Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

some ~, others ...の構文, another, if節のない仮定法(ジョージ・ベストの銅像が似てなさすぎる件)【再掲】

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このエントリは、2019年5月にアップしたものの再掲である。これも重要な基本構文がてんこ盛りだが、話がおもしろいので、ゲラゲラ笑って読んでいただければよいと思う。

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今回の実例は、文法項目としてはほんの3日前に取り上げたものとカブる。

もう笑い転げてしまって、トピックの背景解説どころではないので、記事はこちら: 

www.theguardian.com

 

……とはいえ、多少は解説を書いておかないと何のことかわからない方々も多くいらっしゃるだろう。

ジョージ・ベストは往年の名フットボーラー。北アイルランドベルファスト出身で、身体が細くて弱々しく見えるタイプで、「あんな子がプロの世界でやっていけるはずがない」的に扱われていたが*1、実際には、「ミュンヘンの悲劇」で多くのプレイヤーを亡くしたマンチェスター・ユナイテッド (MUFC) でスター・プレイヤーとなり、MUFCを欧州の強豪の地位に引き上げた立役者となった。詳しくは、川端康雄先生の新書をお勧めしたい。 

新書524ジョージ・ベストがいた (平凡社新書)

新書524ジョージ・ベストがいた (平凡社新書)

 

ベストはフットボーラーとしても抜きんでた存在だったが、とにかくルックスと派手なライフスタイルで注目された。ハンサムとしか言いようのない顔立ちをして、髪を長めにしたりしていて、まるでザ・ビートルズのメンバーのようなスターだということで「5人目のビートル」との異名をとった。ベストはキャリアを終えるころには酒などで身を持ち崩していて、私はマンチェスターのMUFCのサポの人から「悲しくなるから彼の名前は口にしないでくれ」と言われたこともあるのだが、最終的には酒で肝臓を悪くして、2005年に59歳の若さで他界した。

 

Embed from Getty Images

 

そのジョージ・ベストは、出身地のベルファストでは「スポーツ界のヒーロー」としてプロテスタントカトリックの区別なく敬愛される存在で*2、近距離便が利用するベルファストのシティ空港は2006年に「ベルファストジョージ・ベスト・シティ空港」と改称したし、記念紙幣も作られたし、MUFCのホーム・スタジアムの外周部にはベストを含む3人の同時代の名選手の銅像が建てられた。下の写真の一番左がベストである。

 

Manchester The United trinity.jpg
By Paul Hermans - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link

 

このジョージ・ベストの新たな銅像が、今回、ベストもプレイしていた北アイルランド代表のホームであるベルファストウィンザー・パーク・スタジアムの近くに建てられ、除幕式が行われた、というのが2019年5月23日のニュースだった。

そしてその銅像が……端的に言えば「誰っすか、これ」というクオリティで、英メディアが笑いをこらえながら(あるいは爆笑しながら)記事にしているわけだ。

今回の実例はそれらの記事のひとつから。

 

f:id:nofrills:20190524050448j:plain

2019年5月23日、the Guardian

Some compared it to the “White Walkers” from Game of Thrones, while others said it resembled fellow Manchester United star Paul Scholes “with a 70s haircut”.

この部分で、つい3日前に取り上げたものとカブるが、《some ~, (while) others ...》の構文が用いられている。文意は「ドラマGame of Thronesのホワイト・ウォーカーに似ているという人もいれば、ベストと同じくMUFCのスター選手だったポール・スコールズが『70年代風の髪型』をしているように見えるという人もいる」。

さらに、今回は3日前のとは違って、そのあとにanotherが来ている。

Another critic said it resembled the legendary Spurs, Arsenal and Northern Ireland goalkeeper Pat Jennings, who helped unveil it.

anotherは、分解すれば 〈an + other〉で、「また別のひとり」という意味になる。つまり文意は「また別の批判者は、この銅像はスパーズやアーセナルで活躍し北アイルランド代表でも名を残した名ゴールキーパーのパット・ジェニングスに似ていると言っている。ジェニングスはこの銅像の除幕式に参加している」。

 

で、除幕式にはジェニングス師匠のほか、ジェリー・アームストロング先輩も参加しているのだが、アームストロング先輩が「この銅像、顔が似てないですよね」という批判に対して

“No! The body is great and it’s always difficult to get the features exactly right, which is nearly impossible in a bronze statue. I personally think it’s very good and it’s an action shot of George which he would have loved

……とおっしゃっているそうで、私は笑い転げたまま多摩川に転がり込んでしまいそうだ。「身体はよくできているじゃないですか。顔をそっくりにするのは大変なんですよ、銅像ではほぼ無理じゃないですか。個人的には、とてもよくできた銅像だと思います。まさに躍動している瞬間をとらえていて、ジョージが生きていたら喜んだのではないかと」。(下線をつけた部分で仮定法が使われていることにも注目)

確かに、ジョージ・ベストの線の細さや腕の長さはよく再現されているとは思う。しかしそれは例のクリスチアーノ・ロナウド銅像で「首の太さはよく再現されている」というのが褒めことばとしては微妙だったのと、あまり変わらないように思う。

何しろ、オールド・トラフォードにあるトリニティの銅像のベストの顔は、誰が見てもジョージ・ベストだと思えるクオリティなのだから。

 

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ジーニアス英和辞典 第5版

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*1:関係ないが、今年引退した野球のイチロー選手が米大リーグに移籍したとき、日本では「あんな細いのが、ムキムキマンばかりのMLBでやっていけるはずがない」という意見が特に年長者の間で非常に強くあった。

*2:ベスト自身はガチのプロテスタント労働者階級の出である。

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