Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

長い文, 時制の一致, it is ~ to do --, 等位接続詞and, 挿入, while (第二次大戦とクロアチアの歴史認識問題)

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今回の実例は、前回見た記事でも言及されていた「クリスタルナハト(水晶の夜)」に関連した記事から。

「クリスタル(水晶)ナハト(夜)」は1938年11月9日から10日にかけて、ドイツ各地で発生した反ユダヤ暴動のこと。割られたガラスが夜の月明かりの中できらきらときらめいてまるで水晶のようではないかとヨーゼフ・ゲッベルスが思ったことで、このような名称がついているが、その内容は凄惨で、人が住んでいる住宅やシナゴーグユダヤ教の礼拝施設)に対する焼き討ちや建造物の破壊がなどが行われ、少なくとも91人のユダヤ人が殺された。のちのホロコーストにつながっていく重大な事件である。詳細は下記書籍やウィキペディアなどをご参照いただきたい。

水晶の夜―ナチ第三帝国におけるユダヤ人迫害

水晶の夜―ナチ第三帝国におけるユダヤ人迫害

 

 

2019年11月10日は、「ベルリンの壁」の崩壊(1989年)から30年という記念日だったが、同時に「クリスタルナハト」から81年の日でもあった。ドイツでは近年、極右勢力が政治的に伸長してきているが、それだけでなく、1か月前の2019年10月9日には、東部の都市ハレでシナゴーグに対する銃撃テロが行われている。この日はユダヤ教の非常に重要なお祭りの日(ヨム・キプール)で、シナゴーグの中にはものすごくたくさんの人がいたそうだが、幸いなことに扉が閉まっていたため銃撃犯が建物内に入れず、大量の犠牲者を出すことはなかった(それでも2人が殺されている)。

そういうことが起きている中で、ドイツの首相も大統領も、「ベルリンの壁」の崩壊30周年という場で、「ベルリンの壁」以前の自国の歴史――ナチス・ドイツ――への言及も欠かさなかった(関東大震災のときの朝鮮人虐殺を無視するどこぞの都知事とは大違いである)。81年前の「クリスタルナハト」も1か月前のシナゴーグ襲撃も、晴れやかな場である「壁」崩壊30周年の式典でしっかり言及されていた。

 

一方、ドイツ国外でもクリスタルナハトの記念行事が行われていた。今回見るのはクロアチアでの行事を伝える現地英語メディアの記事である。

クロアチア第二次世界大戦時は、当初はユーゴスラヴィア王国内のクロアチア自治州であったが、1941年に民族主義者(反セルビア勢力)が蜂起し、「クロアチア独立国(NDH)」となった。NDHはナチス・ドイツとイタリアの傀儡国家で、領域内のセルビア人やユダヤ人、定住生活を送らないロマの人々を厳しく迫害した。特に内陸部に設けられたヤセノヴァッツ強制収容所では、これら迫害対象となった民族の人々や、クロアチアの政権批判者など合わせて約10万人が殺害されている。詳細は下記英語版ウィキペディアを参照(記事を読み進めていくとかなりショッキングな写真が表示されるのでご注意を)。

en.wikipedia.org

 

という基礎知識を踏まえたところで、記事はこちら: 

 

記事に出てくるKrausというのは人名で、ザグレブクロアチアの首都)でのクリスタルナハト記念式典の中心的な役割を果たしたユダヤ人団体の会長である。

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2019年11月10日、Total Croatia News

キャプチャ画像の上のパラグラフ: 

Kraus said that in Germany and Austria, or in any other Western European country, it was not possible to downplay or deny the existence of concentration camps during World War II and equate the victims of Nazism and antifascism, the Axis powers and the Allies, while in Croatia that was possible.

長い文だが、構造は比較的取りやすいだろう。まず見るべきは、主節が "Kraus said" で、その後の "that in Germany and Austria, ..." から最後まではsaidの目的語になっている、という構造である。

そして、この時点で整理しておきたいのが、上記で太字で示した部分、つまり主節の動詞 "said" と、従属節(that節)の動詞 "was" がどちらも過去形であること、つまり《時制の一致》をしていることだ(主節の動詞、saidの時制に合わせて、that節の動詞もwasになっている)。

ここまでを5秒くらいで押さえたら、あとは細かく文を見ていくことになる。まず、主節の "Kraus said" は外してしまって構わない。その上でスラッシュやカッコを入れていくと: 

that ( in Germany and Austria, or in any other Western European country,) it was not possible to (downplay or deny ) the existence of concentration camps during World War II / and equate the victims of Nazism and antifascism (, the Axis powers and the Allies, ) while in Croatia that was possible.

このようになるだろう。

まず最初のカッコのところは、ほとんど問題なく読めるだろう。注意すべきところがあるとすれば、"any other + 単数形 (country)" になっているというところくらいか。

続いて、このthat節内の本体部分であるのが、"it was not possible to do ~" の構文。《it is ~ to do --》の形式主語の構文だ(「--することは~だ」)。

少々わかりづらいかもしれないのが、この《to do --》の部分が、"downplay or deny ~ and equate ..." という形(「~を矮小化もしくは否認し、…を同等視する」)になっている。

また、"and equate the victims of Nazism and antifascism" の部分はちょっと英文がイレギュラーな感じになっているようだ。ここは "and equate the victims of Nazism and those of antifascism" と考えるとよいだろう。

そのあと、コンマで挟まれた《挿入》の形になっている "the Axis powers and the Allies" の部分は、これは基礎知識というか常識がないと読み取れないかもしれないが、"Nazism and antifascism" の言い換えである。

 

ここまででいったん文意を確認してみると、「ドイツやオーストリア、あるいはほかの西欧の国ならばどこであっても、第二次世界大戦中の強制収容所の存在を矮小化もしくは否認し、ナチズムの犠牲者と反ファシズムの犠牲者、(つまり)枢軸国(の犠牲者)と連合国(の犠牲者)を同等視することは不可能である」。

 

最後に残った "while in Croatia that was possible" は、接続詞のwhileに導かれた副詞節で、「一方で、クロアチアにおいてはそれが可能である」。

 

この式典でスピーチしたクラウス氏は、クロアチアにおける歴史修正の傾向に関して憂慮を示し、警鐘を鳴らしているわけだ。

その具体的な中身は、次のパラグラフにあるが、今日はこのくらいにして、続きはまた次回に見ていこう。

 

参考書:  

徹底例解ロイヤル英文法 改訂新版

徹底例解ロイヤル英文法 改訂新版

 
英文法解説

英文法解説

 
英文解釈教室〈新装版〉

英文解釈教室〈新装版〉

 

 

ナチス・ドイツについて時系列で流れを押さえるためには、下記の本が入手しやすく、読みやすく、有益である。自治体の図書館にもあるはず。 

ヒトラーとナチ・ドイツ (講談社現代新書)

ヒトラーとナチ・ドイツ (講談社現代新書)