Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

「クソリプ」をめぐる英語表現

今回の実例は、Twitterから。

少し前に、ある話題についてのやり取りを見ているときに、日本語のネットスラングでいう「クソリプ」についての応酬を見かけたのでキャプチャをとっておいた。「リプ」は「リプライ reply」(返信)の略で、「クソリプ」は「くだらない返信」のこと。具体的には面識のない人にいきなりなれなれしく絡んで内容のないことを言ったりとか、本筋とは関係のないところに絡んできたりといったもののことを指す。

今回見る英語の実例は、何の話題についてのやり取りだったのかはここでは書かないが、「クソリプ」をめぐる英語表現という点では元の話題は何であってもかまわないだろう。実例はこちら(キャプチャ画像は、英語表現に関係のないところはマスクしてある)。流れとしては、最初の投稿をしたのはAさんで、Bさんはそれにリプライをつけた。AさんはそのBさんのリプライがいわゆる「クソリプ」だということで不快感・怒りを表明している。

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freerice.com で、英単語力をつけながら、WFPにお米を寄付しよう(国連世界食糧計画 WFP ノーベル平和賞受賞)

今回は少々趣向を変えて、ノーベル平和賞を受賞した世界食糧計画の活動について。

国連世界食糧計画 (UN World Food Programme: WFP) ノーベル平和賞受賞のニュースは、日本語圏でも結構大きく報じられている。例えば日本経済新聞

【ロンドン=佐竹実】ノルウェーノーベル賞委員会は9日、2020年のノーベル平和賞国連世界食糧計画(WFP)に授与すると発表した。シリアやイエメンなどの紛争地域を中心とした食料支援や、飢餓撲滅に向けた活動が評価された。紛争解決への取り組みだけでなく、新型コロナウイルスの感染拡大による食料不足への対応も認められた。

WFPは1961年創設の国連組織で、イタリアのローマに本部がある。紛争地に食料を供給したり、途上国の学校で栄養価の高い給食を提供したりするなど、世界88カ国9700万人に対して食料援助や緊急支援を行っている。

レイスアンデルセン委員長は「飢餓と闘い、紛争地域での食料の安全保障に貢献し、飢餓が戦争の武器として利用されることを防ぐ重要な役割を果たした」と授賞理由を述べた。 

www.nikkei.com

ここではシリアやイエメンが挙げられているが、ほかにミャンマーロヒンギャの人々や、アフリカ大陸の南スーダン中央アフリカウガンダなどで起きている、あまり国際的な注目を集めていない紛争で家を追われた人々に食べるものを届けるというとても大事な活動を地道に行っている。

この国連の専門機関が、10年以上前からネットでおもしろい取り組みをしている。それが今回ご紹介するfreerice.comだ。

英語版ウィキペディアによると、freerice.comは2007年10月にスタートした。日本語圏は少々事情が違うかもしれないが、インターネットの中心である英語圏では1999年にはすでに、広告を人に見てもらって、その広告料を食糧支援や環境保護のために寄付するという "click-to-donate" と呼ばれる形の寄付活動が始まっていて、当時のネットのメインコンテンツだった個人サイトにはそのバナーがよく貼られていた(日本語圏でも「クリック寄付」はあったが)。1日に1回、バナーをクリックするとごく小さな金額が広告主からWFPのような支援団体に寄付されるという取り組みだ。ちりも積もれば山となると言う通り、これが世界中でボーダレスに行われることで、かなりの寄付が実現した。

freerice.comがそういったシンプルなバナークリック型の寄付活動と違っていたのは、ウェブで遊べる学習ゲームをプレイして寄付する、というところだった。元々開発者が自分の息子の試験勉強の一助となるよう作ったのだそうで、勉強をすればするほどたくさん寄付できるという仕組みだ。具体的には、英単語クイズで正答すれば10粒(新型コロナウイルスパンデミック下では5粒)のお米を寄付できる、というゲームで、やる気の出ないボキャビルに、勉強とは別の達成感を得られるものをセットしたら、意外とはかどる。

freerice.comはその後も発展し、英単語のボキャビル以外にも地理や美術史、自然科学分野のカテゴリーが増え、サイトのバージョンもアップして、現在に至る。

このサイトについて、私は2016年に少し、連続ツイートという形で説明を書いて、それを「NAVERまとめ」で一覧できるようにしておいたのだが、NAVERまとめはサービス終了してページがネットから消えてしまったし、freerice.comそのものも最近*1バージョンアップしているので、ノーベル平和賞受賞という機会に、また改めて紹介をしておこうと思った。

サイトはこちら: 

freerice.com

PCやタブレットスマホのブラウザでも使えるが、スマホのアプリを入れておくと、ちょっとした空き時間に英単語の勉強をしながら食糧寄付もできて便利だろう。

以下、スマホのアプリのインストールから使い方まで、ざっと説明したい。

*1:英語版ウィキペディアによると2018年。

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目的語が長い場合の語順の入れ替わり(英国で進む[まっとうな、歴史学の用語でいう]歴史修正)【再掲】

このエントリは、2019年10月にアップしたものの再掲である。ここで取りあげたような《特殊構文》は、こういう形の文があるということを知っておいてはじめて、正確に読めるものだ。

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今日の実例は、英国の「歴史の見直し(歴史修正)」に関するBBCの報道記事から。

「歴史修正」というと、主に「過去の惨劇を否定する」、「過去を美化する」という方向性の「修正」について用いられることが多いが(「ホロコーストはなかった」日本でいえば「南京虐殺はなかった」とか「従軍慰安婦などいなかった」といったもの)、こちらは欧州での第一次世界大戦第二次世界大戦をめぐるドイツ擁護(&「アングロサクソン」への批判)に端を発する後発的な用語で、本来歴史学で「歴史修正」というと、新たな資料が見つかるなどして、それまでいわば「定説」となっていた歴史観が修正されることを言う。中世について「暗黒の時代」と称されていたのが修正されたり、アフリカについて「未開の地」と見なされていたのが、実はそうではなかったと認められたりすることだ。

また、より広義に、かつてはいけないこととされていたが、今の観点で公平に考えればそうではない、ということを公的に認めるような動きもこちらに含まれる。例えば、アイルランドにおいて、かつて「英国は侵略者であり、絶対的な敵」との価値観によって第一次大戦・第二次大戦で英軍に加わって戦ったアイルランド人はいわば「国に対する裏切者」と見なされ、戦死者は顧みられることもないという時期があったが、近年はそれが修正され、追悼施設で大統領や首相臨席の上で式典が行われるなどしているのも「歴史修正」の結果といえる。ちなみに、アイルランドは基本的にカトリック国家で、宗派上の少数者であるプロテスタントを含めて圧倒的にキリスト教の国だが、戦没者追悼施設は無宗教・非宗教のかたちで作られている(これは、「英国軍」に加わってともに戦った兵士たちの中にはユダヤ教徒ヒンズー教徒、イスラム教徒など、キリスト教以外の宗教を持つ者たちも多くいたことを考えれば当然のことだが)。

さて、そのような「歴史修正」が、英国でも少しずつ行われている。例えばかつての奴隷貿易について、自国の関与の非を認めるという動きが、21世紀に入って見られるようになっている。下記は "slavery britain apology" という検索ワードでのウェブ検索結果の画面のキャプチャだが、2001年にはEUがベルギー主導で奴隷貿易について全面的な謝罪を行おうとしていたのを、英国を中心とした4か国(英、オランダ、スペイン、ポルトガル)が阻止したということが報じられていて、その6年後の2007年にはトニー・ブレア首相(当時)が、それまでの「遺憾の意 regret」の表明を一歩進めて「sorry」と発言した(が、「謝罪する apologise」まではいかなかった)ということが報じられている。その後も英国では、以前は頑として謝罪などしようとしなかったことについて、正式な謝罪には至らないが、遺憾の意以上のものを首相(政治指導者)が示す、ということが続いている*1

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日本においては今なお20年前の「英国は自分の非を認めようとしていない」という事実認識(それは20年前は正しかった)が修正されずに流通していることがあるが*2、そういった古い認識は早急に修正されるべきである。

最近では、100年前、植民地として英国が支配していたインドでの英軍指揮下の現地軍による虐殺について、イングランド国教会カンタベリー大主教が地面に身を投げうって「キリストの名において」謝罪を行った。政府とは別個の謝罪ではあるが、当時の英軍をまとめ上げていた宗教団体の現在のトップ*3がこのように非を認め、このように謝罪したことは、20年前は考えられなかったことが起きたと言ってよいだろう。

アムリットサルの虐殺に関しては、大主教の謝罪の前、5月には当時のテリーザ・メイ首相が現地を訪れて「遺憾の意」を表明し、虐殺事件について「恥ずべき傷」と述べているが、謝罪には至らなかった。

こういったことについて、「英国は国家として正式に謝罪すべきだ」という批判もあるし、私も個人的にはそのように批判したい側なのだが、まず、英国政府を代表する立場の人(首相であれ現地の総領事であれ)が公式に非を認めるところが出発点だ。そして、「非を認める」前段階として、「起きたことを事実として認める」という過程があるわけで、この点、都民としては、関東大震災での朝鮮人虐殺をめぐる現在の東京都小池百合子知事の嘆かわしい態度と比較対照せずにはいられない。

 

閑話休題

このような動きが見られるなか、2019年10月に入ったところでまたひとつ、「英国が過去の蛮行について非を認め、遺憾の意を示す」ということが起きた。それも、その「蛮行」の主は、偉人と見なされてきた人物で、英連邦に属するオセアニアの元植民地国家であるオーストラリアやニュージーランドにとっては「建国の父のひとり」的な立場の人物である。

記事はこちら: 

www.bbc.com

「キャプテン・クック」ことジェイムズ・クックは、18世紀の英国の海洋冒険家で、特に南半球・太平洋の航海と海図の作成で大きな業績を残した人物である。彼の船「エンデヴァー号(エンデバー号)」が、ニュージーランド北島現在Poverty Bayと名付けられている湾に到着したのが1769年、今年は250周年にあたる。その際、クックと乗組員によって、現地の人々(マオリ)に対する銃撃が行われ、族長ら9人が殺害された。その事実をめぐって、英国の代表者(高等弁務官)が式典という場で公式に「遺憾の意」を表明した、ということを報じる記事である。

ただしこの「遺憾の意」の表明は、はねのけられているわけではないが、もろ手を挙げて歓迎されているというムードではない。

*1:1972年1月30日、アイルランド北アイルランドのデリーでの非武装民間人虐殺、いわゆる「ブラディ・サンデー」事件のように、全面的に非を認めて公式に謝罪する、という結果に至った例もある。その場合、国家による賠償が行われることとなるが、ブラディ・サンデー事件については現在賠償が行われつつある

*2:そのころに出版された本の記述が当時のウェブサイトなどで引用されたものが、その後もずっとコピペとして出回っていたりするし、もちろん古書として、あるいは版を重ねたり文庫化されたりして流通し続け読み継がれていたりもするので、一概に非難できないのだが。

*3:イングランド国教会の本当のトップは英国王なのだが、ここでは簡略化して述べることにする。

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女性について "hero" と言う場合(メアリ・ウルストンクラフトを讃える)【再掲】

このエントリは、2019年10月にアップしたものの再掲である。actressの代わりにactorという語が用いられる例が多くみられるように、性別をあえて強調するようにして示す必要がないときは、名詞の女性形は使わないことが多いというのが、英語の流れではある(保守的な方針の人たちはそうしないかもしれないが)。

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今回の実例は、英労働党党首ジェレミー・コービンのツイートから。といってもど真ん中の政治の話題ではない。

メアリ・ウルストンクラフトという名にピンとくる人は、日本語圏にはさほど多くないかもしれない。18世紀の英国の社会思想家で、人権についてまとまった著作を残した人物であり、特に現代のフェミニズムの先駆的な思想家として知られる。ちなみに、夫はウィリアム・ゴドウィンで、彼もまた英国の思想史をかじるなどすれば必ず出てくる重要人物である。2人の間の娘には、長じて小説『フランケンシュタイン』を書いたメアリ・シェリーがいる。メアリー・シェリーの夫は詩人のパーシー・シェリーで、この2人のロマンスもまた波乱万丈であるが、そのへんのことはウィキペディア日本語版でもだいたい把握できるので、興味があれば各自お読みいただければと思う。

メアリ・ウルストンクラフトの主著は『女性の権利の擁護 (A Vindication of the Rights of Woman)』である。それについての解説を、ウィキペディアから引用しておこう。

1792年に『女性の権利の擁護』が完成するが、それは部分的には、『エミール 』(1762年)において、少女に対する教育は、少年のそれとは別であり、少女を従属的で従順な者へと馴致する教育が望ましいとしたジャン・ジャック・ルソーに対する反論でもあった。彼女は、『人間の権利』で論じた機会の平等が、無条件で女性に対しても適用されることを主張した。

メアリ・ウルストンクラフトは、ユダヤキリスト教的文化伝統に於ける、独立道徳主体を持たない女性、従順に夫に依存する女性の像に疑問を投げかけた。彼女は、人間における「不可譲の権利」(inalienable rights))が、当然ながら、女性に対しても与えられるべきであることを主張し、男性による、社会的・政治的な女性価値判断における二重規準を断罪した。

 

---メアリ・ウルストンクラフト (wikipedia)

なお、1792年といえば、フランス革命で国王ルイ16世がとらえられ、裁判にかけられていた年である。

その彼女を記念する舞台劇が、ロンドンのリリックシアターで上演され、また彼女の銅像が作られることが決まった。

労働党ジェレミー・コービン党首は、この舞台をドーン・バトラー議員とともに見に行っており、そのことについて次のようにツイートした。

 

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-ing形の判別, 前置詞+動名詞, 分詞構文, it is ~ that ...の強調構文, enable ~ to do ... など(エディ・ヴァン・ヘイレン死去)

今回の実例は、読んでよかったと思う記事から。

10月6日、アメリカのロック・ギタリスト、エディ・ヴァン・ヘイレン(ヘーレン)が65歳で病没した。一時代を築いたミュージシャンだが、実は私、個人的にほとんど聞いたことがないのでよく知らない。音楽リスナーの間で使う用語でいえば「通ってない」のだ。「私、ヴァン・ヘイレンは通ってないから、曲、知らないんだよね」と言うときの「通ってない」。

ビリー・アイリッシュみたいに、21世紀になってから生まれたような人がヴァン・ヘイレンを知らないのは当然のことだが、80年代にすでに「洋楽」とカテゴライズされていたものを聞いていた私がヴァン・ヘイレンをよく知らないというのは、意外に聞こえるかもしれない。でも、ヒットチャート入りするようなメインストリームの音楽っていうのは、ギターを弾く人などは別だったかもしれないが、そういうものだった。ヒット曲は『ベストヒットUSA』のようなテレビの音楽番組や、ラジオのチャートものでしょっちゅうかかってるし、服やバッグを買いに行けば店内BGMで流れてたけど、自分が好きにならなければ*1その曲しか知らずに終わってしまう。チャートものでもマドンナやプリンスはレコードをレンタルしてアルバムを聴いたけど、ヴァン・ヘイレンとかはアルバムはジャケしか知らない。

じゃあ当時私が何を聞いていたかというと、今からは信じられないかもしれないが、そのころは「洋楽」の中に派閥みたいなのがあって、「イギリスの音楽が好きな人はイギリスの音楽しか聞かない」という感じになってて、私も(TVや店内BGMで自然に耳に入ってくるのを除けば)アメリカの音楽は、ラモーンズなどいくつかの例外を除いては、ほとんど聞いていなかった。そのくらいの距離感である。アメリカの音楽といっても昔の(1960年代の)は積極的に聞いていたけど、同時代のはほとんど聞かなかった。そういうのが崩れたのは、90年代初めの「グランジ」と「ミクスチャー」のときだった。崩れた後になっても、80年代西海岸メタルみたいなのはずっと苦手なんだけどね(30秒の試聴がつらいレベルで……完全に個人の嗜好・趣味の問題です)。ヴァン・ヘイレンについては、むしろ、The KinksのYou Really Got Meを激ダサ*2にしてくれてどうもありがとう(怒)という気持ちはずっと抱き続けているし、これからも変わらないと思う。

だから、エディ・ヴァン・ヘイレンが亡くなったと聞いたとき、「一時代を築いた人が、まだ死ぬような年齢じゃないのに」と残念に思いはしたが、それだけだった。自分とは関係ない、遠いどこかの話というか。そのまま関心を持たずに済んでしまっていたかもしれないが、最初に読んだ訃報記事にそれまで知らなかったことがいろいろ書いてあって、それで初めて、「へえ、そういう人だったんだ」というような関心を少し持った。

Born in Amsterdam, Netherlands, Van Halen was the son of Eugenia Van Halen and Jan Van Halen, a clarinettist, saxophonist and pianist. The musical influence rubbed off on Van Halen, who was taught to play piano as a child.

When the family emigrated to Pasadena, California in 1962, they brought a piano on the boat.

"We actually played music on the boat on the way over here, you know? I'm serious! It wasn't like, 'so what do you want to do in life?'. Dad said, 'we've got to make a living'. So if it weren't for music, we wouldn't have survived," Van Halen said in a 2012 interview with Esquire.

www.bbc.com

BBCでこの最初の訃報記事が出た後に、明らかにエディ・ヴァン・ヘイレンの音楽が好きな書き手が書いているオビチュアリーのような記事が(「オビチュアリー」と銘打たれてはいないが)出た。私が「読んでよかった」と思ったのはこの記事である。

www.bbc.com

記事の表題は、記事の中に引用されているジョー・サトリアーニ(ギタリスト)のインタビューでの言葉から引っ張ってきたもの(だから引用符がついている): 

Fellow guitar legend Joe Satriani reflected in 2015: "Eddie put the smile back in rock guitar at a time when it was all getting a bit broody. He also scared the hell out of a million guitarists because he was so damn good."

broodyは「仏頂面の、むっつりした」という意味で、大学受験では別に覚えていなくても困らない単語だが、ほかは難しい単語はない。単語自体は難しくないが意味が取りづらい "the hell out of ~" は、カジュアルな場面でだけ使われる口語表現で(特に口汚くはないが決して上品な言い方ではないから、使いどころがわからない人は使わないように)、意味としては「めちゃくちゃに」ということ。つまりサトリアーニは「むっつり深刻そうな顔でやるのが当たり前になってた時代のロック・ギターに、エディは昔のような笑顔を持ち込んだ。それだけじゃなくて、ほんとめちゃくちゃ上手かったから、ギターやってる奴は心底、なんだこれまじかすげぇという気持ちにさせられた」ということを言っている。そこを表題にしたこのBBC記事から、少し英文法的な側面を見てみよう。

*1:好きになるかならないかの決め手のひとつは、もちろん、音以外の「見た目」だったりして、見た目だけで「これはいいや (no thank youだ) 」となることが多く、西海岸メタルの多くはそういう感じで。

*2:ヴァン・ヘイレンのカバーみたいな「隙間のない音」はね……。

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日本語の文を、そのまま逐語的に英語にしただけで、言いたいことが伝わるとは限らない(定型文というものについて、および各国首脳のメッセージ実例)

さて、いよいよ前々回前回に続いて、「病人へのお見舞いの気持ちを英語で表してみよう」の最終回だ。

こんなことは、すでに何冊も世に出ていて、何なら公共図書館にも必ず置いてあるような英文手紙・メールの文例集を見れば1分もかけずに知ることができるのだが*1、それを、数秒で結果が得られて便利なはずのウェブ翻訳(機械翻訳)で実現しようとすると、「実際には意図が通じない英文」を作ってしまうことになる、というのが現在の現実である。企業・団体などでリソースを割り振る権限を持っている方は、どちらが早道か、つまりどちらのほうが「コスト」が少なくて済むか、よく考えていただきたいと思う。

英文手紙・メールの文例集とは、例えば下記のような本だ。今Amazonで検索すると「ビジネス英語」というくくりでたくさん出てくるが、「ビジネス英語」は「ある程度かしこまった文面」ということである。友人同士のような、日本語でいえば「タメ口」の関係でのやり取りは、だいたいはメッセンジャー(LINE含む)で、もはやメールなんか使ってないのだから、「メールといえばビジネス」となるのは合理的といえば合理的だが、使う側は、「ビジネス」に縛られすぎてしまわないほうがよいだろう。

さて、前回記事の末尾に、「それでは、実際にはどのように表現するか」という実例を1つだけ貼り付けた。

 アイルランドは英語を使う国で(アイルランド語も使うが、使われる範囲・頻度としては英語が圧倒的である)、アイルランドのミホール・マーティン首相は英語を母語とする、日本語圏でいう「ネイティブ」である。その「ネイティブ」が使っているのがこういう文面だ。

ちなみに、Twitterアカウント名になっている "POTUS" は "President Of The United States" の頭文字をつなげた略語で、"FLOTUS" は "First Lady Of The United States" のことである。 

マーティン首相のこの文面は、かなり略式というか、正直ぞんざいな印象すら受けるが、もともとこの人はあまり形式を重視しまくるというタイプではないので、今回もあまり堅苦しくしなかったのだろう(好意的な解釈)。くだけた文体ではあるが、名前で呼びかけていないことで「個人的なメッセージ」ではないことが強調されていると言えるかもしれない。

逆に堅苦しさを出して「個人としての発言ではございません。国の政府を代表する立場としての発言です」ということを強調しているかのようなのが、オランダのルッテ首相のメッセージ。オランダはオランダ語の国であり、英語は外国語である。首相本人がバイリンガルである場合は英語ツイートは本人が書くかもしれないが、担当の専門家(通訳・翻訳官)が書いていると考えておいてもよいだろう。

この2例を見ればわかるが、手紙文で-ing形で書き始めるのは、一人称の主語 (I, we) をある意味で省略した形である。というか、"I am -ing", "We are -ing" の《主語+be動詞》の省略だ。こういうときになぜ進行形を使うのか、説明していると書き終わらなくなるのでそこは今回は割愛する。

  I am[We are] wishing you a speedy recovery. 

  = Wishing you a speedy recovery. 

 

一方、大統領選挙でトランプ大統領が戦う相手であるジョー・バイデン候補(元副大統領): 

非常に丁寧で、なおかつフォーマルな文面で、大統領夫人(ファーストレディ)に対しても個人の名前を使っているあたり、とても気配りがなされているという印象だ。

*1:翻訳者はそういうのを見なくても書けるかもしれないが、日本語圏で学習してきた翻訳者であれば、今何も参照しなくてもお見舞いの文面くらいさくっと書けるという人たちも、最初は文例集を見ていたはずだ。

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日本語の文を、そのまま逐語的に英語にしただけで、言いたいことが伝わるとは限らない(時制について)

というわけで前回の続き。

前回は、日本語から英語にするときに、そのまま文法規則に従って英文和訳すれば通じるものと、それでは通じないもの「決まり文句」があるということについて述べた。また、米国のトランプ大統領新型コロナウイルス感染と入院について、および感染の事実がすぐには公にされず、ホワイトハウス内ではどんどん感染が広がっていたことについての英語でのニュース系ツイートをいくつか列挙しただけで、本題には入れなかった。

本題は、そのトランプ大統領の感染に際して、日本国の首相が世界に開かれたTwitterに英語で投稿した文面についてである。

見ただけで「はぁ?」と、口あんぐりで呆れてしまった。どう見ても、ド素人の英作文だ。「ド素人の英作文」であっても何が悪いかと怒る人もいるかもしれないが、それでは通じない(自分の言いたいことを相手にわかってもらうことができない)。「がんばって書いているのに」と思われるかもしれないが、互いのことをよく知る友達同士でもない場合に「がんぱって書きました」が通用するということはめったにない。ましてや一国の首相である。世界に向けて大公開されている場で「がんばって書いたの、ほめてほめて」みたいなことをやられたら、一億総facepalmである。

(大学受験生の英作文だったら、10点中2~4点くらいはもらえるかもしれないし、採点基準によってはもっともらえるかもしれない。だが、実務の英語としては珍妙すぎて通用しない。)

この珍妙な英文が「珍妙である」と述べると「出羽守」だ「マウント」だなんだと罵詈雑言が寄ってくるのが現在の残念極まりない日本語圏Twitterだが、ダメなものはダメである。これは外交の言葉ではない。もっと言えば、国を代表した「外交」レベルどころか、一般企業でのビジネス上のやり取りの言葉としても到底通用するレベルではない。ホームステイでお世話になった家の人への手紙・メールであっても、おそらく通じない。日本語と英語は文法や単語が違うばかりでなく、いわば「お作法」のようなものも違うのだが、そこが全然わかってなくて、ただ直訳している。これではコミュニケーションは成立しない。 なぜこんな文面が発信されているのか。

大前提として、英語が公用語でもなく実務で英語をちらりとでも使うことのない国の首相が世界に向けて英語で発信する(こともある)アカウントで、英語の担当者(専門家)がいないのはなぜなのか、マジでわけがわからない。故宮澤喜一元首相のように英語を使えた人でも、公的な発言をするときは専門の担当者(通訳者)を使っていた。一国の代表者の公的な発言・外交上の発言というものは、そういうものだったはずだ。いつから「本人が拙い英語で一生懸命頑張ってるんだからけなすな」とかって擁護されるべき性質のものになったのか。来日したミュージシャンがステージで「コンッチハ、トーキョー! キョーワドーモアリガトー、タクサンキテクレテ、ウレッシデス」と片言であいさつするような調子で外交をやってもらっては困る。まともな英文を書くことができる専門の担当者を雇ってくれ、頼むから。

さて、この珍妙な英文には日本語の原文があるらしい。ご本人が問題の英文にぶら下げる形で下記の日本語文を投稿している。

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本日、記事のアップロード時刻が遅れます。→すみません、休載します。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

本日、都合にて、記事のアップロード時刻が遅れます。夜の10時過ぎになると思います。その時間も起きている方はそのころに、寝てしまっている方は明日またチェックしてください。記事のアップロードを断念します。PCのバックアップ作業に手間取っていて、まともに入力できる状態にありません。

ご不便をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

nofrills拝

日本語の文を、そのまま逐語的に英語にしただけで、言いたいことが伝わるとは限らない(序)

今回は「実例を検討する」というより、日本国の首相が世界に開かれたTwitterに英語で投稿した文面について。これについて「意味は通る」と強弁する人たちが少なくないが、普通に英語使える人なら「通じてないよ」としか言いようがないはずである。

本題に入る前に前置き。「話す」のであれ「書く」のであれ、英語を使って自分の言いたいことを表現する場合、2つのパターンがある。

まずひとつは、日本語の文を、英語の文法を参照しながら、淡々と訳せばよい(直訳すればよい)という場合。もっとも単純なのが、例えば「おなか空いた」なら "I'm hungry." だし、「今、忙しいんだ」なら "I'm busy." というように、 "I'm ~" という文の形に合わせて、表したい意味に応じて単語を選んで "~" の部分に入れて、言いたいことをいろいろ表現するパターンで、これが「訳す」ということの基本になる。

そしてもうひとつは、そのように「直訳」していたのでは言いたいことが表せない、という場合。例えば初対面の人と交わす挨拶、「はじめまして」は、直訳すれば "This is the first time." とでもなるだろうが、英語で初対面の人からそんなことを言われても「?」となるだけで、この場合は「はじめまして」という《メッセージ》(自分の言いたいこと)を相手に伝える場合には、英語でそういうときに使う決まり文句である "Nice to meet you." を使う。逆に見れば、"Nice to meet you." という英語のフレーズには、どこにも、日本語の「はじめ」という単語に相当するものはない。ただフレーズ全体として「はじめまして」の意味を表している――というか、日本語での「はじめまして」と同じ機能を、英語の "Nice to meet you." が持っている。

とてもざっくりとした説明になってしまったが、これが基本である。つまり、普通に和文英訳して表せることと、それでは表せない(特別な決まり文句を使う必要がある)ことの2種類があるのだ。翻訳という作業をしている人は、この2種類の翻訳を自在に切り替えながら作業に当たっている。

近年の文法・訳読排除で少々様相が変わってしまったのだが、基本的に、学校で英語を教わっていれば、和文英訳が基本にあるような翻訳は、普通にできるようになっている(はずである)。"I'm hungry." と言える人は、単語の知識を十分に増やしさえすれば、"I'm busy." も "I'm concerned." も "I'm upset." も言える。

だが、"Nice to meet you." のように決まり文句を使わないと話者の言いたいことが意図通りに伝えられないようなものは、実際に英語を使って誰かとコミュニケーションをとるようにならないと使う機会がなく、学校では接する機会がないものが多い。もちろん、「はじめまして」程度のフレーズなら、何十年も前の中学生だって教科書にあった「英語で会話してみよう」みたいなコーナーで習っているが、例えば、家族の誰かを亡くした人に「お悔やみ申し上げます」*1と伝えたい場合の英語での言い方のようなものは、特別に習うか調べるかしなければ書けない/言えないだろう。

そういうときに「英語のフレーズを調べるためには、辞書を引く」という習慣がしみ込んでいる人ならば辞書を参照するだろうが、そういうことができる人は、ネットで使える機械翻訳が普及しきっている現在では、学者や教育者、翻訳者くらいだろう。何しろ、単語の意味を調べるときにまで、辞書ではなくGoogle翻訳を使う人が少なくない世の中だ。

実際のところ、決まり文句に関しては、辞書さえ引けば解決することが少なくない。例文のところに求めているフレーズがあることが多いのだ。例えば「おくやみ」を和英辞典で参照すれば、"Please accept my sincere condolences." という英文と「衷心よりお悔やみ申しあげます」という対訳の日本語文が得られるだろう。そういうものはそれをそのまま(必要に応じてアレンジして)使えばよい。それが「英語ができる(使える)ようになる」というプロセスに必要なことだ。

だから、英語で何かを伝えようとする場合は、どんどん辞書を使ってもらいたいと思うのだが、今では、実際にはGoogle翻訳などのウェブ翻訳を使う人が多いだろう。そういう手軽なウェブ翻訳でも「私はおなかが空いている」と入力すれば "I'm hungry." と返ってくるし、「はじめまして」と入力すれば "Nice to meet you." が返ってくるのだから、「翻訳サイトは、和文英訳的な《翻訳》も、決まり文句の《翻訳》もお手の物なのだ」と人々が思い込んでいても無理はない。

無理はないが、残念ながら、それは間違った思い込みである。

 

*1:これが「決まり文句」であるということに気付けるかどうかも一筋縄ではいかない話だが、本稿ではそこまでは踏み込めない。

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時制(大過去の中の完了不定詞)(BBCは誰の何を「人種差別」だと言うのか)【再掲】

このエントリは、2019年10月にアップしたものの再掲である。時制を丁寧に見ていくことは、英語で書かれたものの情報を正確に読み取るためには欠かせないことである。読み飛ばさないようにしなければならない。

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今回の実例は、英国の公共放送、BBCで現在持ち上がっている「騒動」の最新の展開に関するBBC Newsの記事から。

ナガ・マンチェッティ (Naga Munchetty) さんは、1975年生まれのジャーナリスト。ロンドンのアカデミー校*1を出てリーズ大学で英語を専攻し、ロンドンのイヴニング・スタンダード紙の金融・ビジネス欄でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせた。その後、いくつかの金融系映像メディアで実績を重ね、2008年にBBCのTV番組に加わり、現在は複数のBBCの番組でプレゼンターを務めている。その彼女が、2019年9月下旬、英国で「時の人」のような注目を集めた。

この7月、米国のドナルド・トランプ大統領が、自国で選挙されて議席を得た国会議員について「出身地に帰るべき」という発言を行った。この差別暴言の対象とされたのは、非白人の女性議員4人で、全員が民主党の所属だった。彼女たちはその後、この暴言にひるむことなどもちろんなく、冷静に対応し、特にSNSではますます大きな存在感を示すことになったのだが、トランプのこの暴言についてのBBCの番組*2でのナガ・マンチェッティの何ということはない発言が、2か月もしてから「問題」と認定されたのだ。

どういうことかというと: 

Speaking on BBC Breakfast on 17 July after Mr Trump's online remarks, Munchetty said: "Every time I have been told, as a woman of colour, to go back to where I came from, that was embedded in racism.

"Now I'm not accusing anyone of anything here, but you know what certain phrases mean."

https://www.bbc.com/news/entertainment-arts-49825570

つまり7月17日、トランプの「出身地に帰れ」というネットでの発言(ツイート)があったあとで、マンチェッティは「私も有色人種の女性ですから、出身地に帰れということを言われてきたわけですが、そういう発言はレイシズムに組み込まれていますよね。ここで誰かを追及しようということではないのですが、こういうふうに意味を持っている特定のフレーズというのはあるわけですし」(意訳)と述べた。

そのときの映像: 

 

これについて「トランプを人種差別主義者呼ばわりするとはなんということか」という内容の苦情がBBCに寄せられた……ところまでは想定の範囲内なのだが(トランプの「親衛隊」みたいなのは大西洋のどちら側にもいるので)、BBCのExecutive Complaints Unit [ECU] は、その「視聴者からの苦情」に対して、「貴重なご意見を賜りまして誠にありがとうございます」的に対処せず、「トランプ発言を人種差別主義と言うのが差別」的なスタンスに共感を示すかのように、「マンチェッティはBBCガイドラインに違反した (her comments went beyond what the guidelines allow for)」と判断した。

www.bbc.com

これが9月24日か25日のことで、瞬時に「ないわー」という反応が沸き起こった。TwitterではI Stand With Nagaというハッシュタグで人々のその反応が広く共有された。「レイシストレイシストと言うことの何がガイドライン違反なのか」という疑問が最も根幹的なものだが、BBCがこれまでガチもんのレイシスト(「トミー・ロビンソン」という活動家名を名乗るスティーヴン・ヤクスレイ・レノンなど)に発言の場を与え続けてきたことを思えば、「レイシストレイシストだと述べたらガイドライン違反」という判断に対して「ハァ?」という反応が出るのは当然のことだろう(むしろ、「あ、そうっすか……」という反応にならないだけ、まだ希望があるとも言えるのだが)。

 

さらに「問題」とされた発言が、番組プレゼンター2人の会話の中で出てきたものであり、「視聴者の苦情」はマンチェッティだけでなく番組プレゼンター2人に対するものだったことが明らかになると、BBCのExecutive Complaints Unitが「ガイドライン違反」と特定したのがマンチェッティだけで、つまり彼女からこの発言を引き出したもう一人の番組プレゼンター――ダン・ウォーカーというマンチェッティと同年代の白人男性――はおとがめなしとされたことの異様さも見えてきて、もうぐだぐだである。

※ガーディアンのこの記事フィードのリプライを見るといろいろ際立っていると思う。

 

しかも、この「騒動」の発端は、「苦情が殺到したので、BBCとしても対応しないわけにはいかなかった」といったことですらなかった。苦情は1件だけだったのだ。どこぞのトリエンナーレもびっくりである。しかもBBCは当初「ダン・ウォーカーに対する苦情はなかった。苦情はナガ・マンチェッティに対するものだけだった」という嘘までついていたのだ。

BBCは公共放送で、(BBC WorldはDVDや映像配信による収益で運営されているものの、英国内のBBCは)テレビ受像機を持っている人全員に課されるライセンス料(受信料)で運営されている。その放送局が、「有色人種は出身地に帰れ」という発言について「レイシズム」を指摘する発言はけしからん、という苦情1件に応じ、その発言の責任を選択的に1人にのみ負わせて「ガイドライン違反」と判断する、という事態は、何と言うか、最近の日本語圏で流行っているように見える表現を使うと「底が抜けている」ように見える。

 

ともあれ、そんなこんながあって、日付が9月30日から10月1日に変わるころには、BBCがマンチェッティについての「ガイドライン違反」との判断を覆した、という報道が出た。BBCかっこわる~。

www.bbc.com

今回実例として見るのは、この記事である。

*1:日本でいえば「私立校」のようなものだが、英国でいう私立高、いわゆる「パブリック・スクール」とは違う、庶民の学校。詳細はhttps://en.wikipedia.org/wiki/Academy_(English_school)  を参照。

*2:BBC OneのBreakfast. 毎朝の情報番組である。

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【ボキャビル】not our day, credit to ~ (ラグビー、日本に負けたアイルランド代表)【再掲】

このエントリは、2019年9月にアップしたものの再掲である。日常的でこなれた表現の例を知るためには、Twitter英語圏スポーツ関連の公式アカウントをフォローしておくのは、とてもよいと思う。(ファンのアカウントとなると、悪口雑言罵倒の類も多いのだが、公式アカウントならそういう心配もない。)

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今回の実例は、ラグビーアイルランド代表のTwitterアカウントから。

ラグビーのワールドカップ、9月28日(土)に静岡で行われた日本対アイルランドの試合は、格上のアイルランドが当然勝つだろうという見込みをさくっと裏切って、日本が19対12で勝利をおさめた。私はラグビーのルールは全然わからないし、こういうときだけ日本日本とはしゃぐタイプでもないのだが、ラグビーアイルランド代表*1にはそれなりの思いもあるので(私個人の、というより、私がTwitterでフォローしている北アイルランドの人々を見ていての思いであるが)、代表のTwitterアカウント @IrishRugby は見ている。試合そのものは私は見られる環境になく、都内の住宅街を歩いているときに家々から雄たけびやら叫び声やら拍手やらが聞こえてきたので、「ひょっとして日本勝ったんか」と思い、スマホでチェックして試合結果を知った。

さて、今日の実例はその試合後の @IrishRugby のツイートから。

 

*1:政治的な現実とは異なり、またサッカーなどほかのスポーツの代表とも異なり、アイルランドに南も北もなく全島で1つの代表チームを作っている。試合前に歌うアンセムも「国歌」ではなく、ラグビーの代表専用アンセムのIreland's Callだ。

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it's ~ for ... to do --, 感覚動詞+O+原形, 不定冠詞のa, that節の繰り返し, if節のない仮定法, など(英最高裁判決後の保守党)【再掲】

このエントリは、2019年9月にアップしたものの再掲である。分量は少ないが、文法項目てんこ盛りである。

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今回の実例も、前回みたのと同じ、「ボリス・ジョンソンによる英国会の閉会は違法」との最高裁判決を受けて再開された国会で起きたことに関する動きを報じる記事から。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

 

前回は記事の中ほどを参照したが、今回は記事の最後の部分で、保守党の大ベテラン政治家マイケル・ヘーゼルタインの発言を紹介している部分から。

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so ~ that ... 構文, やや長い文, to不定詞の副詞的用法, 疑問詞節(英最高裁判決後の保守党中道派の動き)【再掲】

このエントリは、2019年9月にアップしたものの再掲である。文法とは関係なく内容として、英国の保守党の政治はここで述べたような路線が既定路線になってしまい、それ以前とは完全に変質していると思う。米国の共和党、日本の自民党に起きたことと同じようなことが、英国の保守党にも起きた、というだけの話かもしれないが。

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今回の実例は、英国会で起きたことについての報道から。

起きたことがあまりにひどすぎて信じがたくて心が折れたので、今回は背景解説なし。記事はこちら: 

www.theguardian.com

 

「解説なし」とは書いたけど、見出しにある固有名詞程度は少し説明しておく必要があるだろう。

One-nation (ハイフンを使わない表記も一般的) とは、この場合、英保守党内の中道派(政治全体でいえば中道右派)を指す用語である。英国以外では別の意味を持つことがあるので要注意だ(例えばオーストラリアでは極右政党がOne Nationという党名を使っている)。ウィキペディア英語版によい解説があるが、詳細すぎてわかりづらいかもしれない。ざっくりと「保守党内の穏健派(リベラル派)」くらいに思っておいてよい(「何がどう『穏健』なのか」と突き詰めて考えたい人は、英国政治沼においでください。歓迎しますよ)。

en.wikipedia.org

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省略(英最高裁の「議会閉鎖は違法」との判断に、「街行く市民の声」を集めるマスコミがマイクを向けたのは……)【再掲】

このエントリは、2019年9月にアップしたものの再掲である。ここで見ているような《省略》のことを知らないと、"Just left" という英文を見て「ただの左翼」と思い込み、その解釈をこじつけるために辞書を引いては「ここに左翼と書いてあるじゃないか」とドヤ顔をするような人になってしまう。中学・高校ではあまり習わないかもしれないが、《省略》は重要である。

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※今日は文法解説というより、ゆるゆると読んでいただければいいという内容です。

今回の実例は、英国の最高裁によるまさに歴史的な裁定を受けて個人の身の上に起きた小さな出来事について書かれたTwitterから。

「英国の最高裁による歴史的な裁定」というのは下記の記事を参照。詳しくは、さすがにこの件はこのブログじゃなくて本家のブログ(nofrills.seesaa.net)に書くつもり。

www.bbc.com

 

で、この最高裁での裁定を、ネットでの生中継で見ながら、何人かの法律専門家がTwitterで実況していたのだけど、そのひとりがデイヴィッド・アレン・グリーンさん。先日スコットランドの法廷で英国会閉鎖は法律違反との判断が示されたときに当ブログで参照したフィナンシャル・タイムズ掲載の解説記事の筆者である*1

グリーンさんは、Twitterでの実況が終わったあと、ラジオ局LBCに電話出演してコメントしたりしていたのだが(とても明解でポイントがわかりやすかった)、そのあとで建物の外に出たときに、「市民の声」(vox pop: vox populiの略) を集めているマスコミに遭遇したという。それをおもしろおかしく報告するツイート: 

今回は先に文意から解説しよう。

まず、グリーンさんのこのツイートは「(笑)」を意図したもので、「マスコミガー」と噛みつくようなものではない(日本語圏ではマスコミの取材について述べているというだけでそこを誤読してかかる人がとても多いと思うので、蛇足だけど一応はっきり書いておく)。

*1:グリーンさんは自分でリプライをチェックできないときなど、ときどきTwitterに鍵をかけてしまうので、ツイートが普通に表示されないこともあるかもしれないが、ツイ消ししてしまうわけではないので、表示されていない場合は翌日くらいに見てみるようにしていただければと思う。

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「推定で~人」と言いたいときの表現【ボキャビル】, 感覚動詞 + O + 原形, 使役動詞make + O + 原形(グレタ・トゥーンベリさんのデモでのスピーチ)【再掲】

このエントリは、2019年9月にアップしたものの再掲である。感覚動詞(知覚動詞)、使役動詞は絶対に押さえておくべき基本中の基本。確実に知識を定着させておこう。

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今回の実例は、23日の国連気候行動サミットを前に、全世界のいくつもの都市とほぼ同時にニューヨークで行われたデモに参加したグレタ・トゥーンベリ(トゥンベリ)さんが、演壇で行ったスピーチを報じるSky Newsのツイートより。

この日のデモのことは、日本語圏ではどの程度報じられたのか知らないが、英語圏では非常に大きく伝えられていた(下記キャプチャはどちらも日本時間で9月21日の午前5時前に取得。BBC Newsのアプリ、ガーディアンのアプリを立ち上げた場面)。

f:id:nofrills:20190924112703j:plain

 

 

グレタ・トゥーンベリさんについて、今初めて名前を知ったという方には、下記記事がわかりやすいだろう。

newsphere.jp

 

彼女について、既に当ブログでは何度か記事を参照している。下記リンクからたどっていただきたい。

https://hoarding-examples.hatenablog.jp/search?q=%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%82%BF

 

スウェーデン人の彼女(と支持者ら)はこの8月、温室効果ガスをたっぷり出す飛行機ではなく、ソーラーパネルを備え付けたヨットで大西洋を横断してニューヨークに渡った。到着時の報道は下記エントリ(2件)で参照した。

hoarding-examples.hatenablog.jp

hoarding-examples.hatenablog.jp

 

今回も文法項目としては上記のとカブる部分もあるが、ともあれ、参照先はこちら: 

 

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