Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

定冠詞と不定冠詞, 付帯状況のwithと過去分詞(「欧州スーパーリーグ」)

今回の実例は、報道記事から。

英国時間での日曜日、サッカーの「欧州スーパーリーグ」に12のクラブが参加を確定したというニュースが降ってわいて出て、私の見る画面上の英語圏はその話でもちきりという状態である(日本語圏はガースー訪米でもちきり)。それも、見渡す限り、だれも歓迎していない。

下記のガリー・ネヴィル(元マンチェスター・ユナイテッド)の「情けない」という激怒の発言は、クラブの垣根をこえて広くファンの間で肯定的にシェアされているし、報道記事でも多く引用されている。聞き取りは大変かもしれないが(マンチェスター弁なので母音が違う。大まかに言うと「ア」が「オ」になっている。"Enough is enough." は「イノフ・イズ・イノッフ」というように聞こえるはずだ)、聞いてみてほしい。

今回の「欧州スーパーリーグ」とは、上位層のクラブだけで入れ替わりを許さない形で組んで(政治の世界の「G7」みたいなものだ)、その中で観客も放映権も集めてうはうはやっていこうというもの。いわば「選ばれた人しか入れない会員制のクラブ」みたいなものだが、笑ってしまうのはその「上位層のクラブ」が、現在、(残念ながら)全然上位層でなかったりするところだ(上の映像でガリー・ネヴィルが言っている通り)。これらのクラブの共通点は「上位層である」というよりも「オーナーが外国の資本家」だったりということだ。つまり、欧州のいわゆる「フットボールという文化(フットボール・カルチャー)」と離れてきた「ビジネスとしてのフットボール」の運営者たちが、利益の最大化を画策している、と言ってよい。きっと「ビジネスとしては最適解」云々と擁護する人は、うんざりするほどたくさんいるだろう。

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the moment + S + V, O+S+Vの形の文, 条件を表すif節, 省略(テリー・ジョーンズを偲ぶ盟友たちの言葉)【再掲】

このエントリは、2020年1月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例もTwitterから。

テリー・ジョーンズの死去を受けて、前回ジョン・クリーズ(居丈高キャラ、上官キャラ)のツイートを見たが、今回は同じく「モンティ・パイソン」の一員で軽薄キャラ、おしゃべりキャラとして地味キャラ、まじめキャラのジョーンズと組んだスケッチに印象的なものが多かったエリック・アイドルのツイートを。 

最初にこれを読んだとき、「すばらしい言葉だなあ」と思った。芸能人の不倫でも、公費を受けることをやめることにした王族の「自身のブランド化」でも、小説家の「自分の好きな服装をして、自分の望む通りの人称代名詞を使ってほしいと言って、自分の望む相手と一緒になればいいけれど、性別というものは現実にある」というツイートでも、何かを見れば過剰に「わが事」にして憤激したりするのが当たり前という言語空間ばかり見ている目には、一服の清涼剤のようだ。こんなにはっきりと悲しみを表しながら、なおかつ「でも君たちは笑ってていいんだよ。そうできる立場なんだから」と言える人は、本当に人間性豊かで知性のある人だと思う。

というわけで、英語として見ていこう。

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形式主語itの構文, feelを使ったSVCの文, 【ボキャブラリー】a man of ~ (ジョン・クリーズによるテリー・ジョーンズ追悼の言葉)【再掲】

このエントリは、2020年1月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例はTwitterから。

ジョン・クリーズは、亡くなったテリー・ジョーンズと同じく、英国のコメディ集団「モンティ・パイソン」の一員だった。モンティ・パイソンは6人の集団だったが、ジョーンズに先立つこと約30年、1989年にはグレイアム・チャップマンが48歳の若さで病死しているので、6人中2人を失ったことになる。そのことをクリーズは次のように述べている: 

最後の "Two down, four to go" は、「2人が倒れた。4人はまだこれからだ」という意味。あまり上品な言い方ではないというか、軍隊が敵の小隊をやっつけようとしているときに「2人は片づけた。残りは4人だ」と伝達しているような文体で、これはパイソンズでのクリーズの役回りにのっとった言い方をしているのだろうと思う。

ツイートの最初の方に戻って2文目: 

It feels strange that a man of so many talents and such endless enthusiasm, should have faded so gently away...

《形式主語》のitと、《真主語》のthat節という構造で、なおかつbe動詞ではなくfeelを使った《SVC》の文になっている。文意は、be動詞なら「~である」だが、feelが用いられていると「~な感じがする」ということになる。

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《トピック文》と《サポート文》の構造, 倒置 (映画『ノマドランド』と西部劇)

今回の実例は、映画評の文章から。

現在、日本でも劇場公開(ロードショー)中の映画『ノマドランド』。「ノマド」は定住しない遊牧民を指す言葉で、この映画は家に暮らすということをせず、車に寝泊まりして、収入源を求めてあちらからこちらへと移動して暮らす人々の中に入り込んで、その在り方を描き出すものだ。映画としての評価も極めて高い。先日、ゴールデングローブ賞の作品賞と監督賞もとったし、英アカデミー賞(BAFTA)でも何部門も受賞した。4月の終わりに授賞式が予定される米アカデミー賞(オスカー)でも主要部門でいくつもノミネートされている。監督はクロエ・ジャオ。中国出身で、高校以降は英米で過ごし、現在は米国で活動する女性の映画作家で、長編映画を撮り始めてまだ5年かそこらという、あらゆる点でアメリカのエスタブリッシュメントから離れた人である。原作は、こちらも女性のジャーナリストであるジェシカ・ブルーダーの著作『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』(原題はNomadland: Surviving America in the Twenty-First Century)で、原著は2017年、春秋社からの日本語訳は2018年に出ている。 

ノマド 漂流する高齢労働者たち
 

www.youtube.com

私自身は、不要不急の外出を取りやめていたりするので、まだ見ることができていない。移動を自転車にして、他人との接触を最小限に抑えられる形で見に行くことは可能ではあるのだが、そうやって予定していると雨で自転車が使えなかったりしている。

さて、日本でも「場所と時間に縛られないノマドワーカー」なる概念がここ数年で定着しているし、「ノマド」という言葉には何か特別にポジティヴなイメージがあるかもしれないが、以前からある日本語を使えば「放浪者」「根無し草」だ。「どこの馬の骨とも知れない奴」である/になることだ。

たとえ表現が「根無し草」であっても、「放浪」はメインストリームでは、何かこう「男のロマン」的なものとして受け取られてきたわけで、『ノマドランド』も「男たちの物語」であったならば、たぶん今の私は「わざわざ映画館まで行くのもたるいし、配信レンタル待ちでいいや」と思っていただろう。だが、この映画は、原作も女性ジャーナリストなら監督も女性映画作家、主演もフランシス・マクドーマンドという女性の俳優(それもとびきりかっこいい女性の俳優)だ。だから「ああ、これは見に行かないと」と思っているのだが、先日ガーディアンに掲載されていた映画評を読んで、ますますその感を強めている。

というわけで、今回の実例はこちらの記事から。映画評、つまり文芸評論なので、読むのは結構大変かもしれないが(「西部劇」のイメージを知らないと、読んでもさっぱりわからないだろう)、一般紙に掲載されているレベルだから、評論としてはさほど難しくはない。

www.theguardian.com

まず記事の表題からしてハードルが高めだ。

”myth" という語については、当ブログでは何度か取り上げているが、「ギリシャ神話」とか「建国神話」で使う文字通りの「神話」という意味の他に、「事実ではないが、体系的な物語みたいになっているもの」という意味があり*1、日常で "It's a myth." などと言われるのは後者の意味である。この記事の表題にある "It's an utter myth" は「それは完全な神話である」と直訳できるが、つまりは「完全な作り事で、事実とはまったくかけ離れている(が多くの人が信じている)」という意味である。

"the western" は、大文字を使って the Western と書くことも多いのだが、「西部劇」の意味。ここで「西部劇」という言葉すら通じないという現実もあるのだが(もう10年以上前に高校生から「セイブゲキって何ですか?」と聞かれたことがあるのだが、だいたい私の世代でも「西部劇」は何となくぼやっと知ってる程度だろうし、詳しい人はよほどの好事家だろう)、「1860年代後半・南北戦争後のアメリカ西部を舞台に、開拓者魂を持つ白人を主人公に無法者や先住民と対決するというプロットが、白人がフロンティアを開拓したという開拓者精神と合致し、大きな人気を得て、20世紀前半のアメリカ映画の興隆とともに映画の1つのジャンルとして形成された」という日本語版ウィキペディアの解説を読んでおくだけでも、何となくのイメージはできるだろう。

今回読むこの映画評は、この映画は「西部劇」という「アメリカの神話」の批判的な変奏である、という主旨のものだ。

*1:日本語でも「安全神話」などという形で使われている「神話」はこの意味である。

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《have + O + 過去分詞》の構造を、書いてある通りに読む、ということについて。

今回は、前回の続き。前回は前置詞のintoを勝手にtoに読み替えてしまい、原文にない情報を勝手に付け足してしまった(つまり、英語で書かれていることを書かれている通りに読めていない)誤訳を取り上げたが、今回はより「受験英語」寄りの、ど真ん中の文法項目である。

英語のいわゆる「5文型」のうち、第5文型、すなわち《SVOC》は、自分で英語ができると思い込んでいて翻訳なんかにも手を出してみちゃったりすると、実は全然わかっていない(読めていない)のでとんちんかんな訳文を作成してしまいがちな文型である。ごくごく初歩的な、"I call my cat Omochi." (「私は自分の猫をおもちと呼んでいます」)とか、"This song makes me happy." (「この歌は私をハッピーにする」=「この歌を聞くとハッピーな気分になる」)のようなものがこなせないということはさすがにないだろうが、まずはこの基本を再確認しておくことが必要である。《SVOC》の文型においては、「O=C」が成り立つ。ここで出した2つの文でいうと、"my cat" = "Omochi" であり、"me" = "happy"である。

さて、《have + O + 過去分詞》という構文がある。日本語にするときは、文脈によって、「Oを~させる」「Oを~してもらう」「Oを~される」と3通りの訳し方があるのだが、この構文を英語として英語で考えると「どう訳すか」は関係がなく、この構文でも「O=過去分詞」が成り立つということが重要だ。例えば、"He had his watch repaired." (「時計を修理してもらった」)では "his watch" = "repaired" である。

ここで気をつけねばならぬのが、"He had his watch repaired."  という文では、repairするのは(文の主語の)heではない、ということである。

さらに言えば、repairするのが誰であるかはこの文では度外視されている。この文のポイント(言いたいこと)は「時計がrepairされた」ということで、誰がrepairしたかはポイントではないのだ。

というわけで、ここで今回の実例。

Royal brides married at the Abbey now have their bouquets laid on the tomb the day after the wedding and all of the official wedding photographs have been taken.

The Unknown Warrior - Wikipedia

少し長めの文だが、"the day after" から後は《時》を表す副詞節だから、文の構造を確認する段階では外してしまっておいて構わない。 

朱字で示した部分は、過去分詞のmarriedによる《後置修飾》で、直前の "Royal brides" にかかっている。「(ウエストミンスター)アベイで結婚した王室の花嫁たち」の意味だ。

さて、下線部で示したところが、《have + O + 過去分詞》の構造になっていることは、見ただけでわかるだろう。というか、これが見ただけでわからないレベルならば、翻訳に手を出すには早すぎる。

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"on her way into the abbey" を「アベイへ赴く途中の路上で」と解釈してしまう程度の英語力で、翻訳などしないでほしい。たとえウィキペディアであろうとも。

今回は、少し変則的に、英語で書かれていることを書いてある通りに読み取ること、余計なものを付け足して解釈しないことについて。「たかが前置詞、されど前置詞」という話でもある。

前々回の当ブログ記事で、英国のエリザベス女王の配偶者(王配)であるエディンバラ公の死去について扱った際、エリザベス女王のお母さん(エリザベス王太后)について、日本語版のウィキペディアをリンクした。そのときに開いてあったタブを(ようやく)閉じようとしたときに、ついでに生没年など基本情報以外のところも読んでみるかと、ごはん食べながら読んでいたときに、とても奇妙な記述に気づいた。下記、ウィキペディア独特の脚注の数字の部分を除去して、私の見た版(その時点での最新版)から引用する。

アルバートとエリザベスは1923年4月26日にウェストミンスター寺院で結婚式を挙げた。ウェストミンスター寺院へ赴く途中でエリザベスは、第一次大戦で戦没した兄ファーガスを偲んで、路上にあった第一次世界大戦戦没者を悼む無名戦士の墓 (en:the Unknown Warrior) に、手に持っていたブーケを突然捧げた。これ以来、王族の結婚式では、結婚式後に花嫁がブーケを無名戦士の墓に捧げることが伝統となっている。

エリザベス・ボーズ=ライアン - Wikipedia

「ブーケを突然捧げた」という日本語が相当不自然だったりすることに意識が向いてしまうかもしれないが、ここで見るのはその点ではない。「ウェストミンスター寺院へ赴く途中で……路上にあった第一次世界大戦戦没者を悼む無名戦士の墓に」の部分である。

英国について少し詳しい方や、何となくであってもウエストミンスター修道院ウィキペディアでは「寺院」の表記を採用しているが、Abbeyなので文字通りには「修道院」である*1)についてご存じの方、また、前回ウエストミンスター修道院で行われた王族の結婚式(ウィリアム王子とケイトさん)をじっくり見ていた方ならお気づきかもしれないが、「第一次世界大戦戦没者を悼む無名戦士の墓」は「路上」になどない。

ウエストミンスター修道院の建物の中にある。

そんなことは、上に引用した日本語版ウィキペディアにご丁寧に記載されている "en:the Unknown Warrior", つまり「無名戦士の墓」についての英語版ウィキペディアの項を見れば、わかることである。

He was buried in Westminster Abbey, London on 11 November 1920

The Unknown Warrior - Wikipedia

太字で示した前置詞の "in" は「~の中に」だ。「1920年11月11日、彼(無名戦士)はウエストミンスター修道院中に埋葬された」のである。

*1:この表記論争は泥沼なのでうっかり踏み込まないほうがよい。ちなみにWestminster Abbeyはイングランド国教会の施設だが、同じ通りを少し西に行ったところにあるWestminster Cathedralはカトリック教会の施設で、これが日本語では「ウエストミンスター大聖堂」と呼ばれている。

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仮定法過去完了 (ドイツ、極右テロ集団の裁判/欧州の諸言語について)

今回の実例は、報道記事から。

ドイツで、極右テロ集団の裁判が始まったとBBC Newsが伝えている。2019年秋にテロ計画が発覚し、2020年2月に集団のメンバーが逮捕され、今回その裁判が開始された、という報道である。ドイツで起きていることを英語で伝える記述だが、そこに「もしもこの集団のテロ計画が実行されていたら」という《仮定法過去完了》のお手本のような一節がある。今回の実例はそれ。

記事はこちら: 

www.bbc.com

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名詞節のwhether節, 倒置 (エディンバラ公死去で追悼番組一色になったBBC)

今回の実例は、報道記事から。

英国のエリザベス女王の夫であるエディンバラ公(フィリップ殿下)が亡くなったことが公表されてすぐの4月9日から10日にかけて*1、英国では物理的に「どこを見てもエディンバラ公」という状態になり、王室廃止論者までもが人が亡くなったことには追悼の意を表している中でも、さすがにうんざりという空気が私の見ている画面内には横溢していた。下記など、ディストピアものの映画から切り出したかのようである。

サッカーの国際試合の実況中継まで、途中で停止された。「見たい人はTVではなくWebで見てください」っていうふうになっていたそうだ。ただし女子サッカーだ。男子サッカーだったら、国王(女王)の配偶者の死去で、試合実況中継をやめるかどうか……。

前回、英王室で主要な一員が亡くなったのは、2002年。エリザベス女王のお母さんであるエリザベス王太后が101歳で亡くなったのだが、あの時はどうだったのだろうか。第二次大戦を国民と一緒に乗り越えた王妃(当時)として非常に親しまれていた方だったが(人間であり、しかもあのようなお立場の方だから暗い面もあったにせよ)、2002年と2021年とではメディア環境が違いすぎるので比較にもならないかもしれない。2002年は少なくとも、「見たくなければ見なければいい」ということは今より容易だったはずだ(見たいものが放映中止になっているという問題はあっただろうけれども)。インターネットはブロードバンドが導入されつつあったけれども、そんなに常時「つながって」なかったから。

今回、特に公共放送BBCのテレビが、複数あるチャンネルのすべてで通常番組を停止してエディンバラ公追悼番組を流し始めたことは、「怨嗟の声」と言ってもよいようなものを引き起こしていた。当然である。人々はBBCに高いライセンス・フィー(BBCの受信のために義務化されている費用。日本でいう「NHKの受信料」に相当するが、取り立てはより厳しい)を払っている。BBC Oneが追悼番組一色になるだけならだれもが納得するだろうが、BBC Two以下全チャンネルというのは明らかに過剰だ。しかもラジオまでというのだから徹底している。

日本では、うちらのようなある程度の年齢の人は、昭和天皇が亡くなったときのメディアの「自粛」騒ぎ(「自粛」の強要という文化は、新型コロナウイルス禍のずっと前から、この国の一部である)を思い出すだろうが*2、この「BBCエディンバラ公逝去の話しかやってない」という状態は、「どこの独裁国家だよ」「北朝鮮か」という反応を引き起こした。

BBCには当然苦情が殺到し、いろいろさばききれなくなったのか、「この件でご意見がおありの方はこちらのフォームにメールアドレスをお入れください。後ほどBBCの公式見解をお伝えします」というページが作られた(その後、このページは消えたようだが)。

今回の実例は、そのことを英国の外から伝える、フランスの通信社(使用言語は英語)AFPの記事から。記事はこちら。

 

*1:この日のログ: https://twilog.org/nofrills/date-210409/asc and https://twilog.org/nofrills/date-210410/asc 

*2:といっても私自身は当時あまりテレビを見ていなかったしラジオもあまり聞いていなかったので、具体的なことは体験していないせいかあまり記憶になくて、ただ、昭和天皇の体調が悪化していくなか、日々「下血」のことが「今日の株式市況」みたいな調子で伝えられ、井上陽水が車の窓から「お元気ですか」と言うだけの車のCMが「不謹慎」と叩かれて放送中止になったことだけ、やけに鮮明に覚えている。レンタルビデオ屋は混んでて、どれもこれもみな貸し出し中になってた。

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感情の原因・理由を表すto不定詞(副詞的用法), 同格のthat, 主語とbe動詞の省略, 使役動詞(テリー・ジョーンズ死去)【再掲】

このエントリは、2020年1月にアップしたものの再掲である。

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今日の実例はTwitterから。

歴史家で映画監督でコメディアン(「モンティ・パイソン」の一員)のテリー・ジョーンズが亡くなった。2016年秋に希少疾患である「前頭側頭型認知症 (Frontotemporal dementia、FTD)」由来の「原発性進行性失語 (primary progressive aphasia、PPA)」にかかっていることを公表し、以後は芸能生活からは引退して、ゆっくりと言葉(自分以外の誰かとの意思疎通の手段であり、自分の考えを表す術)が失われていくこの病気についての啓発活動となるようなことを少し行なっていた。栄誉ある賞を受賞し、トロフィーを受け取っても、何も言葉が出てこないという自身の姿を、臆することなく人目にさらしていた。下記の映像はジョーンズの芸能生活の節目となった5つのポイントを回顧するという主旨で編集されているが、最後の5つ目がその「言葉の失われた状態」の映像だ(再生ボタンを押すとすぐにそこから再生されるように設定してある)。「言葉の人」だったジョーンズのこの姿を見るのは悲痛なことである。何よりも本人が一番、つらいだろう。歩いたり笑ったり、動作でボケをかましたりすることはできて、「言葉」だけ失われていく病気なのだ。

 

訃報が流れてすぐにTwitterは追悼のコメントであふれかえった。それらのコメントの主には、一般のファンの人たちも、ジョーンズを敬愛する下の世代のコメディアンたちも、映画を作る人たちも、ジャーナリスト、メディア業界人もいたし、ジョーンズと同じ種類の病—―認知症——に関する活動をしているチャリティ団体のアカウントなどもあった。ジョーンズの病気のことは広く知られており、この訃報に、発言者の誰もが純粋な悲しみと故人への敬意を表現していた。

今回実例として参照するのは、そういったコメントの中にあった、非常にフォーマルな形で弔意を示す文面となっているものを2つほど。

まずはアルツハイマー・ソサイアティ: 

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関係代名詞とbe動詞の省略、進行形の受動態、現在完了進行形, やや長い文(ハリー王子夫妻とタブロイド、本当は何が起きているのか)【再掲】

このエントリは、2020年1月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は、ガーディアン/オブザーヴァー掲載の論説記事から。

今回の記事を書いたのはアラン・ラスブリジャー。現在は、オックスフォード大学でマララ・ユスフザイさんが在籍する学寮(コレッジ)の学寮長をつとめ、ロイターのジャーナリズム研究所のチェアでもあるが、1995年から2015年5月までの20年にわたってガーディアンの編集長だったジャーナリストだ。彼の指揮下でガーディアンは紙媒体からネット媒体への切り替えとグローバル・ブランド化に成功し、ウィキリークス報道(2010年から、ウィキリークスがアレな方向に行くまで)やエドワード・スノーデンによる暴露の報道(2013年から)を手掛けた。また、ガーディアンは労働党との関係が深い新聞だが、労働党のブレア政権が推し進めたイラク戦争に際して、開戦前にブレア政権のプロパガンダと同時に、「国際法に照らして違法である」という論説を多く掲載するなどしていたし、開戦後は英軍によるイラクでの人権侵害(拷問、拷問致死など)についても報じてきた。英国内におけるロシアによる暗殺事件など政治的に微妙な案件でも、記者の調査報道を止めたりはしなかった。つまりいろいろとパネェことをやってきた「恐れ知らず」のジャーナリストだ。

そのラスブリジャー前編集長の大きな業績のひとつが、今は廃刊したタブロイド紙、News of the World紙(The Sunの日曜版)による違法・不法な電話盗聴についての調査報道だった。今から約10年ほど前のことである(→詳細)。このルパート・マードック傘下のタブロイドの盗聴のターゲットとなり、プライバシーを侵害されていたのは王族や著名人(芸能人、スポーツ選手など)、そして全国的に関心を集めた刑事事件被害者といった人々。そしてこの盗聴疑惑は、2011年から12年にかけてより広範に「マスコミの取材活動一般」について行われたレヴェソン・インクワイアリーへとつながっていくが、このインクワイアリ―の結果は「骨抜き」と言うよりないようなもので(マスコミ業界の自主規制のための業界団体ができたのだが、深刻なプライバシー侵害を律するようなものではない)、このときに指摘されたような問題はおさまっていない。2020年早々世界を騒然とさせたハリー&メガン(メーガン)の「離脱」問題の根は、(王室内での「いじめ」とかではなく)こういうところにある。

……とざっくり書いてきたが、細かいことを書こうとしたらきりがないのでざっくりしすぎな点はご寛恕いただきたい。そもそもハリー王子のお母さん(ダイアナ妃)はイギリスのマスコミの過剰な報道の被害者だったし、お兄さん(ウィリアム王子)もそうだ(ウィリアム王子の妻であるケイトさんは悪質な盗撮被害にあっている)。パパラッチがダイアナさんを追いかけ回していた時代より今はさらに「セレブ・カルチャー」が進んでいて、ああいった「セレブねた」の消費者の要求も高まっているのだろう。私は個人的に英王室に興味があるわけではないので普段は観測範囲にも入ってこないのだが、ハリー王子がこういうことになってみるとあれこれ目に入る機会が増え、そうして接することになったどこかの誰かの発言やメディアの記事の見出しに唖然とすることも増えた。

そういった「騒ぎ」の背景にあるのが何なのかについて、人々は「報道されていること」に基づいて、ああだこうだと自分の意見を言っているが、その「報道されていること」は、起きていることのすべてではない。タブロイド紙は自身に都合の悪いことは報道していない。それを指摘しているのが今回のラスブリジャー氏の記事である。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

この記事の性質については、下記のようにいろいろな人々がまとめている通りである。英国のタブロイドが自分たちに都合の悪いことを伏せて書き立てていることを断片的につなぎ合わせたような日本の女性週刊誌やTVワイドショーの「(自称)報道」だけを見て「ハリーが悪い」みたいなことを知った顔をして述べる前に、知っておくべきことがあるわけだが、それを知るために読むべき記事があるとしたら、この記事だ。読みながら「これ、暴露しちゃって大丈夫なのかな」と思わなくもないが、大丈夫なのだろう。

 

 

 

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one of the + 複数形, 最上級を用いた表現 (北アイルランドがひどいことになっている)

今回の実例は、何にするか、今これを書き始めているときにはまだ見えていない。本エントリは、「たまたま文法事項が入っているのを見かけた記事を実例として取り上げる」のではなく、本来は本家ブログで書くべきところを、本家に合うトーンで仕上げようとするときっと書かずに終わってしまうから強引に「英語の実例」を素材として書くということを試みるものである。全体の設計図は頭の中にあり、どこに着地するかもだいたい描けているのだが、具体的に言葉にするのに時間がかかっている。何より、事態が進展中だから、書くよりも事態を追う方に意識が向いているのだ。ともあれ。

北アイルランドの事態が急速に悪化してきている。「思春期の若者たちのいつもの大暴れ」――recreational riot(ing)と呼ばれているようなもの――ならここまでエスカレートする前に誰か「影響力のある人物」(これは北アイルランド独特のユーフェミズムで、柔らかく言えば「地域社会の顔役」のことだが、それがどういう人物かは、武力紛争当事者たる武装組織を社会のファブリックの一部として織り込んでいる社会のことゆえ、だいたい察しがつくだろう*1)が、ニュース記事にならないようなところで「はい、もうそこまで」という指令みたいなのを出すのだが、今回はそういうこともなく、所謂「プロテスタント」と所謂「カトリック」の両サイドの若者たちが、直接ものを投げ合うところまでエスカレートした。

以下、「プロテスタント」「カトリック」「ロイヤリスト」「リパブリカン」「ユニオニスト」「ナショナリスト」などの用語については、下記をご参照いただきたい。

nofrills-nifaq.seesaa.net

nofrills-nifaq.seesaa.net

nofrills-nifaq.seesaa.net

nofrills-nifaq.seesaa.net

nofrills-nifaq.seesaa.net

北アイルランドでは、両派を分ける分断 (divide) のそれぞれの側で、若者たちが(多くの場合、「ディシデント dissidents」と位置付けられる大人たちの庇護のもとで)暴れることはよくあるが(だから、 "loyalist riot" 「ロイヤリストの暴動」、 "republican riot" 「リパブリカンの暴動」という言い方は、現地報道でもよく出てくる)、両コミュニティの境界線を越えて暴動が連鎖することは、ここ数年――というかBrexitの投票の前年から――はなかったはずだし、ましてや両コミュニティが境界線を挟んで直接にらみ合い、ものを投げ合うということなどなかった。事態がそこまでエスカレートしたのは、ひとえに、リーダーシップがないからだ。

今回、Twitterハッシュタグ#NorthernIrelandRiots (= Northern Ireland Riots) というのが出てきているのを見て、私は「なんというブリテン*2目線」と目を白黒させてしまったのだが、事態が激化してブリテンの政治家たちも懸念の表明などを行うようになると、ニュースが北アイルランドだけにとどまらなくなり、そういったニュースでは「北アイルランドのどこで暴動が起きているのか」よりも「北アイルランドで暴動が起きていること」をメインとして伝えるから、このようなナラティヴの表層雪崩的な横滑りみたいなのはどうしても発生する。個人的には、もう何年も前から使っている北アイルランドのジャーナリストや報道機関のアカウントのリストで情勢を追っている。

*1:これがアジアでのことならば、あれらの人々は必ずwarlordと呼ばれていたはずである。

*2:ブリテン」は北アイルランドでは「メインランド」とも呼ばれる。正確に言えば北アイルランドユニオニスト側、つまりデフォルトの側では。ナショナリストの側ではこれを「イングランド」と呼ぶこともあり、実際にスコットランドウェールズを除外してイングランドのことを言っていることもあるのだが、ブリテンの側が今はそんなふうにかっきりきれいに分かれていないので、非常にややこしい。

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前置詞のbut, 接続詞のbut, 形式目的語, 引用符の使い方(ハリー王子のスピーチ)【再掲】

このエントリは、2020年1月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は報道記事の見出しから。

これまた前回の《前置詞+whom》と同じく、少し前の日本で流行っていてまだまだ支配的といえる力があるらしい「英文法不要論」の立場からは「教えなくてもいい英語」と扱われていたものだが、実際には、普通にがんがん使われている。

記事はこちら: 

www.bbc.com

トピックは、最近日本でも大注目の*1ハリー王子(サセックス公)の「引退」。ハリー王子は、日曜日(19日)に「引退」表明後初めて公の場でスピーチをおこない、その内容が報道されている。

*1:都内のコンビニの雑誌コーナーで見かけた女性週刊誌の表紙に、非常に毒々しいメガン(メーガン)disの言説のカケラを見て、思わず目を逸らしたんだけど。

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of whom(前置詞+関係代名詞の目的格)(今回のセンター試験)【再掲】

このエントリは、2020年1月にアップしたものの再掲である。

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今回は変則的に、センター試験で取り上げられていた文法項目から。

センター試験の英語は、第2問が文法・語法問題である。第2問Aが単純な空所補充で、第2問Bが整序英作文(並べ替え)だ。Aの方は特に解説すべきこともないような、つまり解答する立場だと、知らなければどうしようもないような問題が多いので見た瞬間わからなかったら捨てるようにした方がよいものが多いのだが、Bの方は習った文法の知識を使って考えれば解ける場合がほとんどなので、ぱっと見てわからないと思っても、早々と諦めてしまわずに少し考えて、積極的に点数を取りに行きたい設問である。

今年のセンター試験(2020年実施)では、この整序英作文が3問あって、どれも平易だった。1問目は絵にかいたように美しい仮定法過去完了で、仮定法をかなり多く取り上げている当ブログを読んでくれていた受験生がもしいたら、内心、ガッツポーズだっただろう。

そして2問目。《前置詞+関係代名詞の目的格》で、選択肢にwhomがあった。Twitterでこのwhomについて「もう使わないという風説が流布されている」との指摘があり、その後、私の観測範囲で多少ざわついたのだが、私の知っていることでいえば、かつての「受験地獄」時代への批判がなされた時期(いわゆる「ゆとり教育」の時期)に、「詰め込み・暗記への批判」から、「whomなんてのはもう使わないのだから、教えるのをやめたほうがいい(知らなくても構わないような単語を生徒に暗記させるのはやめるべきだ)」という言説が出てきていた。だがそのような言説のいう「もう使わないwhom」は、文の中の目的語のwhomで、前置詞の目的語となっているwhomはそれとは別だ。

 

「文の中の目的語のwhom」とは次のようなものである。

  John is the man whom I met at the business conference in Paris. 

こういうwhomはもうめったに使われない。それ以前に目的格の関係代名詞なので省略されることが多いのだが、もし関係代名詞を書いておくならばここはwhoにすることがほとんどだろう(thatを使うこともあるかもしれない)。

  John is the man (who) I met at the business conference in Paris. 

 

これとは別に、「前置詞の目的語となるwhom」がある。これはwhoで代替することはない。

  John and Steve, both of whom are from Boston, have been teaching English in Japan for more than three years.

 

今回のセンター試験で出題されたのは、こういうwhomである。

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前置詞+関係代名詞, 分詞構文か、分詞の後置修飾か (スエズ運河、あのショベルカーで土砂の除去作業をした1人の運転手)

今回の実例は、報道記事から。いやあ、あの作業を最初ずっと1人でやっていたとは、この報道を見るまで、知らなかった。というか、複数台の作業車があるのが、たまたま写真では1台しか写っていないのだと思っていた……。

というわけでいきなり本題。「あの作業って、どの作業ですか」と思われただろうが、写真を見ていただくのが一番早い。これですよ、これ。

スエズ運河を再び通れるようにするために貢献したショベルカーの運転手にインタビューしました」というこの記事のフィードは、The Nationalという英語メディアのフィードである。

The Nationalという媒体は世界でいくつかあるのだが、そのひとつがUAE(アラブ首長国連邦)の英語メディアで、本拠はアブダビにあり、中の人たちは英国や米国の大手メディアで仕事をしてきたジャーナリストたちが多い。編集長はミナ・アル=オライビさんという女性のジャーナリストで、イラク系英国人である*1

Twitter cardの部分に示されているように、あのショベルカーを運転していたのはAbdallah Abdelgawadさん(「アブダラー・アブデルガワド」さんとお読みするのだと思う)。彼はスエズ運河の保守管理をする会社で契約社員(あるいは日雇いの作業員かもしれない)として働いていて、月収は3000エジプト・ポンド、米ドルに換算して190ドルだそうだが、日本円に換算すると21,000円くらいだ。エジプトの水準でも決して高給取りというわけではないだろう。コンテナ船エヴァー・ギヴン号が座礁した日の朝、彼がいつものように出勤すると、「船が座礁しちゃったから今日は現場には入れない」と言われて、いったんは会社の寮に戻ったのだそうだ。その後、彼個人に電話があって、他の部分の作業と並行して、船首の周囲の土砂をショベルカーで除去する作業をやるように依頼されたのだという。たぶん、ショベルカー運転の技術が高い人なのだろう。

で、そういう場合、作業チームを作って複数でローテーションを組むものだと思うが、当初なんとその仕事を割り振られたのは彼一人*2。その後、アブデルガワドさんはごく短い睡眠時間しかとらずに、あの巨大な船がいつグラっと傾いたりしてつぶされてもおかしくないという過酷な環境の中で、あの大変な作業を乗り切った。

記事はとても読みやすく、英語も難しくないので、ぜひ全文を読んでいただきたいと思う。TV番組になりそうな話だ。

*1:イラクサダム・フセイン政権時代に国外に亡命した人々の子供で、亡命先で教育を受けて大人になった人々には、ジャーナリストや学者になっている人がけっこういるが、アル=オライビさんもその世代の方ではないかと思う。

*2:というか現場はその日その日を契約して仕事を請け負っている労働者ばかりで、もはや「作業チーム」など組める体制ではないのかもしれない。エジプトだって日本やそのほかの国と同じように、現場が「ギグ・エコノミー」化しているのかもしれない。

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時制(過去と過去完了), 関係代名詞 (スエズ運河コンテナ船座礁と、ある女性に対するフェイクニュース)

今回の実例は、報道記事から。

3月23日、エジプトのスエズ運河を航行中の巨大な(東京ドーム2個分の長さがある)コンテナ船が運河を斜めにふさぐようにして座礁し、スエズ運河の機能が停止してしまうということが起きた。座礁した船は、ネット上でミーム化しつつ、エイプリルフールのジョークのネタとして仕込まれつつ、約1週間後にようやく離礁に成功して、スエズ運河は機能を回復したが、この座礁が引き起こした洋上の大渋滞が解消するにはさらに数日かかり、立ち往生させられていた船が運河を通過したのは、座礁発生から約10日後のことだった。座礁発生後に運河の入り口のあたりに到着した船も行列に並んでいるので、平常の状態に戻るにはまだ数日かかるのだという。これで生じた損失は、日本円にして1100億円を超えるとも。

www3.nhk.or.jp

というわけで、年度末の10日間ほどをこのニュースに釘付けになっていた方も少なくないと思われるが(おつかれさまです)、事態が落ち着いたころにBBC Newsが伝えた下記のニュースは、何とも頭の痛くなるような内容で、それでいて当事者はとても前向きで力強く、なおかつ英語としてとても読みやすく、長文多読素材として好適である。ぜひ全文を読んでみていただきたい。

www.bbc.com

記事見出しの《コロン (:)》は、発言者と発言内容を区切る用法で使われており、 "Marwa Elselehdar" は人名である。このマルワ・エルセレーダーさん(とお読みするのだと思う)はエジプトで女性として初めて船長の資格を取った方で、それゆえに大統領に表彰されるなど目立った存在だった。そして、性差別(sexism)が激烈な社会では、そういうふうに「目立つ女」(最近の日本語圏の流行語でいえば「わきまえない女」)はとりあえずそしられ、叩かれるのが常である。と書くと「男だって云々」論者がわいてくると思うが(そして私はその論は一概に退けられうるものではないという考えではあるが)、あと30分以内でこのエントリを書き上げねばならないから、そこらへんは今は措いておいて先に行く。

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