このエントリは、今年4月にアップしたものの再掲である。英文を正確に読解するためのポイントがまとまっている文章で、内容を把握せずに読み飛ばしてしまうくせがついている人が、一歩一歩立ち止まって確認する練習に使うには、ちょうどよい素材となるだろう。
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今回の実例は、ルワンダのジェノサイドの始まりから25年(四半世紀)の節目に行われた式典についての報道記事から、25年前に何が起きたのかを解説する部分から。
「ジェノサイド」は、ギリシャ語で「民族、種族」を表すγενοσと、ラテン語で「~を殺す」を意味する-cideという接尾辞から成る合成語で、民族や種族の抹殺を意図した行為をいう。第二次世界大戦後に導入された考え方で、ナチスによるユダヤ人絶滅(ホロコースト)や、旧ユーゴスラヴィア解体・ボスニア内戦の際の民族浄化、スーダンにおけるダルフール紛争などがジェノサイドにあたると認定されているが、その中でも現代において最も深刻なケースだったのが、1994年のルワンダでのジェノサイドである。
25年前に何があったのか、詳細は、本エントリ末尾の書籍リストに譲るとして、記事はこちら:
The downing of Habyarimana’s plane was immediately followed by killings
ここに見られる《be followed by ~》は、「《主語》の後に、~が起きる」という意味である。つまり実例の文は「ハビャリマナ大統領の飛行機の撃墜のあと、すぐに、殺害が起きた」という意味。
as Hutu government soldiers and allied extremist militia began trying to exterminate the Tutsi minority.
このasは接続詞(後ろにS+Vの構造が続いている)で《時》を表しているが、なかなか訳しづらい。「フツの政府軍兵士と、政府軍に同盟する過激派武装組織が~し始め、殺害が生じた」といったように、柔軟に訳す必要があるだろう。
as Hutu government soldiers and allied extremist militia began trying to exterminate the Tutsi minority.
began trying to do ~の部分には2つの要素が重なっている。まずは《begin -ing(begin + 動名詞)》で、これは「~し始める」の意味。続いて《try to do ~》で、これは「~しようとする」の意味。2つ合わせて「~しようとし始める」となる。つまり、「フツの政府軍兵士と、政府軍に同盟する過激派武装組織が、少数派のツチを根絶しようとし始めた」の意味。
こうして、大統領の殺害を契機として、すさまじい規模の殺戮が起きた。隣人が隣人を殺した。これを日本でリアルに感じることは難しいが、実際、世界のどこでだってリアルに感じることは難しいだろう。
ルワンダのジェノサイドについては、日本語ではネット上の情報はあまり十分ではないかもしれないが、書籍として日本語で読めるものも数多く出ている。書店で見つからなければ図書館を利用してほしい。
- 作者: フィリップ・ゴーレイヴィッチ,柳下毅一郎
- 出版社/メーカー: WAVE出版
- 発売日: 2011/11/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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隣人が殺人者に変わる時 和解への道―ルワンダ・ジェノサイドの証言
- 作者: ジャンハッツフェルド,Jean Hatzfeld,服部欧右
- 出版社/メーカー: かもがわ出版
- 発売日: 2015/05/01
- メディア: 単行本
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隣人が殺人者に変わる時―ルワンダ・ジェノサイド生存者たちの証言
- 作者: ジャンハッツフェルド,服部欧右,ルワンダの学校を支援する会
- 出版社/メーカー: かもがわ出版
- 発売日: 2013/04/22
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- 作者: ロメオダレール,Rom´eo Dallaire,金田耕一
- 出版社/メーカー: 風行社
- 発売日: 2012/08/01
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映画も何本か出ている。2005年2月に授賞式が行われた第77回アカデミー賞で脚本や演技が高く評価された『ホテル・ルワンダ』で、主人公のホテル支配人ポール・ルセサバギナが、夜間、町がどうなっているのかを確認しに車で出たときに、車がごとごとと揺れるので、道に大量の(もはや「多数の」というレベルではなかった)遺体が転がっていることを悟った場面は忘れがたい。また、国連軍が殺戮を前に何もできなかったことを描いた『ルワンダの涙』(原題はShooting Dogs: 殺された人々の遺体を食い荒らす野犬は撃てるのに、虐殺を止めることはできない国連軍の立場を言った表現)は、殺戮から10年を経た現地ルワンダで撮影された作品である。