Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

could not be+比較級, be clear that ~, anyの用法, 過去分詞単独での後置修飾, など(イングランド・フットボール協会がサポーターの中のレイシズムに立ち向かう声明を出した))

今回の実例は、スポーツの競技団体のステートメントから。

日本語圏でもとっくに大きく報じられているが、欧州でのサッカーの国際大会「欧州選手権 (EURO)」*1決勝でイングランドとイタリアが対戦し、PK戦でイタリアが3-2で勝利した。PK戦で蹴る5人のうち、イタリアは2人が外し、イングランドは3人が外すというかなりの混戦になった。こういう場合、外した選手が「戦犯」とそしられ、矢のような非難があちこちから浴びせられるのはおそらくどこの国でも同じだが、今回のイングランド代表の場合、最初に決めた2人が白人*2で、続いて立て続けに失敗した3人は黒人だったことから、広く一般社会で "racist abuse" と呼ばれるものが、まさに怒涛のようにネット上に流された。経験の浅い、大舞台に立つことなどこれまでほとんどなかった若い世代のプレイヤーたち(中には19歳の子供もいる)に、容赦のない偏見と侮蔑の言葉が浴びせられた。

ガレス・サウスゲイトという稀に見るような立派な人物を監督としている今のイングランド代表は、ピッチでは人種差別に反対する「片膝つき」 ("take the knee" と呼ばれる動作) をキックオフ前に行うなどしてきたし、ピッチの外でゴシップねたではなく「政治的」な発言・活動で目立つプレイヤーもいるのだが、2016年にBrexitを決めた投票以降、社会の一番よく見える場所に躍り出てきたイングランドナショナリストたちはそういう「サヨク」臭い行為を許容することができず、サウスゲイトイングランド代表を「マルクス主義者」と呼んでけなしていた(英語圏における「マルクス主義者」は、日本語圏における「きょーさんとー」と同じように、あるイデオロギーの持ち主によって、特に意味のない罵倒語として用いられる)。ならイングランド代表の応援などやめればよいと思われるかもしれないが、そういうふうに単純に「今のチームは嫌いだからサポートしない」というようにならないのがサッカーである。

そういう偏狭なファンはイングランドのサポーターのごくごく一部であるかもしれないが、偏狭なナショナリズムを煽るメディアや、そういうメディアに発言の場を持つような人々、また保守党系のアクティヴィストやブロガーといった人々などは、実際の数の多さがどのくらいなのかはわからないにしても、大きな声を持っている。そして、そういう人びとの多くが、仮に建前としては「人種差別は良くないと思います」みたいな態度を表明していたとしても、実際には「フットボーラーはサッカーだけしてればいいんだよ。とにかく結果を出せよ。話はそれからだ」という考え方をしており、「おれたち」のイングランド代表が、いわば「アメリカの黒人みたいに」はっきりとした意思表示を試合会場で行うことには、基本的に反感を抱いていた。特に黒人のフットボーラーが何かをすることは、そういった「自称サポーター」たちから、激しく反感を買う――イングランドでは実は常にあった問題だが。

「政治的なフットボーラー」への反感を煽るそういう言動を、ボリス・ジョンソンの保守党政権は、積極的に止めるようなメッセージは出していない(ものすごく婉曲的な言い方をしています)。ジョンソン政権は反感を煽るような人々を切り離すようなこともしていない。例えば今の保守党の取り巻きの中にいる、ダレン・グライムズという、Brexitにおいてかなり怪しげな役割を果たして今なお一定の影響力は保っているらしい、まだ20代の若きアクティヴィストは、今回のパンデミックに際して休校でランチがなくなった子供たちに対して、話にならないような乏しい食事しか支給しようとしないジョンソン政権に異議を唱えて行動を起こした*3マーカス・ラシュフォードに対し、「政治的な活動なんかするより、PKの練習でもしろよ」という、まあ「暴言」にはならないかもしれないが「罵詈雑言」に属するようなことを言っている。その発言は下記のような反応を大量に買い、「炎上」状態となったたのだが、グライムズ本人には痛くもかゆくもなかろう。 

このグライムズの発言などは全然上品な方で、 試合終了後しばらくの間は、うっかりTwitterを見ない方がよいほどの罵倒祭りみたいな状態になった。 

それを受けて、イングランドのサッカー協会 (FA) が出したステートメントを、今回は読んでみよう。

 

*1:サッカーの欧州選手権(EURO)の2020年大会は、新型コロナウイルスパンデミックによる1年の延期を経て、2021年に開催された。この大会は元々、欧州選手権開始から60年の節目ということで開催国を1つに絞らずに欧州各地の12都市で開催されることになっていた。実際には感染状況を見てアイルランドのダブリンが外され、スペインというかバスクビルバオがセビージャに変更になったので、11都市での開催となったのだが、いずれにせよ準決勝からあとはイングランドウェンブリー・スタジアムで行われることになっていたので、実質、イングランドがやるならこの大会をおいてよりないだろうという大会だった。

*2:といっても2人ともアイリッシュなんだけどね……ハリー・ケインはお父さんがアイルランドからの移民だし、ハリー・マグワイアアイルランド系でカトリックの学校に通っていた。

*3:その前からずっと、貧困という問題に主体的に取り組んできたのだが……まだ20代前半なのに、本当にすごい。

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休載します/鴻巣友季子さんによる記事が必読である件。

サッカーのイングランド代表の件などで書くことはいくらでもあるのですが、体調不良の上に過去記事の再掲もストックを使い切ってしまっているので休載します。夜までに何とか、机の前に座って物が書けるくらいまで回復しないかと粘っていたのですが、到底、辞書を引いたり文法書をひっくり返したりできる気がしないから、諦めました。

で、今日ブログが書けたら言及するつもりだったのが、翻訳家・文芸評論家の鴻巣友季子さんによる下記記事。特に「残念だ」という日本語は、最近、というか関西の吉本の芸人がデカいツラをしている「トーク」と称する番組で、あの人たちの独特の言葉遣いが一般化されたあと、受け取り方・受け取られ方が大きく変化していて、自分の中では「使いたくても使えない日本語」の第一位になってます。以前は「残念」の第一義は、クイズで答えを外した回答者に司会者が発するあの「残念!」という間投詞めいたものなどに由来すると思われる「ダメだった」系の意味ではなかったはずで。でも今の「バッハ叩き」のマスコミがやっていることは言葉を丁寧に扱うことではなく、読者を煽動することですからね。

news.yahoo.co.jp

今の日本語圏、特にマスコミが「とりあえずバッハ発言を炎上させとけばOK」というモードに入っていて、「日本人をバカにしている」という《大きな物語》を、(「日本人」がどうたらということでは響かない界隈には「差別」という切り口を通じて)大歓迎と大歓声の中で延々と展開するというモードに入っていると私は思っています。そして、そのビッグウェーブに乗らずに、当該発言を単に言語的に検討すればどういうことかということを書くと、「バッハ(あるいは文脈によっては差別者、差別主義者)をかばうのか」と、「かばう」「擁護する」という言葉を使って非難される、ということになってます。現に、当ブログがバッハ発言のひとつ("make a sacrifice" 発言)について書いたとき、かなり乱暴な批判がありました。鴻巣さんのYahoo個人の記事も、ずいぶんたくさんはてブを集めているようですが、その中身を見る気にはなれないですね。たぶん、私は "I'm traumatised." と明確に言語化して、すべてを整理し直すべき状態にあるのでしょう。

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【再掲】thanks for ~, ~ is all that matters, 前置詞+動名詞, 命令文+and ~ (新型コロナウイルスに感染したアルテタ監督)

このエントリは、2020年3月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は、Twitterから。

いわゆる「新型コロナウイルス」の影響で、イングランドのサッカー・プレミアリーグ*1は、4月3日まですべての試合を一時中止している。だがこれは、日本で大規模なコンサートが中止・延期されているように観客の間での感染拡大を未然に防ぐための先手先手での措置ではない。もしそうだったら、3月第2週に開催されていた競馬の障害物レースの祭典「チェルトナム・フェスティバル」も中止・延期されていただろう(チェルトナム・フェスでは、会場のあちこちに消毒用のハンドジェルが設置されていたとはいえ、観客席はすし詰め状態で、しかも英国はマスクをする習慣がないから、非常に多くの人々がかなり長時間にわたっていわゆる「濃厚接触」の状態のままでレースを見ているという状態になった。屋外ではあったが)。

リーグの一時停止が判断される前に、アーセナルミケル・アルテタ監督の感染が判明して、アーセナルのトップチームが丸ごと自己隔離に入るということがあったのだ。この日、プレミアリーグの中で感染または感染のおそれが発覚したのはアルテタだけではなかったのだが、最もインパクトが強かったのがアルテタの感染だった。

アルテタは火曜日(10日)にチーム全体の練習をした翌日、水曜日(11日)に具合が悪くなり、検査を受けて、木曜日(12日)の夜に陽性の結果が判明したという。 

そして幸い、2日後の14日(土)には「もう回復してきた」と本人がツイートしていた。今回の実例はそのツイートから。

本題に入る前に形式的なことから。英語では、ピリオドやコンマなど句読点や記号の直後は、原則として、スペースを入れるというルールがある。コンマを打ったらスペース、ピリオドを打ったらスペース、コロンやセミコロンを使ったらスペース……というのは、英語でタイピングする人は習慣化されている。

しかしアルテタのこのツイートではその「ピリオドの直後のスペース」が全然ない。これは文字数がTwitterの投稿上限いっぱいいっぱいになってしまっていたためと思われる。アルテタの普段のツイートはスペースはしっかり入っているし、このツイートの文字数は実際に確認してみると上限いっぱい(残り文字数0文字)だからだ。

なのでこの、やたらと詰まった感じの文面は「誤り」ではなく「意図的に変にしている」ということになるが、いずれにせよタイピングのお手本とすべきものではない。よって以下、引用部分では、本来入れるべきスペースは入れておく。

*1:「1部リーグ」にあたるプレミアだけでなく「2部リーグ」にあたるチャンピオンシップなども同様に停止している。

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【再掲】whether A or B, there is/are ~ + 現在分詞, 進行形の受動態, 【ボキャビル】the jury is still out(新型コロナウイルス感染者数のグラフ)

このエントリは、2020年3月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は、英国の経済紙Finantial Times (FT) が作成したグラフから。

12日、スウェーデンの元首相・元外相で、現在は欧州連合 (EU) の外務理事会で共同議長 (Co-Chair European Council on Foreign Relations) を務めているカール・ビルト氏が、次のようなツイートで、FTが作成したグラフを参照していた。

 

このグラフは、西洋諸国での新型コロナウイルスの感染件数をグラフにすると、だいたい同じような軌道 (trajectory) を描く(だいたい同じような増え方を見せている)ということを示すもので、英国、米国、スペイン、フランス、ドイツ、スウェーデン、スイスなど、まだ滅茶苦茶差し迫った事態にはなっていない国々のグラフと、全土がロックダウンというとんでもないことになっているイタリアのグラフを重ね、さらにイランと韓国、香港、シンガポール、日本のグラフも加えて1枚にしたものである。

そして、何かで日本が言及されていると日本にだけ注目するのが基本で*1、さらに今は誤情報(というより明確なデマ)偏向報道に基づいて「イタリアと韓国は大失敗したが日本は大成功、日本スゴイ」というおかしな方向で盛り上がっている(らしい)中で、このグラフでちょびっとだけ言及されている日本について、FTが正確にどう述べているかを見ようともせずに、「おお、日本すごい」と読み解いてしまうおっちょこちょいな人がけっこういるみたいだ。

グラフには英語で注記みたいなことが書かれている。それを読まないと、FTがどう分析しているかはわからないのだが、その英文を読みもしていない(あるいは読んでも正確に意味が取れていない)人は大勢いるだろう。

なので、今回はその英文を実例として取り上げたいと思う。

 

当該のグラフは、ジョン・バーンマードックさんが作成したもので、ご本人のアカウントからもツイートされている。

 グラフの一番上には、このグラフの主旨が "Most western countries are on the same coronavirus trajectory. Hong Kong and Singapore have managed to slow the spread" と記載されている。直訳すれば、「西洋諸国のほとんどは、新型コロナウイルス感染について同じ軌道をたどっている。香港とシンガポールは、拡大を原則することに成功している」となる。ここで「香港とシンガポールは成功」と明言されていながら、グラフで見た目上同じような感じになっている日本には言及がないことに注意する必要がある(が、「日本すごい」の人たちはそういうところを絶対に見ようとしないし、見せようともしない)。

グラフの上にあるテクスト、3行目の "Cumulative number of cases, by number of days since 100th case" はグラフの説明。「感染事例の累積数、横軸は100件目の感染が判明した後の日数」という意味だ。

では、続いて、グラフ内に注記として書き込まれているテクスト(文)を見ていこう。

(なお、グラフのデータの中はここでは見ない。ここではグラフに添えられている英文を読むだけである。)

*1:今年のアカデミー賞授賞式で松たか子さんが世界のエルザたちの1人としてステージに立って歌ったときに、マスコミが「松たか子圧巻!」的に大騒ぎしたことを想起されたい。あのとき、本当にニュースにすべきだったのは「世界のエルザたちが一堂に集結」ということだったのだが。

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【再掲】force ... to do ~, 付帯状況のwith, 和文和訳, to不定詞の意味上の主語, 等位接続詞のand, 不定冠詞(東日本大震災から9年)

このエントリは、2020年3月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は、東日本大震災から9年を迎えた日本についての報道記事から。

記事の内容はあらかじめ説明するまでもないだろう。日本で、日本語でたっぷり報じられていることを英語で読むとどうなるか、といったことを確認してみてほしい。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

記事見出しの "scale back ~" は、scale down ~としても同意だが、「~を縮小する」の意味。scaleは「スケール、規模」という意味を表す名詞の用法をよく見ると思うが、ここでは動詞(「規模を調整する」といった意味)で用いられている。

"triple disaster" は「3重の災害」の意味。地震津波原発事故の3つがほぼ同時に発生したことから、英語圏では「東日本大震災」をこのように端的に表すことが多い。

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【再掲】報道記事の見出し, be + to不定詞の意味合い(ナチス・ドイツ政権下の強制収容所の看守)

このエントリは、2020年3月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は報道の見出しから。

下記キャプチャ画像(BBC News)の、特に下から2番目をご覧いただきたい。

f:id:nofrills:20200311043620p:plain

2020年3月7日、BBC News

"Ronaldinho arrested ..." や "Woody Allen book pulpled ..." の下線部の動詞は過去分詞で、「ロナウジーニョが逮捕された」、「ウディ・アレンの本が没になった」*1の《受け身》の意味。

一番下の "Top Afghan officials escape ..." の現在形は、「新聞記事の見出しの現在形は過去の事実を表す」という鉄則の通り、アフガニスタンで集会が銃撃されて何人もが殺されたが、要職者は難を逃れた、という報道記事だ。ちなみにこの攻撃はイスイス団が犯行声明を出している。

そして、今回メインの下から2番目、"US to deport former Nazi camp guard to Germany" は、見出しのルールとして、《未来》のことを表すto不定詞が用いられている。これは、以前も解説した通り、《be + to不定詞》のbe動詞が省略されたものだ。

ではこの記事の中身はどうなっているか。BBC Newsのこの画面から、この見出しをタップ/クリックすると次の記事が出てくる。

www.bbc.com

*1:pulpは動詞で「~をパルプ状にする、どろどろにする」の意味だが、ここでは「本」の掛け言葉で「スクラップにする」的な意味である。

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副詞節のif節と名詞節のif節, 過去分詞の分詞構文など (「イングランドの方針」が英国全体のものとして扱われるということについて)

今回も、前回に引き続き変則的に。前回は、英国のボリス・ジョンソン首相が公にする方針の中には、英国全体ではなくイングランドにしか関わらないものもあり、保健行政もそのひとつであるということを説明したが、イングランドウェールズスコットランド北アイルランドは別々であるなどということは、英国を一歩出れば「で?」だろう。英国(というか連合王国)がひとつのまとまりとして外交に当たり、ウェールズ人もスコットランド人もイングランド人も*1同じ連合王国のパスポートを持って世界を飛び回るのだから、当たり前といえば当たり前だ。例えばニュージーランド政府が、英ジョンソン首相の発言を受けて示した反応は、「イングランドの方針はスコットランド等には適用されない」ということにではなく「英国式のウィズコロナ政策」に注目したものだが、ウイルスが入ってくることを防がねばならないという立場では当然の反応だろう。

www.theguardian.com

Director-general of health, Ashley Bloomfield, said on Wednesday that New Zealand would be “watching closely” and could place the UK on a no-fly list if cases grew out of control.

“If they do get an increase in cases, we will be keeping a close eye on what that means for the risk of people traveling from the UK and that will inform our decisions here,” he said.

Asked if that could result in suspending flights, as New Zealand did with India in April, he said: “We actually review the risk status of all countries each week, so clearly if there is an increase in the number of cases that’s one of the things we’ll be watching very closely.”

(引用部分、《条件》 を表す副詞節のif節(直説法であって仮定法ではない)と、《名詞節のif節》に注意されたい。引用部分の最後のパラグラフの書き出しは《過去分詞の分詞構文》だ。)

だが、イングランドの方針が、イングランド以外の地域の方針とは異なるときに、外国ではイングランドの方針が英国全体の方針とみなされること*2は、イングランド以外の地域で、控えめに言って「反発を引き起こす」ことになる。そういうのがどこに行きつき得るかは、このブログで扱える範囲を超えているのだが、なんというか、こういうときに明らかになる「イングランド中心主義」みたいなのは日本語圏にも横溢していて、「英国」を扱った報道や新書のような一般的な著作では「英国といえばイングランドのこと」というのがデフォである。20年くらい前までなら「まあそんなもんじゃない?」と言えたかもしれないが、スコットランドウェールズの「自治議会」が創設されてからもう20年以上経過しているのに、基礎的な認識がいまだに20年以上前のままアップデートされていないのだとしたら、そろそろアップデートしておきましょうよというよりなかろう。

今回は、「イングランドスコットランドetcの方針は別ということだが、ではどうすればそれが確認できるのか」ということを書きたかったのだが、あまりに蒸し暑くて体調が最悪なのでここまで。中途半端ですみません。

 

 

*1:北アイルランドは、アイルランドのパスポートを持つという選択もありうるのでこれまた別。ややこしいでしょ。

*2:同様の「実は関係ないのにひとからげ」でイングランド等のあおりを食うということは、BSE発生時にも起きた。「英国」でくくったから、別の島にあってBSEが発生していなかったころの北アイルランドも牛肉などが輸出できなくなった。

新型コロナウイルス対策は「イングランド」etcの話であり、厳密には「英国」の話ではない、という説明。

今回は実例ではなく、「英語で報道記事を読む」以前の基本的な用語解説みたいなものを。「用語解説」っていうか「常識」かも。

日本時間で昨日5日、月曜日の晩に、英国から「ボリス・ジョンソン首相が『COVIDとの共生』に舵を切るべきときだと宣言へ」というニュース速報が流れてきた。

これは先日、マット・ハンコック保健大臣(当時)が「(不倫相手と抱擁しあうことによって)ソーシャル・ディスタンシングのルールを破っていた」という理由で辞任した(というか、その辞任につながった決定的瞬間の証拠映像の出方*1からして、ジョンソンに切られたわけだが)ときには既に予想されていたことだ。ジョンソンはBrexitでも過激派になびいたのだが、COVIDでも行動制限解除過激派になびくのである。自分は感染して重症化しても手厚い医療を受けて生還できたしね。

ともあれ、上記速報がto不定詞を使って「~へ」という未来のこととして伝えていたことは、日本時間の今朝がたには現実となり、それが日本語圏でも配信された。キャプチャ等は取っていないのだが(あとでキャッシュを見返してみる)、Yahoo! Japanのトップページに配信されていたAFP BB(AFPの日本語翻訳)では「イングランド規制撤廃」というふうに正確な見出しになっていた。一方で、Twitterで見かけた共同通信の見出しが、ダメだった。

これは、新型コロナウイルスが流行り始めたころ(WHOが「パンデミック」を宣言する前)にわりとよく見られたような「誤報」にもならない程度のミスで、英国の政治制度への無理解が原因の用語法の間違いである。

というか、その「英国の政治制度」がとんでもなくややこしいのだが。

今回はその話を書く。これはもうちょっと真面目に書いて電子書籍にでもまとめようと思っているのだが、真面目に書くには「なぜこういうふうになっていて、ああいうふうになっていないのか」ということも検討しなければならないと思い、それが実はものすごく大変で、 全然進めない。

この「こういうふう」を現実の英国(つまりイングランドウェールズスコットランド北アイルランド)、「ああいうふう」を、日本語でもそこそこ広く語られている米国やオーストラリアのような「連邦制」と読んでいただけると、言いたいことは伝わるかなと思う。つまり「そんなんなら連邦制にすりゃいいのに、なぜ連邦制にしないのか」という問題で、これ考え出すと、詰むんだよ。

ともあれ、本題。今回のジョンソンの宣言のことを、ガーディアンは非常にわかりやすく見出しで「イングランドの」と書いている。 

f:id:nofrills:20210706181824p:plain

https://www.theguardian.com/world/2021/jul/05/boris-johnson-says-most-covid-rules-likely-to-end-in-england-on-19-july

とはいえ、この見出しの "England's" はあとから書き加えられたものである。はてなブログに内蔵されている記事埋め込み機能を使って表示される見出しでも、「イングランドの」は出てこない。

www.theguardian.com

英国の全国紙での報道がこうなのだし、そもそもジョンソンは「英国の」首相なのだから、日本の報道機関がこの点について「英国」と書いてしまっても、しょうがないのかもしれない。少なくともIRAのやっていたことについて「北アイルランドの独立闘争」と書くよりは軽度の間違いだ。だが、実際のところ、この場合、報道機関のやらかしたことについて「これは、しょうがないよね」と言ってしまうのはかなり甘い。英国でのあのややこしい制度については、ウィキペディア英語版だけでもかなりの部分知ることができるのだ。

https://en.wikipedia.org/wiki/Devolution_in_the_United_Kingdom

以下、参照用ソースを貼り付けるため以外には何も見ないでだーっと書くから、細部が間違っているかもしれない。何か気づいた方ははてブなりTwitterなりでご指摘いただければと思う。

*1:「ホテルで密会しているのをパパラッチされた」とかそういうことではなく、職場に隠しカメラが仕掛けられていて、その映像がジョンソン政権とのつながりが極めて強いメディアで大々的にばらまかれたのである。ドラマHouse of Cards以上にドラマのようだ。

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A if Bの構造, 副詞節内での主語とbe動詞の省略, など (練習中の女性アスリートへの男性による妨害)

今回の実例はTwitterから。今日は事項解説なしで文法だけにするから短いよ。

昨年11月、オバマ元大統領の回想録の記述に含まれていた "A if B" という構文について何度かエントリを立てたところ、当ブログとしては例外的としかいいようがないくらいに広く読んでいただくことができた。

どういう内容だったかを簡単に言えば、 "A, even if B" (「たとえBであっても、Aである」)という構文からevenが落ちることがよくあり、さらにはコンマすらも落ちることがあって、当該のオバマ回想録の一節にある "pleasant if awkward" はその構文である、という解説だった。直訳に近い形で意味を示すと、「少々ぎこちなさはあれども、気持ちのよい人物であった」となる。

この構文では、"(even) if B" の方がつけたしで、メインは "A" である。下記はカフェのレビューの記述から: 

  Definitely not worth a sit down visit but the merch shop was alright even if expensive*1

  (わざわざお茶を飲みに行くようなカフェとは言えないです。ただグッズ売り場は、高いけれど、けっこうよかったです)

この記述は、「高い」ということを主要な情報として伝える記述ではなく、「けっこうよい」ということを伝える記述である。

この "形容詞A, even if 形容詞B" の構文は、even ifの直後に《主語+be動詞》が省略されている。上のカフェのレビューの例文で言えば次のようになる。

  ... the merch shop was alright even if [it was] expensive

さらにまた、この構文からは、上述したように "even" が落ちることがある。つまり次のようになることもある。

  ... the merch shop was alright if expensive

どの形であれ、同じ意味だと判断できるようにしておかないと、英文を書いてある通りに読むということはできないだろう。

というわけで今回の実例: 

 

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【再掲】仮定法過去, even if ~, 倍数表現(アイルランド共和国、セント・パトリックス・デーのパレードを中止との判断)

このエントリは、2020年3月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例はTwitterから。

3月17日といえばセント・パトリックス・デー聖パトリックの日)である。聖パトリックはアイルランドキリスト教を普及させた人で、アイルランド守護聖人である。彼が没した日は記念日となり、アイルランドでは特別な意味合いを持つ祝日とされてきたが、いろいろ厳しいことがあってアイルランドを去らざるを得なかった世界各地のアイリッシュディアスポラ(離散アイルランド人)にとっては格別な意味を持つ日で、特に北米のアイリッシュは、この日を自身のルーツを確認する日として大々的なパレードを行って祝ってきた。一方、本国のアイルランドでは、最近までこの日はさほどの騒ぎにはなっていなかったというが、今ではアイルランドの各都市(北アイルランドも含む)で盛大なパレードが行われるようになっている。詳細はウィキペディア参照(日本語版にもエントリはあるが、情報量が少なさ過ぎて英語版とは比べ物にならない)。

en.wikipedia.org

 

この日は、パレードがおこなわれる場所では、多くの人々が見物のために沿道に並び、パレードが終わったらみながパブなどで飲みまくる、ということになっている。つまりとても人が多く、とても密集していて、とても濃厚接触が多くなる。

アイルランドは今のところ、新型コロナウイルスの感染は限定的である。3月9日の時点でアイルランド共和国北アイルランドを合わせて、感染件数は33件だ。

 

アイルランド共和国政府の確定件数は下記にて: 

https://www.gov.ie/en/news/7e0924-latest-updates-on-covid-19-coronavirus/

 

しかし、セント・パトリックス・デーという大規模なイベントを契機として、何がどうなるかわからない。3月9日(月)、当初アイルランド共和国政府(というか、2月のはちゃめちゃな選挙結果を受けて次の内閣が決まるまでのケアテイカー、つまり暫定内閣が率いる政府)はこの祝祭を中止するのに及び腰だったが、数時間のうちに「中止」という方針を固めたようだ。

というわけで、今回の実例は、その方針を公にした首相(ケアテイカー首相)の会見の実況から。

 

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【再掲】セミコロンの使い方, because of ~, 疑問詞節, 前置詞のas, 関係副詞, 強調構文(国際女性デーとアンディ・マリー)

このエントリは、2020年3月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は、テニス・プレイヤーのアンディ・マリー(マレー)の文章から。3月8日(日)の国際女性デーを前に、7日(土)のガーディアンに掲載された寄稿の文章だ。

マリーは2013年に、英国人プレイヤーとしては実に77年ぶりにウィンブルドン全英オープン)男子シングルスで優勝したが、その翌年に当時のコーチ、イヴァン・レンドルとの契約を終了し、新たにアメリ・モレスモをコーチとした。モレスモは以降、2016年4月から5月にかけて行われたマドリード・オープンまでマリーのコーチを務めることになるが、マリーのこの選択がメディアの関心を集めた理由は、「マリーとレンドル、師弟間の確執」みたいなこともあったかもしれないが、それ以上に、モレスモが女性だったことにある。モレスモとの契約が終わった後、2016年にマリーは再度レンドルをコーチとして、ウィンブルドンで2度目の優勝を飾った。マリーのコーチ一覧はこちらにある。

女性でありながら男性のトップ・プレイヤーのコーチを務めたアメリ・モレスモは、フランスのテニス・プレイヤーで、2006年の全豪オープンウィンブルドンで優勝した経歴を持つ名選手だった。

このことについて、スポーツメディアのVictoryで、内田暁さんが次のように書いている。

マレーの“男女同権意識”が最も強く表れたのが、2014年に、女子元世界1位のアメリー・モーレスモをコーチに雇ったことである。当時のマレーは、既に2つのグランドスラムタイトルを誇る世界の5位(それもケガにより一時的にランキングを落としていた時期)。そのような男子トッププレーヤーが、女性をコーチに雇うのは初めてのことだった。

 その件につき多くの質問を受けたマレーは、「僕は男女関係なく、純粋に優れた人材をコーチにしただけ。何がそんなに不思議なんだ?」と、周囲の好奇の目をいぶかしがる。また、自身の結果が振るわずモーレスモに批判が集まった際には、「彼女を攻撃するのはフェアではない。勝てないのは僕の責任だ」とコーチを庇い続けた。そして2015年1月、全豪オープンで決勝に勝ち進んだマレーは、コート上で勝利インタビューのマイクを向けられると、こう切り出した。

「僕がアメリー(モーレスモ)をコーチにした時、多くの人が批判的な意見を述べた。でもこの大会で僕らは、女性でも素晴らしいコーチになれることを証明できたと思う。それが嬉しい」。 

マレーが、女性コーチを採用した理由。トッププレイヤーの深い知性と男女同権意識 | VICTORY

今回見るマリーの文章は、この件に関してのものだ。記事はこちら: 

www.theguardian.com

タイトルの後半は、「日本はすばらしい」云々ではなく、2020年という年になってスポーツ界での女性の位置づけ、というか「女には無理」という思い込みが徐々に変化してきているから、今年のオリンピック・パラリンピックを機に一気に変われるんじゃないかという期待を込めてのものだ。(医学部入試で女子があらかじめ減点されているとかいった日本の現状は、マリーが正確なところを知ったら唖然とするのではないかと思うが……。)

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形容詞+to不定詞, 前置詞+関係代名詞, let alone, など (ドナルド・ラムズフェルドが法の裁きを受けることなく安らかに死んだ)

今回の実例は、ある著名な人物の訃報を受けて書かれた激烈な文章から。通例、著名人の訃報を受けて書かれるのは「オビチュアリー (obituary)」で、当ブログでもいくつかオビチュアリーは読んでいるが、今回の文章は書き手も掲載媒体もそのようには位置付けておらず、「政治面」の「オピニオン」になっているし、実際に内容もオビチュアリーとはかけ離れているので、当ブログでもオビチュアリーという扱いはしないでおく。

というか、私自身、この人物には、生きていようと死んでいようと一切の敬意めいたものは示したくない。「おくたばりあそばした」という日本語表現から敬意表現を抜き去った語で語るべき人物だと思っている。私は日本語話者だからそういうふうに思うのだが、英語圏でも同じような反応が多く、特に米国で、この人物の訃報に際しては、定型文の「お悔み」でさえ、私に見える範囲には出ていなかった(まあ、米共和党界隈をフォローしていれば見える世界が違うのかもしれないが)。その点は、元米軍人(イラク戦争従軍)でジャーナリストのアンドルー・エクサムさんの下記の言葉が端的に言い表していると思う。

「自分の中のプレスビテリアン(長老派教会の信徒)は、側近やご家族の方々に喪失を受け止めるだけの時間を持っていただきたいと思っているが、イラク戦争にいった退役軍人としては、そういった人々のツイートやメッセージを眺めては、さんさんと輝く太陽の下にうわーっと飛び出していきたい気持ちに駆られる。その両者のせめぎあいが自分の中で」というような意味の文面である。

エクサムさんは、誰のことを言っているのか、名前に言及することもなくそう書いているのだが、この日、イラク戦争に行った元軍人にこう書かせうる人物の死はひとつだけであった。

ドナルド・ラムズフェルドだ。

訃報を聞いた7月1日はいろんなことが思い出されてフラッシュバックやら不快感やらで苦しかったのだが、そういう中で「ですよねー」という思いに駆られながら一気に読んでしまったのが、スペンサー・アッカーマンの「オピニオン」記事だ。今回、実例として見るのはその記事。こちら: 

www.thedailybeast.com

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【再掲】「買いだめ」「かさばる」などの英語表現あれこれ(トイレットペーパー買い占め騒動)

このエントリは、2020年3月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は、日本と同じような現象が起きているオーストラリアについての報道記事から。

ただし今回はいつもとは趣向を変えて、「それって英語でどう表せばいいの?(英語でどう言うの?)」ということを学ぶ、という方向で。

新型コロナウイルスの感染者が増加する中、日本で2月末から3月初めの約1週間の間、その実態もないのに、「トイレットペーパーがなくなる」という不安・恐怖にかられた人々が「見たら買う」という行動に出て、店頭からトイレットペーパーがスッキリ消えるということが起きていた。

手を清潔にするためのハンドジェル(英語ではhand sanitiser[sanitizer]という)やウェットティッシュ(英語ではwet wipes, baby wipesという)、手を洗うための石鹸・液体石鹸などなら店頭から消えるのはわかるが、新型ウイルスとトイレットペーパーはかすってもいない。

でも、人々がばかすか買い込むので、店頭から消えてしまう。そういう現象は日本でだけ起きたわけではない。

BBCがオーストラリアで起きたこの現象についての記事を出した。今回見るのはそれだ。記事はこちら: 

www.bbc.com

この件について、解説的なことは下記のページ(NAVERまとめ)に書いてあるので、そちらをご参照いただきたい。

matome.naver.jp

本稿では、純粋に、英語の表現を見ていくことにする。

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【再掲】時制の一致をめぐる、ちょっと珍しい例(新型コロナウイルスの影響で、007映画の新作が公開延期に)

このエントリは、2020年3月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例はTwitterから、ちょっと珍しいものを。

学校で習う英語の文法で、日本語母語話者にとってちょっとめんどくさいのが《時制の一致》だ。間接話法にしたときに、従属節の動詞の時制を主節の動詞に合わせるという例のあれだ。

  Tom said, "I'm hungry." ←この現在形が……

  → Tom said that he was hungry. ←saidに合わせて過去形になる

 

  Tom said, "I'll buy a new phone." ←《未来》を表す助動詞willの場合……

  → Tom said that he would buy a new phone. ←過去形のwouldになる

 

  Tom said, "I went there by myself." ←過去形の場合は……

  Tom said that he had gone there by himself. ←過去完了になる

 

こうやって何でもかんでも、「主節が過去形なら、従属節も過去形」とやっておけばいいのなら、機械的で楽である。実際、そのように機械的に「主節が過去形だからthat節も過去形」というようになっていることが多い。この《時制の一致》が《惰性の一致》(江川泰一郎)と呼ばれる*1ゆえんである。

一方で、この《時制の一致》には例外がある。「例外」があるとは、「時制の一致をしない場合」があるということだ。めんどくさい。

この「例外」には、(1) 不変の真理・一般的事実を表す場合(「地球は丸い」とか「冬は寒い」とか「犬は知らない人を見ると吠える」とか「猫は人間を下僕だと思っている」とか)、(2) 歴史上の事実を表す場合(例えば「徳川家康は1603年に江戸幕府を開いた」という過去形の文を目的語のthat節にするときは、主節の動詞が過去形でも過去完了にせず過去形のままでよい)、(3) 仮定法の場合(主節の動詞が過去形でも、仮定法過去を仮定法過去完了にしたりせず、仮定法過去のままでよい)、そして (4) 現在も変わらない内容を表す場合……がある。

この (4) が「はて、何のこっちゃ」となりやすい。「現在も変わらない内容」とは、主節が過去形でもthat節の内容が過去になっていない、ということ。ますます何のことかわからないかもしれないが、例文で見ておこう。

  I didn't know Karen is dating with Mike. 

  (カレンがマイクとつきあってるとは、知らなかった)

現に今も、カレンとマイクはつきあっていることが前提の言い方だが、「さっき聞いたんだけど、カレンってマイクとつきあってるんだってね、わたし、知らなかったよ」みたいな感じ。

ただしこの場合、時制を一致させることもある。なぜなら《時制の一致》は《惰性の一致》だからだ。

  I didn't know Karen was dating with Mike. 

としても、言ってることは基本的に同じなのだ。ただしここで過去形にすると、「その時、カレンとマイクが付き合ってるっていうことを、その時、私は知らなかった」と言っているような感じになる。何年か経ってから振り返っているときの言い方だ。

……ほらね、ややこしい。

 

日本で英語を外国語として習った人は、この《時制の一致》を生真面目に気にすることが多いが、実際にはこの (4) に該当するようなケースは、よほど不自然でなければネイティヴ英語話者から直されることもない。

この違いについて、江川泰一郎は『英文法解説』において「話者の視点の置き方で決まる」と解説している (p. 468)。この解説がこの名著の白眉であるが、詳しくは本を買ってそこでお読みいただきたい。この本はとにかく、英語を身に着けようとする日本語母語話者なら持っておきたい一冊だから、持ってない人は買うべきである。 

英文法解説

英文法解説

 

というわけで今回の実例。エンタメ産業の主要な一角を占める新作映画の製作陣と配給会社が、新型コロナウイルスの世界的感染拡大がしばらく収束しそうにもないと見て、大きな判断をしたという告知だ。

 

*1:これは江川先生一流の言葉遊びで、正確さを期すならば「惰性による一致」と言ったほうがよいだろう。

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【再掲】挿入, 同格のof,【ボキャビル】for the first time, too, none of ~, according to ~(暖冬のヨーロッパとアイスワイン)

このエントリは、2020年3月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は、この冬の気温の高さが、ある小規模な産業に及ぼしている壊滅的な影響について、230語程度の短い記事から。

短いだけでなく記述も平易で内容もわかりやすいので(センター試験の長文問題が読めるくらいの力があれば、この記事も読めるだろう)、突然学校の授業がなくなってしまって英語に接する機会が失われて困っている学生さんに読んでもらいたい記事だ。

今回の記事は特に予備知識なく読めるように書かれているが、念のために少し説明を入れておこう。 このニュース記事のトピックは「アイス・ワイン ice wine」というお酒で、詳細は下記に詳しい説明がある。(未成年は「世界にはこういう飲み物がある」ということを知識として仕入れるにとどめるように。)このワインの生産には、冬季にブドウが凍ることが必要である。

www.enoteca.co.jp

私もこのワインのことを知ったのは、かなり最近だ。どういう味なのかは実際に飲む機会がないので想像するよりない。ブドウが栽培できるくらい夏が温暖な気候で、冬は厳寒となるような場所は、北半球の中でもたぶんあまりない。だから、そういう土地で作られている「アイス・ワイン」は、何もなくても生産量が少なく、希少価値が高い。私が普通に買い物に行くようなお店には置いていない。

その、規模としては小規模な産業を襲ったのが、この冬の気温の高さだった。記事はこちら: 

www.bbc.com

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