Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

《同格》のthat, 《近い未来》を表す進行形, to不定詞の形容詞的用法, 【ボキャビル】botherという動詞(バーミンガムはメタルの故郷)【再掲】

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このエントリは、2019年6月にアップしたものの再掲である。埋め込んである曲の歌詞も含め、ボキャビルの点でも大いに参考になる記事だと思う。連休中にヒマを持て余している高校生のみなさんはぜひ、ここに出てくる単語は全部暗記するくらいの勢いで読んでもらいたい。(曲の歌詞は曲名のあとにlyricsとつけてウェブ検索すれば簡単に調べられる。)

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今回の実例は、ヘヴィーメタルという音楽の始祖のひとつであるバンドの出身地で「メタル」をアイデンティティの一部にしていく方向の動きが出てきたという記事から。

「ヘヴィーメタル heavy metal」という音楽は、日本では「ヘビメタ」と略されるが、英語で略すときは "metal" で、ヘヴィーメタルサブジャンル・派生ジャンルは「なんとかメタル」と呼ばれる (death metal, doom metal, nu metalなど)。そういうわけで、これから読む記事に出てくる "metal" は「金属」ではなく「(音楽の)メタル」の意味である(heavy metalが「重金属」ではなく「音楽のヘヴィメタル」であることにも同様に注意しなければならないのだが)。

この種類の音楽を最初にやったのはどのバンドかという問いには確定的な答えはないのだが(ウィキペディア英語版のこの項目で「歴史」のところを見るだけでも、頭が痛くなるくらいたくさんのバンド名が言及されている)、英国バーミンガム出身のブラック・サバス (Black Sabbath) が最初期のメタルバンドの1つであることには誰も異論を唱えていない。当時のバーミンガム工業都市で、金属をガンガンやる音が鳴り響いていたが、バンドの音にはその影響が色濃く出ていると言われている。また、ギタリストのトニー・アイオミはバンドを結成する前に働いていた工場で右手の中指と薬指の指先を切断するという事故に見舞われたため、ギターを弾く(コードを押さえる)ためにチューニングを普通とは違うように設定した。これがあの独特の音を生んでいる。


Black Sabbath - "War Pigs" Live Paris 1970

 

というわけで記事はこちら: 

www.theguardian.com

 

f:id:nofrills:20190624170254j:plain

2019年6月23日、The Observer

News that Black Sabbath were disbanding in 2017 prompted a plan to mark their long career with a major exhibition, the band’s first in Britain.

この文、やや長いが、主語はNewsで動詞はpromptedである(下線部参照)。この主語と動詞の間に入ったthat節は、《同格》を表すthat節である。これは、"news that ~" という語のつながりだけでピンときた人が多いだろう。

このthat節内が過去進行形になっているが、この進行形は《近い未来》を表す用法。ここでは、過去の時点で、その時点から見た《近い未来》を言っているので過去進行形になっている。

進行形には、進行中のことを言う用法と、「もうすぐ~する」と確定的な近い未来のことを言う用法がある。中学でしっかり習うのは前者で、後者については教科書では欄外の注記程度で流されてしまっているという人も少なくないので、今一度確認しておきたい。

  I'm reading a book written by James Joyce. →進行中のこと

  (ジェイムズ・ジョイスが書いた本を読んでいる)

  I'm buying another book written by James Joyce. →確定的な近い未来のこと

  (ジェイムズ・ジョイスが書いた本をもう1冊買おうと思う)

 

今回の実例の "News that Black Sabbath were disbanding in 2017" は、「ブラック・サバスが2017年に解散することになっていたというニュース」という意味になる。(このように日本語にすると「解散することになっていたのに、実際にはしなかった」と読めてしまうかもしれないが、そういう意味合いはないので念のため。英語ではあくまでその時点を基準に考えるから過去形にするのであり、日本語でより自然な文にするなら「ブラック・サバスが2017年に解散というニュース」というように時制を絡めない形にするだろう。)

 

続いて、動詞のpromptedの後の部分: 

... prompted a plan to mark their long career with a major exhibition

太字にしたto markは《to不定詞の形容詞的用法》で、直前のplanを修飾している。mark A with Bは「BをもってAを記す」といった意味で、上記引用部分は「彼らの長いキャリアを、大規模な展覧会で締めくくるという計画」という意味。

"a major exhibition" の後ろにコンマを置いて続けられている "the band’s first in Britain" は、"a major exhibition" の補足的説明で、「このバンドにとって英国で最初のもの(最初の大規模展覧会)」の意味。ブラック・サバスは「ヘヴィーメタルの始祖」とされながらも地元の英国では(ザ・ビートルズザ・ローリング・ストーンズ、デイヴィッド・ボウイなどとは違って)メインストリームでの評価が低く、このバンドのことを知らない人、こういう音楽に関心を持っていない人が聞く機会は相対的に少なかったし、したがって「展覧会」も「バンドゆかりの名所」も特にない。そういうのを変えていきましょうよという話が、バンドの活動停止(解散)から2年経過した今年、「結成50周年」という機会に初めて故郷のバーミンガムで大規模展覧会を開くという形で結実した、というわけだ。

 

 

次のセクション: 

“When I say we should have a permanent exhibition, some of the feedback I get argues that heavy metal fans are just 60-year-old white men, so why should we bother,” said Meyer. In response, she began to find ways to show how diverse the metal community is by taking photos of fans from as far afield as Botswana, Japan, Brazil and Indonesia.

ここでの発言主、Meyerさんは、記事の上の方にあるが、今回の展覧会を実現させたthe Home of Metal projectの中の人である。

彼女が言うに、「私が(一時的な企画展ではなく)恒久的な展示をすべきだと言ったときに得たフィードバック(反応)の中には、ヘヴィーメタルのファンは60歳の白人男性なのだから、なぜ私たちがbotherしなければならないのかというものがあった」。

このbotherという動詞は、日本での英語教育ではあまり出てこないし、アカデミックな英語(学問のための英語)でもほとんど使わないが、英語で人と関係を築きコミュニケーションする場面ではよく使う(もちろん、学問の場でも、学生同士の間であれ、学生と教師の間であれ、よく使う。論文には使わないかもしれないが)。

基本的には「~をわずらわせる」という他動詞なのだが、《意味》は非常に幅広いので、手持ちの辞書を参照し、botherの項を一通り読んでみるのが、自分の使える語彙の中にこの語を入れるためには一番だ。下記リンク先では研究社『新英和中辞典』やベネッセの『Eゲイト英和辞典』などの定義が閲覧できる(が、もちろん大修館書店『ジーニアス』、三省堂ウィズダム』などほかに参照すべき辞書は多くある)。

ejje.weblio.jp

 

ジーニアス英和辞典 第5版

ジーニアス英和辞典 第5版

 
ウィズダム英和辞典 第4版

ウィズダム英和辞典 第4版

 

 

読むだけではイメージがつかみづらければ、下記の例がわかりやすいだろう。「猫を見るとついつい構いたくなる」という人の心理は、"I must bother the cat" で表せる。猫の側からいえば「ほっといてよ」であっても、人は寄っていってもふもふしたがるわけだ。

oh look. a cat. i must bother it.

 

というわけで、「メタルなんて60歳過ぎた白人の男しか聞いてないんだから、どうでもいいんじゃない?」と言われたMeyerさんは、ボツワナ、日本、インドネシアなどなど全世界のメタル・ファンの写真を集めてメタルがいかに多様であるか(60過ぎの白人男だけの音楽ではないということ)を示した、という。

そこまでしてブラック・サバスの展覧会を、いろいろと無頓着なバーミンガムで実現させた情熱がすごいと思う。(日本だったら「町おこし」の材料になっていたかもしれないが、バーミンガムは変化が速く激しくて、そういう「色」がつく暇がないんじゃないかと思う。現在はムスリム人口が突出して多い街だし、そのせいでアメリカではとんでもないデマが発生した。)

 

 

Black Sabbath

Black Sabbath

 
Vol 4

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Master of Reality

Master of Reality

 
Paranoid

Paranoid

 
Sabbath Bloody Sabbath

Sabbath Bloody Sabbath

 

 

ちなみに個人的にはバーミンガムといえばこちらです。


Duran Duran - Planet Earth (Official Music Video)

 

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徹底例解ロイヤル英文法 改訂新版

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英文法解説

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