Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

時制、現在完了、過去完了、時制の一致、分詞構文【再掲】

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このエントリは、3月にアップしたものの再掲である。速報の報道記事で現在完了がたくさん使われている実例だが、現在完了と過去とはどう違うかがよくわかる例だと思う。頭のなかを整理するつもりでご一読いただきたい。

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今回の実例は、カルロス・ゴーン日産自動車会長の保釈が決まったということを伝えるBBC Newsの記事から。現在完了と過去完了の使い方がイマイチわからないという人にはよい実例だろう。

ゴーン氏は昨年11月の逮捕からずっと拘置所に入れられており、そのこと自体が、基本的によほどのことがなければ逮捕・起訴されたら裁判の開始までは保釈されるのが普通の先進国・民主主義国家としては異様ということで、世界的に関心を集めてきた。その「人質司法 hostage justice system」という制度的な問題に加え、取り調べ以外の時間は他の人と接することなく一人きりで過ごすのを余儀なくされること(独房)などが「人権問題」として重大視されている。まさか日本のような民主主義国の経済大国でそんなことが行なわれているとは!という驚きは、おそらく日本の制度しか知らない日本の人々の想像をはるかに超えるくらいに大きい。ゴーン氏関連のニュースが、単なる「企業トップの不正疑惑」以上のリーチがあるのは、こういった要素があるからだろう。

というわけで、弁護人が変わったときもロイターやブルームバーグのようなメディアもBBCのようなメディアも含め、英語圏で大きく取り上げられていたのだが、3月5日の保釈決定のニュースもまたトップニュース扱いだった。

www.bbc.com

 

f:id:nofrills:20190306195223j:plain

2019年3月5日、BBC News

 実例として見るのは記事の冒頭部分。

The former boss of Nissan, Carlos Ghosn, has been granted bail by a Tokyo court in a surprise decision.

The court set bail at one billion yen (£6.8m; $8.9m) and Japanese media reports said he could be released as early as Wednesday.

Mr Ghosn has been charged with financial misconduct but has consistently denied any wrongdoing.

The court had rejected two previous requests for bail, saying Mr Ghosn was a flight risk and could hide evidence.

 

基本的には、記事が書かれた時点で「今入ったばかりのニュース」であり、第1文では「今~したところだ」という《完了》の用法での《現在完了》が使われている。

The former boss of Nissan, Carlos Ghosn, has been granted bail by a Tokyo court in a surprise decision.

 

第2文では《過去》が用いられているが、これは「過去において既になされた行為」(法廷が保釈金を10億円に設定したこと、日本のメディアが報道したこと)を述べているからだ。

The court set bail at one billion yen (£6.8m; $8.9m) and Japanese media reports said he could be released as early as Wednesday.

 

第3文では、2ケ所の現在完了がある。最初のは、過去に発生して今も終わっていない事態を述べているので《現在完了》が用いられている*1。2番目は、「過去のある一点から現在までの間に何度も」ということで、《現在完了》が用いられている。

Mr Ghosn has been charged with financial misconduct but has consistently denied any wrongdoing.


そして最後の文では、「法廷が保釈を決定した」時点(つまり過去のある1点)を基準として、それより前のことを述べるために、《過去完了》が用いられている。文の後半は、報道記事の文体ではおなじみの《分詞構文》だ。

The court had rejected two previous requests for bail, saying Mr Ghosn was a flight risk and could hide evidence.

 

なお、今回の実例全体にわたって2度出てくるcouldは、助動詞のcanが《時制の一致》によって過去形になったものである(「~することが可能だった」、「~する可能性があった」の意味)。

The former boss of Nissan, Carlos Ghosn, has been granted bail by a Tokyo court in a surprise decision.

The court set bail at one billion yen (£6.8m; $8.9m) and Japanese media reports said he could be released as early as Wednesday.

Mr Ghosn has been charged with financial misconduct but has consistently denied any wrongdoing.

The court had rejected two previous requests for bail, saying Mr Ghosn was a flight risk and could hide evidence.

 


日本の「人質司法」については、英BBC Newsには東京特派員が書いたCarlos Ghosn and Japan's 'hostage justice' systemという記事があって、サイトにはその日本語訳も出ているので、関心がある方は読んでみていただきたい(対訳つきの英語記事として利用できるので、英語の勉強にもってこいだし)。


 

 

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英文法解説

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*1:「現在完了」というのはそもそも、「過去の出来事を、現在に結びつける」ときに用いられるものである。ネットで閲覧できる解説では、https://www.rarejob.com/englishlab/column/20180123/ がわかりやすい。

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