今回の実例は、6月7日にテリーザ・メイが保守党党首を退いた*1ことでいよいよ始まった保守党党首選挙関連ニュースより。
立候補者は確か10人で、既に保守党所属の下院議員による第一回投票は行われており、これから第二回投票、一般党員による郵便投票などを経て最終候補が2人に絞り込まれたところで決選投票が行われる。
その第一回投票のあとで、3候補が得票の基準値に達さず脱落し、さらに1人が自ら出馬を辞退した。その辞退の報道記事である。
最初の文から:
Matt Hancock has quit the contest to become Conservative leader - and prime minister - a day after coming sixth in the first ballot of the party's MPs.
まず、ダッシュによる《挿入》の箇所は、現状、保守党が(単独過半数を持ってはいないが)与党なので、保守党の党首になれば 自動的に首相になる、ということを言っている。
《a day after ~》は「~の1日後」で、「~」の部分はS+Vが来ることもあれば(つまりafterが接続詞)、名詞が来ることもある(afterが前置詞)。ここでは後者で、動名詞のcomingが用いられているが、afterを接続詞とすれば、a day after he came sixth ... と表せるだろう。
come sixthは「6位になる」。ここで動詞がbecomeなどではなくcomeになるのは慣用表現だからだ。
次のセクション:
The health secretary did not endorse any of his former rivals, but told the BBC he was "talking" to them all.
主語の "the health secretary" は前文のMatt Hancockのこと。英語では同じ言葉の繰り返しを嫌うので、このような言い換えが行われるが、日本語なら「マット・ハンコック健康大臣は~した。同大臣は……」というスタイルで書かれるだろう。
またこの文は《not A but B》の構文になっていることに注意。「AではなくBだ」という意味になるので、文意は「他の候補者たちの誰も支持しておらず、全員と話をしていると述べている」となる。(保守党党首選では離脱・脱落した候補者は自分の支持者を引き連れた形で他候補の支持に回るのだが、ハンコック氏はまだ誰の支持に回るのかは決めていないということである。)
その次のセクション:
Mr Hancock, who had been the youngest contender, said he was "focused on the future" but the party needed a leader to succeed in "the here and now".
hereもnowも通常は副詞で、here and nowといえば「今、ここで」という意味の副詞句になるのが普通だが、今回の実例の中で太字で示した部分は、定冠詞のtheがあることからわかるように、名詞句である。
これは、特に口語表現でよく見る形だと思うが、「現在」を表す慣用表現である。日本語でいうと「いま現在」という表現にとても近いニュアンスだ。用例などはケンブリッジ辞書がわかりやすい。
つまり今回離脱したハンコック氏はまだ若く、「私は未来を見据えているが、党が必要としているのはいま現在党首になろうという人だ」と述べているわけだ。
個人的には、ぶっちゃけ、将来のために今は顔見せしておこう、というような感じでの出馬だったのではないかと思う。
さて、1月に始めたこのブログも半年ほど、毎日更新してきて、文法事項では新味のあるものがなくなってきた。英文を読めば必ず文法事項は入っているので「ネタ切れ」ということは発生しえないが、何と言うか、私の側が飽きてきているので、ネタがうまく見つからないという感じがする。
なので、そろそろ「文法」ではなく「単語、熟語」についても主題として扱っていくようにしようと思う。「学校では習わない」ようなこなれた熟語や、英語で何かを書くときに迷ってしまいそうな単語の選択について、よい例を見かけたら解説していくという形になる。そういうエントリには、タイトルのところに「【ボキャビル】」と加えて検索性を高めておくことにしたい。
引き続き、よろしくお願いします。
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*1:次の党首が決まるまではメイが党首を続けている。