このエントリは、2019年5月にアップしたものの再掲である。苦手な人が多い《be+to不定詞》のことがちょっとわかった気になれる実例だと思う。
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今回の実例は、日本の学校教育では習ったことがない人が多いかもしれない項目について。報道記事の見出しだ。
報道記事の見出しは長さに制限があるので、いろんなものが省略される。日本語では元から語順が持つ意味上の重要性が低いところに持ってきて、意味を確定する助詞が省略され、結果として体言の羅列になりがちで、何を言っているのかわからなくなることもしばしばであるが、英語では見出しにおける省略には一定のルールがあり、さらに語順によって意味が決まる部分が大きいので、慣れてしまえばさほど難しくはない。
学校教育では、その英語の報道記事の見出しのルールは体系的には教わらないかもしれないが、ビジネスパーソン向けの英語参考書や時事系英語雑誌ではよく取り上げられているし、ネット上にもある程度まとまった解説がある。例えば下記のようなページだ。
個別の見出しを見れば何となく意味が把握できていると思うが、体系だった理解ができているかどうか不安、という場合は、上記ページを一度ざっと読むだけで頭の中が整理されて有益だろう。
さて、今回の実例は、元記事のURLが上書き更新されて見出しが変わってしまっているのでいきなりキャプチャ画像:
見出しは次のようになっている:
Vincent Kompany: Manchester City captain to leave after 11 years
一方、記事の最初の部分では次のようになっていることも即座に確認できるだろう:
Captain Vincent Kompany says he will leave Manchester City...
つまり、普通の文では《will + 動詞の原形》で表されていること(未来のこと)が、見出しでは《to不定詞》で表されている。
これは報道記事の見出しの約束事のひとつで、《見出しでは、未来のことはto不定詞で表す》ことになっているのだ。
なぜそうなるか。
まず、見出しの "Manchester City captain to leave" では、to leaveの直前のbe動詞が省略されている。この「be動詞の省略」は報道記事の見出しで全般的に起きることで、その結果、 to不定詞だけが残っているわけだ。
ということは、この部分は本来 Manchester City captain is to leave という形で、つまり《be動詞+to不定詞》の形になっている。
《be+to do ~》は、高校の文法の授業で「予定、義務・命令、運命、可能」などと暗唱させられてうんざりしてしまった人も多い項目だろう。要は「まだ起きていないこと」(あるいは「すでに起きているとは限らないこと」)を言う表現で、それぞれ文脈的なことで訳し分ける必要があるので「予定、義務・命令……」という例の呪文のような《用法》が出てくるわけだ。
例えば「予定」は下記のようなもの:
We are to arrive at Shinjuku station in half an hour.
(あと30分で新宿駅に到着します)
「義務・命令」はこんな感じ:
You are to finish your homework before you watch TV.
(テレビを見る前に宿題を終わらせなければいけませんよ)
「運命」は「予定」のバリエーションと考えることもできる:
Tommy was never to return to his hometown.
(トミーは故郷の町に二度と戻ってくることがない運命だった/二度と戻ってくることはなかった)
「可能」は通例否定文で、toのあとは受動態の形になっている:
Not a soul was to be seen on the street.
(街路には人っ子一人見当たらなかった)
これらのうち、「可能」は少し毛色が違うが、残る用法は「まだ起きていないがこれから起きるはずのこと」を言うものだということが共通していて、基本的には「予定」の用法をしっかり把握しておくことが重要だ。
今回の実例として見た "Manchester City captain to leave" は、上記の分類では「予定」になる。これを、記事本文最初の文の "he will leave Manchester City" と確実に紐づけして、意味を把握してしまおう。
そのうえで、今後報道記事の見出しでto do ~を見たら「未来」のことだと即座に判断するようにしよう。
今回、例によって江川の英文法を参照した。この参考書は初版が何と1953年、最新版である改訂三版も1991年とすでに30年近く経過しているので*1、例文が古めかしくなってしまっているきらいはあるが、多くを説明しすぎず、なおかつがちがちに固めた解説をしようとしていないので、今回の《be + to不定詞》のような項目の説明はかなりわかりやすい。英文法が「用語の暗記」のようになっていて苦痛だという方には、ぜひ中を見ていただきたい文法書である。
ちなみに今回参照した記事は、その後同じURLで上書き更新され、見出しが次のように変わっている。
ヴァンサン・コンパニはベルギー人で、マンチェスター・シティを退団して、来季からは自身の古巣であるベルギーのアンデルレヒト(日本人フットボーラーの森岡亮太選手が所属しているチーム)の選手兼監督になるそうだ。最近のシティの絶好調の立役者の一人がこの人、というような存在なので、退団のニュースはTwitter上のイングランド圏では大きな驚きをもって受け止められていた。
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*1:残念なことに、著者の江川泰一郎氏は2006年に他界されており、この先の改訂はない。