今回の実例は、報道記事から。
新型コロナウイルスに関しては「ワクチンができれば安心だ」みたいな前提があるが、一般論として、すべてのウイルス(を含む病原体)にワクチンがあるわけではない。このウイルスはまだまだわかっていないことがとてもたくさんあって、ワクチンが有効になるのかどうかもわからない。そのことについての記事。
記事はこちら:
キャプチャ画像の2番目のパラグラフから:
You don’t necessarily develop a vaccine that is safe and effective against every virus.
太字で示した《not necessarily》は《部分否定》。「必ずしも~ではない」「~とは限らない」といった意味を表す。necessarilyのほか、alwaysなどの語もこの形をとる。
I don't always use this bus.
(いつもこのバスを使うわけじゃないんだ)
また、下線で示したeveryも、流れから、《部分否定》の意味合いと思われる。Everyを用いた部分否定は、次のようなものだ。
Not every Tokyoite wants the Olympic Games.
(すべての東京都民が、五輪を望んでいるわけではない)
今回の実例の文は「すべてのウイルスに対して安全で効果的なワクチンが、必ずしも開発できるわけではない」という意味。このyou don'tはなかなか難しいが、「~しない」というよりは「~できない」と解釈すべきものである。その解説は当ブログの扱う範囲を超えてしまうので、また別な機会があれば。
次の文:
Some viruses are very, very difficult when it comes to vaccine development
《when it comes to ~》は成句で「~のこととなると」、「~の点では」。
When it comes to baseball, he just can't stop talking.
(野球のこととなると、あの人、話が長いから)
文意は「ワクチン開発となると、いくつかのウイルスは非常に難しい」ということである。
ハイフンを置いて付け足されている文:
- so for the foreseeable future, we are going to have to find ways to go about our lives with this virus as a constant threat.
この文は専門家の発言をそのまま文字に起こしたもので、ハイフンは「言い足している部分」を表記するのに用いられている。日本語にするときは「つまり」か何かを補うとよいだろう。
"foreseeable" は「現時点からうかがえる(見える)範囲の」くらいの意味で、普通に英語に接していると、"the foreseeable future" の形でしか見かけないような気がする語だ。「当面の間は」という意味になる。
太字で示した《be going to have to do ~》は、have to do ~に《未来》を表すbe going to do ~を合わせたもので、「~しなければならなくなるだろう」といった意味。文意は「だから、当面の間は、このウイルスを常にある脅威として、日々の生活を送っていく方法を見つける必要があるだろう」。
新型コロナウイルスに感染しても重症化せず、ごく軽症で済むようにしてくれるワクチンは、できないかもしれないし、できるとしても時間がかかる。だから、当面の間は、こういうウイルスがあるのでそれに感染することを避けるように行動すべきだ、ということを人間の側が考えて、日々の生活を送っていくよりないかもしれない、という話である。
かといって、いつまでも学校閉鎖やパブ、レストランの営業停止(日本ではそういう施設は「自粛」は要請されていても営業を続けているが、英国やアイルランド、米国の各州では営業が停止されている)、スポーツの試合、音楽や演劇の公演や映画上映の停止といった現在の方策をとり続けるわけにはいかない。
そのバランスをどう取っていくかということに、今、世界の関心は向けられている。だが当面は、ひたすら、外出はしないという前提で生活を続けている。(日本はかなり様相が違うけれど……私は東京の片隅で、都心が静かになった分、普段より多くの人が町に出歩いているような環境で、この先一体どうなることか、と思っている。)
参考書: