Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

so ~ that ...構文, 【ボキャビル】be tempted to do ~, on the contrary(ハリー&メーガンの最後の公務)

今回の実例は、サセックス公夫妻(ハリー&メーガン)の最後の公務についての報道記事から。

英王室のハリー王子とメーガン妃ことサセックス公夫妻が「王族としての第一線から退いて、北米(カナダ)と英国を行き来しながら生活していく」と表明したのは1月上旬、イランのIRGCのスレイマニが米国によって爆殺されたりして、年明け早々、世界中が「しっちゃかめっちゃかになるのでは」と思っていたさなかのことだった。イタリアが全土をロックダウン下に置き、新型コロナウイルスの感染が「パンデミック」の域に達しているとWHOが述べて、米国でも感染が広がりつつあることが日々伝えられている3月上旬*1から見ると、ずーっと昔のことのようだが、まだたった2か月前のことだ。

そのサセックス公夫妻が、3月9日(月)、ロンドンのウエストミンスター・アベイにて、王族としては少なくとも当面は最後となる公務に出席した。記事はこちら: 

www.theguardian.com

映像を見たい方は下記に全部上がっているのでそちらをどうぞ(私は見ていない): 


A Service of Celebration for Commonwealth Day LIVE 🔴 - BBC

サセックス公夫妻の最後の公務となった行事は、コモンウェルス・デー*2の礼拝で、行事の詳細や、少々「王室ゴシップ」めいたことも記事には書かれているが、実例として見るのはそこではない。

コモンウェルスは全世界にまたがり54の国から成るが、この日のロンドンでの礼拝にはそれらの国々にルーツのある名士たちも参加している。その中に、ボクシングのヘビー級統一王者であるアンソニー・ジョシュアもいた。ジョシュアはコモンウェルスの一国であるナイジェリア人の両親のもと、ロンドンの北西の端(ワトフォード)で生まれたが、子供時代をナイジェリアで過ごし、11歳くらいのときに英国に戻った。9日の礼拝で彼はそのことについてスピーチを行った。上記映像では26分過ぎから始まる(31分くらいまで)。下記URLで頭出ししてある。TH音がF音になったりT音が欠落したりとかなりこてこてのアクセントだから聞き取りは難しいかもしれない*3

https://youtu.be/iksBZyRLfu8?t=1588

*1:本エントリは元々3月10日に書いたのだが、いろいろ差し替えなどをしていたので、アップするのが3月中旬と遅くなってしまった。記述は元のまま「3月上旬」にしておく。

*2:かつて英国の植民地だった国々で構成される「コモンウェルス」の記念日。毎年3月第2月曜

*3:こてこてなんだけど、日常生活ではありえないくらいゆっくりはっきりしゃべっているから、「ロンドナーのアクセントってこういうものなんだ」ということを知るための教材としては有益かも。大学受験生の聞き取りの練習にするには厳しいと思う

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thanks for ~, ~ is all that matters, 前置詞+動名詞, 命令文+and ~ (新型コロナウイルスに感染したアルテタ監督)

今回の実例は、Twitterから。

いわゆる「新型コロナウイルス」の影響で、イングランドのサッカー・プレミアリーグ*1は、4月3日まですべての試合を一時中止している。だがこれは、日本で大規模なコンサートが中止・延期されているように観客の間での感染拡大を未然に防ぐための先手先手での措置ではない。もしそうだったら、3月第2週に開催されていた競馬の障害物レースの祭典「チェルトナム・フェスティバル」も中止・延期されていただろう(チェルトナム・フェスでは、会場のあちこちに消毒用のハンドジェルが設置されていたとはいえ、観客席はすし詰め状態で、しかも英国はマスクをする習慣がないから、非常に多くの人々がかなり長時間にわたっていわゆる「濃厚接触」の状態のままでレースを見ているという状態になった。屋外ではあったが)。

リーグの一時停止が判断される前に、アーセナルミケル・アルテタ監督の感染が判明して、アーセナルのトップチームが丸ごと自己隔離に入るということがあったのだ。この日、プレミアリーグの中で感染または感染のおそれが発覚したのはアルテタだけではなかったのだが、最もインパクトが強かったのがアルテタの感染だった。

アルテタは火曜日(10日)にチーム全体の練習をした翌日、水曜日(11日)に具合が悪くなり、検査を受けて、木曜日(12日)の夜に陽性の結果が判明したという。 

そして幸い、2日後の14日(土)には「もう回復してきた」と本人がツイートしていた。今回の実例はそのツイートから。

本題に入る前に形式的なことから。英語では、ピリオドやコンマなど句読点や記号の直後は、原則として、スペースを入れるというルールがある。コンマを打ったらスペース、ピリオドを打ったらスペース、コロンやセミコロンを使ったらスペース……というのは、英語でタイピングする人は習慣化されている。

しかしアルテタのこのツイートではその「ピリオドの直後のスペース」が全然ない。これは文字数がTwitterの投稿上限いっぱいいっぱいになってしまっていたためと思われる。アルテタの普段のツイートはスペースはしっかり入っているし、このツイートの文字数は実際に確認してみると上限いっぱい(残り文字数0文字)だからだ。

なのでこの、やたらと詰まった感じの文面は「誤り」ではなく「意図的に変にしている」ということになるが、いずれにせよタイピングのお手本とすべきものではない。よって以下、引用部分では、本来入れるべきスペースは入れておく。

*1:「1部リーグ」にあたるプレミアだけでなく「2部リーグ」にあたるチャンピオンシップなども同様に停止している。

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「~な人々」の意味のthose, 不定詞の完了形, 付帯状況のwith(中国、天安門事件から30年)【再掲】

このエントリは、2019年6月、1989年6月4日の天安門事件から30年というタイミングでアップしたものの再掲である。

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今回の実例は、天安門事件についてここ数日の間に英語圏報道機関で出た数多くの記事のひとつから。

1989年5月。ドイツで「ベルリンの壁」が崩壊する半年ほど前のことだった。中国の首都、北京の天安門広場で学生らが民主化要求の座り込みを行っていた。

このころ、東欧のソ連の衛星国などで民主化要求運動が次々と起きていた。東欧諸国では、それはほどなく革命や「ベルリンの壁」の崩壊という形になっていった。しかしアジアでは民主化要求運動は非常に厳しかった。ビルマ(ミャンマー)の「8888運動」は暴力的に鎮圧された。そして中国では、1989年6月4日に「天安門事件」が起きた。

何があったかについては、過去に書いたものがあるのでそちらを参照されたい。

下記「まとめ」の1ページ目(2013年作成): 

matome.naver.jp

 

下記「まとめ」(2014年作成): 

matome.naver.jp

天安門事件」とは何かということについて、要点だけ言えば、天安門広場に座り込んでいた群衆に、政府は武力を向け、暴力的に鎮圧した。死者数ははっきりしていない。数百人単位とも数千人単位ともされている。確実なのは、非武装のデモ隊に対し軍事力が行使され、大勢が落命したということだ。

 

現在の中国政府が「天安門」という言葉や「64」という数字、また天安門事件に関する連想を引き起こす数々の言葉に対し規制をかけているということは、日本語圏でも広く報じられ、語られている通りである。

 

今回の記事は、BBC Newsの北京駐在記者が、そのように「語られてはならないもの」として扱われている天安門事件について、30年前のことを知らない人にも伝わるように、事件犠牲者(大学生)のお母さんを取材するという経験(取材の中身そのものというより)などもまじえて書いた長文記事である。単に分量的にも読むのはしんどいかもしれないが、ご一読をおすすめしたい。

www.bbc.com

見出しの "forgettance" はremembranceの対義語で、Wiktionaryによるとめったに使われない語だそうだ。「忘れるということ」という意味。

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仮定法過去完了(ロシア介入疑惑、ロバート・マラー特別検察官退任に際する声明)【再掲】

このエントリは、2019年6月にアップしたものの再掲である。米トランプ政権はこのあと「ウクライナ疑惑」に揺れ、大統領弾劾という事態にまでなった(その先には行かなかった)。そして現在の新型コロナウイルス禍……「ロシア疑惑」は遠い昔のことのように思えるが、ここで特別検察官がはっきりと言葉にしたことは、忘れ去ってはならないことである。

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今回の実例は、米国のロバート・マラー*1特別検察官が退任したときのTwitterでのニュースフィードから。

マラー氏が2016年11月の米大統領選挙におけるロシアからの干渉について調べる特別検察官に任命されたのが2017年5月。その後、調査を進めながら、選挙戦でトランプ陣営で仕事をしていた人たちやロシア人などを次々と起訴、その過程でトランプの弁護士だったマイケル・コーエンから「うひょう」としか反応のしようのない暴露が出たり、銃ロビーのRNAに食い込んでいたロシア人スパイが有罪判決を受けたりしてきたが、最終的に2019年3月22日にマラー特別検察官からウィリアム・バー司法長官に「最終報告書」が提出されて、捜査は終結した。

この「最終報告書」は当初、司法長官がまとめたものしか世間に公表されなかったのだが(特別検察官が司法長官に提出して数日後に「まとめ」が公表された)、その「まとめ」の中身があまりにおかしかったので、いろいろあった末に、提出から約1か月後の4月18日に、報告書全文が一部情報を伏字にした状態で公開された(文章量にして1割強が伏せられている)。そういった経緯は英語版ウィキペディアに詳しく出ているので、関心がある方はそちらを参照されたい。

en.wikipedia.org

そしてこの報告書(ほぼ)全体の公開から1か月強が過ぎた5月29日、司法省において自身の退任と特別検察官事務所の閉鎖を宣言する声明を発表した。マラー特別検察官がしゃべっている映像を見たのは、私はこれが初めてではないかと思う。

特別検察官は「司法省の方針により、在任中の大統領は連邦法での違法行為で訴追することができない」と説明し、「したがって、大統領の起訴という選択肢は、特別検察官事務所にはなかった」と述べた。バー司法長官やトランプ大統領自身が「(ありもしない疑惑なのだから当然のことだが)証拠不十分だ」「ロシアとの結託関係などなかった」と繰り返しているのとは、まったく話が違う。

特別検察官には大統領を起訴する権限はなかったということは、既に公開されていた最終報告書でわかっていたことだが、マラー氏自身の肉声で語られるのは初めてだ。

今回の実例は、そのくだりから、お手本のような仮定法過去完了の実例。

*1:英語での綴りはRobert Muellerで、日本語の報道などでは「マラー」「モラー」「ムラー」「ミュラー」など激しく表記ゆれしていて、「ムラー」や「モラー」をよく見るのだが、現地では「マラー」と読む。 https://en.wikipedia.org/wiki/Robert_Mueller を参照。

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whether A or B, there is/are ~ + 現在分詞, 進行形の受動態, 【ボキャビル】the jury is still out(新型コロナウイルス感染者数のグラフ)

今回の実例は、英国の経済紙Finantial Times (FT) が作成したグラフから。

12日、スウェーデンの元首相・元外相で、現在は欧州連合 (EU) の外務理事会で共同議長 (Co-Chair European Council on Foreign Relations) を務めているカール・ビルト氏が、次のようなツイートで、FTが作成したグラフを参照していた。

 

このグラフは、西洋諸国での新型コロナウイルスの感染件数をグラフにすると、だいたい同じような軌道 (trajectory) を描く(だいたい同じような増え方を見せている)ということを示すもので、英国、米国、スペイン、フランス、ドイツ、スウェーデン、スイスなど、まだ滅茶苦茶差し迫った事態にはなっていない国々のグラフと、全土がロックダウンというとんでもないことになっているイタリアのグラフを重ね、さらにイランと韓国、香港、シンガポール、日本のグラフも加えて1枚にしたものである。

そして、何かで日本が言及されていると日本にだけ注目するのが基本で*1、さらに今は誤情報(というより明確なデマ)偏向報道に基づいて「イタリアと韓国は大失敗したが日本は大成功、日本スゴイ」というおかしな方向で盛り上がっている(らしい)中で、このグラフでちょびっとだけ言及されている日本について、FTが正確にどう述べているかを見ようともせずに、「おお、日本すごい」と読み解いてしまうおっちょこちょいな人がけっこういるみたいだ。

グラフには英語で注記みたいなことが書かれている。それを読まないと、FTがどう分析しているかはわからないのだが、その英文を読みもしていない(あるいは読んでも正確に意味が取れていない)人は大勢いるだろう。

なので、今回はその英文を実例として取り上げたいと思う。

 

当該のグラフは、ジョン・バーンマードックさんが作成したもので、ご本人のアカウントからもツイートされている。

 グラフの一番上には、このグラフの主旨が "Most western countries are on the same coronavirus trajectory. Hong Kong and Singapore have managed to slow the spread" と記載されている。直訳すれば、「西洋諸国のほとんどは、新型コロナウイルス感染について同じ軌道をたどっている。香港とシンガポールは、拡大を原則することに成功している」となる。ここで「香港とシンガポールは成功」と明言されていながら、グラフで見た目上同じような感じになっている日本には言及がないことに注意する必要がある(が、「日本すごい」の人たちはそういうところを絶対に見ようとしないし、見せようともしない)。

グラフの上にあるテクスト、3行目の "Cumulative number of cases, by number of days since 100th case" はグラフの説明。「感染事例の累積数、横軸は100件目の感染が判明した後の日数」という意味だ。

では、続いて、グラフ内に注記として書き込まれているテクスト(文)を見ていこう。

(なお、グラフのデータの中はここでは見ない。ここではグラフに添えられている英文を読むだけである。)

*1:今年のアカデミー賞授賞式で松たか子さんが世界のエルザたちの1人としてステージに立って歌ったときに、マスコミが「松たか子圧巻!」的に大騒ぎしたことを想起されたい。あのとき、本当にニュースにすべきだったのは「世界のエルザたちが一堂に集結」ということだったのだが。

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【ご連絡】コメント欄について

いつも閲覧していただき、ありがとうございます。

当ブログでは先日、オープン性を確保しておきたい投稿をして以来、しばらくコメント欄を開放してあったのですが、1件もコメント投稿がなく、今さっき初めてきたコメントはスパムでした(画像)。

f:id:nofrills:20200312223100p:plain

 

というわけで、そろそろコメント欄を元通り閉鎖しようと思います。日付が13日になったら閉鎖します。書き込みたいことがある方はそれまでにお願いします。

 

2020年3月12日 22:30記

→追記: 13日03:00にコメント欄を閉鎖しました。

force ... to do ~, 付帯状況のwith, 和文和訳, to不定詞の意味上の主語, 等位接続詞のand, 不定冠詞(東日本大震災から9年)

今回の実例は、東日本大震災から9年を迎えた日本についての報道記事から。

記事の内容はあらかじめ説明するまでもないだろう。日本で、日本語でたっぷり報じられていることを英語で読むとどうなるか、といったことを確認してみてほしい。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

記事見出しの "scale back ~" は、scale down ~としても同意だが、「~を縮小する」の意味。scaleは「スケール、規模」という意味を表す名詞の用法をよく見ると思うが、ここでは動詞(「規模を調整する」といった意味)で用いられている。

"triple disaster" は「3重の災害」の意味。地震津波原発事故の3つがほぼ同時に発生したことから、英語圏では「東日本大震災」をこのように端的に表すことが多い。

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報道記事の見出し, be + to不定詞の意味合い(ナチス・ドイツ政権下の強制収容所の看守)

今回の実例は報道の見出しから。

下記キャプチャ画像(BBC News)の、特に下から2番目をご覧いただきたい。

f:id:nofrills:20200311043620p:plain

2020年3月7日、BBC News

"Ronaldinho arrested ..." や "Woody Allen book pulpled ..." の下線部の動詞は過去分詞で、「ロナウジーニョが逮捕された」、「ウディ・アレンの本が没になった」*1の《受け身》の意味。

一番下の "Top Afghan officials escape ..." の現在形は、「新聞記事の見出しの現在形は過去の事実を表す」という鉄則の通り、アフガニスタンで集会が銃撃されて何人もが殺されたが、要職者は難を逃れた、という報道記事だ。ちなみにこの攻撃はイスイス団が犯行声明を出している。

そして、今回メインの下から2番目、"US to deport former Nazi camp guard to Germany" は、見出しのルールとして、《未来》のことを表すto不定詞が用いられている。これは、以前も解説した通り、《be + to不定詞》のbe動詞が省略されたものだ。

ではこの記事の中身はどうなっているか。BBC Newsのこの画面から、この見出しをタップ/クリックすると次の記事が出てくる。

www.bbc.com

*1:pulpは動詞で「~をパルプ状にする、どろどろにする」の意味だが、ここでは「本」の掛け言葉で「スクラップにする」的な意味である。

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仮定法過去, even if ~, 倍数表現(アイルランド共和国、セント・パトリックス・デーのパレードを中止との判断)

今回の実例はTwitterから。

3月17日といえばセント・パトリックス・デー聖パトリックの日)である。聖パトリックはアイルランドキリスト教を普及させた人で、アイルランド守護聖人である。彼が没した日は記念日となり、アイルランドでは特別な意味合いを持つ祝日とされてきたが、いろいろ厳しいことがあってアイルランドを去らざるを得なかった世界各地のアイリッシュディアスポラ(離散アイルランド人)にとっては格別な意味を持つ日で、特に北米のアイリッシュは、この日を自身のルーツを確認する日として大々的なパレードを行って祝ってきた。一方、本国のアイルランドでは、最近までこの日はさほどの騒ぎにはなっていなかったというが、今ではアイルランドの各都市(北アイルランドも含む)で盛大なパレードが行われるようになっている。詳細はウィキペディア参照(日本語版にもエントリはあるが、情報量が少なさ過ぎて英語版とは比べ物にならない)。

en.wikipedia.org

 

この日は、パレードがおこなわれる場所では、多くの人々が見物のために沿道に並び、パレードが終わったらみながパブなどで飲みまくる、ということになっている。つまりとても人が多く、とても密集していて、とても濃厚接触が多くなる。

アイルランドは今のところ、新型コロナウイルスの感染は限定的である。3月9日の時点でアイルランド共和国北アイルランドを合わせて、感染件数は33件だ。

 

アイルランド共和国政府の確定件数は下記にて: 

https://www.gov.ie/en/news/7e0924-latest-updates-on-covid-19-coronavirus/

 

しかし、セント・パトリックス・デーという大規模なイベントを契機として、何がどうなるかわからない。3月9日(月)、当初アイルランド共和国政府(というか、2月のはちゃめちゃな選挙結果を受けて次の内閣が決まるまでのケアテイカー、つまり暫定内閣が率いる政府)はこの祝祭を中止するのに及び腰だったが、数時間のうちに「中止」という方針を固めたようだ。

というわけで、今回の実例は、その方針を公にした首相(ケアテイカー首相)の会見の実況から。

 

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セミコロンの使い方, because of ~, 疑問詞節, 前置詞のas, 関係副詞, 強調構文(国際女性デーとアンディ・マリー)

今回の実例は、テニス・プレイヤーのアンディ・マリー(マレー)の文章から。3月8日(日)の国際女性デーを前に、7日(土)のガーディアンに掲載された寄稿の文章だ。

マリーは2013年に、英国人プレイヤーとしては実に77年ぶりにウィンブルドン全英オープン)男子シングルスで優勝したが、その翌年に当時のコーチ、イヴァン・レンドルとの契約を終了し、新たにアメリ・モレスモをコーチとした。モレスモは以降、2016年4月から5月にかけて行われたマドリード・オープンまでマリーのコーチを務めることになるが、マリーのこの選択がメディアの関心を集めた理由は、「マリーとレンドル、師弟間の確執」みたいなこともあったかもしれないが、それ以上に、モレスモが女性だったことにある。モレスモとの契約が終わった後、2016年にマリーは再度レンドルをコーチとして、ウィンブルドンで2度目の優勝を飾った。マリーのコーチ一覧はこちらにある。

女性でありながら男性のトップ・プレイヤーのコーチを務めたアメリ・モレスモは、フランスのテニス・プレイヤーで、2006年の全豪オープンウィンブルドンで優勝した経歴を持つ名選手だった。

このことについて、スポーツメディアのVictoryで、内田暁さんが次のように書いている。

マレーの“男女同権意識”が最も強く表れたのが、2014年に、女子元世界1位のアメリー・モーレスモをコーチに雇ったことである。当時のマレーは、既に2つのグランドスラムタイトルを誇る世界の5位(それもケガにより一時的にランキングを落としていた時期)。そのような男子トッププレーヤーが、女性をコーチに雇うのは初めてのことだった。

 その件につき多くの質問を受けたマレーは、「僕は男女関係なく、純粋に優れた人材をコーチにしただけ。何がそんなに不思議なんだ?」と、周囲の好奇の目をいぶかしがる。また、自身の結果が振るわずモーレスモに批判が集まった際には、「彼女を攻撃するのはフェアではない。勝てないのは僕の責任だ」とコーチを庇い続けた。そして2015年1月、全豪オープンで決勝に勝ち進んだマレーは、コート上で勝利インタビューのマイクを向けられると、こう切り出した。

「僕がアメリー(モーレスモ)をコーチにした時、多くの人が批判的な意見を述べた。でもこの大会で僕らは、女性でも素晴らしいコーチになれることを証明できたと思う。それが嬉しい」。 

マレーが、女性コーチを採用した理由。トッププレイヤーの深い知性と男女同権意識 | VICTORY

今回見るマリーの文章は、この件に関してのものだ。記事はこちら: 

www.theguardian.com

タイトルの後半は、「日本はすばらしい」云々ではなく、2020年という年になってスポーツ界での女性の位置づけ、というか「女には無理」という思い込みが徐々に変化してきているから、今年のオリンピック・パラリンピックを機に一気に変われるんじゃないかという期待を込めてのものだ。(医学部入試で女子があらかじめ減点されているとかいった日本の現状は、マリーが正確なところを知ったら唖然とするのではないかと思うが……。)

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助動詞+完了形、not A but B, lie (lay) in ~(アンネ・フランクの同級生が読む「アンネの日記」)【再掲】

このエントリは、2019年5月にアップしたものの再掲である。少し息の長い文でも、落ち着いて構造を取ることを学習していただければと思う。

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今回も、前々回、および前回と同じく、アンネ・フランクの日記の増補改訂・新訳版が英国で出版されることを受けての記事から。

今回は、前回見たパラグラフの後半部分を見ていこう。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

 

 

 

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挿入、間接疑問文、時制の一致をあえてしない場合(アンネ・フランクの同級生)【再掲】

このエントリは、2019年5月にアップしたものの再掲である。日本語での表現と英語での表現の違いに注目してお読みいただければと思う。

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今回も、前回と同じく、アンネ・フランクの日記の増補改訂・新訳版が英国で出版されることを受けての記事から。

アンネ・フランクについての説明は不要と思われるが、前回少し書いておいたので、「名前だけは知っている」という方はそちらをご参照のほど。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

前回は、記事の冒頭で、『アンネの日記』でユダヤ人学校の同級生として一言だけ言及されているアルバート・ゴメス・デ・メスクィタさんは、今もご存命であるということが書かれている箇所を見た。

今回見るのは、その少し先の部分。世界で最も有名な本の一冊である『アンネの日記』(60の言語に翻訳され、3000万部が売れている)に(一瞬だけとはいえ)出てくる人物であるアルバート・ゴメス・デ・メスクィタさんに、この記事の筆者(オランダ出身のオックスフォード大学英語教授で、アンネ・フランクと同じようにオランダで潜伏生活を送っていたユダヤ人についての著書でコスタ賞を受賞した文筆家でもある)が話を聞いているくだりである。

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「買いだめ」「かさばる」などの英語表現あれこれ(トイレットペーパー買い占め騒動)

今回の実例は、日本と同じような現象が起きているオーストラリアについての報道記事から。

ただし今回はいつもとは趣向を変えて、「それって英語でどう表せばいいの?(英語でどう言うの?)」ということを学ぶ、という方向で。

新型コロナウイルスの感染者が増加する中、日本で2月末から3月初めの約1週間の間、その実態もないのに、「トイレットペーパーがなくなる」という不安・恐怖にかられた人々が「見たら買う」という行動に出て、店頭からトイレットペーパーがスッキリ消えるということが起きていた。

手を清潔にするためのハンドジェル(英語ではhand sanitiser[sanitizer]という)やウェットティッシュ(英語ではwet wipes, baby wipesという)、手を洗うための石鹸・液体石鹸などなら店頭から消えるのはわかるが、新型ウイルスとトイレットペーパーはかすってもいない。

でも、人々がばかすか買い込むので、店頭から消えてしまう。そういう現象は日本でだけ起きたわけではない。

BBCがオーストラリアで起きたこの現象についての記事を出した。今回見るのはそれだ。記事はこちら: 

www.bbc.com

この件について、解説的なことは下記のページ(NAVERまとめ)に書いてあるので、そちらをご参照いただきたい。

matome.naver.jp

本稿では、純粋に、英語の表現を見ていくことにする。

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時制の一致をめぐる、ちょっと珍しい例(新型コロナウイルスの影響で、007映画の新作が公開延期に)

今回の実例はTwitterから、ちょっと珍しいものを。

学校で習う英語の文法で、日本語母語話者にとってちょっとめんどくさいのが《時制の一致》だ。間接話法にしたときに、従属節の動詞の時制を主節の動詞に合わせるという例のあれだ。

  Tom said, "I'm hungry." ←この現在形が……

  → Tom said that he was hungry. ←saidに合わせて過去形になる

 

  Tom said, "I'll buy a new phone." ←《未来》を表す助動詞willの場合……

  → Tom said that he would buy a new phone. ←過去形のwouldになる

 

  Tom said, "I went there by myself." ←過去形の場合は……

  Tom said that he had gone there by himself. ←過去完了になる

 

こうやって何でもかんでも、「主節が過去形なら、従属節も過去形」とやっておけばいいのなら、機械的で楽である。実際、そのように機械的に「主節が過去形だからthat節も過去形」というようになっていることが多い。この《時制の一致》が《惰性の一致》(江川泰一郎)と呼ばれる*1ゆえんである。

一方で、この《時制の一致》には例外がある。「例外」があるとは、「時制の一致をしない場合」があるということだ。めんどくさい。

この「例外」には、(1) 不変の真理・一般的事実を表す場合(「地球は丸い」とか「冬は寒い」とか「犬は知らない人を見ると吠える」とか「猫は人間を下僕だと思っている」とか)、(2) 歴史上の事実を表す場合(例えば「徳川家康は1603年に江戸幕府を開いた」という過去形の文を目的語のthat節にするときは、主節の動詞が過去形でも過去完了にせず過去形のままでよい)、(3) 仮定法の場合(主節の動詞が過去形でも、仮定法過去を仮定法過去完了にしたりせず、仮定法過去のままでよい)、そして (4) 現在も変わらない内容を表す場合……がある。

この (4) が「はて、何のこっちゃ」となりやすい。「現在も変わらない内容」とは、主節が過去形でもthat節の内容が過去になっていない、ということ。ますます何のことかわからないかもしれないが、例文で見ておこう。

  I didn't know Karen is dating with Mike. 

  (カレンがマイクとつきあってるとは、知らなかった)

現に今も、カレンとマイクはつきあっていることが前提の言い方だが、「さっき聞いたんだけど、カレンってマイクとつきあってるんだってね、わたし、知らなかったよ」みたいな感じ。

ただしこの場合、時制を一致させることもある。なぜなら《時制の一致》は《惰性の一致》だからだ。

  I didn't know Karen was dating with Mike. 

としても、言ってることは基本的に同じなのだ。ただしここで過去形にすると、「その時、カレンとマイクが付き合ってるっていうことを、その時、私は知らなかった」と言っているような感じになる。何年か経ってから振り返っているときの言い方だ。

……ほらね、ややこしい。

 

日本で英語を外国語として習った人は、この《時制の一致》を生真面目に気にすることが多いが、実際にはこの (4) に該当するようなケースは、よほど不自然でなければネイティヴ英語話者から直されることもない。

この違いについて、江川泰一郎は『英文法解説』において「話者の視点の置き方で決まる」と解説している (p. 468)。この解説がこの名著の白眉であるが、詳しくは本を買ってそこでお読みいただきたい。この本はとにかく、英語を身に着けようとする日本語母語話者なら持っておきたい一冊だから、持ってない人は買うべきである。 

英文法解説

英文法解説

 

というわけで今回の実例。エンタメ産業の主要な一角を占める新作映画の製作陣と配給会社が、新型コロナウイルスの世界的感染拡大がしばらく収束しそうにもないと見て、大きな判断をしたという告知だ。

 

*1:これは江川先生一流の言葉遊びで、正確さを期すならば「惰性による一致」と言ったほうがよいだろう。

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挿入, 同格のof,【ボキャビル】for the first time, too, none of ~, according to ~(暖冬のヨーロッパとアイスワイン)

今回の実例は、この冬の気温の高さが、ある小規模な産業に及ぼしている壊滅的な影響について、230語程度の短い記事から。

短いだけでなく記述も平易で内容もわかりやすいので(センター試験の長文問題が読めるくらいの力があれば、この記事も読めるだろう)、突然学校の授業がなくなってしまって英語に接する機会が失われて困っている学生さんに読んでもらいたい記事だ。

今回の記事は特に予備知識なく読めるように書かれているが、念のために少し説明を入れておこう。 このニュース記事のトピックは「アイス・ワイン ice wine」というお酒で、詳細は下記に詳しい説明がある。(未成年は「世界にはこういう飲み物がある」ということを知識として仕入れるにとどめるように。)このワインの生産には、冬季にブドウが凍ることが必要である。

www.enoteca.co.jp

私もこのワインのことを知ったのは、かなり最近だ。どういう味なのかは実際に飲む機会がないので想像するよりない。ブドウが栽培できるくらい夏が温暖な気候で、冬は厳寒となるような場所は、北半球の中でもたぶんあまりない。だから、そういう土地で作られている「アイス・ワイン」は、何もなくても生産量が少なく、希少価値が高い。私が普通に買い物に行くようなお店には置いていない。

その、規模としては小規模な産業を襲ったのが、この冬の気温の高さだった。記事はこちら: 

www.bbc.com

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