Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

offense (offence) は、カタカナ語の「オフェンス」から離れて意味を確認しよう

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今回は、前々回前回の続きで、offense (offence) という名詞に関してのまとめ。これでシリーズ完結だ。

hoarding-examples.hatenablog.jp

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このシリーズの発端となった前々回は形容詞のoffensiveについて、前回は動詞のoffendと、それに-erをつけて《人》を表す語について説明してきた。offensive etcはdefensive etcの対義語で、これらの語群を一覧表にまとめると下記のようになる。

名詞 offense (offence) defense (defence)
形容詞 offensive defensive
動詞 offend defend

動詞+erで

《人》を表す形

offender

(犯罪者、違反者)

defender

(防御者)

これらの英単語のうちで、日本語にカタカナ語として取り入れられ、完全に定着しているのは、「ディフェンス」と「ディフェンダー」だ。スポーツ分野での「守備」の意味から学校生活でもなじみ深い言葉で(部活やってなくても体育の授業で必ず使われるし)、「アーセナルはディフェンダーの負傷が続出」などスポーツニュースでも普通に使われるし、スポーツ以外の分野でも、例えば "Windows Defender" などコンピューターのセキュリティ・ソフトの名称の一部にもなっている。

対する「オフェンス」はどうかというと、スポーツ分野で「攻撃」の意味でよく使われることは確かだが(「バスケではディフェンスとオフェンスの切り替えを速くすることが重要だ」など、対比の形でよく使われる)、それ以外ではあまり聞かないのではないかと思う。つまり、「何となく『攻撃』というイメージはあるけれど、実際には使う機会がないカタカナ語」のようなものになっているのではないか。

こういう「何となくのイメージ」だけはあるというカタカナ語は、けっこうな確率で、やばい。日本語圏で暮らしている自分の脳内のぼんやりとしたイメージがそのまま英語でもぼんやりと通用すると無意識のうちに思い込んでしまっていると、いろいろと話が通じなくなる。(で、「翻訳なんてAIが勝手にやってくれるんでしょ」とナメてかかっていると、そのAIが処理できない部分での間違いのリスクを背負わされることにもなるだろう。)

確認しておくことは重要だ。

 

本記事の目次: 

offense/defenseの2つの綴り

offenseにはoffenceという綴りもあり、defenseにはdefenceという綴りもある。これは英米差で、どちらが正しくてどちらが間違っているということではない。米国式ではoffense/defenseとsを使った綴りが使われることが多く、英国式ではoffence/defenceとcを使った綴りが使われることが多い。

 

確認のため、英国の公共放送局BBCのサイトで、defenceとdefenseで検索してみよう。

まず、-ceで終わる綴りの場合: 

https://www.bbc.co.uk/search?q=defence

f:id:nofrills:20190710183138p:plain

英国内のニュースのカテゴリ(「航空&防衛」)やBBC制作の番組名、国会での防衛問題審議といったものが表示されている。

 

続いて、-seで終わる綴りの場合: 

https://www.bbc.co.uk/search?q=defense

f:id:nofrills:20190710183317p:plain

上から、米国のニュース、ガザ地区のドキュメンタリー(イスラエル軍の呼称)、また米国のニュースと並んでいるが、さらに下にスクロールすると 英国や英国式の綴りを使っている国(オーストラリアなど)ではない国の国防関連のニュースも出ている。

つまりBBCでは、大まかに、英国のことは英国式綴りのdefenceで表記しているが、それ以外の国についてはだいたいdefenseの米国式綴りを使っているようだ。(なお、こういう確認はGoogleなど一般的なウェブ検索を使えばよさそうなものだが、それだと、綴りを「表記ゆれ」と扱ってしまうため、思うような結果が得られないのが最近の流れなので、BBCのように自サイト内検索エンジンは自前、というところで確認するのがよい。)

本稿では以下、基本的にoffense/defenseという米国式綴りを使うことにする(が、自分のクセがあるので英国式の綴りも出てくると思う)。

 

 offenseという名詞の意味

さて、上で確認のために使った単語が、本題であるoffenseではなく、対義語のdefenseであることからうっすらおわかりかと思うが、offenseという単語は実は普段あまり見ない。というか、見るとしたら決まったフレーズに限られていて、何と言うか、あまり汎用性があるような気がしない。一方、defenseという単語はしょっちゅう、さまざまな文脈で目にする。

ではそのoffenseとはどういう意味と定義されているか。前回と同じく、米語のウェブスターと英語のケンブリッジの辞書で見てみよう。

 

ウェブスター:  https://www.merriam-webster.com/dictionary/offense

1 : something that outrages the moral or physical senses

2 a : the act of displeasing or affronting
b : the state of being insulted or morally outraged

3 a : the offensive team or members of a team playing offensive positions
b : the means or method of attacking or of attempting to score
c : scoring ability
d : the act of attacking : ASSAULT

4 a : an infraction of law
b : a breach of a moral or social code : SIN, MISDEED

5以下は略

1番は「感覚的に強い抵抗を覚えるもの」という抽象的な意味。

2番は「不快な気持ちにさせるもの」や「不快な気持ちにさせられている状態」。

3番が日本語話者がカタカナ語の「オフェンス」でイメージしている意味だ。つまり、スポーツでの「攻撃陣」や「攻撃の方法」、「得点能力」。それらに加えて「攻撃行為」の意味も挙げられている。

そして4番が「法律違反」や「社会規範に反することをすること」。

行数的に3番が一番スペースを多く取っているが、ニュースなどの英文の中でoffenseという語が使われているのを見る場合、たいていは2番か4番の意味である。(スポーツニュースではまた違ってくるかもしれないが。)

 

続いてケンブリッジ:  https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/offence

offence noun (CRIME)
​an illegal act; a crime:

offence noun (UPSET FEELINGS)
​upset and hurt or annoyed feelings, often because someone has been rude or shown no respect:

英語(イギリス英語)として挙げられているのはこの2つ。つまり「犯罪(違法行為)」と、「無礼なふるまいをされたことにより、感情が害されていること」。

そして「(スポーツでの)攻撃」という意味は、ケンブリッジの辞書には「米語」として別枠的に記載されている。

US the part of a game such as American football that involves trying to score points, or the players who try to score points

 

offenseについては、ウィクショナリーの定義もよくまとまっていてわかりやすいので見てみよう。

https://en.wiktionary.org/wiki/offense#English

1. The act of offending:
a: a crime or sin
b: an affront, insult or injury.


2. The state of being offended or displeased; anger; displeasure.


3. (team sports) A strategy and tactics employed when in position to score; contrasted with defense.

4. (team sports) The portion of a team dedicated to scoring when in position to do so; contrasted with defense.

 日本語のカタカナ語の「オフェンス」に相当するのは、ここでは3番と4番で、1番は「offendする行為」(offendについては前回の記事を参照のこと)、2番は「offendされた状態」。

 

offenseという名詞の例文

offenseを使った例文は、各自辞書で確認していただきたいが、実際に普段よく見るoffenseの意味は、上記ウィクショナリーの定義で言えば1番と2番のものだ。

 

1番はだいたい "a criminal offense" など、「冠詞+形容詞+offense」の形で出てくる。

  In California, it's a criminal offence to record a phone call without the other person's knowledge.*1

  (カリフォルニア州では、相手の知らないところで電話の通話を録音することは違法行為*2である)

  It's a punishable offence to throw (used) chewing gum on the pavement.*3 

  (噛み終わったガムを歩道に捨てるのは、罰則のある違法行為である)

 

2番は熟語・慣用表現的な組み合わせの一部として見ることが多い。例えば "take offense" は「不快に思う」、逆に「不快に思わせる」は "give[cause] offense" と言う。

  I am quite happy to withdraw that if anyone takes offence.*4

  (もしどなたかご不快に感じられたら、それは撤回する所存であります)

  I didn't mean to give any offence

  (人を不快にさせたかったわけではないんです)

 

"no offense, but ..." は言いづらいことを言うときの前置きで「あなたを嫌な気持ちにさせたくて言うわけではないが」。  

 

  No offence, but you're not looking so good in that tight shirt. 

  (気を悪くしないでほしいんだけど、その服装はないと思う。シャツがパツパツじゃん)

  No offence, but I can't stand this singer. 

  (ファンの人には悪いんだけど、私、この歌手、ダメなんだよね)

 

Twitter検索ではこんなのが出てきた。

 "a fireable offense" は「解雇に足る違反行為」。話題はもちろん、ここ数日メディアを賑わせている駐米英国大使のトランプ評の件で、「トランプのワシントンでは、トランプについて本当のことを言うことは、解雇に値する違反行為なのだ」。(確かに「バカに向かってバカと言う」のはoffensiveなことなのだが、「本人に聞こえないところで別の人とあの人バカだよね~と話す」のは、ほめられたことではないにせよ、offensiveではないだろう。英国大使はそういう形でトランプについて「無能」などとこき下ろしていたのだが、それが記録に残っていて、メイル・オン・サンデーにリークされ、こういう騒ぎになってしまった。)

 

もちろん、スポーツでの「オフェンス」の意味の用例もある。下記はNBAのニュースで「クリス・クレモンスはロケッツのオフェンスにぴったりフィットしそうだ」。

 

offenceと英国式の綴りで見てみると、警察の「万引きは犯罪です」というツイートが出てきた。

 

まとめ

というわけで今回もそろそろ「いかがでしたか」のお時間だが、英語由来のカタカナ語になじみがあったところで、カタカナ語としての意味やそのイメージだけでは、英語として使える語彙には直結しない、ということを、「オフェンス」とoffenseの例から知っていただければと思う。

 

また、ここ3回連続で、offensive, offend, offenseと派生語の関係にある3つの語を見てきたが、いずれも英語としては難しい語ではなく誰でも使ってるような日常的な語なので、ネットで検索するなり、辞書やコーパスを見てみるなりすれば、たくさんの用例(いわゆる「生きた英語」の実例)が見つかるだろう。そういった用例をたくさん見て(読んで)文意を考え、例文を暗記してみることから始めれば、やがて自分でも使えるようになっていくので、実例は積極的に見るようにしていっていただきたい。

漠然とウェブを見ても、見つかる用例が雑多すぎるし、有用な検索結果を得ようとすれば検索スキルもそれなりに必要になってくるので、ウェブで得られるランダムな結果から取捨選択ができるようになるまでは、英英辞典・英和辞典の例文や解説をしっかり読むこむのがよいだろう。

 

 

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