Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

長い文, 「~年ぶり」の表現, 前置詞following, 挿入, 過去分詞, 言い換え, 《同格》のthat節, 関係代名詞の非制限用法(新天皇即位)【再掲】

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このエントリは、2019年5月にアップしたものの再掲である。自由英作文で使いたいときに使えるようにしておきたい表現がいくつか入っているので、必要に応じてこれにならって自分でも英作文の練習をしてみるなどしてご活用いただきたい。

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今回の実例は、新天皇即位についての報道記事から。

今回の譲位については説明は不要だと思うが、英語圏でもそこそこビッグニュースとして関心を集めており、4月になってからは何度か解説記事を見かけたし、4月30日から5月1日にかけては、私が見た範囲、つまり英国のメディア*1では、トップニュースのひとつという扱いがなされていた。

ちょうど日本で日付が変わったころからベネズエラの「クーデター」*2のニュースが流れてきてて(結果は未遂というか不発に終わったけど……こういう不十分な政権転覆計画を大々的にやってしまうと、これからが大変ですね)、Twitter上では日本でテレビをつけてみたがどこも扱っていないという声がかなりいっぱいあって(うちはTVないんだけど、日本のTVが取り上げなかったのはわかる。成功しそうな気配ゼロでしたもん)、そのときにガーディアンのUK版とBBC Newsのキャプチャを取っていた。 

 

閑話休題。今回見る記事はこちら:  

www.theguardian.com

ちなみに、今度の天皇今上天皇)は英語では "Emperor Nahuhito" と呼ばれることになる。前の天皇(今上上皇)は "Emperor Akihito" だったし、その前の天皇昭和天皇)は "Emperor Hirohito" だった。このように、英語圏では一般に報道などに登場することの多い昭和以降の天皇元号ではなく名前で呼ばれる。

 

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2019年5月1日、the Guardian

キャプチャ画像内の第一文: 

His abdication was the first by a Japanese emperor in just over 200 years, following the 85-year-old’s concerns, expressed in a televised message in 2016, that his age would hinder his ability to carry out official duties.

この文はかなり長い。最初に構造を把握してしまおう。まず頭から読んでいくと、His ... yearsの部分は何の問題もなくすっと読めると思う。これはこれだけでまとまった意味の固まりで、その次のfollowingでいったん区切りが入るという構造になっている。そのあとはコンマとコンマで挟まれた《挿入》があって少々長くなっていて、最後のthat節がまた文を長くしているが、このthat節は《同格》のthat節だ。つまり、次のように考える。

His abdication was the first by a Japanese emperor in just over 200 years,

following the 85-year-old’s concerns

     , expressed in a televised message in 2016,

that his age would hinder his ability to carry out official duties.

このように構造をとらえたところで、上から順番に見ていこう。

 

「~年ぶり」の表現

まず、最初の部分には「~年ぶり」の表現が入っている。「~年ぶり」を言い換える(その意味を別な言い方で表す)と、「~年の間に初めて」ということになる。英語ではこの「~年の間に初めて」という言い方が定型表現となっている。

  Today I washed my dog for the first time in three months. 

  (今日、3か月ぶりに、うちの犬をお風呂に入れた)

 

この文の "the first ... in just over 200 years" は「約200年ぶり」と解釈すればよい(厳密には、just は「ようやく、かろうじて」の意味で、over は「~を超えて」なので、just over 200 years は「200年と少し」)。

文の最初のHisは、今回抜き出した部分の前にある "his father, Akihito" を受けており、直訳すれば 「天皇昭仁の譲位は、約200年の間で初めての、日本の天皇によるものだった」、つまり「天皇昭仁の譲位は、日本の天皇の譲位としては約200年ぶりだった」となる。

 

前置詞following

長い文を2つに区切った箇所のfollowingは、「~の後で、~に引き続いて」の意味の前置詞(『ジーニアス英和辞典』第5版による)だが、元々は「~の後に続く」という意味のfollowという他動詞の現在分詞だ。これが分詞構文で使われることが非常に多くて前置詞化したと考えよう。

  Cold rain followed the earthquake. 

  (冷たい雨が、その地震に続いた)

 

挿入

そのあとの ", expressed in a televised message in 2016," は、コンマとコンマで挟まれた《挿入》。過去分詞expressedに導かれる句が挿入されているわけだ。これは先行の "the 85-year-old’s concerns" を説明するという構造になっており、"following ... 2016" の部分は「2016年のテレビ放送されたメッセージで表明された、この85歳の人の懸念の後で」と直訳される。

 

言い換え(英語表現)

"the 85-year-old" は先行の "his father, Akihito" の言い換え。日本語なら同じ言葉を何度繰り返してもおかしくないから延々と「天皇陛下は」「天皇陛下は」と書いてもよいのだが、英語は同じ言葉の繰り返しというものを極端に嫌うので(「嫌う」というか、同じ言葉を何度も繰り返し使っていると「人に読ませる気のない文」のようになってしまう)、同じ人のことを何通りにも言い換えるのが流儀だ。

例えばレアル・マドリード監督をしているジネディーヌ・ジダンについては、「ジネディーヌ・ジダン」「レアルの監督」「元フランス代表のスタープレイヤー」「FIFA最優秀選手賞を3度受賞したレジェンド」「そのフランス人」「4人の息子の父親」といったように、日本語話者には特に必然性が感じられないような情報の折り込み方をしながら、ひとつの文章の中で幾通りにも言い換えられるのが普通だ。特に新聞記事を書くジャーナリストにとっては、この言い換えの技は必須となる。(うちら日本語話者にとっては、こういう文をそのまま訳すとどうも読みづらいので、日本語訳された記事では多くの場合、適宜「名前の繰り返し」のような形に編集されているはずだが。)

 

《同格》のthat節

そして文の最後のthat節は《同格》。先行する "the 85-year-old’s concerns" に対する同格の節で、「彼の年齢が、彼が公務を遂行する能力を妨げるという、その85歳の人の懸念」と直訳される。

 

さて、キャプチャ画像内の2番目の文だが、こちらは《関係代名詞の非制限用法》が2度出てくる。

Many observers expect Naruhito, who spent two years studying at Oxford, to emulate his father’s style, which has been credited with making the imperial family appear less aloof.

最初の "who" は、Naruhitoという固有名詞を先行詞としているために非制限用法になっている。「徳仁は、オックスフォードで研究して2年間を過ごしており」。

その次の "which" は、先行詞は "his father's style" で、これを追加的に説明するために非制限用法が用いられている。直訳がとてもしづらい文だが、「(新天皇は)父親の流儀に倣うだろう。父親の流儀のおかげで皇室は以前ほど雲の上の存在のようには見えなくなったと位置付けられている」というような意味になる。

オックスフォード大学留学については、「徳仁親王」の名前で回想録が出版されている。少し前までは古書店に行くと必ずどこかの棚にあった新書で、私も20年くらい前にどっかの古書店で安く購入し、たいへん面白く読んだ。「デンキ」呼ばわりされたり、街を歩いていたら日本人女子観光客に「うっそー、やっだー」と言われて意味がわからず困惑したり(「うっそー、やっだー」は当時の流行りことばで、やんごとなき方々はお使いになっていなかったはず)という笑えるエピソード満載である。古書店では払底しているかもしれないが、図書館にはあるはずなので、興味があるかたは是非。

 

 

 

ジーニアス英和辞典 第5版

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徹底例解ロイヤル英文法 改訂新版

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英文法解説

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*1:私は基本的に米国のメディアは見ていないので、米国での様子はまったくわからないが。

*2:カギカッコつけて書かないと怒られるっぽいからカギカッコつけておく。

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