Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

be convinced that ..., 《let + O + 動詞の原形》, at least, without -ing(前置詞+動名詞), 関係代名詞の非制限用法, 挿入, 《make + O + 動詞の原形》, 比較級, 強調 (再掲)

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※この記事は、2019年1月にこのブログを開設したころにまとめて投稿したいくつかの記事のひとつである。開設時の記事はほとんど閲覧されていないので、重要事項がたくさん入った例として改めて見ておいていただきたく、ここにコピーして再掲しておこう。

 

今回のキャプチャ画像は、2019年1月10日の英紙ガーディアンの記事から。報道されている内容は、1月15日に最終的な採決が行なわれたテリーザ・メイ首相のEU離脱合意案をめぐる国会下院での審議のこと。非常に白熱した一日だったが、報道されている内容について理解している人は、日本にはそう多くはないだろう。以下、高校生・受験生・英語学習者の皆さんは形式だけ取れればよいので、内容が曖昧にしかわからなくても深く考えすぎないようにしていただきたい。 www.theguardian.com

 

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2019年1月10日、the Guardian

 

Some Downing Street aides are convinced that Bercow has regularly let at least one hour go past when May has been in the chamber without calling a single Tory MP who would back the prime minister’s Brexit deal – which they privately argue makes the deal look even more unpopular than it was. 

53語(291文字)で1文という、だらだらとした長い文で、なおかつ文法上のポイントが何箇所も入っている。

 

まずは全体の構造を押さえておこう。16日のエントリで見たように、やたらと長い文であっても、《文の骨格》だけにすればシンプルなものだ。今回の例文で、修飾語句を外して《文の骨格》だけをわかりやすくなるように示すと、次のようになる。

Some Downing Street aides are convinced that Bercow has regularly let at least one hour go past when May has been in the chamber without calling a single Tory MP who would back the prime minister’s Brexit deal – which they privately argue makes the deal look even more unpopular than it was. 

「Bercow(下院議長の名前)は、保守党の議員を1人も指名することなく、1時間をただ経過させてきたということを、首相官邸の補佐官の何人かは、確信している」。これが《文の骨格》だ。(ちなみにここで語られている内容は、ざっくり言えば「下院議長が首相と政府の邪魔をしているのではないかと官邸筋は考えている」といったこと。)

Some Downing Street aides are convinced that ... の部分が主節で、that... 以下最後までが従属節という構造だ。

Some Downing Street aides are convinced that ... に含まれているのは、《be convinced that ...》の構文。「【that節の内容】を確信している」という意味の基本構文である。

 

続いて、that節の中を見ていこう。that節の中の《骨格》は、上述したように、"Bercow has let one hour go past without calling a single Tory MP" となる。ここに含まれているのが《let + O + 動詞の原形》(使役動詞)と、《前置詞+動名詞だ。

Bercow has let one hour go past without calling a single Tory MP

《let + O + 動詞の原形》は「Oを~させる」だが、《強制的に~させる》という意味は表さず、《Oがしたいように~させる》とか、《成り行きに任せて(誰の意思も特に関係なく)~させる》という場合に用いる。イメージとしては、「水が高いところから低いところに流れるままにしておく」という感じ。

ここでは、let one hour go past は「1時間を過ぎさせる、過ぎ行くままにする」(go pastで「過ぎる」の意味の熟語)となる。

また、それに続くwithout -ingは「~することなく」の意味を表し、ここでは「1人の保守党議員を指名することもなく」(Toryは「保守党」、callは「議場で指名し、発言させる」)。

ここでいったん元のテクストに戻ってみるが、この位置にはat leastが使われている。at leastは「少なくとも、最低限」の意味で、at most(「多くとも、最大限で」)の対義語句だ。

  At least we'll need two hours.

  どんなに少なくても、2時間必要だ(=2時間以上かかる)

  At most we'll need two hours.

  どんなに多くても、必要とするのは2時間だ(=2時間あれば終わる)

また、ここまでで外していたregularlyも戻して読んでみると、

Bercow has regularly let at least one hour go past without calling a single Tory MP

……となり、《be convinced that ...》のthat節が、基本的に、「バーコウ議長は、常態的に、保守党議員を1人も指名することなく、少なくとも1時間をただ過ぎるままにしてきた」の意味であることが確認できる。

 

続いて、先ほど外していた修飾節を入れて見ていこう。

Bercow has regularly let at least one hour go past when May has been in the chamber without calling a single Tory MP

仮にこの文が英文読解の試験に出ていたら、このwhenの節は、基本的には読み飛ばしてよい(ただし、特に正誤判定の設問でこういう細かいところを問う選択肢があることもあるので、完全に無視してはならない)。

一方で、下線部和訳になっていたら、こういう節を飛ばしてしまわないように注意しなければならない。

このwhenの節の意味は「メイ(首相)が議場内にいるときに」(the chamberは「部屋」だが、ここでは「議場」)。

だから、この部分全体では、「バーコウ議長は、常態的に、メイ首相が議場内にいるときに保守党議員を1人も指名することなく、少なくとも1時間をただ過ぎるままにしてきた」。……だんだん長くなってきた。

 

続いてこの後を見ていこう。この後にあるのは関係代名詞の節が2つだ。最初の "who would back the prime minister’s Brexit deal" は、直前のTory MPを先行詞とする(Tory MPを修飾する)節で、文法的に特に難しいところはない。強いて言えば、こういうwouldの使い方は注目ポイントになりうるが、このてんこ盛り状態の例文でそこまで見ていると疲れてしまうので、今回はスルーしよう。意味は「首相のBrexitに関する合意案を支持すると見られる(保守党議員)」となる。

2つ目の関係代名詞の節は、コンマではなくハイフンを使ってつながれているのはイレギュラーだが(おそらく、コンマで続けるととても読みづらくなってしまうための措置だろう)、《関係代名詞の非制限用法》である。ここでは、特に先行詞があるわけではなく、そこまで述べたこと全体(議長が1時間も、メイ案を支持しそうな保守党議員を指名せずに議事進行をしているということ)を受けて、「そのことは……」と話を続けていく機能を有している。

 – which they privately argue makes the deal look even more unpopular than it was. 

whichに続くtheyは、Some Downing Street aidesを受けている。privatelyは「非公式に、内々では」。argue ~は「~だと主張する」。この3語 (they privately argue) は、この関係代名詞の節に《挿入》されている。

《挿入》とは、文の途中で語句をさしはさむことを言う。

 

  Saburo Kitajima is, my father believes, the greatest. 

  = My father believes (that) Saburo Kitajima is the greatest. 

  北島三郎は、うちの父親が信じるところでは、一番すごい。

 

この《挿入》が、主格の関係代名詞の節で用いられる場合の文が、大学受験ではよく出てくる。今回の例文の "which they privately argue makes ..." は、which makesがS+Vで、そのSとVの間に "they privately argue" が挿入されている。

 "which they privately argue makes ..." と、動詞が2つ連続していることに違和感をおぼえた人も多いのではないかと思うが、《挿入》を見つけるポイントのひとつは、その「何となく奇妙な感じがする動詞の連続」である。その場合、2つ目の動詞が主要な動詞(Vとなる動詞)で、1つ目は挿入されている節の動詞だ。つまり、 "which they privately argue // makes ..." と、 // の位置に区切りを入れて、そのあとでその「挿入節の動詞」とペアになる「挿入節の主語」を見つけて、その前でまた区切ってカッコに入れてしまえばよい。

which (they privately argue) makes ...

 

次のポイントに行こう。この《挿入》の後にあるmakeが、《make + O + 動詞の原形》で、「Oを~させる」。ここでは「動詞の原形」がlookなので、「Oを…に見せる」の意味になる。

そして最後にあるのが《比較級》。more unpopular than it wasで「実際(にそうであった)よりも人気がない」で、"makes the deal look more unpopular than it was" は「合意案が実際より人気がないように見せる」の意味となる。

この比較級のmoreの前に、《強調》のevenが置かれている。これは、「いつもこのように訳しておけば大丈夫」という定番の訳語がないも同然で、文脈に応じて適切な日本語を考えていかねばならないのだが、ここでは「さらに」などとするとよいだろう。

 

つまり、今回の例文全体では、「バーコウ議長は、常態的に、メイ首相が議場内にいるときに、メイ首相の合意案を支持すると思われる保守党議員を1人も指名することなく、少なくとも1時間をただ過ぎるままにしてきたと確信している首相官邸の補佐官たちもおり、彼らは内々では、そのことで合意案は実際よりさらに支持の薄いものと見られることになったのだと主張している」といった意味になる。

さすがにここまでのてんこ盛り状態の文で下線部和訳が問われることはあまりないかもしれないが、こういった「いくつもの要素が盛り込まれている文」を正確に読むことができているかどうかを問う形式の設問は、大学入試ではよく見られる。慌てずにひとつひとつの要素を押さえていくことが重要となる。

 

■記事そのもの: 

https://www.theguardian.com/politics/2019/jan/09/john-bercow-speaker-unafraid-to-hold-the-governments-feet-to-the-fire

 

 

英文法解説

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