今回の実例は国連事務総長のツイートから。
2020年は、いきなり、米軍が大統領の命令でイランの革命防衛隊のクッズ(コッズ)部隊トップをイラクのバグダードで爆殺するという、普通に考えてめちゃくちゃなことで幕をあけた。それが現地時間で2日夜のことで、そのあと数日間はどうやっても擁護のしようがないアメリカの行動を擁護する無理ゲーのプレイヤーたちの過剰で執拗な喚き声と、「アメリカとイランが一触即発」という緊張感に世界中が包まれていたが、9日の時点で、最終的には(と言ってよいと思う)双方がこれ以上の緊張悪化を望まないと言明するという形で、当面の危機は回避された。
Iran says it has concluded its response to U.S. strike, does not seek escalation https://t.co/8qeJyRdv4r
— Newsweek (@Newsweek) 2020年1月9日
この流れ(衝突回避)が確定的になったとき、Twitterにはさまざまな発言が流れてきていたが、そのひとつが国連事務総長のアントニオ・グテレス氏のものだった。
Peace is our most precious value. It is the product of hard work and we must never take it for granted.
— António Guterres (@antonioguterres) 2020年1月8日
I’m encouraged by signs that the escalating conflict in the Gulf may be subsiding. The world cannot afford another war.
最初の文:
《最上級》は通例、《the + 形容詞・副詞の最上級形》だが、その定冠詞のtheの代わりに所有格がくることがある。
The biggest problem is money.
(最大の問題は金だ)
Their biggest problem is money.
(彼らの最大の問題は金だ)
2番目の文:
It is the product of hard work and we must never take it for granted.
《take ~ for granted》は「~があって当然だと思う」という意味の熟語。私はこれを高校2年のときに文法の演習の授業で暗記させられて知ったが、「詰め込みの受験英語だけで出てくる役に立たない丸暗記の知識」であるどころか、実際の英語でも非常に頻繁に目にする。多分1週間に2~3度は誰かが使っているのに遭遇している。特に関係詞節・接触節になっていることが多い。例えば下記のようなものだ。
Things we take for granted that hardly existed in 2010 *1
(今ではあって当然になっているが、2010年にはほとんど存在もしていなかったようなものごと)
実例として見た文の意味は、「それ(=平和)は大変な尽力のたまものなのだ。私たちはそれがあって当然だなどと絶対に思ってはならない」。
次の文:
I’m encouraged by signs that the escalating conflict in the Gulf may be subsiding.
encourage ~は「~を勇気づける、~を励ます」の意味。この実例の文は、「湾岸地域でのエスカレートしつつある紛争は沈静化しつつあるのかもしれないという兆候によって、私は励まされている」と直訳できる。
その次の文:
The world cannot afford another war.
afford ~は「~を持つ余裕がある」の意味だが、ここでは「~があっても大丈夫だ」といった意味になっている。「この世界は、また戦争を起こすわけにはいかない」と意訳できる。
「国連事務総長の英語ツイート」 なんていうと身構えてしまうかもしれないが、御覧の通り、かなり平易な英語でわかりやすい明確な文である。英語を勉強するという目的のためにでも、事務総長のTwitterアカウントはフォローしておいて損はないだろう。
参考書: