今回の実例は、以前取り上げた記事の続報といえる報道記事から。
この6月、シェイクスピア劇の上演を中心に活動する劇団「ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー (RSC)」を、ひとりの重鎮が退団した。理由は、RSCがエネルギー企業BPをスポンサーとしていることについての疑問を劇団の経営陣に示したのに、何年も回答が得られなかった(放置されていた)ことだった。当ブログで以前見たのは、その時の記事である。
その記事から、BPという企業について述べた部分を引用しておこう:
……そういう中で、環境問題を解決する方向につながらない活動をしている企業に対する一般の人々の目も前以上に厳しくなっている。超大手エネルギー企業のBP (旧称はBritish Petroleum)もそういう企業のひとつで、表面的には「私たちは環境問題を真剣に考えています」というポーズを取りながら、依然として化石燃料のさらなる開発をやめようとしていないという点が、環境保護を訴える人々から強く批判されている(が、たぶん株式市場とかそっちでは何事もないのではないかと思う)。また北海油田を開発する企業のひとつであるBPは税制上も優遇されており、その点でも批判が大きい。莫大な利益を上げながら納税額が少ない上に、化石燃料から手を引こうとしないとあらば、批判が大きくなるのは当然のことだ。
現実には、BPは資金も潤沢にあり、自社のイメージアップを目して、さまざまな芸術活動・施設のスポンサーとなっている。1959年に設立された英国の超名門劇団でシェイクスピアの時代の劇場を現代によみがえらせたShapespear's Globe (グローブ座) を運営するRoyal Shakespeare Company (RSC) もBPをスポンサーとする芸術・芸能団体のひとつだ。
さて、今回の報道は、そのRSCがBPとの関係を解消した、という内容だ。それも当事者(学生たち……BPのスポンサーシップは「学生が格安で観劇できる」という内容のプログラムへのものだった)の抗議によって。
若い人たちが「地球環境を破壊する企業は支持しない」という意思を表明し、そのように行動して結果を出しているのは、たぶん、最近の気候変動の影響があまりにもあからさまになってきていること、それらの現象やその結果は「高校生でもわかる」くらいに科学的に説明できること、そして西洋の若い人々にとってそれら科学的な説明を拒否したり否定したりする宗教右派勢力(原理主義者)の存在は、「身近」とは言えない場合でも社会の中に認識できるくらいの存在であるということなどとかかわっているだろう。
環境問題を熱心に報じているガーディアン紙では、最も近いところで10月2日に「スイスのアルプスの氷河の氷がとけていることが原因で、山からの落石が増えており、山間の村に住む人々が危険にさらされている」という報道があったが、これなど「気温が多少上がったところで、影響など大したことはない」という訳知り顔の大人の言うことを一発で蹴っ飛ばせるくらいに具体的だ。
アイルランドとイングランド南部は、今回のこの記事が出たとき、まさに巨大な低気圧(元ハリケーン)が到来しようとしていたのだが、このように台風的なものが勢力を保ったまま、あそこまで大西洋を北上するということは以前はまずなかった。この点、下記解説がわかりやすかった。
さて、本題に入ろう。
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