Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

be able to do ~ (couldとの違い)(再掲)

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※この記事は、1月14日にこのブログを開設した直後に投稿したいくつかの記事のひとつである。開設したころの記事はほとんど閲覧されていないし、《be able to do ~》と《could do ~》は常に関心が高い項目なので、コピーして再掲しておこう。

 

www.theguardian.com

 

 

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2019年1月7日、the Guardian

上記キャプチャ画像は、英国の新聞the Guardianに掲載された記事の一部。「ケトジェニック(ケト)・ダイエット」の効果について疑問を呈する記事である。

「ケトジェニック・ダイエット」とは、脂質を多く摂り、炭水化物(糖質)を控えるという食生活によってダイエットするという方法で、ここ数年、世界的に流行している。この記事は、全体を読んで理解しようとすると、その「ケト・ダイエット」についての理解も要求されるが、当ブログは英語の文法・構文を確認することのみを目的とするので、ここでは内容面には踏み込まない。

さて、今回の注目ポイントは下記の一文。キャプチャ画面の一番下だ。《be able to do ~》に注目しよう。

I was able to stop all medication for my asthma and psoriasis within six months.

「~することができる」は、英語を学習し始めてすぐに習うように、助動詞のcanを用いる。このcanは、be able to do ~と言っても意味的には違いはないが、わざわざbe able to do ~という長たらしい形を使うことは、普段はあまりない。

しかし、わざわざこの長たらしい形を使うのが通常、という場合もある。過去形の場合がそれだ。

 

ableは「能力がある」という意味の形容詞で、an able person「能力のある人物」のように名詞を修飾する用法(限定用法)でも頻繁に使われる語である。be able to do ~は「~する能力がある」、つまり「~できる」という意味になる。

この「~できる」という意味を表すには、現在形のときは通例、助動詞のcanを用いる。

 

  Andy can play tennis very well. 

  アンディはとても上手にテニスをすることができる。

 

一方で、過去形の場合、つまり「~できた、~することができた」と言いたいときは、通例、be able to do ~を使う。

 

  She was able to run fast enough to catch the bus. 

  彼女は、バスに乗るために十分、速く走ることができた。

 

だが、助動詞のcanには、couldという過去形もある。なぜそれを使わないのか? という疑問が出てくるだろう。

先に言っておくと、「~することができた」の意味でcouldを使うことがないわけではない。だからすぐ上の例文は、次のように言っても、間違いではない。

 

  She could run fast enough to catch the bus. 

 

ただしこの文(couldを使った文)は、別の意味に取られてしまう可能性がある。だからcouldを使わずに、長たらしいbe able to do ~を使うのだ。

では、couldを使った文がどういう意味に取られてしまう可能性があるのだろうか。ここで思い出してほしいのは《仮定法》だ。

《仮定法》は実際には起きてもいないこと、つまり現実とは違うことを述べるときに使うもので、現在のことを言うのに過去形を、過去のことを言うのには過去完了形を用いる(それぞれ、仮定法過去、仮定法過去完了)。

助動詞のcouldは、その《仮定法》で用いられることが多い。《仮定法》といえばif節がある "If I had a lot of money, I could buy the sport bicycle." (「もしお金がたくさんあったら、あのスポーツ用自転車を買うことができるのに」)のような形を思い浮かべるかもしれないが、実際の英語では、if節がない形で用いられることも、とても多い。If節なしで、"I could buy the sport bicycle." だけで「あのスポーツ用自転車を買うこともできるのに」といった意味を表す用法だ。

これは辞書では、「婉曲」といった用語で説明されている。例えばWeblioに掲載されている研究社『新英和中辞典』の語義には、「条件節の内容を言外に含めた主節だけの文で; 婉曲的に」と記載されている。

つまり、She could run fast enough to catch the bus. という文は、「彼女は実際に速く走った」と《過去の事実》を表した過去形の文として受け取られるか、「彼女はバスに間に合うくらい速く走れるのに(実際にはそうしていない)」という意味の《仮定法過去》の文として受け取られるか、の2通りがある、ということだ。

そして、人々によってそのどちらの意味で受け取られるかは、話し手にはコントロールしきれない。ある人は《過去の事実》と解釈するが、その隣にいる人は《仮定法過去》と解釈する、ということもありうるわけだ。

このように、意味がはっきりしないのは、実際に社会生活の中で使うにはどうも都合が悪い。だから、意味をはっきりさせるために、《過去の事実》で「~することができた」と言いたい場合は、be able to do ~を使うことが通例になっている。

だから、今回参照した記事の中で、インタビューに答えて発言しているケト・ダイエット実践者は、I could stop all medication... ではなく、I was able to stop all medication...と述べているのだ。前者では「薬をすべてやめることができるかもなあ」程度の発言と受け取られるかもしれず、はっきりと「薬をすべてやめることができた」という事実を述べるためには、後者のbe able to do ~を使うのが自然なのである。

couldとbe able to do ~の使い分けで重要な点については、以上が非常にざっくりとした説明となる。(厳密に詳しい説明をすると、とても長くなるのだが。)

なお、このめんどくさいcouldも、否定文では何も考えずに「~することができなかった」の意味を表すことができる(この場合、わざわざbe able to do ~を使う必要はないが、それを使っても間違いではない)。

 

  I couldn't sleep last night. (≒ I wasn't able to sleep last night.)

  昨晩は眠ることができなかった。

 

また、知覚動詞(hear, see, feelなど)とともに用いる場合、は、couldを使っても、誤解の余地なく「~できた」の意味になる。

 

  We could see the moutain clearly from the window. 

  私たちは窓から、その山をはっきりと見ることができた。

 

最後に、「過去に~できた」と表すために使える表現には、be able to do ~のほかに、manage to do ~やsucceed in doing ~もある。難関大記述試験などで課される自由英作文や英検などでの小論文でこれらの表現を的確に使うことができると、よい答案になるだろう。

 

■記事そのもの: 

https://www.theguardian.com/lifeandstyle/2019/jan/07/high-on-fat-low-on-evidence-the-problem-with-the-keto-diet

 

※今回述べてきたようなことを学習するには、辞書は例文もぱっと確認できる紙の辞書のほうが、電子辞書よりも使いやすいかもしれない。一度店頭で現物を見るなどして、必要に応じて入手し、学習に役立てていってほしい。 

 

ジーニアス英和辞典 第5版

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ウィズダム英和辞典 第4版

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英文法解説

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