Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

接続詞のas, remember to do ~, keep + O + 過去分詞, 等位接続詞のand (ロンドンの炎暑と動物たち)

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今回の実例は、異様な暑さに見舞われているイングランドから、暑さに対応するための注意喚起の文面。

今年の夏、東京は20日以上ずっと曇りや雨で、じめじめじとじとした気温の低い日が続いていたが、ヨーロッパは尋常ではない暑さに見舞われていた。ほぼ1か月前の6月下旬には、パリ(フランス)で34度とかいう日があった。

jp.reuters.com

 

そして7月25日、#hottestdayonrecord (Hottest Day On Record) というハッシュタグがTrendsのトップだった日、イングランド南東部は熱波による酷暑に見舞われた。「酷暑」というのはうちらにはおなじみの日本の暑さを基準にした表現で、イングランドの人々にとっては「炎暑」、むしろ「炎熱地獄」の域だろう。

このように、ロンドンでは39度が予想されていた(実際にはそこまでは上がらなかったようだが)。東京も25日は暑くなっていたが33度くらい。今年は今までが梅雨寒で気温が低すぎたからめっちゃ暑く感じられるだけで、暑いには暑いけど実は大したことない(最近の日本の基準では)。東京よりロンドンが暑い! ちなみにこの日、ベルギーやドイツでは40度を上回ったそうだ。

 

東京なら、39度だって、仮に家にエアコンがなくっても冷房の効いた場所で過ごすなど暑さから逃げる方法はある。しかし、ロンドンを含む欧州は、冷房が普及していない。近年、夏の暑い日が増加しているが(空気の流れが変わったらしい。アフリカからの熱気が欧州に上がってくるようになったとか)、それでも、あっても扇風機だという。列車などは冷房が備わっていないものと考えておいた方がよい。

そういう中で気温が30度台後半。もう災害だ。実際、(日本でもあまりに暑いと鉄道が安全のために速度を落とすが)この日は朝から鉄道が速度を落とすなどしていたが、ユーストン駅に入る鉄道では線路が燃えていたりしたという。

 

と、「慣れない暑さに、みなさん大変ですね」とのんきなことなど言っていられない状況だが、このように突出した暑さが予想されるときは、英国では「人間が熱中症にならないために」という情報だけでなく、「動物たちを暑さから守るために」という情報が動物愛護系の組織から提供される。よく見かけるのが、庭のある家では庭に水を張った容器を置いておき、野生の鳥や小動物が水浴びしたり水分補給をしたりできるようにしてあげておください、という呼びかけだが、ペットを守るための情報もよく見る。「車の中に犬を置いたままにしないこと」とか「日陰を作ってやること」といったような実用情報だ。

 

今回の実例もそのひとつ: 

 

ツイート主のザ・ケンネル・クラブは、犬が幸せに暮らせるよう活動している非営利団体で、ドッグショーの「クラフツ Crufts」の主催団体である。

www.thekennelclub.org.uk

 

実例として見る文: 

As the temperature hits 36° across the UK, please remember to keep your dog’s water bowl topped up with fresh water, provide plenty of shaded areas for them to cool down in and don't take them out for a walk.

文頭のasは《接続詞のas》で、あえていえば《時》を表していると解釈されるが、特に何らかの意味を表すために用いられているというより、文の形を作るために用いられているといってよいだろう。「英国各地で気温が36度に達していますが」といったように、ふわっとした感じで文をつないでいる。

 

その次に太字で示した《remember to do ~》は「~することを覚えている」、というより「~することを忘れない」の意味。

これは中学校で習うはずだが、rememberは直後にto不定詞をとるか動名詞を取るかで文の意味が変わってくる。前者は「(これから)~することを覚えている」、後者は「(既に)~したことを覚えている」となる。これは、基本的に、to不定詞はまだ起きていないこと(未来のこと)、動名詞は既に起きたこと(過去のこと)を表す、ということと関連づけて覚えておくと、応用が利いてよい。

  Please remember to call Mr Smith. ※未来のこと

  (スミス氏に電話をかけることを覚えていてください)

  I remember calling Mr Smith. ※過去のこと

  (スミス氏に電話をかけたことを覚えている)

 

このrememberの目的語である "to keep your dog’s water bowl topped up with fresh water" の部分だが、これは《keep + O + C》の形で、C(補語)が過去分詞 (topped) になっているパターン。「Oを~された状態にしておく」の意味だ。「犬の水を入れておく容器を、新しい水で満たされた状態にしておく」、つまり「犬の水を入れておく容器には、常に新しい水をいっぱいに入れておく」。

 

それから最後のほうにあるandにも注目しよう。andは当然《等位接続詞》で、同じ性質のものをつないでいる。何と何をつないでいるのかを見極めるには、andの後ろを見ればよい……ということは以前も書いているので、当ブログのカテゴリからご確認いただければと思う。

で、"and don't take them out for a walk" は後ろが命令文(否定命令文)だから、このandがつないでいるのは命令文と考えられる。つまり、「命令文, and 否定命令文」という形だ。それを意識して前の部分を見ると、"please remember to keep your dog’s water bowl ..." という命令文があるので、「なるほど、ここは、"please remember ... and don't take ..." という構造だな」と把握できると思う。

そこまではよいのだが、そうすると真ん中の "provide plenty of shaded areas for them to cool down in" が宙に浮いてしまう。何だ、これは? 

 

実はこれは「生きた英語」にはよくあることだが、単にandを入れ忘れているだけである。日本語でいう「誤字・脱字」の「脱字」の類だと考えてよいだろう。それを補ってみると: 

please remember to keep your dog’s water bowl topped up with fresh water, and provide plenty of shaded areas for them to cool down in, and don't take them out for a walk.

つまり、"please remember to keep ... and provide ..., and don't take ..." という形になる。つまり、「水の容器を満水にしておき、犬が涼めるような物陰をたっぷり用意し、お散歩は避けましょう」ということを言っている。

(路面が熱くなると犬は照り返しの熱を直接おなかや胸に浴びてしまい、熱中症になりやすくなるし、足の裏もヤケドをしてしまうので、あまり暑い日のお散歩は推奨されていない。)

f:id:nofrills:20190726054405j:plain

2019年7月25日、Twitter @thekennelclubuk

 

この異様な暑さに際しては、下記のように、「ホームレスの人にボトル入りの冷たい水を買ってあげてください」といった呼びかけも多くなされている。

実際にその活動をしている人々もいる。

 

 

ある人が鳥たちのために用意しておいた水場には、ミツバチが来ているそうだ。

 

日本もこれから暑さが本格化する。どなた様も熱中症にはお気をつけて。

 

 

いつもの参考書:  

一億人の英文法 ――すべての日本人に贈る「話すため」の英文法(東進ブックス)

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徹底例解ロイヤル英文法 改訂新版

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英文法解説

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