Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

付帯状況のwith, 構造の取りづらい文, 関係代名詞(アイルランドのボーダー)

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今回の実例は、アイルランドのボーダー(アイルランド共和国北アイルランドの境界)*1沿いの各地で一斉に行われた抗議行動についての報道記事より。

この抗議行動は、本来なら英国がEUから離脱することになっていた3月29日(金)の翌日、30日(土)に行われたもので、英国がno dealでの離脱(合意なき離脱)という道をとった場合にダイレクトに影響を被ることになるであろうボーダー沿いに暮らす人々によって行われた。

アイルランドは、北部6州(いわゆる「北アイルランド」)とそれ以外の26州(いわゆる「アイルランド共和国」)に分かれているが、その境界線は現状完全にオープンだ(物理的には「県境」程度と言える)。人々の生活はボーダーによって分かたれてはいない。ボーダーを挟んで通貨が変わるが、この一帯では英国のポンドもEUのユーロもどちらも流通しているという。そのようなボーダーが、英国のEU離脱で性格を変えてしまうかもしれない。そしてそれは単に「不便になる」ことを意味するだけでなく、1998年まで約30年にわたって続き、3000人以上の命を奪った北アイルランド紛争の時代への逆戻りという恐ろしい可能性をもはらんでいる。それについての詳しい説明は、このブログでやることではない(本家のブログには前に書いたエントリがあるはずだし、これからまた書くかもしれない)。

記事はこちら: 

www.bbc.com

f:id:nofrills:20190401093429j:plain

2019年3月30日、BBC News

今回の記事から切り出すのは、ボーダーに沿った各地で行われた抗議行動参加者の声を紹介する部分から、County Louth(ラウス州)の人々の声。ラウス州はボーダーのすぐ南側にあるアイルランド共和国に属する州である。

 

付帯状況のwith 

Our emergency services traverse the border freely at the minute, with ambulances and fire crews going from either side where help is needed.

記事の上記部分に入っているのは、《付帯状況のwith》である。ここでは《現在分詞》を伴っている。この項目は以前にもこのブログで取り上げているが、江川泰一郎『英文法解説』には次のような例文がある(p. 348)。

She was leaning against the wall with him facing her

(彼女は彼と向き合って、壁に寄りかかっていた)*2

 

英文法解説

英文法解説

 

 

実例は、「救急車や消防隊は(ボーダーの)どちらの側からも、助けが必要なところがあれば、出動しています」といった意味。つまり、アイルランド共和国の側の消防車が北アイルランドの側の火事を消しに行ったりしているわけだ。

 

構造の取りづらい文, 関係代名詞 

"[With] any emergency treatment, time is of the essence so anything that impacts on that ability to get to the nearest place to be treated has to have implications on how well you will do."

この文は構造が取りづらい。thatやtoが多すぎて、目がくらまされるという要因もあるだろうanything thatのthatは関係代名詞(先行詞がanythingなのでwhichではなくthatが用いられる)。that abilityのthatは指示形容詞で「その能力」の意味。

to get to の最初のtoはto不定詞のto, 2番目は前置詞でget to ~の一部。to be treatedのtoもto不定詞のtoである。次のhas to haveのtoはhas to ~の一部で、has to have ...は「…を持たねばならない、持つに違いない」の意味。

文の主語はanythingで、述語はhas to baveである。

実例のanything that以下の文は、「治療を受けられる最寄りの場所に到着するというその能力に影響を与えるものはどんなものであれ、どれほどよく行動するかについて、意味を持つことになるに決まっている」といった意味。要は、ボーダーで待たされたりチェックを受けるなどしている間に、救急搬送を要する人にとっては深刻な影響が出るかもしれない、ということである。

 

 

 

アイルランドに関しては、下記山本正さんの著書が出色の出来である。 

図説 アイルランドの歴史 (ふくろうの本)

図説 アイルランドの歴史 (ふくろうの本)

 

 

 ほか、栩木伸明さんの下記の本もとても楽しい。最後の章でボーダーと北アイルランドが出てくる。(そしてそのパートがとてもよい。) 

アイルランド紀行 - ジョイスからU2まで (中公新書)

アイルランド紀行 - ジョイスからU2まで (中公新書)

 

 

 

*1:アイルランドのボーダーは、日本語の報道では「国境」と表されているが、私はこれが「国と国の境界線」であるとの前提に疑問があるので、個人的な文章では「ボーダー」と表記している(仕事など、使用する用語の基準がある場合はその限りではない)。

*2:いわゆる「壁ドン」の状況であろう。

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