このエントリは、今年2月にアップしたものの再掲である。ここで見るような《倒置》は報道記事など一般的な文章で頻出だが、文構造が取れなかったり誤訳したりということが起きやすい項目で、十分な注意が必要である。
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今回の実例は、イギリス王室のインスタグラムのアカウントで「ケイト派」と「メーガン派」が煽りあっているという、何とも「はぁ・・・」な出来事についての記事から。
ちなみに、日本語の報道やファッション雑誌の記事などでは「キャサリン妃」「メーガン妃」と書かれるのが標準だが、英語ではそれぞれ、Kate*1, Meganとするのが普通で、正式な肩書きで呼ぶときはそれぞれ、Duchess of Cambridge (ケンブリッジ公爵夫人), Duchess of Sussex (サセックス公爵夫人) とする。その流儀にならい、ここでも「ケイトさん」か「ケンブリッジ公爵夫人」、「メーガンさん」か「サセックス公爵夫人」を使うことにする。
というわけで、今回は「ケイト派」と「メーガン派」の対立、という話題(本人たちが対立しているという話ではなく、「王室ファン」みたいな人たちが勝手に両陣営に分かれてやり合っているという話)。
まず話の前提として、イギリス王室のウィリアム王子(ケンブリッジ公)とハリー王子(サセックス公)兄弟の広報的なことを担当しているのは、Kensington Palaceである。チャールズ皇太子、エリザベス女王にはそれぞれまた別の広報担当機関があるが、それぞれ、公務について広く一般の人たちに報告したりするために、TwitterやInstagram, Facebookなど、SNSにアカウントを持っている。
イギリスの国王(現在はエリザベス2世なので「女王」)はイギリス(グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国)だけでなく、カナダやオーストラリアなども含めてかつて「英領」として支配下に置いていた国々や、現在も「英領」である世界各地の島などの国家元首でもあり、幼いころから世界的に知られていたウィリアム王子とハリー王子兄弟の活動を報告するケンジントン・パレスのSNSアカウントには世界的にフォロワーが大勢いる(もちろん、エリザベス女王を国家元首としていただいているわけではない国、例えば米国などの「イギリス王室ファン」も大勢いるのだが)。
SNSのアカウントは、そのSNSに登録している人なら基本的に誰でも写真などを投稿できるし、他のユーザーがアップした写真などについてコメントを投稿することもできる。今回「ケイト派」と「メーガン派」の騒動が起きているのは、そのようにして誰でも自由に投稿できてしまう「コメント欄」でのことだ。
ケンジントン・パレスのInstagramのアカウントには、700万人のフォロワーがいて、何か写真をアップするたびに1000件以上のコメントがつく、という賑わいっぷりであるという。そしてその大量のコメントの中に、「暴言」のようなものが入っている……
キャプチャ画像内、2番目のパラグラフの第1文が、今回の実例である。
While the overwhelming majority of these comments are positive and engaging, buried among them are some that are viewed as being “very aggressive, particularly with each other”, said a source.
接続詞while
文頭のwhileは接続詞で、この場合は「~である一方で」という《対照》の意味を表している。
While John likes tennis, his brother prefers football.
(ジョンがテニス好きである一方で、弟はサッカーの方を好んでいる)
Whileにはもうひとつ、「~しているときに」「~しながら」などと《時》を表す用法がある。
While John was watching TV, his brother went out.
(ジョンがTVを見ている間に、弟は外出した)
両者の区別は、文脈というか話の流れによってつけるしかないが、どちらであるにせよ「同時性」を表す語であることは共通している。
倒置
Whileで始まった文のコンマの後(つまり主節の書き出し)が、名詞ではなく、いきなり過去分詞あるいは過去形……何とも変な文だが、これは《倒置》の文だ。慌てずに後続部分を見て文構造を把握しよう。
buried among them are some...
動詞(述語動詞)になれるのは、この中にはareしかなく、are buriedで受動態になることに気付けば、文構造は取れたも同然だ。
主語はareの後にあるsomeで、倒置しない普通の語順に書き換えると:
some are buried among them
という形になる。
ここではなぜ倒置が起きているのかというと、主語のsomeに関係代名詞節がついて、主語がとても長くなっているためだ。
関係代名詞that
some that are viewed as being “very aggressive, particularly with each other”
先行詞がsomeのときは、関係代名詞はthatが 用いられるのが通例(whichではなく)。実例のこの部分は「『特に(コメント投稿者)お互いの間で、非常に攻撃的』であるとみなされているものがいくつか」といった意味。
つまり、ケンジントン・パレスのインスタグラムのコメント欄で、「ケイト派」と「メーガン派」の一方が他方に向かって攻撃的な言辞を投げつけているわけだ。
記事の内容
ちなみに記事の内容は、このような二派の罵り合いがコメント欄で展開されていることに手を焼いたケンジントン・パレスが、Instagramの運営に「何とかしてほしい」とヘルプを求めた、というもの。背景には単なる「2つの派閥のライバル意識」だけではなく、メーガンさんの人種的背景に関する侮蔑や、ゴシップを盛りに盛って書きたてるタブロイド紙の過剰な「王室報道」などがあるという。なかなかに根深い問題だ。
高校生が読むには時間はかかるかもしれないが、できないわけではないし、政治ニュースとは違ってそのときその場の背景の理解も必要ない記事なので、余力があれば全文を読んでみてもよいだろう。
ちなみに、ケンジントン・パレスのインスタグラムは下記。ケンブリッジ公夫妻、サセックス公夫妻の学校訪問やスピーチといった日ごろの活動がいろいろと紹介されている。
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