Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

不定詞の意味上の主語(ガザからの自由詩 "How much must I?")

先日、《不定詞の意味上の主語》を表す《for ~ to do ...》の構造について書いた

hoarding-examples.hatenablog.jp

不定詞の意味上の主語」とは、「to doするのは誰か」ということである。それが文の主語と一致している場合や一般論のときは明示されないが、一致していないときにforを用いて明示するのである。

 

■ I have something to read. (私は読むべきものを持っている)※直訳

→ to read するのは、文の主語である I なので、特に何も書かない

 

■ I have something for my son to read. (私は息子が読むもの/息子に読ませたいものを持っている)

→ to read するのは my son で、文の主語である I とは異なるので、forを用いて明示する。「息子が読むもの」か「息子に読ませたいもの」かは文脈次第で、いずれにせよ「読む」のは話者である「私」ではなく「息子」である。

 

一般論をいうときはこうなる。

■ It's important to sleep well. (ちゃんと寝ることは重要だ)

→「誰にとってもしっかり睡眠をとることは重要」という文。

 

■ It's important for you to sleep well after a hard day. (あなたは一日大変だったんだから、ちゃんと寝ることが重要だ)

→何らかの文脈があって(例えば「私は大丈夫だから、あなたが寝なさい」と言われたのに対する応答、など)、「あなたが寝る」ことをことさらに言っている、という状況になる。

 

forを使わずに《意味上の主語》を言う構文もある。want to do ...と、want ~ to do ...を思い浮かべていただくとよいだろう。この形をとれる動詞は限られている。

■ I want to take a break. (私は少し休憩したい)

→ to take するのは、文の主語である I なので、特に何も書かない。

 

■ I want you to take a break. (私は、あなたに少し休憩してもらいたい)

→ to take するのは you で、文の主語である I とは異なるので、明示する。

 

ラサール石井参院議員のような人たちが深い知見も意味もなくdisってくれたおかげで軽視されつくしている「英文法」は、こういうことを体系的に学ぶものだ。そしてこういうことを知らないと、英語が「道具として」使えるレベルにはならない(なるとしてもひどく時間がかかる)。信じられないほどのレベルで英語を使いこなしているガザの人たちは、こういうことをかなり徹底的に学んでいる。マーフィー使ってるっていうし。

 

さて、上にリンクした先日の記事への補足。"a song for you to sing" が「あなたのために(誰かが)歌う歌」ではなく「あなたがが歌う歌」であるならば、「あなたのために(誰かが)歌う歌」は何というのかという質問があった。それは "a song to sing for you" である。語句の順番が違うだけだが、それで意味が全然変わってくる。

 

というわけで今回は、ガザでテント暮らしをせざるを得ない状況の中でも勉強し続けて修士論文の口頭試問をパスしたMBA持ちのモハンメドさんの自由律詩(自由詩)を読んでみよう。英語の詩は、規則通りに韻を踏むことがお約束だが、「自由律」ではそのルールは無視してよい。

 

 

全体にわたって、《不定詞の意味上の主語》を表す《for ~ to do ...》の構造が繰り返されている。"for them to call me a hero" は、直訳すれば「彼らが私をヒーローと呼ぶ(ためには)」の意味で(callが作るSVOCの構造にも注意)、それが "How much must I do ..." の文の中にはめ込まれている。つまり、この詩は全体が、"How much must I do ... for them to call me a hero" を何層にも重ねてある形で、最後に "a hero" をめぐるどんでん返しがある。

 

英語としては全然難しくないし、《for ~ to do ...》の構造を意識して読むのに非常に適したテクストだと思う。全訳はnoteのほうに掲載する(noteはこれから書くので、書いたらリンクします→書きました)。

note.com

 

このエントリが1ミリでも英語の勉強になったと思われたら、可能なら、MBA持ちのモハンメドさん(「モハンメドさん」が多すぎるのでひとりひとりにニックネームをつけて呼ぶようにしている)にご寄付を。金銭的余裕がないかたは、彼の言葉を広めてください。今、集団として殺されつつある人びと(ジェノサイドされている人びと)のなかにどういう人がいるのか、「あちこちのすずさん」的な目をもって、事態を見てほしい。Twitter/Xをやっていたら彼をフォローしてその言葉を追ってほしい。幼い息子さんが2人(イマドとアダム)いて、お連れ合いのヤラさんとの核家族4人でテント暮らしをしていて、珍しく、お連れ合い(成人女性)の姿も映像や写真に入れています(自分の家の成人女性の姿は見せまいとするのが現地のデフォ)――つまりとても「リベラル」な人です。

chuffed.org

さて、当ブログならびに拙Twitter/Xアカウントを、id:tmrowing (松井孝志先生)にご紹介いただきました。ありがとうございます。

tmrowing.hatenablog.comTwitter/Xのアカウントでの#ガザ市民の声翻訳について、"胸が締めつけられるような投稿が多いのですが、現実を知るためにもお読みいただければと思います" とおっしゃっていただきました。

私は、普通に読んでいたらとっくに胸が締め付けられてつぶれていたと思いますが、翻訳者なので自分の感情などというものはないものとして扱っています。それでも現実があまりにひどいし、ずっとフォローしてる人たちについてはそれなりに愛着もあるので(「ネット上の友人」という関係になっている人もいる)、本当に、ときどきどうしたらいいかわからなくなっています。そういうときに英文法解析ができる隙があると、私は救われます。現実世界で起きていることと異なり、ちゃんと根拠を示して解説すればそれで話が終わるからです。イスラエルのやっていることは単なる違法行為なので、本来、ちゃんと根拠を示して法的な手続きをとれば、それで解決するか、解決するに至らなくても停止するはずのことなのです。その秩序が、イスラエルによって破壊されている。それは今に(2023年10月7日以降に)始まったことではなく、例えば隔離壁についてはもう20年以上も前に「違法」と判断されています(「国際司法裁判所は2004年7月9日にイスラエル政府の分離壁の建設を国際法に反し、パレスチナ人の民族自決を損なうものとして不当な差別に該当し、違法であるという勧告的意見を出している」)。

ガザ・ジェノサイドは、この世界のルール、特に戦争犯罪や人道に反する罪、ジェノサイド罪といったものを規定する国際法をすべて無視して――というより「スルーして」という日本語がふさわしい――遂行されています。法律が無視されているということは、被害者からみれば頼れるものがないということになる。警察にストーカー被害の相談をしているのに「痴話げんか」とみなされて放置される被害者と同じで、どこにも救いがないのです。そして、その流れを主導し決定づけたのは、米国の民主党政権ジョー・バイデン大統領)です。トランプが最悪なのは、1期目で米大使館をテルアビブからエルサレムに移転させたことからも明らかですが、ガザ・ジェノサイドの責任を負うべきはトランプではないです。でも、トランプはICC国際刑事裁判所)に制裁を発動するという暴挙に出たわけで、責任がないわけでもないです。そこまでして、何を守りたいのか、と私は思ってもいるけど、結局、彼らは「守りたい」ものがあるから破壊しているのではなく、単に破壊したいのでしょう。何のためにかはわかりませんが。

そうそう、ウガンダといえば、ICCじゃなくてICJの方で、南ア対イスラエルで唯一反対してイスラエル側についていたあの判事(ICJの副所長で、今年初め、当時の所長が自国の首相となるために辞職したので、臨時の所長になったけど、その点は岩澤判事が正式な所長に選出されたので大丈夫は大丈夫)が、法に照らしてではなく、自身の信念に照らして判断していた*1ことがウガンダのメディアのインタビューで判明し、今、Twitterは大騒ぎになっている状態。国際法方面がこれを何ともできないなら、アメリカとイスラエル(とロシア)による破壊に加えて自壊の方向の力も加わるのではないかと。

 

*1:「自身の信念」だけではないかもしれない。あの人、書いたものがあれこれコピペだったことがばれているんだけど、コピペ元を誰かが支給していたのだったら……。

誤訳しそうになったときにGoogleに助けられた話: "to call out the silence" は熟語化しつつあるのかな

今、本当に、翻訳の作業中なんだけど、誤訳しそうになったのでちゃちゃっと書いておく。

頭を翻訳モードにしているつもりでも、翻訳に必要な集中ができる前に目にしている言葉が目の前で崩壊して意味を失っていくという状態で*1、普段ならこんなところで誤訳しそうになるということはたぶんないのだが。

 

今やってるのはこれで: 

https://x.com/translatingpal/status/1954609141793890626

それは下記への追記分である: 

https://note.com/nofrills_note/n/n92655b7f4838

note.com

原文: 

Following his killing, UEFA issued a statement noting his “death” but failed to mention that he was deliberately murdered by the genocidal Israeli state. His wife has publicly called out the silence, addressing football star Mohamed Salah directly: ...

これを流れで翻訳していて(英語の文字を追うのと同時に頭の中で日本語になるがままにしている状態)、太字部分をうっかり「沈黙を破り」と訳しかけ、「いや待て、この原文はそんなこと言ってないぞ」と読み返して(だって事実として、ここでの話者、つまり "His wife" には「破る」ほどの「沈黙」はなかったのだから)、……通常ならここですぐにちゃんと言葉通りに訳せるんだけど、今は極めて調子が悪いので、意味が取れなくなった。

もちろん、call outという句動詞は知ってるし、自分でも英文を書く際に使いたいときに使える範囲の表現だが、普段なら何ら苦労しないところで、call outがひとつの表現として意味をなさず、callとoutというばらばらの単語にしか見えない。頭が高校2年レベルまで戻ってしまった(こういうのを繰り返して、自分で英文を少しは書けるところまで持ってきたのである)。

それがまた自分に負担になってストレスが増すのだが、やらないという選択肢はない。

こういうときにすべきなのは、辞書を参照することだが(辞書をひくという習慣がない最近の人にはこれがまったく通じないのだが、この基本をおろそかにすると、誤訳量産機にしかなれないよ)、辞書を引く気力すらないので、とりあえずググるという雑なやり方をしたところ、AI導入後の今どきのGoogleは気の利く秘書みたいになってて、一発で調べものが完了する。これが「誰も元の記事を見ようとしないのである」的な状況を引き起こし、内容だけGoogleに吸い上げられる報道機関は危機感を表明、みたいなことになっているのは知っているが(報道機関よりも、個人がSubstackなどで運営している専門性の高いサイトが深い危機感を抱いている様子。エチオピア情勢とか)、実際にググるだけでこれが目の前に出てくると、「わ~い、一発で済んだ♪」と思ってしまう。

 

https://www.google.com/search?q=Call+out+the+silence+meaning

つまり《to call out the silence》という表現には、"to bring attention to the lack of speech or response in a situation" (発言や反応がないという事実に注意を向けさせる)という意味がある。うん。直訳だね、これは。「沈黙をcall outする(指摘する)」だから。

そっから、「さまざまなニュアンス」として4項目が挙げられているが、"Publicly confronting" と "Focus on injustice" が《熟語》っぽい。「沈黙をcall outする」という直訳からずいぶん離れてきてるので。

 

なお、上記のGoogle検索画面のキャプチャは私のトラッカーがある状態でのもの(私のフィルターバブルの中でのもの)で、トラッカーを手動で外して同じURLを読み込むと下記のようになる。私向けにカスタマイズされている検索結果より、こっちの方がわかりやすいね。そんなに「難しいの読んでる奴」扱いされてるのかな。

 

※AIがまとめて列挙している部分は、本気で参考にしたいなら、ソースとして表示されるリンク先に本当にそんなことが書いてあるのかどうかを確認する必要がある。実際に中を見てみると「そんなこと書いてないじゃん!」ということも多発するのがAIなので、本当に要注意。

 

ともあれ、これで疑問は解けたので、翻訳の作業に戻ることができる。英語ブログのネタもできたし、Googleのフィルターバブルの実例も採取できたし、めでたしめでたしじゃないか。

 

というわけで、note記事の更新に戻ります……。とりあえず「夫について語られないことがあると指摘」っていう方向性で日本語にします。

 

*1:原因はストレスで、しかもそれは翻訳対象の言葉、それらの言葉が語っていること、それらの言葉が生じている状況が私という人間にもたらすストレスなので、逃げ場はない。

not ~ any, help + O + 動詞の原形, など(ガザから、学問継続のためのペンと紙を買う代金の支援要請)

ガザの大学生マフムードさん(アズハル大学、医用生体工学専攻)から、学問を続けるための支援要請が来ています。

 

これ、対面でお話する方にお伝えするとほぼ例外なくびっくりされるんですが、この状況下で、ガザでは高校も大学もリモートで授業・講義・試験が続いています。学生はテント暮らしをしながら課題と向かい合い、教員は授業プランを考えたり試験問題を作問したり採点したり、学生からの「昨日、隣のテントが爆撃されて急遽避難しました。課題提出日を遅らさしてください!」といった請願に応じています。コロナ禍でリモート教育のシステムが整っていたのが不幸中の幸いで、それがなかったらいったいどれだけの人が教育をあきらめていたか。

 

マフムードさんも、北部ベイトハヌーンから南部ハンユニスに避難してしばらくしたころ、一度、学問の継続をあきらめたことがあります。一家の長男坊として生活を支え、食料や水、燃料を確保しながら、スマホやPCの充電のため共同充電所にでかけ、ネットのつながるところまで行って課題をDLしてくるだけでももういっぱいいっぱいで、その上学費もかかる。学問の中断は思いとどまったものの(彼は真剣に、技術者になりたいとがんばっています)、今度は、3日にハンユニスの避難先の学校が爆撃されてお身内を亡くし、埋葬が済んだらその足で殲滅作戦がおこなわれているハンユニスを脱出して、破壊の程度がそれほどでもない中部デイル・アル=バラハに行き、数日路上生活したあとでようやく身を寄せることができる家を見つけ、高額な家賃も何とかしたばかり。そのなかで、ノートやペンがどこかにいってしまったのかもしれないし、あるいは単に持っていたものを使い果たしたのかもしれない。

 

いずれにせよ、逆境なんていうものではない逆境で、学ぶことをあきらめていないひとりの学生さんのため、金銭的ご支援が可能な方にはご検討いただければと思います。何とぞよろしくお願いします。

chuffed.org

※本稿はnoteにもクロスポストしますが、当ブログらしく英文法解説しておくと、 "I don’t have any notebook or pen" は《not ~ any》の構造で、noの意味、全否定です。「まったく~ない」。 "Please help me buy the necessary paper and pens." は《help + O + 動詞の原形》の構造。

 

noteへのクロスポスト完了

note.com

UPDATE

期末試験受験中のマフムードさんから。まず初日の受験完了報告。添付画像で「提出済み、採点待ち」であることが確認できます。

 

試験2日目。「大変な状況下でろくにものもないけれど、全力を尽くして学業をやり遂げます」という決意の弁。学費もクラファンで集めているとはいえ、細かく報告してくれて、本当に律儀な若者だと思う。

しかも勉強してるだけでなく買い出しにも出てるし(まだ価格が高すぎて買い物はできないなあという段階): 

弟さんが買い物をしてきたんですね(彼は彼のクラファンをやっている): 

幼い弟さんと妹さんがスープか何かの鍋を見ている間、そばについているお兄ちゃん。この肩の細さ。痛々しい。

 

UPDATE: ブクマ家のみなさん、ありがとうございます

当エントリがはてなブックマークのトップページに出てるのを発見して、スクショしてマフムードさんに送ったら、すごい喜んでくれました。ブクマカのみなさん、ありがとうございます。

 

手書き文字(90代のイギリス人)

いやもう、「Twitterすごい」としか言いようがないんですが、以下をここにアップするのは第一義的には手書き文字の実例です。90代のイギリス人の手書き文字。かなり読みやすいので読んでみてください。下記のツイートに添付されている写真。

 

 

ツイ主のニコラ・ペルジーニさんは、スコットランドエディンバラ大学准教授(政治学)。彼のもとに送られてきた手書きの手紙を写真で紹介してくれているのですが、この送り主のおじいさんA L Smithが、第一次大戦中から戦後にかけて、オクスフォード大学のベイリオル(ベリオール)・コレッジ*1のmasterで、1919年にヴァイツマンから2年前に出されたバルフォア宣言を支持するよう依頼する書簡を受け取ったが、おじいさんは「パレスチナの地にユダヤ人がsettleすれば、現在住んでいる人がunsettleすることになる」として支持を拒否したと。

 

ベイリオル・コレッジともなるとmaster(学長)のリストがウィキペディアにあるのでチェックしてみると、確かにある。歴史学者1850年生まれ、1924年没。

https://en.wikipedia.org/wiki/Arthur_Smith_(historian)

 

ウィキペディアにはさすがにバルフォア宣言のことは書いていないけれど、大英図書館などで掘ろうと思えば掘れるのではないかと。英国のことなので。

 

いやあ、すごいものを見たのでシェアしたくなりました。

 

肝心の通信の内容はペルジーニ准教授が論文なり論説記事なりに書いてくれると思いますので、気長に待ちましょう。

 

サムネ用:

 

*1:雅子さんが学んだのはここ。

「仮定法はこう使え!」というお手本が、ガザからやってきた。

久しぶりにログインしました。

 

今回のエントリは、表題通り。下記です。初見で、あまりの美しさにしばししびれました。英語の仮定法独特の、ちょっともっちゃりした余韻が重なり合うところに、等位接続詞andを使う(べき)《列挙》の構造が絡んできて、気取らない、身近で素朴な言葉の連なりが美しい絵を描く。そこに "siege" とか "F-16" といった、いわば「ガザ用語」が、現実というものを突き立てるようにして、自然に織り込まれている。

 

とにかく、読んでください。医用生体工学専攻で義足の技術を学んでいる大学生、マフムードさんの投稿。彼にとって英語は外国語です。私にとってもそうだけど、私が彼の年齢のときに英語でこういう表現力を持っていたかというと持ってなかったし、今だってたぶん、かろうじて足元に貼りつけてはいるかなっていうくらいの能力しかない。

 

一応、当ブログらしく英文法解説めいたことをしておくと、下記の太字のところが《仮定法》です。あと、下線で示した "used to" もきれい。

What if there were no war on Gaza?
Perhaps I would be telling you about the beauty of Gaza — about its calm sea and its kind-hearted people.
I would have spoken about our beautiful traditions, about thyme and olives, about the traditional dabke we dance in joy,
about our simple celebrations that filled our homes with laughter,
about how we used to play and have fun in our little neighborhood in Beit Hanoun, running freely, laughing wholeheartedly.

...

 

本来は、一字一句に真剣に向き合って、粗訳して寝かせて推敲して訳しなおして……というプロセスを経て日本語化して公開するような性質の文(というか「散文詩」ですよね)なのですが、今は事情があってスピード優先なので、ざっと仮訳したものをnoteにアップしてあります

note.com

なぜ「スピード優先」かというと、マフムードさんは緊急にお金(クラウドファンディング)を必要としているから。私にできることとして、ガザからの言葉の翻訳に使っているTwitter/Xやnote以外のチャンネルにも彼の言葉を流して、彼への投げ銭を1人でも多くの人に検討してもらいたいから。

chuffed.org

何が起きているかというと、ガザでは今が「物資入手のチャンス」(それも今後ないかもしれないようなチャンス)になっているのです。

 

数か月前に完全に封鎖されて物資がまったく入らなくなったガザ地区には、基本的に、食べるものも生活必需品もずっと入っていません。ひどい兵糧攻めです。GHFとかいう「人道支援を称するデス・トラップ」と称される詐欺的な目くらましの事業と、「人道危機を憂慮してま~す」というアラブ諸国のポーズのための物資の空中投下で、焼け石に雀の涙を垂らすような物量の物資を、加害者自身が焼け石を火炎放射器であぶりながら入れてくる、という状況で、それを加害者は「物資は入っている」と言っているんだけど、「なんがつなんにちなんじなんぷん、何を何キロ?」と小学生のようにツメたら、相手は黙るんじゃないかなという程度でしかない。ガザとイスラエルまたはエジプトの境界のこちら側には、普通に物資を積んだトラックが列をなして待機しているのに、境界線を越えることを、ガザ地区の外周部を制圧している/支配するイスラエルが許可していない、というか、イスラエルの一般市民のうちの過激派が、道路をふさぐなどして積極的に妨害している。

 

私がフォローしているガザの人たちも、自撮り写真を見る限り、「細い」んじゃなくて「薄い」という印象になっていて、赤ちゃんは体が大きくなるどころか痩せ始めていて、こちらとしても不安と焦りでどうしようもなくなっているんですが、昨日8月7日に唐突に、支援物資のトラックがある程度の意味を成すくらいの数量でまともに(略奪されずに)入って、何人もの人が「市場に物が並んでいる」という報告をしている、という状況です。物価も、小麦粉やお米1キロが日本円に換算して数千円、という法外な価格から見れば大幅に下がっていて、多くの人が、数か月ぶりにお砂糖を買って、甘くしたお茶を飲んでいると報告している。

 

しかしマフムードさんは、つい先日、避難先としていた南部ハンユニスの学校がイスラエルに爆撃されてお身内が犠牲になり、イスラエル軍が殲滅作戦の最終段階に入ったハンユニスを出て、中部デイル・アル=バラハに移動したはいいものの身を寄せる場所も見つからず、ようやく見つけた家は大家が法外な家賃を要求……という状況で、本人ふらっふらの状態で必死にネットで呼びかけてお金を集め、ようやく家を確保したばかりです。つまりこれまで集めたお金は使い果たしている状況と思われます。ちなみに彼は彼の核家族では長男で、お父さんは怪我のため働けず、長男の彼が大黒柱です。まだ大学生なのに。ジェノサイドなんか起きていなくて順当に技師になれていたら、専門職として安定した収入を得ていたかもしれないけれど(←仮定法で書いてみた)、今はその見込みもなく、頼れるのは本当にクラファンだけという、めちゃくちゃ不安定な状況です。しかも、彼が面倒を見る責任を負っているのは、彼自身の核家族の他に5家族(近縁の親族)。というわけで、物価が下がっているこのチャンスに必需品を調達するために、1家族あたり100ドル、6家族分で合計600ドルの支援要請が出ています。

 

 

というわけでの「スピード優先」での仮訳公開です。何卒、よろしくお願いします。

 

マフムードさんのクラファンはこちら: 

https://chuffed.org/project/mahmoudmassri

クラファンの要請文の文面は日本語化してあります。下記画像です。これは自由にダウンロードして印刷等していただいてかまいませんし、これをネタに金儲けをしようというのでない限りは訳文は自由にお使いいただいて構いません(訳文の権利は私は主張しません)。

https://chuffed.org/project/mahmoudmassri

しかしまあこの人たちのこの英語力は本当にすごいと思う。日本で「12年間もやって英語がしゃべれないのはどういうことだ」というルサンチマンのにきびみたいなものから噴出した怨念が作り出した、間に合わせの、「道具としての英語」という美名で呼ばれるようなものではないので。

 

(ほぼ全編現地語の映画『ノー・アザー・ランド』でもバーセルが一瞬だけ英語を使うシーンがあって、そこで彼は自分の教育的なバックグラウンドに言及していたんだけど、ガザの人たちの状況は西岸のバーセルとはまた違う。)

 

"a song for you to sing" は「あなたのために歌う歌」ではない。「あなたが歌う歌」である。(不定詞の意味上の主語)

わたしは激怒した。必ず、かの、イメージだけでしたり顔で「日本の英語教育」を語っちゃう上に1980年代末の、『別冊宝島』の「道具としての英語」の時代の認識のまま「文法」を敵視する業界人改め国会議員(参議院)の、「張りぼて」と言うのも張りぼてに失礼なレベルでチャチな言説にカウンターをくらわしておかなければならぬと決意した。わたしには政治がわからぬ。わたしは、一介の英語屋兼ブロガーである。コンマのあとにスペースがなければ笛を吹き、仮定法と遊んで暮して来た。けれども「英文法なんかやってるからしゃべれない」という邪悪な言説に対しては、人一倍に敏感であった。

ラサール石井*1の思い込みとは逆に、日本の英語教育で「英文法」が片隅に追いやられて、もう何年になるだろう。ぶっちゃけ、そうなる前から、文法などお構いなしに「何となくフィーリングで」*2英文を読む大学受験生はとても多かったし、その中にはごくまれに、なぜかとびぬけて優秀で、文法はまったくできないのに読解テストは8割超をコンスタントに得点するという人もいた(が、そういう場合は自分では英文を書けないので、自由英作文ができないと受からない大学には進めなかったりするのだが)。いやもうほんとマジで、He is a lawyer. を He has been a lawyer for 30 years. に展開することもおぼつかない、みたいなことは、いつだってとてもありふれていたんだけど、もうそういう問題ではなく、全体に、なんていうか……と急に歯切れ悪くなっててあれなんですがごめん。

昨晩、noteのほうでこの記事を書いたときに、"My Death is not a song for you to sing" というタイトルの「ガザの詩人の会」の自主制作本(電子書籍)について自分のツイートを発掘する必要があって、このタイトルをTwitter/X内で検索したときに目にしたものを見て、「英文法大事!!!!!!」と叫んだわけですよ。さらしたいわけではないのであちこちマスクしますが、スクショ: 

 

 

うんうん、わかるよ、単語だけ勝手につなぎあわせるとこうなるよね。だがこれは不定詞の意味上の主語》だ。英文法ちゃんとまじめにやってないとできない項目トップ10の上位に食い込む例のあれだ。

 

It's easy to take a picture with your phone. という文なら一般論だ。「(一般的に)携帯電話を使って写真を撮ることは簡単である」という意味だ。

それを一般論にせず、「特定の誰かが写真を撮ること」を言いたい場合に《意味上の主語》が出てくる。 It's not easy for me to take a picture with my phone, because I'm injured in my right hand. みたいなものだ。「私が携帯電話で写真を撮るのは難しい。右手に怪我をしているので」。これは一般論ではない。「ほかの人にとっては難しくないかもしれないが、私には難しい(怪我をしているから)」ということを言っている。

 

これを踏まえていないと、It's not easy for me to take a picture with my phone. を「携帯電話で自分のための写真を撮るのは簡単ではない」と解釈してしまうのだがそれは誤訳だ。上記キャプチャはまさにその例である。

さらにそこから、日本語だけで勝手に考えて「携帯電話で自撮りするのは難しい」とか「インカメラで映え写真ってどうやったら」みたいに「意訳」してしまうこともあるだろうが、それは意訳じゃなくて単なる誤訳である。元の解釈が間違ってるんだから。

 

ひるがえって、"My Death is not a song for you to sing" だが、これは「私の死は、あなたのために歌う歌ではない」ではなく、「私の死は、あなたが歌う歌ではない」である(to singするのがyou, というのが《意味上の主語》の構造。こう説明しても理解されないのがデフォっすけどね)。

 

要は、他人の死を勝手に称揚すんな、ということで、これは2023年10月以降全地球規模で広がっている、非パレスチナ人の間でのパレスチナナショナリズムの熱狂と陶酔に、当事者であるパレスチナ人によってガツンとくらわされているパンチである。非パレスチナ人は、パレスチナについて語ることはできても、パレスチナ語ることはできない、というとわかりやすいだろうか。翻訳者なんざ特に、基本的にただの媒体なんで、自分が熱狂しちゃいかんのである(ましてや煽動するなどもってのほか)。自分が歌うな、言葉に歌わせろ、そういうことだ。

 

私はロマン主義的な熱狂、あの甘美な陶酔も知っている(いろいろあったんだよ)。むしろ大好きだ。だが、それを捨てねばならぬ。わたしは覚悟した。そういうことだ。

 

そんなことより、不定詞の意味上の主語くらいはしっかり押さえようず……

 

https://x.com/n0fr1ll5/status/1937904439941366256?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1937904439941366256%7Ctwgr%5E49b5a161e3c372e0c52184ea7ab9fc416d3cf21f%7Ctwcon%5Es1_c10&ref_url=https%3A%2F%2Fnote.com%2Fnofrills_note%2Fn%2Fn10746a0c0162

https://x.com/n0fr1ll5/status/1937904439941366256?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1937904439941366256%7Ctwgr%5E49b5a161e3c372e0c52184ea7ab9fc416d3cf21f%7Ctwcon%5Es1_c10&ref_url=https%3A%2F%2Fnote.com%2Fnofrills_note%2Fn%2Fn10746a0c0162

 

buymeacoffee.com

ちなみに、このEbookを紹介してる元スレッドはこれ: 

ドイツ、ベルリンとスコットランドに拠点のある自主出版レーベルで、フェミニズムや反植民地主義の詩を扱っている。下記の詩集はデスク脇に置いて常に参照できるようにしてある。

Keep Telling Of Gaza

 

英文法の重要性については、下記の本がいい。ゴールは「書く」ことで(このあたり「英会話」で熱狂している日本の「読み書きはできるのに会話ができなかったと思い込んでいるけれど実は書くこともできなかった中高年」の視野の狭さは致命的だが、今の30代から下はこの「英語の読み書きはできる日本人」という神話からは自由だろう)、そのために「文法」がいかに重要かをちゃんと書いている。著者は「外国語としての英語」というものを扱いなれている英語母語話者である。翻訳は高橋さきのさん。

 

ていうか、「英語の読み書きはできるけどしゃべれない」と眉間にしわよせてた中高年、こういう英語書けないでしょ。

これは、ガザで経営学を大学院で学んでいる最中にジェノサイドに巻き込まれた人の英語。

 

この人も経営学を修めた人。

 

看護師さん。

 

今、ぱぱっと見た画面にあったものをいくつかリンクしただけだが、このクオリティの英文がガザからは毎日、いくつものアカウントから流れてくる。この人たち、もう20年近く前から封鎖下にあって、自由に外と行き来できるわけでもない環境で育って学んできて、この英語を使えてるわけです。文法はケンブリッジの教材(マーフィー)でがっつりやってるみたいですね。

 

 

*1:この名前もいいかげん恥ずかしいんだが、私はこの名前を「恥ずかしい」と思って30年くらいになる。

*2:こういう常套句があった。

ガザの中学校での英語の授業がどんな感じか、教諭自身が映像を投稿しています。

英語を教える立場にある方、あった方ならきっとご興味がおありかと思うので、noteにアップしたものをこちらにもリンクしておきます。

 

パレスチナ人の教育水準が(かなりとんでもなく)高いというのは、ずーっと前から、それこそアラファト議長が「パレスチナ」そのもののアイコンだったころから言われていたことで、それはイスラエル建国以降、先祖から受け継いできた土地を奪われ、故郷を追われて難民化したパレスチナ人の多くが、何があっても奪われえないものとして教育を重視したから、と説明されてきて、私もそれに納得していたのだけれど、それにしたって、この人たち、英語できすぎでしょ、というのは、2005年ごろから、ガザから英語を使ってツイートしていたりブログを書いたりしていた人たちの英語に接するたびに思っていたことです。単に流暢なだけでなく気骨と気品のある立派な英語で自分の言いたいことを表現してるし、一言一言に意味のある、中身のある文を書いている。現在、DMでやり取りもしている理系の大学生など、私よりよほど英語がうまい。この人たちの母語であるアラビア語と英語は(日本語と英語同様に)遠くかけ離れた言語で、これは相当の練習・訓練の結果だし、その現場はいったいどうなっているんだろうということを、いつか、ゆっくり話せるときが来るといいなと思っているわけです。

 

「英語でツイッターやってる人たちなんてごく一部のエリートでしょ」と冷笑する人がいそうですが、故リフアト・アルアライール教授(彼はガザの自治体アカウントの英語屋さんだった)をはじめとする大学教授など上層の知識人だけでなく、一介の英語教諭も、薬剤師やアーティストも、大学生も、みんなすごい。今はガザ地区の外に出ているジャーナリストのアブバクル・アベドさんなど、発音もばりばりのRPなんだけど(「BBCイングリッシュ」と呼ばれるアクセント)、実はまだ大学卒業してない(在学中にジェノサイドが始まって、現場に放り込まれた形。本来はスポーツ・ジャーナリズムが専門)。彼はイギリスの大学に留学しようとして試験は通ったんだけど、ガザのパレスチナ人だから留学できなかったということがジェノサイドの直前にあったとBBCのニュースキャスターみたいなかっちりした英語で説明してたんですよ。こちらとしてはもう、目が点、耳はダンボで聞きいるよりなかった。

 

アブバクル・アベドさんは突出して優秀なのだし、彼だけでなく、すばらしい英語が使えるかどうかには個人の資質とか、向き不向きとかいったことはもちろんあるにせよ、とにかく全体の水準が高いことは間違いないです。となると、この人たちの大学以前の学校での英語って……という興味をおぼえない英語教育関係者はたぶんいないと思います。

 

と、そんな中、ガザで英語教諭をしていたアラアさんが、かつて自分の授業光景を何かの取材で撮影した映像をアップして「懐かしいなあ、生徒たちに会いたいなあ」とツイートしていたので、それをnoteで取り上げました。ジェノサイド前の、平凡な中学校の教室での英語の授業の様子です。

note.com

なお、アラアさんは現在はガザ地区の外に出ていて、そこで英語を教えたり、オンラインでアラビア語講座を開いたりしていますので、関心がおありのかたはぜひ、彼女のアカウントをフォローしてみてください。ちなみに、アラアさんは故リフアト・アルアライール教授の教え子のひとりです。

Gaza Unsilenced

Gaza Unsilenced

Amazon

 

ガザでの英語については、We Are Not Numbersという語りと記録のプロジェクトの責任者、アフメド・アルナウークさん(在英パレスチナ人)がまとめた同名の本の序文にも書かれています。この人たちがいかに真剣に、「英語を使って語ること」に取り組んできたか。「会話に頻出する表現を覚えましょう」っていうレベルの話ではないんです。語り残すための強靭な英語。

 

ガザで栄養支援のプロジェクトのテントをイスラエルが爆撃し、大勢が死傷した件で、現場からの報告をまとめてあります。

はてブでも話題ですが: 

https://b.hatena.ne.jp/

ガザ地区で栄養失調に陥っている乳幼児や母親たちを対象に無料で栄養相談を実施し、栄養補助食品(サプリ)を支援している診療テントの行列にイスラエルによる空からの攻撃が行われ、大勢が殺傷された件、現場で栄養相談をしている医師(モハンメド医師。「モハンメド」さんが多すぎるので私は「メド先生」と呼んでいる)がTwitter/Xの相互フォローさんで、私の見ている画面には、攻撃直後のツイート/投稿が流れてきていました。

これを含め、このときのガザ地区内からのツイートをnoteのほうにまとめてあります。私がショックを受けすぎている上に、次から次へといろんなことが報告されていて、まだエントリの後半が完成していないのですが、骨子(現地の声のまとめ)はできています。英語としては難しいものはないので、ご一読いただければと思います。

note.com

メド先生のこの栄養支援活動については、この攻撃の何日か前に翻訳紹介しています。

note.com

https://x.com/Medo198518/status/1943203707719721384?ぷref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweeteきmbed%7Ctwterm%5E1943203707719721384%7Ctwgr%5E7139f6c0asie7si0a8bc23011e1c9c94c55d235c6baa%7Ctwcon%5Es1_c10&ref_url=https%3A%2F%2Fnote.com%2Fnofrills_note%2Fn%2Fnd03e6b3575f0

Twitter/Xをご利用の方は、メド先生のアカウントをフォローしてください。できれば金銭的支援も(Chuffedでクラファン実施)。クラファンのURLはnoteの記事(両方とも)に記載してあります。よろしくお願いします。

 

メド先生についてのnoteの記事は、「臨床栄養学のメド先生」というタグをつけて一覧できるようにしてあります。そちらもご一読いただけますよう。

https://x.com/Medo198518/status/1943203707719721384?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1943203707719721384%7Ctwgr%5E7139f6c0ae70a8bc23011e1c9c94c55d235c6baa%7Ctwcon%5Es1_c10&ref_url=https%3A%2F%2Fnote.com%2Fnofrills_note%2Fn%2Fnd03e6b3575f0

 

#StopGazaGenocide 

 

■追記: ブクマコメントへのお返事■

ガザで栄養支援のプロジェクトのテントをイスラエルが爆撃し、大勢が死傷した件で、現場からの報告をまとめてあります。 - Hoarding Examples (英語例文等集積所)

猫のサムネイルは何も関係ないのか

2025/07/13 17:42

Aboutのページで説明してある通り、猫のサムネイルは当ブログのアイコンです。以前、近所にいた猫さんです。私のことをドジでのろまな亀だと思っていて(カメラのオートフォーカスがものすごく遅いので、シャッターチャンスを逃しまくっていることを見抜かれていた)、カメラ目線をくれるのはありがたいのですが、いつも上から目線でした。

 

なお、メド先生のところにも猫ちゃんがいます。耳の大きな茶トラのかわいこちゃんです。noteの「臨床栄養学のメド先生」というタグから記事をご確認ください。全部に入れてあると思います。

 

あと、noteの「ガザの動物たち」の記事群では、ガザのNNN(ねこねこネットワーク)のことなども扱っています。最新ニュースでは、NNNから猫好き弁護士さんのところに派遣されてきた子猫がへそ天で寝てます。

note.com

今のガザは「瓦礫の山」として語られ、憐れまれがちですが、そのガザで人が生きているということ、生きようとしているということを、広く知ってほしいです。人が生きているところに猫や犬など動物たちも生きています。

 

いわゆる「ずっこけ分詞構文」の実例(ロード・ノーマン・テビット死去)

江川泰一郎『英文法解説』のp.347にいう「ずっこけ分詞(構文)」(分詞の意味上の主語と文の主語が一致していない形の分詞構文。より堅苦しくは「懸垂分詞」)の実例を、ノーマン・テビットの訃報で見かけたのでメモ。

 

Born to working-class parents, his wife permanently was paralysed when an IRA bomb went off at Grand Hotel in Brighton on Oct 1984 at 2.54am.

Born to working-class parentsしたと筆者が言いたいのはheでありhis wifeではないので(実際にはhis wifeもborn to working-class parentsしていたかもしれないが、筆者はそれを語りたいわけではない)、この文はコンマの前の分詞句の意味上の主語 (he) と、文の主語 (his wife) が一致しておらず、すなわち所謂「ずっこけ分詞構文」である。

しかしこの記述、"on Oct 1984 at 2.54am" って、時刻より日付を書きたかったのではないかと思うが……12 October 1984ですね。

 

ブライトン爆弾事件は、爆弾犯が本を書いてるんだけど、これが成立過程も含めてよくある「自己正当化の言い訳本」ではないのはすごいと思う。

 

英国の政党UKIPは廃れたわけではない。カリスマ指導者が新党Reform UKを作ったことで抜け殻にはなったかもしれないが。

※このブログは英語の実例についてのブログなのですが、今回は英語とは関係のない話です。はてなブックマークで知ったことなので、はてなブログに投稿しておきます。

 

昨日7月7日はてブで下記記事が話題になっていたのに気づき: 

b.hatena.ne.jp

www.tyoshiki.com 

「欧州極右」と聞いたら読まずにはいられないのでクリックしてみたのですが、ガザ・ジェノサイドでぱっつんぱっつんになっている頭(しかも、きゃっきゃうふふする仲のガザの人たちが明日にはもうこの世にいないかもしれないというおそれが、本当にリアルになっている)には、残念ながら入ってくるものは何もなく、ただ目を走らせながらだーっとスクロールダウンしてみたところ、「英国の極右」として重要な名詞であるBNPも出てこなければ(まあ、それはわかる。もう古いから)Britain Firstも出てきてないようだし、唯一出てきているのはUKIPで、それが衰退しちゃったことになってて、その「衰退」の最大の推進力である「ファラージ新党」ことReform UK(以下「RFUK」)が出てきていない。

 

ええと……。

 

というわけで、とりあえずTwitter/Xに連投したら、それが元の id:tyoshiki さんに拾われて追記として載せていただいたので(ありがとうございます)、それをこちらにも掲示しておきます。

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検索にAIが組み込まれるようになって、翻訳現場はちょっとだけ楽になったかも(人名の読み方、著名人の場合)

17日にnoteのほうで、下記のエントリをアップした。

note.com

アメリカ合衆国には仕事で必要な範囲の最小限の関心しか持っておらず、食というものにも特に関心がない*1ので知らなかったのだが、アメリカには、食に関するJames Beard Awardという権威ある賞があるのだそうだ。1985年に亡くなったJames Beardさんという専門家(日本でいうところの「料理研究家」)を顕彰するために作られた財団が運営している賞で、毎年、「最優秀シェフ賞」など食の現場に立つ人やお店を表彰しているほか、「メディア部門」もあるといい、そのメディア部門で、今年はパレスチナ人が3人、一度に選ばれた、ということがあった。

テント暮らしの人々にかなりちゃんとした食事やおしゃれなデザートを大鍋で作る炊き出しの様子を、TikTok形式のテンポのよいビデオにまとめて世界中に発信しているハマダ*2さん、ジェノサイドが始まったあとにガザを後にするという苦渋の選択をし、現在は米国を拠点としている詩人でジャーナリストのムスアブ・アブートーハさん、在外パレスチナ人として、親から自分に伝えられてきたパレスチナの料理のレシピを書き残し出版するなどの活動をしてきたライラ・エル=ハダッドさんの3人である。

詳細はnoteに書いたエントリを参照していただくとして、こちらに書いているのは、この賞、James Beard AwardのBeardは何と読むのか(どうカタカナにすればよいのか)ということについての調べもののことを書いておきたかったからである。つまり、「ビアード」なのか「ベアード」なのか、だ。

*1:私にあるのは「関心」ではなく「好き嫌い」である。肉を食わないのは肉が嫌いだからだし、肉を食わないと、圧倒的品数がぎゅうぎゅうに詰め込まれているカルディに行っても買うものがない(あの店のものは、人々が目をキラキラさせて語る調味料やレトルト、瓶詰はほぼ全部「肉エキス」「鶏ガラスープ」の類が入っている)。よってカルディにも関心がない。スパイスと豆は安くてありがたい。

*2:モハンメドの愛称である。

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劣勢比較が読めない人は、翻訳に手を出す前にやることがあります。(ガザの殺傷を記録した写真でもthe least graphicなもの)

前置きなしでザクザクいこう。

 

今回の実例: 

https://x.com/MahaGaza/status/1934900963438977386

本文に添えられている写真がTwitter/Xによって非表示にされているので、キャプチャで。

https://x.com/MahaGaza/status/1934900963438977386

注目するのは書き出しの部分。

One of the least “graphic” images from today’s Israeli massacre of starved Palestinians near a US-backed aid distribution point in southern Gaza.

っていうか、この息が長い文(「体言止め」の形式で動詞がないから、厳密には「文」ではないのだけど)の最初だけ。

One of the least “graphic” images 

これ、ぱっと見て、「最もgraphicなimageのひとつ」と解釈してしまう人*1は、その状態では、翻訳には手を出したらいけません。手を出す前にやることがあります。

はい、おわかりですね。《劣勢比較》。

*1:なかなか信じてもらえないんですが、英語と日本語というものを突き詰めてない一般的な人は、「英語なんか、わかんないところは飛ばして解釈していいんだよ」と甘やかされるままになっているので、こういうのができないんですよ……これができなくても100点満点で80点は取れますし。

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不定冠詞と定冠詞(「銃弾がひとつ、僕の頭の脇をかすめていって……」 #ガザ市民の声翻訳 )

このブログの管理画面にアクセスするのもずいぶん久しぶりになってしまってすみません。前置きなど書いているとまた時間がかかってしまうので、いきなり本題です。

 

今回の実例(出典は下に書きます): 

Today, I nearly lost my life. The school where my family and I were sheltering was targeted with random shelling. A bullet passed right next to my head and exploded in the wall beside me — as you can see, this is the bullet.

https://x.com/MahmoudMassri15/status/1933522472374018246

これは、ガザ地区で北部の自宅を追われ、遠く離れた南部の町の「安全な区域」とされている場所にある学校の建物に家族ともども身を寄せている大学生の書いた文の一節と、その文に添付されている写真です。

その学校のあるエリアにイスラエル軍の攻撃があり、流れ弾が飛んできたときの身も凍るような体験を、さらっと描写した一節です。

ここで注目したいのは、下に太字で示す通り、《不定冠詞のa》と《定冠詞のthe》です。

A bullet passed right next to my head and exploded in the wall beside me — as you can see, this is the bullet.

自宅を奪われ避難所に身を寄せている筆者(もちろん非戦闘員です)の頭の脇をかすめて飛んで行った銃弾は、不定冠詞をつけて "a bullet" といい、壁に着弾したその銃弾(を写真に撮ったもの)は定冠詞で "the bullet" といいます。

非常に基本的な英文法なのですが、もともと「冠詞」というものがない日本語を母語としている上に、「冠詞なんていう細かいこと(はどうでもいいのにこだわるなんてばかげている)」というプロパガンダみたいなのが横行している環境にいると、どうしてもこういうことを「なんとなく感覚で」理解しているだけ、ということが多くなります。しかも最近は、学生さんが、英文法を「文法」として学ぶ機会が激減している。

でもこういう「文法」を知らないと、ガザのこの大学生(マフムードさん)の書いているような、ちゃんと意味が通じる英文は書けない。

ガザの人たちが英語でものを書くことについては、英語教育者だった故リフアト・アルアライール教授が編纂した、ガザ地区の若者たちによる英語での創作短編集の前書きに説明されています。「英語帝国主義がー」といううねりに対抗して築き上げられたのだろうと思しき、強靭な思想です。読んでみてください。下記の本の前書きの部分にあります。

原著も電子書籍があるので、そちらでも。

 

さて、今回実例として参照したマフムードさんの投稿は、全文を下記で日本語化してあります。本人とも連絡を取って私個人でやっている翻訳プロジェクトです。

note.com

というわけで、今月に入ってnoteを使い始めています

note.com

ガザ地区の中からの市民の声や、ガザ地区の市民を支援する外部の人々の声、国際法の専門家の解説などの翻訳を「翻訳」として扱うことは上記のnoteでやっていきます。こちらのはてなブログでは英文法をやります。(頻度増やせるようがんばります。)

 

英文法の安定っぷりが、今の私には癒しです。

第二次大戦後の世界秩序の基礎だった国際法は、イスラエルとドイツによってガザで墓場に送られてしまいました。正直、今もまだ「国際法では」と言い続けることは、延命措置にもなってないかもしれない。Twitter/X上の「国際法の死」を語る冷たい言葉――それはシオニストからだけでなく、パレスチナ連帯筋やパレスチナディアスポラからも発され、後者が重く響く――に接するたびに、「どうしてこうなった」としか思えず、「どうしてこうなった」かを考えると行きつくところは2002年から2003年のイラク戦争のゴリ押しなんですが、「どうしてこうなった」よりも「今、どうすればいいのか」を考えるべきであり、それについては「国際法」の骸を振り回すような今日(昨日かも)のマクロン大統領の発言などを聞いてはらわたが煮えくり返るような思いと「言ってくれたんだ」という思いがないまぜになって頭がぐるぐるするばかりで、答えというか解などないわけです。

一方で英文法ではそんなことは起こらない。この定冠詞にはこういう機能とこういう意味がある、と言い切れる。

今の私には英文法は癒しです。

そんなもののために、ガザの人の発言を利用するのは不謹慎だと言われるでしょうが、マフムードさんにはDMで許可取ってあります。彼もそういうことはわかっている。自分の「売り」が英語であるということは認識している。彼だけでなく、ガザの英語話者はみんなそうです――むろん「英語が好き」「英語が肌に合う」といったこともあるでしょうが、やはり「いい仕事に就くために英語を身につける」「学問のために英語が必要なのでやる」といったことでやってきた人たちです。

 

本日の内容が少しでも役に立ったと思われたら、1ドル、1ユーロでも彼に送金してください。今回の「頭に被弾しそうになった」件のほかにも、日本語圏でも報じられている、アメリカが手を出し口を出して「支援」名目でやっているデス・トラップ作戦、GHFで物資を取りに行って死にそうにもなっています。彼はまだ学生なのに、長男坊だから(家父長制!)11人家族を養わなければならなくなり、オーストラリアのChuffedというサイトを使ってクラウドファンディングをやっています。

chuffed.orgクラファンの文面も日本語化してあります。

https://chuffed.org/project/mahmoudmassri

英語でTwitter/Xを使って日々のことを書き、それで世界中の人とつながってクラファンもやっている彼にとって、これまでがんばって身に着けてきた英語が、今や生活の糧を得る道具、日本語で流行りのフレーズを使えば「武器」です(彼は非戦闘員ですが)。それは価値を生まねばならない。彼の英語から学べること、確認できることはたくさんあります。学んだら、彼に還元してください。小麦粉1キロを手に入れることすらままならないところにいる若者に。

 

 

 

GOAT, "Dude just breathes ball", ”It rules" など、こなれまくった英語(米語)を、ChatGPTも使いながら読む

2月はいろいろあってこのブログにまったく書くことができなかったので、3月は何とかしようと思っていたのに、もう下旬になる。

というタイミングで、画面を見たときに「お、これは」と思うものがあったので書き留めておこう。

Twitter/Xでは、こちらがフォローしていないアカウントから勝手に配信されてくるものが集まる Explore > For you という画面がある。

https://x.com/explore/tabs/for-you

そこには、Trening Topicsのほか、Who to followやPosts for youといったセクションがあり、さらに「ビジネスニュース」とか「スポーツニュース」とか「エンタメニュース」とかいった当たり障りのないニュースフィードがあって、そこにはだいたい常にアメリカの話が一方的にフィードされてきている(ちなみに私は英語でTwitter/Xを使っていて、地域設定も「自分がいる場所」にしていないので、日本語のフィードは自分でフォローするなどしているものしか目にしない)。

その「スポーツニュース」と「エンタメニュース」から。

ちなみに「スポーツニュース」のページを別個で開くとアメリカとは関係ないサッカーの話しか並んでいないのだが、Exploreタブだとアメリカの話ばかりで、どういう仕組みなのかはよくわからない。

ともあれ、その「スポーツニュース」のところにあったフィード。

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感覚動詞 + 目的語 + 動詞の原形, not just ~の否定の構文, 人称代名詞sheの意外かもしれない用法(ドナルド・トランプ就任式典でのイーロン・マスクの最低の所業)

ガザ地区での停戦が2025年1月19日の日曜日夕方(日本時間)に、予定より3時間ほど遅れて発効した*1。私が見ている画面はガザ地区からのフィードとガザ地区からのニュースを報じている独立系メディアのフィードで満たされているのだが、日本時間で日曜日から月曜日にかけては、停戦のお祝いと、「久しぶりに、いつ爆撃されるかを恐れることなく眠れる」といった安堵の言葉と、解放されて西岸地区やエルサレムの自宅にやっと帰った大学講師やジャーナリストなどの人質(イスラエルが不当拘束していたパレスチナ人をメディアはprisoner「囚人」もしくは「捕虜」と呼ぶが、イスラエルはこの人たちを起訴する予定もなくただ拘束していただけなので「囚人」ではなく、戦闘中の戦闘員をとらえたわけではないので「捕虜」でもない。hostage「人質」である)についてのニュース、破壊された街の破壊された自宅に戻る人々や、そこで白骨を見つけた人々(攻撃された家の下敷きになって救出することもできなかった家族の遺体である)の映像が次々と流れてきた。爆発の映像は、ガザ地区からは出てこなかった(レバノンからは流れてきたし、西岸地区は放火などでひどい状態だ)。ガザ地区から爆発の映像が流れてこないということに自分がいかに違和感を覚えているかに気づいて、ぞっとした。自分の中でもあれが普通のことになっていた。

そういう中で、米国ではドナルド・トランプの大統領就任式典が行われていたらしい。「らしい」というのは、ガザの停戦を追うのでいっぱいいっぱいで、BBCなどニュースサイトはチェックしている暇がなかったし、私の見ているTwitter/Xの画面にはその話は流れてきていなかったから(フィルターバブルって恐ろしいよね)「流れで見てしまう」ということもなかったからだ。もちろんその日程は把握はしていたのだが、元々別に米国政治に関心はないし(英国については早口で語るが)、2024年の大統領選挙の期間中、民主党とその支持者が「ガザなんてどうでもいい」という態度をあからさまに示していたのに完全に辟易して「正直、アメリカがどうなろうと知ったこっちゃない」という極端な無関心モードに入っている。

そんな中でも流れてきたのが、下記である。画像はTwitter/Xに投稿されていたRolling Stone記事のキャプチャ。ちなみに、Rolling Stone誌に対する信頼も私は失っている。信頼していたジャーナリストがここの編集長になったのでよくチェックするようになっていたのだが、そのジャーナリストが、お友達のジャーナリストが児童ポルノで逮捕されたときに容疑を隠蔽しようと記事を書き換えるという、実にしょぼいビッグ・ブラザー的な、日本の芸能事務所とずぶずぶのマスコミかっていうことをやったからだ。それでも、人々が話題にしていたら見出しくらいは見るし、今日流れてきていたこのキャプチャ画像は二度見した。

どうやらトランプの就任式での光景のようだが、これはもう完全にアレにしか見えない(ADLは「違うよ、全然違うよ」と弁護しているようだが、「ADLさんがああ言ってるんだぞ」とドヤる人々のほか、誰が信じるというのだろう)。ノルウェー労働党の青年組織のキャンプを襲って何十人も殺したテロリストが法廷でやってたやつだ。

とはいえ、普通に良識のある人は「い、一瞬を切り取った一枚の写真では文脈わかんないし……」と思うだろう。Twitter/Xのアルゴリズムはそういうところも行き届いていて(よくできてると思うよ、ほんとに)動画も流れてきている。

*1:遅れた理由について、イスラエルは「ハマスが約束していた名簿を出さないから」と言い、ハマスの側は「準備をしようにもイスラエルの攻撃のせいで進まなかった」と言っているので、名簿の提出が遅れたことは事実ではあるようだ。ソースはDrop Site Newsのフィードだが、リンクを探している時間がない。

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