Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

分詞構文, 同格, prompt + O + to do ~, 助動詞+受動態, be able to do ~, of + 抽象名詞(首相官邸とメディアと報道の自由)

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今回の実例も、前々回および前回見たのと同じ、英国の首相官邸がおこなう記者会見に「出席できる記者」を選別しようとし、排除された記者たちとともに全記者が会見をボイコットした、ということを報じる記事から。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

こういう「記者選別」(首相官邸の側が、報道が自分たちに都合のよいことを書くように環境を作っている)は、正直日本のうちらには特に新しいこととは見えないのだが、民主主義の前提を破壊するものとみなされている。そういう「民主主義の前提」は、正直、もはや顧みられることもなくなりかけているのだが(もしそれが重要視されていたら、最初から嘘と不正と不法行為にまみれていたBrexitはどこかでストップされていただろう)、報道に携わる人々の間ではまだ完全に「こんなもんじゃね」みたいなムードにはなっていない。だからこういう記事が出ているのだが、こういうことを伝えるときに引き合いに出されているのが「ドナルド・トランプ流」みたいな概念である。

報道機関を敵視し、自分に都合の悪いことを報じられるとfalseやunfoundedといった言葉ではなくfakeという小学生じみた言葉を使って「フェイクニュースだ」と連呼するトランプは、CNNやニューヨークタイムズを敵視し、Fox Newsや右派新興メディアを優遇してきた。この「トランプ流」のやり口については、例えば2018年11月のForbes Japanのコラム(水本達也さんによる)に詳しい。

forbesjapan.com

2016年大統領選の民主党の指名争いでヒラリー・クリントン国務長官に敗れたサンダース上院議員は、アコスタ氏のような大手メディアの記者を「メディア・エスタブリッシュメント(支配階級)」と呼んで、批判の対象とした。

そして、彼らの立場を一変させたのが、トランプ政権の発足だった。スパイサー大統領報道官(当時)は、これまで記者会見を事実上独占してきた大手メディアの記者たちを一切無視し、あまり知られていない新聞や雑誌の記者を指すようになった。また、ネットを通じて、ホワイトハウスには縁のない地方紙の記者から質問を受けることもあった。

筆者も当初、トランプ政権の前代未聞のやり方に、ある種の小気味よさを感じたことは否定しない。なぜなら、花形記者とその他大勢の記者たちの「格差」が、今後は縮まるかもしれないという錯覚を覚えたからだ。

しかし、しばらくして、新たに「参入」してきた記者たちが、大手メディアの記者がこれまで繰り広げてきたような政権や大統領の説明責任を追及するやり取りに消極的なことが分かってきた。権力から嫌われれば、再び質問ができなくなるからだ。

トランプ氏が執拗にCNNなどを「国民の敵」として仕立て上げるのは、自らに批判的なメディアをたたくだけではなく、大手メディアとそれ以外のメディアの間にくさびを打ち込む狙いもあった。

 

英国でもボリス・ジョンソン首相と側近のドミニク・カミングスらのもとで同様の「くさびを打ち込む」という分断が行われようとしているというのが、今回の「記者選別」という行為に対する評価で、それに対してその場にいた記者たちは「分断を拒む」という意思表示として全員が会見をボイコットしたのである。

今回実例として見るのは、記事の一番最後の部分から:  

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2020年2月3日, the Guardian

Tracy Brabin, the shadow digital, culture, media and sport secretary, raised a point of order about the No 10 walkout in the House of Commons, prompting Eleanor Laing, the deputy speaker, to say journalists must be treated with respect.

やや長い文だが、全体の構造はつかめただろうか。主語は何で、述語動詞は何だろうか。

主語は文頭の "Tracy Brabin", 動詞は "raised" で、"prompting" が《分詞構文》という形である。

 

文頭のTracy Brabinと《同格》で、彼女について説明している "the shadow digital, culture, media and sport secretary" は、やたらと長くて見た目的に文を長くしているが、「影の大臣 the shadow secretary」だけはっきり見えれば文意の把握はできるだろう。

「影の大臣」は英国の政治制度を知らないと何のことかわからないかもしれない。英国では政権を担う最大政党が「与党 the governing party」で、その次に議席数の多い政党が「最大野党 Her Majesty's Loyal Opposition, the Opposition」と位置付けられており、その「最大野党」が「与党」の構成する内閣 (cabinet) をなぞるように、財務、内務、法務、教育……と大臣ポストを担う政治家たちを選び、「影の内閣 the Shadow Cabinet」を構成する。「影の大臣」はこの「影の内閣」の一員で、この文に出てくるTracy Brabinは「影のデジタル・文化・メディア・スポーツ大臣」である。(大臣職の名称がやたらと長いのは仕様だが、こんなことでも英文は長くなってしまうので、「長いというだけで英文が読めなくなる」というクセを持っている人は、早めに是正するようにしたほうがよい。)

 

"raised a point of order" の "a point of order" は、「単語は全部わかるのに、意味が分からない」と思った人が多いのではないだろうか。

そういう場合、専門用語であることが多いのだが、これもそうで、議会の専門用語で、議会において規則・規約違反があったと指摘することを言う。詳細は下記。

en.wikipedia.org

 

というわけで、この文は翻訳するのは簡単ではないが、「影の内閣でメディア分野を担当する政治家が、この件について規則違反であるとの指摘をおこなった」ということが読み取れればよい。詳細は、その次のパラグラフでBrabin氏自身の言葉を引用符で引用して述べられている。

 

上記の文の後半、分詞構文の部分だが: 

..., prompting Eleanor Laing, the deputy speaker, to say journalists must be treated with respect.

"Eleanor Laing, the deputy speaker," は《同格》の表現で「副議長であるEleanor Laing」の意味。

《prompt + O + to do ~》は「Oを促して~させる」の意味。つまり、「影の大臣の指摘を受けて、副議長が、ジャーナリストは敬意をもって扱われなければならないと述べた」ということだ。

"must be treated" のところは《助動詞+受動態》で、「~されねばならない」。下記のように、be動詞がmustを伴ってmust beという形になっているということを理解しておこう。

  The matter must be taken seriously.

  ← The matter was taken seriously. 

 

次、Brabin氏の発言内容: 

“Press freedom is a cornerstone of our democracy and journalists must be able to hold the government to account,” said Brabin. “The future trade agreement with the European Union is an issue of great public importance and interest. Those gaining access to such important information should not be cherry-picked by No 10.”

ここにも「be+なんとか」の表現が、「助動詞+ be+なんとか」になったものが入っている。《be able to do ~》に助動詞のmustがついている形だ。これも次のように考えて、よく理解・整理しておこう。

  They must be able to express themselves without fear. 

  ← They are able to express themselves without fear. 

"hold the government to account" の《hold ~ to account》という成句のようなもので、一般に流通している日本語でいえば「アカウンタビリティを求める」ということになるだろうか。もっとかみ砕いていえば、この場合、「政府の取る行動として正当なものであるということを、誰もが納得できるようにしっかり言明することを求める」といった意味になるだろうが、そろそろ書いてて虚しくなってきたので中途半端だが意味の解説はこのあたりで。

というか、このくらいの英文、読めば、意味は解説されなくてもわかるだろう。

 

次、もう1か所だけ: 

The future trade agreement with the European Union is an issue of great public importance and interest.

下線で示したofは、以前も取り上げた《of + 抽象名詞》を作っている。of importanceで、ざっくりとimportantの意味になる。「欧州連合との今後の貿易協定は、国民にとって大いに重要なことであり、大いに利害にかかわることである」という文意である。

 

参考書:  

議院内閣制―変貌する英国モデル (中公新書)

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暴政:20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン

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永遠のファシズム (岩波現代文庫)

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英文法解説

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