今回の実例はTwitterから。ツイート主は、ラジオで市井の人々の声を聞き、意見を交わす番組をやっているジャーナリストである。
日本でどのくらい伝えられているのかを私は知らないが、英国のEU離脱(Brexit)は本当にめちゃくちゃである。「議会で議員たちが意見を一致させることができない」「首相が何度もしつこく同じ合意案を議会に諮っている」といったことだけではない。そもそも「離脱」という結論に至った2016年6月の国民投票に際し、「離脱」派のキャンペーンが、嘘ありデマあり誇張あり、さらには違法行為(選挙法違反)あり、出所不明の資金あり……と、とてもじゃないがまともな投票とは言えないようなものだったことが、事実として確定してきている。通常の選挙だったら、投票結果が無効になっていただろう。
Brexitに関してそういうことになっていないのは、元々この国民投票が法的拘束力を伴うものとして行われていなかったからだ。
つまり、2016年の国民投票を行ったキャメロン政権は、投票結果を受けて「貴重なご意見、ありがとうございました。今後の政策に反映させていただきます」的な対応をしても、法的には問題なかった。キャメロンがそうしなかったのは、投票結果は受け入れると約束していたからであり、また「投票結果は参考にさせていただきます」ということをしたら保守党がばらばらになってしまうと考えていたからだ。
それならばなぜ、この投票を法的拘束力のあるものにして、不正があれば結果は無効にできるようにしておかなかったのかという疑問も出るが、投票が行われるまで、キャメロンも保守党の当時の主流派も官僚たちも、「離脱」という結果がでるとは考えていなかったのだ。
最初がそんなふうだったBrexitは、ずーっとその調子のむちゃくちゃ&でたらめが続いている。今回実例として見るツイートは、そのような文脈にある。
The more I think about this, the more I wonder why it’s not a bigger story. Brexit seems to have made cheating acceptable. https://t.co/YHZ6lGvdcD
— James O'Brien (@mrjamesob) April 5, 2019
ジェイムズ・オブライエンさんが参照しているのは、ジャーナリストで、現在はハフィントン・ポストUKの政治部長をしているポール・ウォーさんのツイート。議場での投票の際に保守党の側で不正(二重投票)が行われているという。
Funny business at work in the voting lobbies? A minister was counted by Tory whips and then nipped back in to try and be counted twice. Eagle-eyed Labour whip Nick Smith spotted him and he was caught out, source tells me. This was on the amendment Lab won by just 9 votes...
— Paul Waugh (@paulwaugh) April 3, 2019
オブライエンさんは、「この件がなぜもっと大きなニュースにならないのか」と憤っている。そこで用いられているのが、《the + 比較級 ~, the + 比較級 …》の構文だ。これは「~すればするほど、…になる」といった意味を表す構文で、報道記事ではあまり見かけないが、論説記事やTwitterなど、個人が個人として書く文章では頻出である。
The more I think about this, the more I wonder why it’s not a bigger story.
この文は、「これについて考えれば考えるほど、なぜこれがもっと大きな扱いになっていないのか、ますます不思議に思う」という意味だ。
同じ構文を使った別の例も少し見てみよう。まず、"The more I think about this, the more absurd it gets." (「これについて考えれば考えるほど、ばかばかしくなってくる」):
The more I think about this, the more absurd it gets. A grown woman wants to have a say in the birth of her child and gets criticised for it pic.twitter.com/PN85mxUvph
— Anita Singh (@anitathetweeter) April 7, 2019
"The more I think about this, the more I realize that..." (「これについて考えれば考えるほど、ますます…ということがわかる」):
The more I think about this, the more I realize that there is no coming back from a statement so threatening and inflammatory. @LisaThompsonMPP must apologize and step down if there is any hope of avoiding further conflict. #onted https://t.co/IXxBcRIhQy
— Luke McPherson (@lukemteacher) April 5, 2019
"the more I think about this, the more sad*1 it makes me feel" (「このことについて考えれば考えるほど、ますます悲しい気分にさせられる」):
Wow...very sorry to hear! Obviously this is a deep discussion/topic for a social media platform. I’m not sure what kind of positive results could come from separatism...the more I think about this, the more sad it makes me feel. I do respect you for doing your own research.
— Benny Maxwell (@bennymaxwell) April 6, 2019
分解するイギリス: 民主主義モデルの漂流 (ちくま新書 1262)
- 作者: 近藤康史
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2017/06/06
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (5件) を見る
一億人の英文法 ――すべての日本人に贈る「話すため」の英文法(東進ブックス)
- 作者: 大西泰斗,ポール・マクベイ
- 出版社/メーカー: ナガセ
- 発売日: 2011/09/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 12人 クリック: 68回
- この商品を含むブログ (51件) を見る