Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

時制の一致, 《条件》を表す直説法のif節, nothing but ~, 引用符のルール(環境を破壊する企業の金で優遇されることを学生たちがボイコット)

今回の実例は、以前取り上げた記事の続報といえる報道記事から。

この6月、シェイクスピア劇の上演を中心に活動する劇団「ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー (RSC)」を、ひとりの重鎮が退団した。理由は、RSCがエネルギー企業BPをスポンサーとしていることについての疑問を劇団の経営陣に示したのに、何年も回答が得られなかった(放置されていた)ことだった。当ブログで以前見たのは、その時の記事である。

その記事から、BPという企業について述べた部分を引用しておこう: 

……そういう中で、環境問題を解決する方向につながらない活動をしている企業に対する一般の人々の目も前以上に厳しくなっている。超大手エネルギー企業のBP (旧称はBritish Petroleum)もそういう企業のひとつで、表面的には「私たちは環境問題を真剣に考えています」というポーズを取りながら、依然として化石燃料のさらなる開発をやめようとしていないという点が、環境保護を訴える人々から強く批判されている(が、たぶん株式市場とかそっちでは何事もないのではないかと思う)。また北海油田を開発する企業のひとつであるBPは税制上も優遇されており、その点でも批判が大きい。莫大な利益を上げながら納税額が少ない上に、化石燃料から手を引こうとしないとあらば、批判が大きくなるのは当然のことだ。

現実には、BPは資金も潤沢にあり、自社のイメージアップを目して、さまざまな芸術活動・施設のスポンサーとなっている。1959年に設立された英国の超名門劇団でシェイクスピアの時代の劇場を現代によみがえらせたShapespear's Globe (グローブ座) を運営するRoyal Shakespeare Company (RSC) もBPをスポンサーとする芸術・芸能団体のひとつだ。

 

さて、今回の報道は、そのRSCがBPとの関係を解消した、という内容だ。それも当事者(学生たち……BPのスポンサーシップは「学生が格安で観劇できる」という内容のプログラムへのものだった)の抗議によって。

www.bbc.com

若い人たちが「地球環境を破壊する企業は支持しない」という意思を表明し、そのように行動して結果を出しているのは、たぶん、最近の気候変動の影響があまりにもあからさまになってきていること、それらの現象やその結果は「高校生でもわかる」くらいに科学的に説明できること、そして西洋の若い人々にとってそれら科学的な説明を拒否したり否定したりする宗教右派勢力(原理主義者)の存在は、「身近」とは言えない場合でも社会の中に認識できるくらいの存在であるということなどとかかわっているだろう。

環境問題を熱心に報じているガーディアン紙では、最も近いところで10月2日に「スイスのアルプスの氷河の氷がとけていることが原因で、山からの落石が増えており、山間の村に住む人々が危険にさらされている」という報道があったが、これなど「気温が多少上がったところで、影響など大したことはない」という訳知り顔の大人の言うことを一発で蹴っ飛ばせるくらいに具体的だ。

アイルランドイングランド南部は、今回のこの記事が出たとき、まさに巨大な低気圧(元ハリケーン)が到来しようとしていたのだが、このように台風的なものが勢力を保ったまま、あそこまで大西洋を北上するということは以前はまずなかった。この点、下記解説がわかりやすかった。

news.yahoo.co.jp

 

さて、本題に入ろう。

続きを読む

目的語が長い場合の語順の入れ替わり(英国で進む[まっとうな、歴史学の用語でいう]歴史修正)

今日の実例は、英国の「歴史の見直し(歴史修正)」に関するBBCの報道記事から。

「歴史修正」というと、主に「過去の惨劇を否定する」、「過去を美化する」という方向性の「修正」について用いられることが多いが(「ホロコーストはなかった」日本でいえば「南京虐殺はなかった」とか「従軍慰安婦などいなかった」といったもの)、こちらは欧州での第一次世界大戦第二次世界大戦をめぐるドイツ擁護(&「アングロサクソン」への批判)に端を発する後発的な用語で、本来歴史学で「歴史修正」というと、新たな資料が見つかるなどして、それまでいわば「定説」となっていた歴史観が修正されることを言う。中世について「暗黒の時代」と称されていたのが修正されたり、アフリカについて「未開の地」と見なされていたのが、実はそうではなかったと認められたりすることだ。

また、より広義に、かつてはいけないこととされていたが、今の観点で公平に考えればそうではない、ということを公的に認めるような動きもこちらに含まれる。例えば、アイルランドにおいて、かつて「英国は侵略者であり、絶対的な敵」との価値観によって第一次大戦・第二次大戦で英軍に加わって戦ったアイルランド人はいわば「国に対する裏切者」と見なされ、戦死者は顧みられることもないという時期があったが、近年はそれが修正され、追悼施設で大統領や首相臨席の上で式典が行われるなどしているのも「歴史修正」の結果といえる。ちなみに、アイルランドは基本的にカトリック国家で、宗派上の少数者であるプロテスタントを含めて圧倒的にキリスト教の国だが、戦没者追悼施設は無宗教・非宗教のかたちで作られている(これは、「英国軍」に加わってともに戦った兵士たちの中にはユダヤ教徒ヒンズー教徒、イスラム教徒など、キリスト教以外の宗教を持つ者たちも多くいたことを考えれば当然のことだが)。

さて、そのような「歴史修正」が、英国でも少しずつ行われている。例えばかつての奴隷貿易について、自国の関与の非を認めるという動きが、21世紀に入って見られるようになっている。下記は "slavery britain apology" という検索ワードでのウェブ検索結果の画面のキャプチャだが、2001年にはEUがベルギー主導で奴隷貿易について全面的な謝罪を行おうとしていたのを、英国を中心とした4か国(英、オランダ、スペイン、ポルトガル)が阻止したということが報じられていて、その6年後の2007年にはトニー・ブレア首相(当時)が、それまでの「遺憾の意 regret」の表明を一歩進めて「sorry」と発言した(が、「謝罪する apologise」まではいかなかった)ということが報じられている。その後も英国では、以前は頑として謝罪などしようとしなかったことについて、正式な謝罪には至らないが、遺憾の意以上のものを首相(政治指導者)が示す、ということが続いている*1

f:id:nofrills:20191003112329p:plain

日本においては今なお20年前の「英国は自分の非を認めようとしていない」という事実認識(それは20年前は正しかった)が修正されずに流通していることがあるが*2、そういった古い認識は早急に修正されるべきである。

最近では、100年前、植民地として英国が支配していたインドでの英軍指揮下の現地軍による虐殺について、イングランド国教会カンタベリー大主教が地面に身を投げうって「キリストの名において」謝罪を行った。政府とは別個の謝罪ではあるが、当時の英軍をまとめ上げていた宗教団体の現在のトップ*3がこのように非を認め、このように謝罪したことは、20年前は考えられなかったことが起きたと言ってよいだろう。

アムリットサルの虐殺に関しては、大主教の謝罪の前、5月には当時のテリーザ・メイ首相が現地を訪れて「遺憾の意」を表明し、虐殺事件について「恥ずべき傷」と述べているが、謝罪には至らなかった。

こういったことについて、「英国は国家として正式に謝罪すべきだ」という批判もあるし、私も個人的にはそのように批判したい側なのだが、まず、英国政府を代表する立場の人(首相であれ現地の総領事であれ)が公式に非を認めるところが出発点だ。そして、「非を認める」前段階として、「起きたことを事実として認める」という過程があるわけで、この点、都民としては、関東大震災での朝鮮人虐殺をめぐる現在の東京都小池百合子知事の嘆かわしい態度と比較対照せずにはいられない。

 

閑話休題

このような動きが見られるなか、2019年10月に入ったところでまたひとつ、「英国が過去の蛮行について非を認め、遺憾の意を示す」ということが起きた。それも、その「蛮行」の主は、偉人と見なされてきた人物で、英連邦に属するオセアニアの元植民地国家であるオーストラリアやニュージーランドにとっては「建国の父のひとり」的な立場の人物である。

記事はこちら: 

www.bbc.com

「キャプテン・クック」ことジェイムズ・クックは、18世紀の英国の海洋冒険家で、特に南半球・太平洋の航海と海図の作成で大きな業績を残した人物である。彼の船「エンデヴァー号(エンデバー号)」が、ニュージーランド北島現在Poverty Bayと名付けられている湾に到着したのが1769年、今年は250周年にあたる。その際、クックと乗組員によって、現地の人々(マオリ)に対する銃撃が行われ、族長ら9人が殺害された。その事実をめぐって、英国の代表者(高等弁務官)が式典という場で公式に「遺憾の意」を表明した、ということを報じる記事である。

ただしこの「遺憾の意」の表明は、はねのけられているわけではないが、もろ手を挙げて歓迎されているというムードではない。

*1:1972年1月30日、アイルランド北アイルランドのデリーでの非武装民間人虐殺、いわゆる「ブラディ・サンデー」事件のように、全面的に非を認めて公式に謝罪する、という結果に至った例もある。その場合、国家による賠償が行われることとなるが、ブラディ・サンデー事件については現在賠償が行われつつある

*2:そのころに出版された本の記述が当時のウェブサイトなどで引用されたものが、その後もずっとコピペとして出回っていたりするし、もちろん古書として、あるいは版を重ねたり文庫化されたりして流通し続け読み継がれていたりもするので、一概に非難できないのだが。

*3:イングランド国教会の本当のトップは英国王なのだが、ここでは簡略化して述べることにする。

続きを読む

女性について "hero" と言う場合(メアリ・ウルストンクラフトを讃える)

今回の実例は、英労働党党首ジェレミー・コービンのツイートから。といってもど真ん中の政治の話題ではない。

メアリ・ウルストンクラフトという名にピンとくる人は、日本語圏にはさほど多くないかもしれない。18世紀の英国の社会思想家で、人権についてまとまった著作を残した人物であり、特に現代のフェミニズムの先駆的な思想家として知られる。ちなみに、夫はウィリアム・ゴドウィンで、彼もまた英国の思想史をかじるなどすれば必ず出てくる重要人物である。2人の間の娘には、長じて小説『フランケンシュタイン』を書いたメアリ・シェリーがいる。メアリー・シェリーの夫は詩人のパーシー・シェリーで、この2人のロマンスもまた波乱万丈であるが、そのへんのことはウィキペディア日本語版でもだいたい把握できるので、興味があれば各自お読みいただければと思う。

メアリ・ウルストンクラフトの主著は『女性の権利の擁護 (A Vindication of the Rights of Woman)』である。それについての解説を、ウィキペディアから引用しておこう。

1792年に『女性の権利の擁護』が完成するが、それは部分的には、『エミール 』(1762年)において、少女に対する教育は、少年のそれとは別であり、少女を従属的で従順な者へと馴致する教育が望ましいとしたジャン・ジャック・ルソーに対する反論でもあった。彼女は、『人間の権利』で論じた機会の平等が、無条件で女性に対しても適用されることを主張した。

メアリ・ウルストンクラフトは、ユダヤキリスト教的文化伝統に於ける、独立道徳主体を持たない女性、従順に夫に依存する女性の像に疑問を投げかけた。彼女は、人間における「不可譲の権利」(inalienable rights))が、当然ながら、女性に対しても与えられるべきであることを主張し、男性による、社会的・政治的な女性価値判断における二重規準を断罪した。

 

---メアリ・ウルストンクラフト (wikipedia)

なお、1792年といえば、フランス革命で国王ルイ16世がとらえられ、裁判にかけられていた年である。

その彼女を記念する舞台劇が、ロンドンのリリックシアターで上演され、また彼女の銅像が作られることが決まった。

労働党ジェレミー・コービン党首は、この舞台をドーン・バトラー議員とともに見に行っており、そのことについて次のようにツイートした。

 

続きを読む

時制(大過去の中の完了不定詞)(BBCは誰の何を「人種差別」だと言うのか)

今回の実例は、英国の公共放送、BBCで現在持ち上がっている「騒動」の最新の展開に関するBBC Newsの記事から。

ナガ・マンチェッティ (Naga Munchetty) さんは、1975年生まれのジャーナリスト。ロンドンのアカデミー校*1を出てリーズ大学で英語を専攻し、ロンドンのイヴニング・スタンダード紙の金融・ビジネス欄でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせた。その後、いくつかの金融系映像メディアで実績を重ね、2008年にBBCのTV番組に加わり、現在は複数のBBCの番組でプレゼンターを務めている。その彼女が、2019年9月下旬、英国で「時の人」のような注目を集めた。

この7月、米国のドナルド・トランプ大統領が、自国で選挙されて議席を得た国会議員について「出身地に帰るべき」という発言を行った。この差別暴言の対象とされたのは、非白人の女性議員4人で、全員が民主党の所属だった。彼女たちはその後、この暴言にひるむことなどもちろんなく、冷静に対応し、特にSNSではますます大きな存在感を示すことになったのだが、トランプのこの暴言についてのBBCの番組*2でのナガ・マンチェッティの何ということはない発言が、2か月もしてから「問題」と認定されたのだ。

どういうことかというと: 

Speaking on BBC Breakfast on 17 July after Mr Trump's online remarks, Munchetty said: "Every time I have been told, as a woman of colour, to go back to where I came from, that was embedded in racism.

"Now I'm not accusing anyone of anything here, but you know what certain phrases mean."

https://www.bbc.com/news/entertainment-arts-49825570

つまり7月17日、トランプの「出身地に帰れ」というネットでの発言(ツイート)があったあとで、マンチェッティは「私も有色人種の女性ですから、出身地に帰れということを言われてきたわけですが、そういう発言はレイシズムに組み込まれていますよね。ここで誰かを追及しようということではないのですが、こういうふうに意味を持っている特定のフレーズというのはあるわけですし」(意訳)と述べた。

そのときの映像: 

 

これについて「トランプを人種差別主義者呼ばわりするとはなんということか」という内容の苦情がBBCに寄せられた……ところまでは想定の範囲内なのだが(トランプの「親衛隊」みたいなのは大西洋のどちら側にもいるので)、BBCのExecutive Complaints Unit [ECU] は、その「視聴者からの苦情」に対して、「貴重なご意見を賜りまして誠にありがとうございます」的に対処せず、「トランプ発言を人種差別主義と言うのが差別」的なスタンスに共感を示すかのように、「マンチェッティはBBCガイドラインに違反した (her comments went beyond what the guidelines allow for)」と判断した。

www.bbc.com

これが9月24日か25日のことで、瞬時に「ないわー」という反応が沸き起こった。TwitterではI Stand With Nagaというハッシュタグで人々のその反応が広く共有された。「レイシストレイシストと言うことの何がガイドライン違反なのか」という疑問が最も根幹的なものだが、BBCがこれまでガチもんのレイシスト(「トミー・ロビンソン」という活動家名を名乗るスティーヴン・ヤクスレイ・レノンなど)に発言の場を与え続けてきたことを思えば、「レイシストレイシストだと述べたらガイドライン違反」という判断に対して「ハァ?」という反応が出るのは当然のことだろう(むしろ、「あ、そうっすか……」という反応にならないだけ、まだ希望があるとも言えるのだが)。

 

さらに「問題」とされた発言が、番組プレゼンター2人の会話の中で出てきたものであり、「視聴者の苦情」はマンチェッティだけでなく番組プレゼンター2人に対するものだったことが明らかになると、BBCのExecutive Complaints Unitが「ガイドライン違反」と特定したのがマンチェッティだけで、つまり彼女からこの発言を引き出したもう一人の番組プレゼンター――ダン・ウォーカーというマンチェッティと同年代の白人男性――はおとがめなしとされたことの異様さも見えてきて、もうぐだぐだである。

※ガーディアンのこの記事フィードのリプライを見るといろいろ際立っていると思う。

 

しかも、この「騒動」の発端は、「苦情が殺到したので、BBCとしても対応しないわけにはいかなかった」といったことですらなかった。苦情は1件だけだったのだ。どこぞのトリエンナーレもびっくりである。しかもBBCは当初「ダン・ウォーカーに対する苦情はなかった。苦情はナガ・マンチェッティに対するものだけだった」という嘘までついていたのだ。

BBCは公共放送で、(BBC WorldはDVDや映像配信による収益で運営されているものの、英国内のBBCは)テレビ受像機を持っている人全員に課されるライセンス料(受信料)で運営されている。その放送局が、「有色人種は出身地に帰れ」という発言について「レイシズム」を指摘する発言はけしからん、という苦情1件に応じ、その発言の責任を選択的に1人にのみ負わせて「ガイドライン違反」と判断する、という事態は、何と言うか、最近の日本語圏で流行っているように見える表現を使うと「底が抜けている」ように見える。

 

ともあれ、そんなこんながあって、日付が9月30日から10月1日に変わるころには、BBCがマンチェッティについての「ガイドライン違反」との判断を覆した、という報道が出た。BBCかっこわる~。

www.bbc.com

今回実例として見るのは、この記事である。

*1:日本でいえば「私立校」のようなものだが、英国でいう私立高、いわゆる「パブリック・スクール」とは違う、庶民の学校。詳細はhttps://en.wikipedia.org/wiki/Academy_(English_school)  を参照。

*2:BBC OneのBreakfast. 毎朝の情報番組である。

続きを読む

【ボキャビル】not our day, credit to ~ (ラグビー、日本に負けたアイルランド代表)

今回の実例は、ラグビーアイルランド代表のTwitterアカウントから。

ラグビーのワールドカップ、9月28日(土)に静岡で行われた日本対アイルランドの試合は、格上のアイルランドが当然勝つだろうという見込みをさくっと裏切って、日本が19対12で勝利をおさめた。私はラグビーのルールは全然わからないし、こういうときだけ日本日本とはしゃぐタイプでもないのだが、ラグビーアイルランド代表*1にはそれなりの思いもあるので(私個人の、というより、私がTwitterでフォローしている北アイルランドの人々を見ていての思いであるが)、代表のTwitterアカウント @IrishRugby は見ている。試合そのものは私は見られる環境になく、都内の住宅街を歩いているときに家々から雄たけびやら叫び声やら拍手やらが聞こえてきたので、「ひょっとして日本勝ったんか」と思い、スマホでチェックして試合結果を知った。

さて、今日の実例はその試合後の @IrishRugby のツイートから。

 

*1:政治的な現実とは異なり、またサッカーなどほかのスポーツの代表とも異なり、アイルランドに南も北もなく全島で1つの代表チームを作っている。試合前に歌うアンセムも「国歌」ではなく、ラグビーの代表専用アンセムのIreland's Callだ。

続きを読む

形式主語、to不定詞の意味上の主語、現在完了進行形、「~を求めて」の意味のfor, what we call 【再掲】

このエントリは、3月にアップしたものの再掲である。文法的には「基本の確認」だが、それが「生きた英語」の中でどう使われているかという点で、とてもわかりやすい実例だと思う。

----------------------------------------------------------------

今回の実例は、今年の春分の日スーパームーンが重なるという非常に珍しいめぐりあわせで、日本時間では3月21日の夕方から上る月がスーパームーンで大きく見えるということについての解説記事から。

「スーパームーン」は、ごく最近になって騒がれるようになってきたが、月と地球の距離が近いために普段より大きく見える満月のことを言う。用語としては天文学由来ではなく占星術由来だそうだし、日本の国立天文台のサイトにはあまり積極的にこの概念を広めたくなさそうな解説ページがあったりするので、「ちょっとした世間話のきっかけ」とか「夜空を見上げるきっかけ」くらいにとらえておくのがよいかもしれない。

だが、新聞にとってはよいネタにはなるわけだ。

www.theguardian.com

続きを読む

条件のif節(直説法)、パンクチュエーション(句読法)の英米差【再掲】

このエントリは、3月にアップしたものの再掲である。英語学習者には、if節についての理解がぼや~っとしていて、if節を見たら仮定法と決めつけてしまうことがありがちだが、そうとは限らないということを「形」の面からも改めてご確認いただければと思う。

--------------------------------------------------------

今回の実例は、2019年3月上旬にBBC Newsが出した特集記事から。トピックは中国の通信機器メーカー「ファーウェイ(華為, 英語ではHuawei)」のことで、実例として見る箇所は米国政府が同社製品の使用を禁止したことに関連する部分。

記事はこちら。ページが凝った作りになっていて(BBC Newsの特集記事はこの作りになることがほとんど)、ファーウェイ社に対する最近の「疑惑」の経緯に始まり、同社の設立の話やら中国という国家の体制やら、非常に幅広い記事だが、動きを感じながらすいすい読めるようになっている。長文だが、興味がある方はぜひ全文を。

www.bbc.co.uk

続きを読む

it's ~ for ... to do --, 感覚動詞+O+原形, 不定冠詞のa, that節の繰り返し, if節のない仮定法, など(英最高裁判決後の保守党)

今回の実例も、前回みたのと同じ、「ボリス・ジョンソンによる英国会の閉会は違法」との最高裁判決を受けて再開された国会で起きたことに関する動きを報じる記事から。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

 

前回は記事の中ほどを参照したが、今回は記事の最後の部分で、保守党の大ベテラン政治家マイケル・ヘーゼルタインの発言を紹介している部分から。

続きを読む

so ~ that ... 構文, やや長い文, to不定詞の副詞的用法, 疑問詞節(英最高裁判決後の保守党中道派の動き)

今回の実例は、英国会で起きたことについての報道から。

起きたことがあまりにひどすぎて信じがたくて心が折れたので、今回は背景解説なし。記事はこちら: 

www.theguardian.com

 

「解説なし」とは書いたけど、見出しにある固有名詞程度は少し説明しておく必要があるだろう。

One-nation (ハイフンを使わない表記も一般的) とは、この場合、英保守党内の中道派(政治全体でいえば中道右派)を指す用語である。英国以外では別の意味を持つことがあるので要注意だ(例えばオーストラリアでは極右政党がOne Nationという党名を使っている)。ウィキペディア英語版によい解説があるが、詳細すぎてわかりづらいかもしれない。ざっくりと「保守党内の穏健派(リベラル派)」くらいに思っておいてよい(「何がどう『穏健』なのか」と突き詰めて考えたい人は、英国政治沼においでください。歓迎しますよ)。

en.wikipedia.org

続きを読む

省略(英最高裁の「議会閉鎖は違法」との判断に、「街行く市民の声」を集めるマスコミがマイクを向けたのは……)

※今日は文法解説というより、ゆるゆると読んでいただければいいという内容です。

今回の実例は、英国の最高裁によるまさに歴史的な裁定を受けて個人の身の上に起きた小さな出来事について書かれたTwitterから。

「英国の最高裁による歴史的な裁定」というのは下記の記事を参照。詳しくは、さすがにこの件はこのブログじゃなくて本家のブログ(nofrills.seesaa.net)に書くつもり。

www.bbc.com

 

で、この最高裁での裁定を、ネットでの生中継で見ながら、何人かの法律専門家がTwitterで実況していたのだけど、そのひとりがデイヴィッド・アレン・グリーンさん。先日スコットランドの法廷で英国会閉鎖は法律違反との判断が示されたときに当ブログで参照したフィナンシャル・タイムズ掲載の解説記事の筆者である*1

グリーンさんは、Twitterでの実況が終わったあと、ラジオ局LBCに電話出演してコメントしたりしていたのだが(とても明解でポイントがわかりやすかった)、そのあとで建物の外に出たときに、「市民の声」(vox pop: vox populiの略) を集めているマスコミに遭遇したという。それをおもしろおかしく報告するツイート: 

今回は先に文意から解説しよう。

まず、グリーンさんのこのツイートは「(笑)」を意図したもので、「マスコミガー」と噛みつくようなものではない(日本語圏ではマスコミの取材について述べているというだけでそこを誤読してかかる人がとても多いと思うので、蛇足だけど一応はっきり書いておく)。

*1:グリーンさんは自分でリプライをチェックできないときなど、ときどきTwitterに鍵をかけてしまうので、ツイートが普通に表示されないこともあるかもしれないが、ツイ消ししてしまうわけではないので、表示されていない場合は翌日くらいに見てみるようにしていただければと思う。

続きを読む

「推定で~人」と言いたいときの表現【ボキャビル】, 感覚動詞 + O + 原形, 使役動詞make + O + 原形(グレタ・トゥーンベリさんのデモでのスピーチ)

今回の実例は、23日の国連気候行動サミットを前に、全世界のいくつもの都市とほぼ同時にニューヨークで行われたデモに参加したグレタ・トゥーンベリ(トゥンベリ)さんが、演壇で行ったスピーチを報じるSky Newsのツイートより。

この日のデモのことは、日本語圏ではどの程度報じられたのか知らないが、英語圏では非常に大きく伝えられていた(下記キャプチャはどちらも日本時間で9月21日の午前5時前に取得。BBC Newsのアプリ、ガーディアンのアプリを立ち上げた場面)。

f:id:nofrills:20190924112703j:plain

 

 

グレタ・トゥーンベリさんについて、今初めて名前を知ったという方には、下記記事がわかりやすいだろう。

newsphere.jp

 

彼女について、既に当ブログでは何度か記事を参照している。下記リンクからたどっていただきたい。

https://hoarding-examples.hatenablog.jp/search?q=%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%82%BF

 

スウェーデン人の彼女(と支持者ら)はこの8月、温室効果ガスをたっぷり出す飛行機ではなく、ソーラーパネルを備え付けたヨットで大西洋を横断してニューヨークに渡った。到着時の報道は下記エントリ(2件)で参照した。

hoarding-examples.hatenablog.jp

hoarding-examples.hatenablog.jp

 

今回も文法項目としては上記のとカブる部分もあるが、ともあれ、参照先はこちら: 

 

続きを読む

《否定》の意味合いの同等比較 (as ~ as ...) 【再掲】

このエントリは、3月にアップしたものの再掲である。日本語母語話者にはわかりづらいが英語圏では頻繁に使われる口語的な表現(特に「文学的表現」というわけではない)について取り上げている。日本語母語話者ににとっては、こういう英文がさくさく読めるようになればワンランク上、という感じではあるが、英語のロジックという点では基本中の基本と言えよう。

--------------------------------------------------------

今回の実例はTwitterから。

ヨーロッパのラグビーの国際大会に「シックス・ネイションズ」というのがある。イングランドウェールズスコットランドアイルランドの4つに、フランスとイタリアを加えた6つの代表チームが総当たりで競い合う大会で、毎年欧州が冬から春になるころに1か月半にわたって行われている。

今年のシックス・ネイションズは3月16日が最終日で、ウェールズの首都カーディフで行われたウェールズアイルランドの試合が優勝の行方を決することとなった。この試合でどちらかが勝てばそのチームが優勝し、この試合が引き分けでなおかつこの日にスコットランドと対戦するイングランドが勝てばイングランドが優勝する(残り1試合はローマでのイタリア対フランス)。最終日の各チーム対戦成績は下記の通り。 

 

試合当日、Twitterではそれぞれの応援が盛り上がっている様子だったが、開始10分でウェールズが先制のトライを決める。その後もアイルランドはしょっぱい試合運びだったようで、Twitterで私がフォローするなどしているアイルランドの人たちは、とても静かだった。

 そんなときに流れてきたのがこちら。ツイート主はアイルランドのジャーナリスト、ポドレイグ・ベルトンさん。3月17日のセント・パトリックス・デイの休日を前に、お子さんと一緒に自宅のテーブルに置いたタブレットで試合を観戦していたときの一コマ。

続きを読む

代名詞のother, 完了不定詞【再掲】

このエントリは、3月にアップしたものの再掲である。otherは、使い方がわかってるつもりでも実はわかっていないことが多い英単語のランキングがあったら上位5位には入るんじゃないかという単語。解説ではその点に重点を置いているので、ぜひご一読いただきたいと思う。

----------------------------------------------------

今回の実例は、先週金曜日にニュージーランドクライストチャーチで起きたとんでもないテロ攻撃に関する最新の報道記事から。

本題に入る前に、この攻撃でテロリストに殺された50人の方々を悼み、残されたご家族・ご友人のみなさまに心からのお見舞いを申し上げます。銃撃で負傷された方々には一日も早いご回復をお祈り申し上げます。

これまでもテロによる無差別大量殺人は何度も起きてきたというのが現実ですが、この事件はあまりにも衝撃的なので(それがどう衝撃的なのかを説明してしまうこと自体が、今回は「どこも安全ではない」と主張するためにこのような蛮行をはたらいたテロリスト側の思うつぼにはまってしまうと思うのでここでは説明しませんが)、赤道を挟んでほぼ反対側にある東京で単にニュースを追っているだけの私も茫然としています。クライストチャーチは、2011年3月11日の東日本大震災の少し前に大きな地震が発生し、多くの建物が被害を受け、日本人の留学生28人も含め、185人もの方々が亡くなるということを経験している都市です。その都市に、今回はテロという卑劣な暴力がふりかかりました。大地震という自然災害を乗り越えたクライストチャーチに暮らす方々にとっての今回のテロの衝撃の大きさを思うとき、言葉にできない思いに胸がふさがれるようです。

 

では本題です。今回の記事は、金曜日のテロ攻撃直後に逮捕され、即時起訴されて土曜日には出廷していた被告が単独犯であったと見られるという日曜日の報道です(テロ直後は共犯者がいると見られ、数人が逮捕されていました): 

www.bbc.com

 

続きを読む

《時》を表す副詞節内で「未来」を言うのに使われる現在形、SVCの文型におけるturn【再掲】

このエントリは、3月にアップしたものの再掲である。アメリカの子供(小学生)の作文程度の英語を書くのは案外難しい(かもしれない)ということがよくわかる実例だと思う。

--------------------------------------------------------------------------

今回の実例は、Twitterから。3月14日に英語圏でバズっていたもので、アメリカの小学校で出された作文の宿題と、エマという子の答えである。

 

続きを読む

「Brexitによる不安」を一言で言うと……(ファッション業界とBrexit)

今回の実例は、華やかなファッション業界とBrexitの関係をわかりやすく伝える記事から。

というか今回見る「実例」は見出しだけ。

毎年9月半ばになると、「ロンドン・ファッション・ウィーク」が始まり、有名ブランドの多くがファッションショーで新作や新たなコンセプトを披露する。デザイナーもモデルもファッション関係の報道機関も、ヘア・メイク・アーティストや照明デザイナーといったショーを支える人たちも、大勢がロンドンに集まる。普段ならばそういったイベントのアフターパーティーなどは華やかな社交の場となるのだが、今は、そういった場でもBrexitが話題の中心だという。

ファッション産業は、とことん「モノ」の産業だ。どんなに情報化が進んでも布や糸は情報にはならない。物体として存在しない限り、役目を果たせない。だからぱっと見のイメージ以上に深く、国際情勢や世界経済と関連している。世界史などでも「生糸の高騰でこのような影響が」とか「綿花の不作でこのような影響が」といった話が出てくると思うが、21世紀の現在においても、布(織物)が主役のファッション産業では、モノが動かせなくなったらガッツリ影響が出る。

記事は、そのようなことを前提としておけば、あとは取材に応じたデザイナーなどファッション業界の人たちの具体的な意見の説明なので、わりと簡単に読めるだろう(ただし単語力はかなり要求される)。

というわけで記事はこちら: 

www.bbc.com

続きを読む
当ブログはAmazon.co.jpのアソシエイト・プログラムに参加しています。筆者が参照している参考書・辞書を例示する際、また記事の関連書籍などをご紹介する際、Amazon.co.jpのリンクを利用しています。