまざまな貼り紙の英語(欧州議会議員選挙での投票所 #DogsAtPollingStations )

今回の実例は、5月23日、欧州議会議員選挙投票日のTwitterから。

今年の欧州議会議員選挙はEU加盟各国で23日から26日にかけて投票が行われ、26日の投票締め切りをもって開票が始まった。投票日が早かった英国では26日深夜(日本時間では27日朝6時ごろ)まで報道に制限が課せられており、出口調査結果も出されていなかったが、現地で日付が変わるころ(日本時間27日朝8時ごろ)にはブリテンの大方の結果は出ていた。この選挙に興味がある方は、ガーディアンの開票速報live blogが要領よくまとめられていると思うので、そちらをご参照のほど。

今回、当ブログで参照するのは、選挙そのものについての記事ではなく、選挙に付随的に発生するTwitterハッシュタグ。これが、ツイート本文での言語情報は少ないのだが、写真からいろいろなことを読み取るのが楽しいという人にはめっぽう楽しいはずだ。

まずはこちら: 

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倍数表現 (as many ~ as ...) 【再掲】

今回の記事は以前投稿したものの再掲である。倍数表現は、大学入試や検定試験などのマーク式の試験での整序英作文でも、和文英訳でもよく問われる一方で、語順をうろ覚えにしているままの人もけっこう多い。「旅行で英会話ができればいいかな」程度ならうろ覚えでもよいが、まともに英語を使いたいならそうはいかない。「通じればいいんだ」と開き直るのではなく、なるべく早い段階で正確な語順を頭の中に定着させておきたい。

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今回の実例は、2019年1月15日、イギリスの国会下院でテリーザ・メイ首相がEU欧州連合)との交渉の末に取り付けてきた協定案が採決にかけられ、歴史的大差で否決されたときのBBC政治記者のツイートから。

 

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分詞構文(特盛り)【再掲】

この記事は以前投稿したものの再掲である。分詞構文は特に長文多読をする場合などに頻繁に遭遇するはずだが、軽く読み流せるようになるまではわりと丁寧に意味を考えながら、例えば主語を取り違えて解釈したりしないように練習を重ねていきたい。学校でやるような「接続詞を使った文(複文)を分詞構文(単文)に書き換えなさい」みたいな練習をしなくなると、けっこう自分でもびっくりするくらい読めなくなってしまうので、大学受験ではそれなりに英語やったけど、大学に入ったあとは遠ざかってるな……という場合は特に重点的にみたほうがよいかもしれない。

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今日もまた同じ出典から。(この記事は文法事項が実際の報道記事の中でどう出てくるかという点で非常に見所が多かった。)

www.theguardian.com

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some ~, others ...の構文, another, if節のない仮定法(ジョージ・ベストの銅像が似てなさすぎる件)

今回の実例は、文法項目としてはほんの3日前に取り上げたものとカブる。

もう笑い転げてしまって、トピックの背景解説どころではないので、記事はこちら: 

www.theguardian.com

 

……とはいえ、多少は解説を書いておかないと何のことかわからない方々も多くいらっしゃるだろう。

ジョージ・ベストは往年の名フットボーラー。北アイルランドベルファスト出身で、身体が細くて弱々しく見えるタイプで、「あんな子がプロの世界でやっていけるはずがない」的に扱われていたが*1、実際には、「ミュンヘンの悲劇」で多くのプレイヤーを亡くしたマンチェスター・ユナイテッド (MUFC) でスター・プレイヤーとなり、MUFCを欧州の強豪の地位に引き上げた立役者となった。詳しくは、川端康雄先生の新書をお勧めしたい。 

新書524ジョージ・ベストがいた (平凡社新書)

新書524ジョージ・ベストがいた (平凡社新書)

 

ベストはフットボーラーとしても抜きんでた存在だったが、とにかくルックスと派手なライフスタイルで注目された。ハンサムとしか言いようのない顔立ちをして、髪を長めにしたりしていて、まるでザ・ビートルズのメンバーのようなスターだということで「5人目のビートル」との異名をとった。ベストはキャリアを終えるころには酒などで身を持ち崩していて、私はマンチェスターのMUFCのサポの人から「悲しくなるから彼の名前は口にしないでくれ」と言われたこともあるのだが、最終的には酒で肝臓を悪くして、2005年に59歳の若さで他界した。

 

Embed from Getty Images

 

そのジョージ・ベストは、出身地のベルファストでは「スポーツ界のヒーロー」としてプロテスタントカトリックの区別なく敬愛される存在で*2、近距離便が利用するベルファストのシティ空港は2006年に「ベルファストジョージ・ベスト・シティ空港」と改称したし、記念紙幣も作られたし、MUFCのホーム・スタジアムの外周部にはベストを含む3人の同時代の名選手の銅像が建てられた。下の写真の一番左がベストである。

 

Manchester The United trinity.jpg
By Paul Hermans - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link

 

このジョージ・ベストの新たな銅像が、今回、ベストもプレイしていた北アイルランド代表のホームであるベルファストウィンザー・パーク・スタジアムの近くに建てられ、除幕式が行われた、というのが2019年5月23日のニュースだった。

そしてその銅像が……端的に言えば「誰っすか、これ」というクオリティで、英メディアが笑いをこらえながら(あるいは爆笑しながら)記事にしているわけだ。

今回の実例はそれらの記事のひとつから。

*1:関係ないが、今年引退した野球のイチロー選手が米大リーグに移籍したとき、日本では「あんな細いのが、ムキムキマンばかりのMLBでやっていけるはずがない」という意見が特に年長者の間で非常に強くあった。

*2:ベスト自身はガチのプロテスタント労働者階級の出である。

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報道記事の見出し(未来のことはto不定詞で表す), be to do ~(マンチェスター・シティ主将の退団)

今回の実例は、日本の学校教育では習ったことがない人が多いかもしれない項目について。報道記事の見出しだ。

報道記事の見出しは長さに制限があるので、いろんなものが省略される。日本語では元から語順が持つ意味上の重要性が低いところに持ってきて、意味を確定する助詞が省略され、結果として体言の羅列になりがちで、何を言っているのかわからなくなることもしばしばであるが、英語では見出しにおける省略には一定のルールがあり、さらに語順によって意味が決まる部分が大きいので、慣れてしまえばさほど難しくはない。

学校教育では、その英語の報道記事の見出しのルールは体系的には教わらないかもしれないが、ビジネスパーソン向けの英語参考書や時事系英語雑誌ではよく取り上げられているし、ネット上にもある程度まとまった解説がある。例えば下記のようなページだ。

rnnnews.jp

個別の見出しを見れば何となく意味が把握できていると思うが、体系だった理解ができているかどうか不安、という場合は、上記ページを一度ざっと読むだけで頭の中が整理されて有益だろう。

さて、今回の実例は、元記事のURLが上書き更新されて見出しが変わってしまっているのでいきなりキャプチャ画像:

f:id:nofrills:20190523060741j:plain

2019年5月19日、BBC Sport
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接続詞のas, 動詞のend, 同格とコンマ, 仮定法過去, 時制の一致の例外(ウェールズで初の独立要求デモ)

今回の実例も、前回と同じ、ウェールズで初めて行われた独立要求デモについての報道記事から。

 

背景的な話は前回のを見ていただくとして、記事はこちら: 

www.theguardian.com

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some ~, others ...の構文(ウェールズで初の独立要求デモ)

今回の実例は、ウェールズで初めて行われた独立要求デモについての報道記事から。

ウェールズブリテン島の南西部にあり、13世紀以降隣国イングランドの支配を受け、16世紀には(客観的に見ればかなり曖昧という印象を受けるようなやり方で)イングランドと合同した。

元々の言語であるウェールズ語イングランド支配下で弾圧され、使用や教育を禁止され、強制されたイングランドの言語、すなわち英語がウェールズの日常の言語になっているが、20世紀以降の言語保存運動によって、近年はウェールズ語話者もウェールズ語が用いられる機会も増えている。ウェールズでは公用語ウェールズ語と英語と定められているため、道路標識などはこの2言語が併記されている。

その標識をめぐって、10年ほど前にとんでもないことが生じたことが世界的に話題になったことがある。今でもBBCのサイトで普通に記事が読めるので、よければ読んでみていただきたい。めちゃくちゃ笑えるので。

news.bbc.co.uk

 

さて、そのような歴史的背景を持つウェールズでは、常に「イングランドからの独立」を目指すナショナリズム(こういうnationalismを「国家主義」とか「国粋主義」と訳すのは間違いである)の流れがあったが、それは「大きなうねり」と呼べるようなものでは必ずしもなかった。かつて、アイルランドナショナリスト武装集団IRA(その当時は、のちの北アイルランド紛争の時代に比べるとIRAはメンバーも支持者も少ない弱小集団だった)が武装活動をやめようかという話になったときに、持っていた武器弾薬をウェールズのナショナリスト武装集団に譲り渡した、などという説がもっともらしく囁かれていたが(私も英語で書かれた本でそう読んだ)、仮にその武器の譲渡が事実であり、それなりに強力な闘争になる可能性があったのだとしても、最終的には、ウェールズの武力闘争はさほどの規模にはならなかったようだ。

武装集団とは別に、政党としては、ナショナリスト政党Plaid Cymru(ウェールズ語の名称で、「プライド・カムリ」と読む)が1925年に結党されている。ただし、この党が初めて英国会に議席を獲得したのはずっと後、1966年のことだった……などという背景解説を書いていると、いつまでたっても書き終わりそうにないので、そろそろ先に行こう。

というところで今回の記事はこちら: 

www.theguardian.com

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floorが「床」ではなく「地面」を意味することがある(チームの勝利に感涙を禁じ得ない監督)

今回の実例は、文法というより単語の話。

日本語圏では英語に関する解説は「学校で習わない」と打ち出すとウケがよくなるので本稿もそういうウケ狙いと思われるかもしれないが、実際にこれは学校では習わないのではないかと思う。だが卑語や下ネタではないし、俗語ですらない。

出典はTwitterから: 

 

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importantなどに続くthat節内に現れる動詞の原形(仮定法現在 ※「shouldの省略」とも説明される)【再掲】

※この記事は、このブログを開設したころにまとめて投稿したいくつかの記事のひとつである。開設時の記事はほとんど閲覧されていないので、重要事項の実例として改めて見ておいていただきたく、ここにコピーして再掲しておきたい。なお、文中の「昨日」などは初出当時のまま。

 

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今日の実例も、出典は昨日のと同じ。米トランプ大統領とロシアとのつながりに対する特別検察官による捜査に関する報道記事から、ウィリアム・バー氏の発言のなかに、注目すべき文法ポイントが含まれている。

ウィリアム・バー氏はジェフ・セッションズ氏が解任されたあと、次期司法長官に指名されている法律家で、1990年代に司法長官を務めた経験がある。つまり、法律のプロ中のプロと見なしてよい人物だ。

www.theguardian.com

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倒置, 否定(再掲)

※この記事は、2019年1月にこのブログを開設したころにまとめて投稿したいくつかの記事のひとつである。開設時の記事はほとんど閲覧されていないので、重要事項の実例として改めて見ておいていただきたく、ここにコピーして再掲しておこう。

 

****************

 

今回の実例は、ロシアとつながっているという疑惑を全力で否定する米トランプ大統領の発言から。否定に躍起になっている例だ。

www.theguardian.com

 

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前置詞+関係代名詞、現在分詞の後置修飾、助動詞のcan、those who ~(反ワクチン運動の広まり)

今回の実例、前々回および前回と同じ記事から。記事の内容に関する解説など前置き的なものは前々回のエントリをご参照のほど。

参照する記事はこちら: 

www.theguardian.com

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look to ~ for …(群動詞2つの合わせ技), A as well as B, no longer ~(反ワクチン運動の広まり)

今回の実例は、前回と同じ記事から。記事の内容に関する解説など前置き的なものは前回のエントリをご参照のほど。

参照する記事はこちら: 

www.theguardian.com

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接続詞のfor, 先行詞を含む関係副詞のwhere, A is to B what C is to D(反ワクチン運動の広まり)

今回の実例は、「反ワクチン anti-vaccination movement, anti-vax」についての論説記事から。

最近、米国で麻疹(はしか)の流行が報告された影響か、「反ワクチン」は日本語圏でもかなり話題にのぼるようになってきたが、今のこのムーヴメントの発端はおよそ20年前、『ランセット』という権威ある医学分野の論文誌(学術雑誌)に、ウェイクフィールドという学者が発表した論文にある。その論文の内容は、概要を書くだけでも「反ワクチン」のデマを再生産し拡散することになってしまうのでここではスルーするが、当該の論文は発表直後から複数の問題点が指摘され、その後最終的には全面撤回されるということになった。つまり、その論文の内容は全然正しくない、論文はデタラメ、と結論されている。

しかし論文の発表から全撤回までの10年余りの間に、そのデタラメな中身は難しいことなんかわからない一般人の(一部の)あいだにパニックを引き起こし、「ワクチン忌避」という新たなムーヴメントを引き起こした。それが、論文全撤回から9年になる現在でも終わっていなくて、その影響(と思われるもの)が実社会で確認されてきている。それが昨今の麻疹の流行だ。

麻疹の流行に関してはウェブ検索で報道機関の記事を読んでみていただきたい。例えば米WSJの日本語版には下記の記事(2019年3月9日付)がある。

jp.wsj.com

 

 

 前置きはこのくらいにして、今回参照する記事はこちら: 

www.theguardian.com

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