Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

《経験》の現在完了、助動詞+受動態、【ボキャビル】名詞が動詞に転用されている例(「絵文字嫌いの私もGIFは許容範囲」)【再掲】

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このエントリは、2019年6月にアップしたものの再掲である。何というか、英語は「学校で習う教科」ではなく「人々の生活の中で使われていることば」だということがわかる例であり、そういった「生活の中のことば」にどのように「学校で習う文法項目」が入ってきているのかを学べる文である。

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今回の実例も、前回見たのと同じ「私は絵文字を使わない」というコラムニストのマシンガン・トークの文章から。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

今回見るのは、前回見た部分の1つ先。

 

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2019年6月18日、The Guardian

I have never knowingly used an emoji and I don’t intend to start now.

中学校での学習項目だが、《have + 過去分詞》の現在完了形には大きく分けて3つの意味(用法)がある。《完了》と《継続》と《経験》だ。この3用法をざっくり整理しておこう。

 

《完了》の現在完了形は「~してしまった」の意味で、alreadyを伴うことも多い。否定文になると「(まだ)~していない」となり、文尾にyetが使われることも多い。

  I have (already) finished my homework. 

  (宿題はもう終えてしまった)

  I haven't finished my homework (yet). 

  (宿題はまだ終えていない)

 

《継続》の現在完了形は「(ずっと)~している」の意味で、《期間》を表す語句などとともに用いられることが多い。また、特に動作が継続中であることを言うために、現在完了進行形の形(have + been + -ing)になることも多い。

  I have lived in Asakusa since I was born. 

  (こちとら生まれてこの方、ずっと浅草住まいの江戸っ子でぃ)

  I have been working for this company for more than 20 years. 

  (この会社に勤めて20年以上になります)

 

《経験》の現在完了形は「~したことがある」の意味で、回数を表す表現などがともに使われることが多く、疑問文では「今までに」の意味でeverを伴うことがある。否定文にするときはneverを使い「一度も~したことがない」という意味を表す。

  I have been to New York three times. 

  (ニューヨークには3度行ったことがあります)

  Have you ever heard about Banksy? 

  (バンクシーについて、話を聞いたことがありますか)

  I have never seen Game of Thrones. 

  (『ゲーム・オブ・スローンズ』は見たことがないんです)

 

この文章の冒頭部分(前回みた部分)で、筆者は「私は絵文字というものはよほどでなければ使わないことにしている」(大意)と述べていた。それを受けて、さらに「私と絵文字」について説明しているのが、今回見ているパラグラフである。

I have never knowingly used an emoji

これは「私は、意識的に絵文字を使ったことは、これまでに一度もない」 の意味。それに続く、

and I don’t intend to start now.

 こちらは "start" の後にusing an emojiと補って考えると訳しやすいだろう。「今から(使い)始めるつもりもない」という意味。

 

このあとの "Someone has to hold the line. Standards must be maintained." はマシンガン・トークの部分で、大げさな物言いをして読んで笑えるように書いているだけで、あまりまじめに読まなくてもよい。「最後の一線は誰かが守らねばならないのだ。基準は維持されねばならないのだから」といった感じ。

文法的に言えば、この箇所には《have to do ~》や《助動詞+受動態 (be + 過去分詞)》が入っているが、くどくどと説明するようなものでもないだろう。

《助動詞+受動態》については下記の例文を参照。助動詞の直後に来る動詞は原形と決まっているので、受動態のbe動詞は常にbeの形である。 

  We can see a lot of stars in the sky. 

  → A lot of stars can be seen in the sky. 

 

そしてその次の文: 

Recently I accidentally giffed

この giffed という動詞は見たことがない人がほとんどだろうし、英和辞典を引いても載っていないだろう。 

そもそも giffed と f が2つに -ed がついているが、原形は giff ではなく、gif である。「短母音+子音で終わる語は、子音を重ねて -ed をつける」というルールにのっとって、gif → giffed となっているわけだ。

そして、この gif というのは元々は動詞ではなく名詞である。名詞が動詞として転用されているのだ。

こういった、名詞の動詞転用は英語には類例が多くあるが、最も広く知られているのは検索エンジンGoogleという固有名詞が、googleという動詞として使われている事例だろう。

  What do PML and PDP mean? I googled but find nothing. *1

  (PMLとPDPはどういう意味でしょうか。ググったのですが何も出てこなくて)

 

ほか、Skypeを使って通話することをskypeと言うし、オフィスで使うコピー機の商標にちなんで、「コピーを取る」ことをxeroxと言う。アメリカでは宅配便のFedExが動詞として使われるようになっているし、イギリスでは掃除機のメーカーといえばHooverなので、「掃除機をかける」の動詞はhooverである。

www.lexico.com

www.oxfordlearnersdictionaries.com

 

では今回の実例に出てくる gif とは何かというと、これはもちろんコンピューターで処理・表示する画像の形式のことである。

ja.wikipedia.org

Graphics Interchange Formatを略してGIF。頭文字をつなげた略称は通例全部大文字で書くが、一般名詞・動詞化すると全部小文字になってgifとなる。

GIFの画像は本来は普通に静止した画像で、Windows95Windows98の時代にコンピューターが爆発的に一般に普及し、インターネットを人々が使い始めたころは、「写真はJPGで、グラフや図はGIFで保存する」というのがお約束だった(それが最もきれいに保存・表示できるので)。しかし、人々が盛んにGIFを使うようになった後でGIFの画像処理の特許を持っていたユニシス社がいろいろ言い出したため、ソフトウェアが次々とGIFを処理できないようにアップデートされてしまい、2000年代にはGIFの画像は廃れてしまった。代わりに使われるようになったのがPNGである。なお、問題の特許は2003年から04年にかけて、アメリカでも世界各国でも失効しているので(ソース)、現在はもう自由に使えるようになっている。

そのGIFには、異なる画像を素早く連続表示することで動画とする(ぱらぱらマンガの原理)という機能が備わっていた。現在の英語では、GIFといえば静止画像でなく、むしろ、この「GIFアニメーション」のことを言うようになっている。

GIFアニメは、一度はFlashに取って代わられていたが、2000年代半ば以降の所謂「Web 2.0」のユーザーがコンテンツをネットにアップする時代に再び広く用いられるようになった。特に「ミーム(ネットミーム)」と呼ばれる「ネタ画像」でよく用いられる。現在、Twitterで "Add a GIF" のボタンで呼び出すことのできるGIFはこれら「GIFアニメ」を用いたミームで、ペットのおもしろ映像や映画やドラマの一部(数秒)を切り抜いてGIFアニメ化したものが多い。

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 (ちなみにキャプチャ画像の背景にあるのはこちらのツイート。意図せずして混ぜ込んでしまったら、妙に目立っているので一応……)

 

と、説明がやたらと長くなったが、英語圏ではGIFといえばこれらGIFアニメで、名詞のGIFが転用された動詞の gif は「GIFアニメをツイッターなどに投稿する」という意味になっている。

今回の実例の文: 

Recently I accidentally giffed

 は、「最近、私はそうするつもりもなくGIFアニメをツイートしてしまったのだが」という意味。この部分のすぐ後に説明が続いているが、バッグの中に入れてあったスマホが何かに接触して、GIFアニメが勝手に送信されてしまったということを "accidentally giffed" とごく短い形で述べているわけだ。

 

GIFアニメと「ミーム」について、詳しくは下記参照。こんなにまとまった説明があるページがあるとは、さすがKnow Your Memeである。

knowyourmeme.com

 

さて、今回の文章の筆者のスザンヌ・ムーアは「勝手にGIFアニメが送信されてしまったときは、うっかりすみませんと謝った」くらいだが、GIFアニメやミームについては完全に拒絶してはいないという。しかし、絵文字は絶対にダメ、ありえない、と主張している。その主張の根拠を、おもしろおかしく読めるようなマシンガン・トークで綴った文章が今回見ている記事である。

ぜひ、全文を堪能していただきたいと思う。おもしろいので。

www.theguardian.com

 

 

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