Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

【再掲】動名詞の否定形, 等位接続詞, if節のない仮定法, 分詞構文(WHOの中国批判)

このエントリは、2020年6月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は、少し前のものだが、6月上旬の報道記事から。

この記事の英文法てんこ盛りのところを扱おうとしていたときに、#BlackLivesMatterが勢いを得て国際的な広がりを見せ、英国でも奴隷商人の像の打ち倒しということが起きたので、しばらくそのトピックで進めていたため、こちらが後回しとなった。しかもこれをアップしようとしていた日にノヴァク・ジョコヴィッチの主催したエキシビションの大会で何人もが感染ということが起きたので、さらに遅くなった。

そのため、記事の内容としては「フレッシュ」というわけにはいかないかもしれないが、英文法てんこ盛りであることは変わりない。

一応文脈をつけておくと、ジョージ・フロイドさんが警官によって首を踏みつけられて殺害され、#BlackLivesMatterが「全米を揺るがす」状態になる前に、ホワイトハウスが一生懸命になっていたのは、「新型コロナウイルスがこんなにひどいことになったのは中国のせいだ(トランプ大統領のせいではない)」という印象付けである。4月、米国大統領という立場にあるドナルド・トランプは「WHOは中国中心主義だ」みたいなことを言って米国からWHOへの資金供出を停止すると表明した。「資金供出停止」の件はその後どうなってるのか、私は特にフォローしていないが、元よりまっとうに検討された政策であるというより、報道記事の見出し(&TwitterやFBで回覧される短い要旨)でのインパクト狙いの打ち上げ花火であることはわかりきっている。ちなみに米国とWHOの件についての最新ニュースはこちら: 

というわけで本題。トランプは「WHOは中国とずぶずぶの関係にある!」とかいうことをまくしたてているのだが、実際にはどうなのか、という点からも興味深いかもしれない報道である。

記事はこちら:  

www.theguardian.com

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DeepL翻訳のようなツールは「万能」ではない。それには「使いどころ」があり、その範囲では有能である――ということを、もっと強調していただけないだろうか、ということについて。

今日は土曜日なので本来は過去記事を再掲するのだが、予定を変更して、機械翻訳について先ほどTwitterに連投したことをまとめておくことにしよう。

週明けの月曜日にしてもかまわないのだが、「鉄は熱いうちに打て」ということで。

この「鉄は熱いうちに打て」は格言で、英語では Strike the iron while it is[it's] hot. と言う……と私は習ったし、そのように暗記したが、最近は Strike while the iron is hot. とすることが多いようで、手元の辞書(『ジーニアス英和辞典 第5版』)でもそのようにエントリーされている(ironの項の用例を参照。p. 1131)。

この2つの言い方に関して、「なるほど、strikeという動詞が他動詞か自動詞かってことですね」……などという話を始めてしまうとまた終着点に行きつく前に当ブログ規定の4000字を使い切ってしまうので、涙を飲んでそこは無視して先に行く。うちにあるProverb辞典などを見る作業も、今はしない。

で、こういった、決まりきった表現の英語と日本語のペアというものは、機械翻訳にはあらかじめセットされている。ニューラル翻訳でも、もととなる対訳集の中にこういうのがある程度の量、含まれているだろうし、実際に、やたらと称揚されている例の機械翻訳エンジンに投げてみても、このような結果が得られる。

f:id:nofrills:20211120180201p:plain

https://www.deepl.com/translator#ja/en/%E9%89%84%E3%81%AF%E7%86%B1%E3%81%84%E3%81%86%E3%81%A1%E3%81%AB%E6%89%93%E3%81%A6%E3%80%82

一方、もう一つのメジャーな機械翻訳に同じ日本語文を投げるとこうなる。

f:id:nofrills:20211120180457p:plain

https://translate.google.com/?hl=en&sl=ja&tl=en&text=%E9%89%84%E3%81%AF%E7%86%B1%E3%81%84%E3%81%86%E3%81%A1%E3%81%AB%E6%89%93%E3%81%A6%E3%80%82&op=translate

ここで、「この場合、strikeとhitは相互に入れ替えることができるのかどうか。いや、意味としては全然通るんだけど、成句として」みたいなことを掘り始めると、また道に迷って沼にまっしぐらということになって、本題にたどり着かなくなってしまうので、今は措いておく。いや、措いておかねばならぬのだ。措いておくぞ。俺は措くぜ。

ここでさくっとわかるのは、同じ機械翻訳(ニューラル翻訳)でも、DeepL翻訳とGoogle翻訳は中身が違うということで、例えば誰かが一方をほめていたとして、だからといって他方もほめているということにはならない。DeepLがうまく出力できることを、Googleが失敗する場合も多々あるし、その逆もあるだろうが、そのことは機械翻訳(ニューラル翻訳)全体の能力・性能の話というよりは、個別のエンジンの能力・性能の話である。

それでもなお、機械翻訳(ニューラル翻訳)全体のこととして、「昔に比べれば段違いで役に立つようになったね」ということがある。

特に、ある特定の分野で、以前全く使い物にならなかったものが、そこそこ使えるようになってきたという局面では、そこにいる人たちの間で「以前は全く使えなかった」という共通体験があるからよけいに「すごい、こんなに使えるようになっててえらい」という新規の体験の衝撃が刺さりまくることになるだろう。そのことは、分野の外からも十分に理解できるし、当然のことだし、むしろその喜びは分野の外でも共有されているということは強調しておきたい。

しかし、それでもなお、その「以前はダメだったが、今はそこそこ使えるようになってきた」ものが、「何にでも使える魔法の道具」的に諸手を挙げて無邪気に称揚されている(ようにしか見えない)のを見ると、うちらサイドからは「ちょっと待ってください」と言わざるをえない。それが良心だし、それが学問的誠実さというものであろう。そして、それは決して「新技術を認めないかたくなさ」「偏狭な心のあらわれ」などではない。ましてや「英語ができる自分の自慢」(最近の日本語表現でいう「英語マウント」)などでは全くない。

機械翻訳(ニューラル翻訳)がいかに使えるかという話題が頻繁にバズっているTwitterでは、私たち「英語屋」サイドがそれに対してネガティヴな内容の何かを述べたときに、そこが伝わる/伝わっているのかどうかが疑問であり不安なのだが、翻訳者や英語教育者など「英語の専門家」と呼ばれる立場にある人々が機械翻訳(ニューラル翻訳)に懐疑的な内容の発言、と言うより、もっと正確にいえば機械翻訳万能論(「機械翻訳があるんだから、もう人間の翻訳者はいらないし、英語を勉強する必要もない」みたいな流れ)に異議を申し立てる発言をするのは、単に「自分の仕事が危うくなるから」ではない。「それは本当に『翻訳』になっていますか」という問題があるからだ*1

その具体的な例を、今日、英語講師の田中健一さんがTwitterに投稿していらした。

【11月22日・追記】ブログへのツイートの埋め込みだと縦長の画像は切れて表示されてしまって肝心なところが見えないから、画像だけまた別に埋め込んでおく。

f:id:nofrills:20211122201038j:plain

【追記ここまで】

田中さんには下記のご著書がある。中学校で習った範囲の理解と定着がイマイチ不安な高校生、また「英語が苦手」という自覚がある大学生、大学院生から社会人まで広くお勧めできる内容の、高校で習う範囲までをカバーした問題集で、知識の習得・定着を目的とした人が効率よく学習できるよう考えられている。2冊で1つのシリーズだが、「入門」の次に「基礎」に進むという使い方を前提としており、書店では「高校学参」のコーナーにある。

で、田中さんが投稿しておられる "I couldn't agree more." という英文は、この「基礎」の範囲には入っていないが、大学受験の文脈なら「難関校対策」の参考書・問題集の「基礎」(「ステップ1」など)に入る質(というか「レベル」)の英文であり、社会の中で第二言語・外国語としての英語を(どんな形ででも)使っていこうという人なら、「それ知らないのは、ちょっとやばくね?」というような基本的な事柄である。

だが、逆に言えば、本腰入れて英語を使う必要のない人にとっては「知らんかった」という事柄であるかもしれない。仮に習っていたとしてもわかりづらいから、試験のときには「捨てて」しまうような項目かもしれない。ちなみに私自身も高校のときはこの《can not + 比較級》がわからなくて泣いてたクチである。

*1:だから私は、あれらの翻訳エンジンがやっていることを「翻訳」とは呼ばない。「入力」に応じた「出力」でしかない。「なんとか翻訳」という名称である以上は「翻訳」をしているのだと思ってしまうのは自然なことなのだが、あれらが「なんとか翻訳」を自称していること自体、この上なく羊頭狗肉であると思う。

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仮定法過去完了, even if ~のevenの省略, など(写真家ミック・ロック死去)

【追記】本項、タイトルを入力したときにボケていて、「evenの省略」とすべきところを「ifの省略」としていました。失礼しました。

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今回の実例は、Twitterから。

写真家のミック・ロックが亡くなった。「誰、それ?」っていう人も、「これを撮影した人だよ」と言えばわかるだろう。日本で「洋楽」と呼ばれているものに関心があれば必ず見たことがあるようなレコードジャケットの写真の多くが、彼の作品(写真)を使っている。

Raw Power

ほかにも有名な写真を多く撮影していて、その一部はミック・ロック自身のサイトで見られるようになっている。

www.mickrock.com

中でも「名作」として知られているのが、ルー・リードの『トランスフォーマー』(1972年)のジャケである。

これはジャケだけでなく中身も名盤中の名盤なので、雑誌やショップの「アルバム100選」みたいな企画の常連だから、「洋楽は聴かない」とか「古いのは知らない」とか「ヒップホップしか聞いてない」といった人でも、目にしたことくらいはあるのではないかと思う。

というわけで、このロック音楽の写真の巨匠の逝去に、Twitter上などでは多くの追悼の言葉が出ている。

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助動詞+have+過去分詞, 主語の省略, 肯定文のany, 日本語とは違う「つなぎ言葉/接続詞」, など(マスクなしで病院訪問して平気なジョンソン首相の鼻声について)

今回の実例は、前回文字数があふれたため書けなかったことをTwitterから。

前回見た、ボリス・ジョンソン首相の「鼻声」記者会見に関する英メディアMetroのTwitterフィードには、いくつものツイートの連投(スレッド)になっているうえに、それぞれにたくさんのリプライがついているから、全体でみるとかなりとんでもない量になっているのだが(そうやって発言の数を増幅させることもまた、今どきのメディアっぽいやり方である)、それらのリプライの中には「くだらないな、だれでも風邪くらい引くだろ」という、所謂「中立」(を装ったジョンソン擁護・メディア批判)のものもあるが(それらの発言主は「Covidの症状」など一顧だにせず、ひたすら「風邪 a cold」の話をするばかりである)、より目に付くのは、ジョンソンが先日病院を訪れたときに、院内でマスクもせずにうろうろしていたこと、その無責任っぷりを指摘するものである。

しかもジョンソンは、2020年春、現在では "Covid" と簡略化された表記が一般化している新型コロナウイルスによる感染症がまだ "COVID-19" と表されていた時期にこの病気になって入院し、かなりひどい症状になって、医師団の尽力で持ち直して退院したことがあるような人物で、元々「無責任男」のキャラで売ってきた人物であるとはいえ、病院内でマスクをしないのはあまりにもひどい。さらにいえば、病院などでのマスク着用のルールはジョンソン政権が定めたものである。この人物は、公衆衛生に関して、自分で定めたルールを自分で守ることすらしようとしていない、ということで、あちらこちらの人々がブーイングみたいにして発言するのも当然のことだ。

そしてジョンソンは、同じように無責任な行動をとり続けるし、何ならどっかに逃げる。こないだは厳しい局面で国外のお友達の別荘にしけこんでしまっていたし、2019年の選挙前は記者を避けるために訪問先の食品倉庫の冷蔵庫に閉じこもってしまったことがあるような人物だ。

というわけで、それらのリプライを見ながら私などは「いつまで続くんかな、これ」としょんぼりしているのだが、そういうときでも英語の実例として拾うものは拾う。職業病みたいなものだが、そんなことでもしていないとやっていられないという一種の「逃避」でもある。

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「のど飴」「鼻声」「風邪声」「鼻が詰まっている」は英語で何という? (英ジョンソン首相の記者会見)

今回の実例は、Twitterから。

欧州全域で新型コロナウイルスによる感染がまた増えつつある中、今週月曜、つまりスコットランドで開催されていたCOP26が閉幕した翌日、英国のボリス・ジョンソン首相が記者会見を行ったのだが、それが「風邪でも引いているみたいだ」と指摘されている。

会見の音声は下記Metro記事の中にエンベッドされているのでそれで確認できるが、確かに鼻声のようだ。

metro.co.uk

とだけ言うと「風邪くらい誰でも引くだろ、そんなことでいちいち騒ぐ連中はばかなのか」といった反応が必ずあるだろうが、ジョンソンはつい最近も病院訪問時に、病院側の人たちも同行の人たちもみんなマスクをしているのにひとりだけマスクせずに院内を歩き回って顰蹙を買い、おちょくられてすらいるという文脈がある。しかも2020年春にパンデミックが始まったころに「私はだれとでも握手をして回る、ウイルスなど恐るるに足らず!」と勇ましく行動した挙句、いち早く感染し、しかもかなり症状がひどくなって、人工呼吸器のお世話になる寸前まで行っていたような人物である。端的に言えば「懲りないやつだな、まったく……」という目線で見られているわけだ。

ともあれ、この会見についてのMetroの記事(上述)や一連のツイート、それに対する反応が、ボキャビルのためにかなり役立ちそうだ。あと、英語の接続詞の使い方という点でもよい例がある。それらをざっくり見ていこう。

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if節のない仮定法, 時制の一致, 動名詞の受動態, など(エリザベス女王の公務欠席)

今回の実例は、前回見たのと同じ素材から、字数オーバーで扱えなかった部分を。(前回「おかしいな、なぜこの項目の解説をしないんだろう」と疑問に感じられた方もおいでかと思いますが、そういうことです。字数オーバー。)

記事というか、その記述があるページはこちら: 

twitter.com

Twitterを使っていない方は知らないかと思うが、Twitterでは、https://twitter.com/i/events/***** のURLで、1つのまとまったできごとやイベントに関するツイートをまとめている。これはユーザーが作る「まとめ」(momentと呼ばれるもの)ではなく、Twitterサイドが提供しているもので、報道記事における「リード文」(記事の冒頭に置く文で、その記事の内容を端的にまとめてあるもの)のような短い文がついている。今回の実例はそこから。

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backは「背中」か「腰」か(エリザベス女王が「ぎっくり腰」で戦没者追悼の式典を欠席)

今回の実例は、単語レベルの話。

先日、そういえば「ぎっくり腰」を英語で言えないということに気づいたので、その場で辞書を引いてみたという、英語講師の杉村年彦さんのツイートを見かけた。

だいたいみんなやることは同じだよね、という話なのだが、これで「英語科は非情だ」と言われたとのことで、複数教科が同居するフロアの「あるある」ネタの鉄板の様相である。

そして、こんな素敵な表現があるというツイートもあったのだが: 

英語で辞書ひきゃぁこうなる、というのも、実に「あるある」である。

うちらだって、辞書引いたら、できれば「わー、こんな表現するんだー」ときゃっきゃうふふしたい。しかし英語という言語はそれを許す言語ではない。「ふーん、そうなんだー」と、語尾に虚無感あふれる「ー」をつけて反応せざるを得ない、無味乾燥な結果に終わることがとても多い。この点、フランス語などは風流で、第二外国語として履修中に辞書引くだけでも「おお、やはりフランス語は違う」と思わされたものである。イタリア語などどれほどしゃれているか、想像もつかない。そういえばロンドンの地下鉄駅の名称をフランス語で表すと、それだけで風流になる、英語だと本当になぜかすべてが事務的になるよね、というお笑いのネタもあったが、今探しても出てこない。

ともあれ、Twitter上の日本語圏でこんなふうに和気あいあいと非情で無味乾燥な英語辞書引きが展開された数日後のこと。

英国では、毎年11月11日(第一次世界大戦が休戦した日)に最も近い日曜日、つまり11月の第2日曜に、戦没者追悼の国家行事が行われる。ロンドンでは、ウエストミンスターの国会議事堂の少し北(トラファルガー広場に行く途中)にある「セノタフ」で、大掛かりな追悼式典が行われることになっており、イングランド国教会の宗教家たちによる祈りのなか、国家元首(国王、つまり現在はエリザベス女王)と政治トップ(首相、現在はボリス・ジョンソン首相)および最大野党リーダー(英国の「最大野党」は法的にthe official oppositionという位置づけのある存在で、現在は労働党。代表者はキア・スターマー党首)をはじめ、首相経験者などの要職者、軍の代表者らが花環をささげ、2分間の黙祷を行う。現在のボリス・ジョンソン首相はそういうところも本当にだらしなくて、「戦争」のレトリックを勇ましく使い、チャーチルを気取るわりに、2016年の式典では花環の上下すら区別していなかったとかいうお粗末な話もあるのだが、それはまた別のお話。

その重要な式典に、今年はエリザベス女王は出席できなかった。10月半ばに北アイルランドで行われた、アイルランド分断(北アイルランド成立)100周年を記念する宗派横断的な祈念行事への出席を、ドクターストップがかかったため直前で取りやめられ、10月末にスコットランドグラスゴーで開幕したCOP26への直接の出席も見合わせとなり、ビデオリンクで各国大使らと謁見されていたが、今回、英国という国家にとって非常に重要な、そして大戦中は軍のトラックのハンドルを握って輸送の仕事をしていたエリザベス女王個人にとってもとても思い入れがおありに違いない戦没者追悼式典にもお出ましになれなかった。その理由が、「腰(または背中)を痛めたため」だった。

f:id:nofrills:20211115184038p:plain

https://twitter.com/i/events/1459815702706069505
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【再掲】感情の原因・理由を表すthat節, O+S+Vの形の文, 等位接続詞が作る構造, 疑問詞節(ジョコヴィッチのCOVID-19感染)

このエントリは、2020年6月にアップしたものの再掲である。

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今回も、前回の関連で、テニスのノヴァク・ジョコヴィッチのCOVID-19感染について。

前回は感染判明を受けてのニック・キリオスの発言を見たが、今回はジョコヴィッチ本人の発言を見てみよう。

Twitterに長文をアップしたいときに、自分のブログとかサイトとかに書いた文章へのリンクを貼るのではなく、手元のテキストエディタなどで書いたもののスクリーンショット(スクショ、キャプチャ画像)を画像として投稿するということは、日本語圏だけでなく英語圏でも広く行われている。基本的に、リンクというものは、はっておいたところでクリックされるものではないので(10年ほど前だが、自分のブログでどのリンクが何度クリックされたかわかるウェブサービスを利用していたときに確認されたのは、記事中のリンクがクリックされるのは100回閲覧されて1回から数回程度に過ぎない、ということである)、スクリーンショットで見せてしまえ、というのは効率的で効果的なやり方だが、画面に表示された文字や画像を見て情報を得るということをしておらず、読み上げソフト(アプリ)を使って音声にした上で情報を得ている人々(目の不自由な人々)のことを考えれば、テキストをただ画像にしてアップするというやり方はあまり好ましいものではない。できればこちらのような手順で、画像に「説明」(ALT属性)を付け加えて投稿したい。(この話については本稿の最後にも付け加える。)ただ、ジョコヴィッチのこのツイートはALT属性なしで投稿されている。

そういう場合に使えるのが、画像のテキストを読み取って文字に変換してくれるサービスだ。例えば、Online OCR が登録不要・無料で、jpeg画像やPDFなどからテキストを抽出してくれるので、今回は(画像を見ながら手でタイプし直してもたいした分量ではないのだが、煩雑なことは煩雑なので)それを使ってみよう。

www.onlineocr.net

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【再掲】関係代名詞, 関係代名詞の省略, 関係代名詞の二重限定, 引用符の使い方, ボキャビル(ジョコヴィッチのCOVID-19感染)

このエントリは、2020年6月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例はTwitterから。

テニスで現在世界ナンバーワンの座にあるノヴァク・ジョコヴィッチ選手が、新型コロナウイルスに感染した。世界的にテニスの大きな試合が一時停止を余儀なくされているときに、彼自身が主催して、セルビアクロアチアボスニアヘルツェゴヴィナの各地*1を会場とする形で開催したチャリティ大会の「アドリア・ツアー」のさなかのことだ。ジョコヴィッチの感染が明らかになる前にすでに選手2人とコーチなど2人の計4人の感染が判明していてツアーは中止ということになっていたが、この大会、西欧各国などの厳戒ムードとはかけ離れた空気感の中で行われていたという。

 (試合の)結果以上に印象的だったのは、この大会の雰囲気だ。世界がパンデミックに対して警戒態勢を取る中、大会は約4000人の観客を迎えた。観客たちは人と人との間に距離をとることもマスクを着用することもなく、パンデミック前と同じ様に肩を並べてスタジアムを埋め尽くした。

 ボールボーイも審判もおり、試合後に選手たちは握手と抱擁を交わした。感染者が総じて1万2000人強で死者252人と欧州の中で比較的被害が少なかったセルビアは、先ごろCOVID-19対策の規制を取り払っていた。

 それゆえいっそう、新型コロナウイルスによって麻痺させられたスポーツの再スタートとして、このコートでの日常の復活は象徴的であるように見えた。もちろん状況は国によって違い、すべての国が同じようにできる訳ではない。

 「各国がこの手の大会を許可するにあたり、違ったアプローチを採用している。幸いにもセルビアは、このコロナ問題から比較的うまく抜け出した。多くの方が亡くなられ、非常に悲しいことだ。しかし生活は続いていく。我々アスリートは、ふたたびプレーするのが待ち遠しくて仕方がない」

 開会式でこう話していたジョコビッチは……(以下略)

tennismagazine.jp

テニスコートでの様子がまるで新型コロナウイルス禍などなかったかのようなものだったばかりでなく、試合が終わったあとのナイトライフも、まるでウイルス禍などなかったかのようなありさまだった。大会に参加したテニスプレイヤーたちがナイトクラブできゃっきゃと遊びに興じる映像がネットで拡散されている。ウイルス禍されなければ、とても楽しそうで何よりという無害そうな映像なのだが……。

ともあれ、その映像は物議をかもしていて、コートでの振る舞いがあまり上品でないことなどからテニス界で「悪童」と呼ばれているニック・キリオスもTwitterで発言している。

今回の実例はそのツイート: 

 

*1:要するに旧ユーゴスラヴィアの半分。ジョコヴィッチは1987年生まれなので、物心ついたころにはまだあの「ユーゴスラヴィア」が存在していたはずだ。

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過去完了と過去という時制の使い方, help+動詞の原形, see+O+動詞の原形, 「目で見る」以外の意味のsee, 英米差 (南ア、デクラーク元大統領死去)

今回の実例は、報道記事から。

日本語のメディアでも報道されている通り、南アフリカのデクラーク元大統領が亡くなった。85歳だった。日本語圏でも「アパルトヘイト*1廃止」「ノーベル平和賞」の文字列が並ぶ。英語圏でも大筋では同じように見えはするが、よく見ると違う。最近はやりの日本語の言い回しを使うと「解像度が違う」感じだ。

mainichi.jp

jp.reuters.com

ここでの問題は、デクラークが元々アパルトヘイトを廃止する方向を向いていた人では全然なかったということが、日本語圏の報道などからはどうも見えにくいということである。ちゃんと数えたりすることなく、「どうも見えにくい」レベルのまま話を進めてしまって恐縮だが、それがどういう理由によるものかはわからないにせよ、「悪いものを廃止した英断の人、勇気ある偉人」というあまりにも一面的な評価がなされている様子であることには、なんというか、とても大きな違和感をおぼえる。

実際には、デクラークは「もはやこれまで」とあきらめるまでは、アパルトヘイト体制の熱心な支持者であり推進者であった。あきらめたこと自体はもちろん大きな評価に値するが、そのことは彼がアパルトヘイト支持者であったことを相殺しはしない。

その点、デクラークと同様に、それまでの体制の維持を断念して「敵」との交渉・対話の末に「平和/和平」をもたらしたことでノーベル平和賞を受けた、1921年北アイルランド成立(アイルランド分断)以降ずっと北アイルランドの政治を独占してきたユニオニスト最大政党(当時)の党首、デイヴィッド・トリンブルと似ているのだが、トリンブルもまた「悪いものを廃止した偉人」的な見方ゆえか、日本語圏の報道では「穏健派」と位置付けられていて、冗談もほどほどにしてほしいと思ったことが何度かある。日本語圏の報道は、とにもかくにも、「善と悪」の二項対立と、「強硬派と穏健派」の二項対立の物語が大好きで、北アイルランド情勢などは「強硬派のIRAと、穏健派のトリンブル」みたいなめちゃくちゃ間違った物語が描かれてしまうことすらあるのだが(「強硬派のDUPと穏健派のUUP」なら間違っていないのだが、人は知っている単語でしか考えないので、「DUP」や「UUP」という単語を知らない人は知っている単語を持ってきて勝手に物語を考えてしまう)、その点は南アについても同じようなことになっていたのかもしれない。

事実としては、デクラークは「強硬派」であったし、1997年に政界を引退した後もその評価は「自陣の悪行を免罪しようとする権力者」でさえあった。上にリンクした毎日新聞記事などは、その点について「マンデラ氏と協力して白人特権階級による支配体制を軟着陸させなどという実態不明の抽象的な表現で言及してはいるが、非常に分かりにくいし、見えにくい。遠慮でもしているのだろうか。だとしたら、何に?

一方で、英語圏の報道記事は、特に「体制に批判的」なメディアでなくても、ふつうにストレートに記述している。英国はアパルトヘイト体制を支持してきたし、そのことは今では「黒歴史」でできれば触れたくないものとして扱われているといえるだろうが、その英国の公共メディアであるBBCでも、「軟着陸」などという変な表現は使っていない。

というわけで、そのBBCの報道記事を見てみよう。当ブログで以前も説明した通り、著名人が没すると英語圏のメディアは、死去を報じる「報道記事」と、故人の人となりやその業績、世間からの評価を読者に説明する「オビチュアリー」の2種類の記事が出る(それに加えて、「世間の反応」や「著名人から寄せられる追悼の言葉」といった記事も出る場合がある。直近では、米国のコリン・パウエル国務長官の訃報で出た記事がそういう分量の多い扱いだった)。英国の媒体の記事に関する限り、おおまかには、報道記事よりもオビチュアリーのほうがより「言いづらいこともあえて言う」という調子であることが多い。そして今回のデクラークについてもそうなっている。それはそれぞれの記事の見出しにも明らかだ。

報道記事(こちらにしたって、日本語報道機関のように「アパルトヘイトを廃止した」などという甘い評価はしていない。「アパルトヘイト体制の最後の大統領」だ。これらは同じことを言いながらも、別のメッセージを持っている。後者は、故人がその廃止した「体制」の内部にいたこと、その価値観を持つ人物であったことをはっきりと言っている): 

www.bbc.com

オビチュアリー: 

www.bbc.com

オビチュアリーでは「今なお南アの分断の種となる人物」という厳しい文言が表題となり、報道記事では「アパルトヘイト体制最後の大統領」である。

*1:この「アパルトヘイト」の「ヘイト」は英語のhateではない、という、インテリゲンチャ系のTwitterアカウントによるツイートが、ずいぶんと「バズった」状態になっていたようだが、確かに30年近く前に終わった体制についてのこの名称は、今改めて説明しておく必要があるのかもしれないにせよ、「またその話っすか」感は否めない。ていうか80年代にも何度も何度も説明されてたよね。そもそもこの「ヘイト」が英語のhateだと思っている人は、「アパルト」は何だと思っているのだろう?  ちなみに「アパルトヘイト」はアルファベットで書けばApartheidで、現地語(アフリカーンス語でも英語でも)では-heidは「ヘイト」と読まれるが、標準的な英語(英米の英語)では-heidは「ハイト」で、apartheitという語全体では、英語では「アパータイト」もしくは「アパートハイト」という風に発音される。南アの現地語のアフリカーンス語は、オランダ語から派生した言語で、英語とは全然別の言語である。

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【再掲】分数の表し方, 年齢の表し方, not just A but also B, ボキャビル (アイルランド保健大臣の呼びかけ)

このエントリは、2020年6月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例はTwitterから。

アイルランドアイルランド共和国)での新型コロナウイルス感染拡大は、かなり厳しいことになっている。人口が500万人程度のところで、感染確認件数が25,379件、回復件数が23,308件で、1,715人が亡くなっている(2020年6月21日時点)。詳細は下記URL参照。

https://en.wikipedia.org/wiki/COVID-19_pandemic_in_the_Republic_of_Ireland

 

アイルランドは3月17日のナショナリズム全開のお祭り騒ぎの日、セント・パトリックス・デーのイベントを中止して以来、かなり厳格で具体的な行動制限(ロックダウン)を敷いてきたが、5月に入り感染の拡大の局面は過ぎ、6月に入ってからは新規の患者発生もぐっと減ってきていて(波はあるが)、段階的な行動制限解除を進めている。

そういう中で、保健大臣が下記のようなツイートをしている。

 

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【再掲】however, 挿入, to不定詞の受動態, 助動詞+受動態, など(ベルギーの「黒歴史」と今)

このエントリは、2020年6月にアップしたものの再掲である。

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今回も前回の続き。前回は、亡くなったときはベルギー国民からの人気もまるでなかったレオポルド2世(在位1865年~1909年)の像が、いつ、なぜベルギーのあちこちにたてられるようになったのかという部分を見た。ベルギーのコンゴ支配のことを含め、大まかな背景など、前々々回前々回に書いたので、そちらをご参照のほど。

今回は、この「昔の国王」の像と現代とのかかわりについての部分を見ていくことにしよう。

記事はこちら: 

www.bbc.com

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【再掲】関係副詞, threaten to do ~, 無生物主語, など(レオポルド2世の像と歴史修正)

このエントリは、2020年6月にアップしたものの再掲である。

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今回も、前々回前回に続いて、アフリカ大陸のコンゴを支配し、現地の人々に残虐行為を働いたベルギーのレオポルド2世(在位1865年~1909年)についての解説記事から。大まかな背景などは前々回に書いてあるので、そちらをご参照のほど。

これまでに見たように、レオポルド2世のコンゴ支配は苛烈を極めるものだった。王の私的な領地とされたこの地で、人々は筆舌に尽くしがたいような扱いを受けた。

国王の私領となったコンゴ自由国では耕作地も全てが国王の所有となり、住民は象牙やゴムの採集を強制された。規定の量に到達できないと手足を切断するという残虐な刑罰が容赦なく科され、前代未聞の圧制と搾取が行われていた。コンゴ自由国の自由国とは、「住民が自由な国」という意味ではなく、自由貿易の国という意味を当てこすった英語の俗称 (Congo Free State) であり、公用語である仏語における正式国号はコンゴ独立国であった。

ja.wikipedia.org

この苛烈な状況に、当時植民地主義がデフォだった「国際社会」(当時の「国際」はおおむね西欧列強諸国の間でのことをいう)も黙っていられず、現地に英国の調査団が入ったほどだが、その調査報告をまとめた "英国" の外交官、ロジャー・ケイスメント(英国系アイルランド人)が「わが英国がわがアイルランドでやってることもこれと同様なのでは」と気づいてしまい、1916年のイースター蜂起への流れ(反英抵抗運動の武装化)につながっていくというつながりも前回書いた通りで、実に何がどこでどうつながるか、わからないものである。

というわけでレオポルド2世は1909年に亡くなったとき、国民からは大不評にさらされていたという。

独裁国家で自国民を殺しまくっている独裁者の銅像が国のあちこちにあるという例はあるが、ベルギーは立憲君主制の国だ。国民から愛想をつかされたような国王の銅像をあちこちに立てて顕彰するということは普通ありえない。「ダメな王様」は死んだらそのままそっと語られない存在、忘れられる存在になるものだ(「世界史」をやった人なら聞いたことがあると思うが、イングランド/英国に「ジョン王」の例がある)。

それが、このたびの #BlackLivesMatter 運動でペンキを書けられたり撤去されたりするといった事態になるほど、あちこちに銅像がたっているのはなぜか。

今回はそれを説明した部分を読んでいくことにしよう。

記事はこちら: 

www.bbc.com

今回は、適宜ウィキペディアなどを参照しながら、事実(ファクト)を確認しつつ英文を読んでみることにしよう。

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不定冠詞と定冠詞についてのお手本のような実例(映画撮影現場誤射事件)

今回の実例は、少し前のものだが、報道記事から。というより、報道記事に引用符つきで(発言そのままで)引用されている当局者の発言から。

この10月下旬、米国ニューメキシコ州で映画撮影中に起きた、小道具の銃による痛ましい事故で、カメラの後ろにいた撮影監督が亡くなり、そのそばにいた監督も負傷するということがあったのは、日本語圏のメディアでもそこそこ大きく報じられている通りである。

事故が起きたのは、ジョエル・ソウザ監督による映画『Rust』(原題)の撮影現場で、プロデューサーで主演の俳優アレック・ボールドウィンが小道具として手渡された銃が、何らかの理由で撮影用の空砲の類ではなく実弾が入っており、そのため、発砲シーンを撮影したときに本当に銃弾を発射することになってしまい、カメラの後ろにいたハリナ・ハッチンス撮影監督が死亡、ソウザ監督も負傷した。10月21日の出来事である。

nordot.app

このときに何が起きたのか、なぜそのようなことになったのかについては、現在も捜査が進められている(ので「誰が悪い」といった結論的なものはまだ出ていない)が、こういう事故が起きてしまった環境・状況についての解説記事もずいぶん出ていた。英語だけでなく日本語でも書かれている。例えばEiga.comの下記記事(小西未来さんによる)は、映画撮影現場のいわゆる「ブラック労働」ぶりを具体的に説明してくれている。

eiga.com

特に『Rust』の現場はひどくて、事故の直前にもカメラクルーがやめてしまっていたという。やりきれないのは、亡くなったハッチンス撮影監督がその「ブラック労働」の環境改善を求めて活動していた映画人のひとりだったということだ。

前置きはこのくらいにして、本題に入ろう。今回の実例は、事故発生から数日後、警察の調べがある程度進んで、捜査責任者が記者会見を行ったときのBBCの報道記事から。記事はこちら: 

www.bbc.com

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【再掲】so ~ that ... 構文, 関係代名詞のwhat, 分詞構文, など(ベルギーのレオポルド2世とコンゴ)

このエントリは、2020年6月にアップしたものの再掲である。

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今回も前回の続きで、19世紀後半から20世紀初頭にかけてベルギー国王として君臨したレオポルド2世の像についての解説記事から。

レオポルド2世について背景解説的なことは前回書いたので、そちらをご参照のほど。

記事はこちら: 

www.bbc.com

今回実例として見るのは、前回扱った部分の続きから。

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