Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

コロン (:) の使い方, 現在分詞の後置修飾, more and more, 進行形の受動態, 《程度》を表すby,【ボキャビル】wait to do ~, pick up ~, be fed up with ~など(格安航空便とイングランドの開発格差)

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今回の実例はビジネスニュースに関連した記事から。

1990年代半ば、Windows 95が登場して人々がインターネットというものに接するようになったころに社会に浸透したのが、支店を持たず、航空券が買えるのはインターネットと電話のみで、機内食などは有償提供となる「格安航空」というビジネス*1だった。特に欧州の諸都市を行き来する、せいぜいが数時間程度の便では、通常の航空会社のサービスは過剰でもあり、そういう特に要らないサービスがない分、費用が安く済む格安航空は、出張や休暇旅行、スポーツ観戦旅行などで人々の第一の選択肢として定着している。(以上、とてもざっくりした説明なので、より正確なところはウィキペディアの項目などをお読みいただければと思います。)

英国の格安航空といえばeasyJetが一番有名だろう。お隣アイルランドの会社であるRyanairも英国でよく利用されている。そしてもうひとつ、正確には「格安航空」とは言えないが料金面では格安の会社がFlybe(フライビー)だ。

Flybeは結構歴史があり、元々は1979年にJersey European Airwaysとして設立された。その後いろいろあったあと、2000年に「ブリティッシュ・ヨーロピアン・エアウェイズ (BEA, British European Airways)」となり、2002年に現在の社名となった。その後、英国航空(BA)の近距離便の多くを引き継いで運航することになり、easyJetやRyanairを超えて英国では国内線で最も大きなシェアを持つようになった。拠点はイングランド南西部、デヴォン州のエクセターだ。下に地図を貼っておくが、デヴォン州の西隣にあるのが、今回の実例の記事に出てくるコーンウォール州である(本エントリのアップロード時に、下記、地図の貼りこみを失敗していたのですが、アップロードから3時間ほど後に修正しました。お見苦しくてすみませんでした)。

 

エクセターの位置の位置図
Contains Ordnance Survey data © Crown copyright and database right, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

 

このFlybeという航空会社は、大きなシェアを持ち、つまり人々の足として社会の中で重要な役割を果たしていながら経営状態が芳しくなく、2019年にはヴァージン・グループ傘下に入り、2020年早々に社名の変更が予定されていた。だが、実際にはそれ以上に経営が悪化していて、2020年1月も前半の段階で、経営破綻が危惧されるようになっていた。最終的には15日に政府の救済策が閣僚たちの合意を取り付けて(閣議決定されて)、当面の危機は回避されたのだが、今日見る記事は、そういう展開を見せる前の記事。こちら: 

www.theguardian.com

 実例として見るのは、少し読み進めていって5番目のパラグラフ: 

f:id:nofrills:20200116022040p:plain

2020年1月13日, the Guardian

 

キャプチャ画像だと2番目のパラグラフになるが: 

A man waiting to pick up his daughter-in-law and grandchildren from the airport said: “My son travels every week to Luxembourg from Cornwall for work. ...

見づらいといけないので大きく表示し、赤い色をつけてみたが、ここで人の発言を紹介するときに、コロン (:) と引用符 (“ ... ”) が使われていることに注目しよう。大学受験生が自分で使えるようにする必要はないかもしれないが、日常的な英語ではこれらの記号がこう使われるということは頭に入れておくとこの先、役立つだろう。なお、こういう場合、コロンではなくコンマが使われることが多いが、特にこの例のように引用符内の文が長いときは、コロンを使うと構造をはっきり見せることができる。

  The prime minister said, “This is a great opportunity for our country.

  The prime minister said: “This is a great opportunity for our country.

 

パンクチュエーション以外の注目点だが: 

A man waiting to pick up his daughter-in-law and grandchildren from the airport said

太字で示した-ing形は《現在分詞の後置修飾》で、特に難しくはないだろう。

下線で示した《wait to do ~》は「~するのを待つ」の意味。したがってこの部分の意味は、「義理の娘と孫たちを空港からピックアップするのを待っている男性は、~と述べた」となる。

《pick up ~》は「~を拾う」。日本語でも「車で空港から義理の娘と孫たちを拾う」と言うが、偶然にも、英語も同じ言い回しを使うのだ。

ただここは、仮に英文和訳の設問になっていたら、pick up ~を直訳せず、「空港に義理の娘と孫たちを迎えに来た男性は……」と意訳することが望ましい箇所ではある。

 

次: 

But Cornwall is becoming more and more isolated.

ここでは《比較級 and 比較級》の形(「ますます~」)が用いられている。「しかしコーンウォールはますます切り離されている(ますます孤立化している)」の意味。

 

その次: 

People in the south-west are fed up with the poor transport links.

《be fed up with ~》は「~には飽き飽きしている」の意味。「イングランド西部の人々は、お粗末な交通網に飽き飽きしている」という文意である。

 

さらに次: 

Billions of pounds are being spent on Crossrail and improving rail links to major cities by a few minutes from London, but down here we have poor rail, road and air routes.”

太字にした "are being spent" は《進行形の受動態》だ。受動態の《be+過去分詞》のbeのところが進行形になって、be beingになり、全体で《be being +過去分詞》という形になる。「~されつつある」という意味だ。Crossrailは、ロンドンを東西に貫いて、近郊都市とロンドン中心部の行き来を円滑にするため建設が進められている鉄道&地下鉄路線のこと。東京に置き換えれば、千葉県柏市から東京23区を横断して東京都八王子市・神奈川県相模原市までまっすぐ結ぶ路線、というイメージになるだろう。

で、この文はインタビューに応じた男性の発言のまま書き起こされたものだから、文法的にはややイレギュラーになっているのだが、下線を引いた "and improving" は先行する-ing形 (being) と結ばれているのではなく、"Crossrail and improving rail links" という形でつながっているととらえないと、文意が成立しなくなってしまう。書き言葉ではこのような形になることは通例ないし、入学試験でこんなのが出たらどうしようと焦る必要はないが、こういうこともあるんだ、程度に認識して頭の片隅に置いておくとよいだろう。

 

もう1か所、下線で示した " by a few minutes" のbyは、数値を含む語句を伴って《程度》を表す。

  Tom is younger than Keith by three years. 

  (トムはキースより、3歳年下である)

  Our sales decreased by 15 percent last summer due to the severe weather. 

  (昨夏、当社の売り上げは、厳しい天候が原因で、15パーセント減少した)

ここでは "improve rail links to major cities by a few minutes from London" で「ロンドンから各主要都市への鉄道の便を、数分改善する」の意味。要は「ロンドンから各主要都市への所要時間を、数分だけ、短くするようにする」ということ。

まあ、普通に考えてあまり意味のありそうなことではないのだが、ロンドンと南東部では、そういうところに巨額の金をかけているというのだ。一方でこの発言者の地元である南西部コーンウォールあたりでは鉄道の便は悪く、道路網も空の便も不便であるとこの男性は述べている。

 

実際どんな感じなのか、地図で確認したいという方は、下記からどうぞ。

そのように、鉄道も車も不便なところで、Flybeの安い飛行機が人々の足になっている、というのがこの記事の伝えていることだ。

今回見た部分ではイングランド南西部の話が出ていたが、ほかに、アイリッシュ海ブリテン島とアイルランド島の間に浮かぶマン島*2や、北アイルランドのことなども説明されている。

多少地理的な予備知識があったほうが楽に読めるかもしれないが、英語としてはさほど読みづらいわけではないので、全文を読んでみると、長文を読むにはよい練習になるだろう。

 

参考書:  

英語長文読解教室

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  • 作者:伊藤 和夫
  • 出版社/メーカー: 研究社
  • 発売日: 2004/02/01
  • メディア: 単行本
 
大学入試問題集 関正生の英語長文ポラリス[3 発展レベル]

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徹底例解ロイヤル英文法 改訂新版

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英文法解説

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  • 作者:江川 泰一郎
  • 出版社/メーカー: 金子書房
  • 発売日: 1991/06/01
  • メディア: 単行本
 

 

*1:「格安航空」自体はそのずっと前からあるにはあったが、庶民が休暇に出かけたりする際に第一の選択肢となるようになったのは90年代半ば以降だ。欧州ではネットの普及のほか規制緩和の流れなどもあり、この動きが促進された。

*2:ここは英国の一部ではなく、自治権を持ったイギリスの王室属領(Crown dependency)である。

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