今回の実例もTwitterから。
前回まで、3回連続で、新型コロナウイルスの感染拡大抑止のために英国などで使われているスローガン、"Stay at home" を軸にした表現を見てきた。また、これらのエントリで、医療従事者からの情報発信についても扱った。「ソーシャルメディアで個人的につぶやく」とかではなく、「ソーシャルメディアを活用して病院全体で広く一般に向けたメッセージを出す」という行動が、世界各国で見られる。
hoarding-examples.hatenablog.jp
hoarding-examples.hatenablog.jp
hoarding-examples.hatenablog.jp
今回見るのは、医療従事者からのメッセージを受けての一般市民の反応について。「3月26日(木)午後8時に医療従事者を讃えて一斉に拍手をしよう」という呼びかけが、イギリスでなされた。ハッシュタグは #ClapForNHS だ。
そしてTwitterには各地から、その拍手喝采の映像が流れてきた。
The very emotional moment we heard clapping and cheering from our headquarters in Waterloo.
— London Ambulance Service #StayHomeSaveLives (@Ldn_Ambulance) 2020年3月26日
Thank you all! 💚#clapfornhs #clapforourcarers #NHSHeroes pic.twitter.com/4yLNz4kLaO
Tonight; Londoners salute to coronavirus fighters. We LOVE you @NHSuk @NHSEnglandLDN pic.twitter.com/sSvMmpzfP9
— Ali Hamedani (@BBCHamedani) 2020年3月26日
Some lovely scenes tonight as people came out their homes to #clapforNHS 👏#clapforourcarers pic.twitter.com/Zs5B2njB4S
— BBC Scotland (@BBCScotland) 2020年3月26日
WATCH: North Belfast shows it’s support to our NHS staff. Amazing! 👏👏👏#ClapForCarers #Covid19 pic.twitter.com/o7vlL7eeXv
— North Belfast News (@NorthBelfastNew) 2020年3月26日
ベルファストはくわんくわんと何か鳴り物(鍋?)が入ってるのがベルファストっぽいと思った。(音を増幅させることは、軍や警察が踏み込んできたことを知らせるため、北アイルランド紛争期には必須の技能だった。)
そんなことはさておき、ここで英語として注目したいのは、医療従事者に対する heroes という位置づけである。#NHSHeroes というハッシュタグもある(英国のNHSの医師・看護師など医療従事者を讃えるハッシュタグ)。
アイルランド首相のレオ・ヴァラッカーが、3月17日のセント・パトリックス・デーのTV演説で、"Not all superheroes wear capes" という常套句を効果的に使っていたが、この新型コロナウイルスとの「戦い」において、医師や看護師、病院の検査技師や機械の整備担当者、清掃担当者といった人々は、まさに「ヒーロー」である。
そういった現場の人たちを讃える行動は、26日のイギリスの前にも見られた。1月の武漢や3月のイタリアで広く見られたような「外出ができなくなった市民同士がお互いに勇気づけ合うためにバルコニーで歌を歌う」といったものとは別に、ある時刻に人々が一斉に拍手をしたり口笛を吹いたりして、医療従事者を讃えるという感情表出のイベントである。
例えばこちら、3月22日付のインド:
Out Salute to Corona Fighters!
— Shobhana Ganesan (@GShobna) 2020年3月22日
We Stand United with PM @narendramodi to Fight Corona 🇮🇳🇮🇳🇮🇳#IndiaFightsCorona pic.twitter.com/1rrm67ynKG
あまり埋め込むとページが重くなってしまうのでこれ1つだけにしておくが、このような映像はTwitter上の英語圏にはたくさん流れている。
そういう映像は、そのままでは、日本語圏には入ってこないだろう。
上記ツイートにある "Corona Fighters" という表現は、ほかにも見られる。下記は、ツイート主がどこにいるのかがわからないのだが(ハッシュタグからパキスタンと推測される)、英語で武漢の医師・看護師たちを讃えている投稿。長時間マスクなどを装着してるので、顔にくっきり跡がついていたり、場合によっては青あざになっていたりするこの人たちを、このツイート主は "actual superheroes" と讃え、#CoronaFighters と言うハッシュタグで表している。
#Coronafighters in #Wuhan.
— زربیل خان (@Shammo_girl__) 2020年3月19日
Left marks of masks on the faces of Doctors & Nurses. #ChinaVirus
They are actual superheroes.#Quarantine #CoronaVirusUpdate #CoronaInPakistan #coronavirus #COVID19 #coronavirusindia #CoronaInMaharashtra #ChineseWuhanVirus #PakistanFightsCorona pic.twitter.com/WMDvw45sn8
下記はインドの人のツイートで、「仮眠をとる」 という環境にさえない中で眠る医療従事者を #CoronaFighters と呼んで讃えている。
Salute to these doctors & medical staffs who is working 24*7 for us. 🙏🙏🇮🇳🇮🇳#Coronafighters pic.twitter.com/p9DZCjQ7cC
— Vikash Singh 🇮🇳 (@iSinghVikash) 2020年3月23日
あと、どこの人なのかわからないが、まさに@CoronaFightersというアカウントが有益情報まとめみたいなのをツイートしている。
Be careful pic.twitter.com/bcxQohg6Na
— Corona Fighters (@CoronaFighters) 2020年3月24日
というわけで、「コロナ・ファイター」は英語圏に少し前から存在していた表現だ。
神奈川県が「コロナファイターズ」という標語とロゴマークを打ち出しているというニュースを見た。それが県での独自の発案なのか、ネットで何かを見て触発されたのかはわからないが、「和製英語」と嘲笑することはできないと思う。
https://t.co/60U157cCDz 「コロナファイターズ」は和製英語じゃないし、神奈川県が命名したわけでもないよね。外来語であるはず。corona fightersで英語圏を検索してみ。/今日の実例ブログはこれだな(また記事の差し替え)。
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 27, 2020
https://t.co/lLl0so0S2u corona fighters #coronafighters
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 27, 2020
ざっと見たところ、インド、パキスタン、イタリアなどについて、3月20日にはもう使われている。
https://t.co/xR0tb3uDGw via @dondon_01
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) March 27, 2020
Buzzfeed Japanは「ネット民の反応」なんてどうでもいいところに注目してるけど、言葉に関する背景調査したのか? 黒岩知事が発表したとして、発案は知事とは限らない(県職員の可能性が高い)し、発想の元(インスピレーション源)が何かということの確認は?
今週は、元々準備してあったものを1本もアップできなかった。それらは何もなければ来週に。
参考書:
サムネ用: