Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

neither A nor B(動詞が入る場合), 接続詞while, allow + O + to do ~ (グリーンランドとアメリカ的資本主義)

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今回も、前回見たのと同じ記事から。というか、前回見た記事の先の方を見ていたら、同じ文法項目がちょっと違うふうに出てきているので、そちらも見ておきたいと思った。

記事はこちら。

www.theguardian.com

 

f:id:nofrills:20190827045249j:plain

2019年8月19日、the Guardian

今回のキャプチャ画像の中ほどにある次の文: 

You wouldn’t be able to neither hunt, nor eat a whale alone

ここで、前回と同じく《neither A nor B》「AもBも~ない」が用いられている。ただし、前回はA, Bに入っていたのは名詞だったが、今回は動詞だ。《neither A nor B》はこういうふうにも使えるということを覚えておいていただきたいと思う。

  I was just shocked. I could neither laugh nor cry. 

  (ただもうショックでした。笑うことも泣くこともできませんでした)

今回の実例の文は、"You wouldn’t be able to ( neither hunt, nor eat ) a whale alone" という構造になっていて、huntとeatに共通する目的語がa whaleである。文意は「自分だけでクジラを狩ることも食べることもできないだろう」。この文の前で、グリーンランド社会の「獲物(クジラ)を分かち合う」という伝統のことが説明されており、この文はそれを受けて論を展開させている部分である。

 

では論はどのように展開しているか。全体として「グリーンランドの人々の生き方・あり方は、米国の資本主義社会のそれとは違う」ということを述べていて、ここまでは「グリーンランドの人々の生き方・あり方」を述べていた。このあと、《接続詞のwhile》を置いて「米国の資本主義社会のそれ」を述べる記述が続けられている。

You wouldn’t be able to neither hunt, nor eat a whale alone, while capitalism allows few people to take and own much more than all the others.

 「(グリーンランドでは)自分だけでクジラを狩ることも食べることもできないだろうが、一方で(アメリカの)資本主義は……」という構造である。

そしてこの文で持ちられているのが《allow + O + to do ~》「Oが~することを許す」、つまり「Oに~させる(させておく)」。

この文では、to do ~の部分で等位接続詞andによる接続が入っていて、to do(A) and do(B) の形になっていることも注意が必要だ。つまり、"capitalism allows few people to ( take and own ) ..." という構造で、takeとownの目的語がそのあとの "much more than all the others"。

このmuchはmoreを強める形容詞だが、moreはここでは「より多くのもの」という意味の代名詞。目的語全体としては「他のすべての人たちよりもずっと多くのもの」となる。 

つまり、while以下は、「一方、資本主義はごく少数の人々に、他のすべての人たちよりもずっと多くのものを取り、所有することを許す」と直訳される。(fewはここでは特に「ほとんど~ない」と否定語的にとらえる必要はなく、「数がごく小さい」ということを述べていると把握すればよいだろう。)

 

獲物を捕らえた者がそれをみんなで分かち合うグリーンランドイヌイットの社会と、少数の「持てる者」と圧倒的多数の「持たざる者」に分離しているトランプに代表される資本主義の社会について述べているこのヌーク在住Qivioq Kreutzmannさんは、この前の部分で、「ひとつの国を丸ごと買うなどという発想自体がばかげている」と述べている。今回実例として見た部分は、それを受けて論を展開させている部分である。全体の論は、ぜひ記事そのものでご確認いただきたい。

 

さて、この記事にはまだもう少し先の方でまた《neither A nor B》が出てきている。グリーンランド人で、現在はコペンハーゲン大学に籍をおくN.M Hansenさんの発言内。キャプチャ画像は省略するが: 

Which means that we are neither for sale nor can be bought.

 「ということはつまり、私たちは売りに出されてもいなければ、買われることもありえない」という文意。これが記事全体の見出しとして前回見た記事の一番上の部分で用いられているわけだ。

 

「国を丸ごと買う」などということは絵空事のように聞こえるかもしれないし、トランプの「どう見ても冗談」っぽい発言にいちいち大真面目に反応する必要などないではないかと思われるかもしれないが、現にグリーンランドには米国の軍事基地がおかれており、人々がこのような反応を見せるのは、ディエゴガルシア島の事例などを踏まえれば、当然のことと言える。

あとあと思い返したときに、このトンデモ発言がターニング・ポイントだったな、などということにならなければよいのだが、と心の底から思っている。

 

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