Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

one of the + 複数形, 分詞の後置修飾, 関係副詞の非制限用法, 完了不定詞など(ルワンダ虐殺の主要容疑者逮捕)

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今回の実例は報道記事から。

今から26年前の1994年4月から7月にかけての100日間で、アフリカの内陸にある小さな国で、何十万人という単位で人々が殺されるということがあった。殺害された人の数は今も確定されていないが、その国の人口の1割から2割に相当する。詳細は日本語版ウィキペディアのページにもよくまとめられている(見るのがつらいような写真も入っているので、あまりうっかりとはみない方がよい。ひどい写真があるということについて、それなりに覚悟してからどうぞ)。殺されたのは、その国を構成する2つの民族の一方に属する人々、殺したのはもう一方に属する人々で、これは「ある民族を計画的に破壊する」という定義通りの「ジェノサイド genocide」だった。

ja.wikipedia.org

 

まだインターネットというものが一般で使われるようになる前、携帯電話も普及していなかったころのことで、昨今の紛争・内戦のようにリアルタイムでその状況が細かく伝えられたわけでは当然なかった。それどころか、当時同時に、「冷戦構造の終焉」というより「政治的」な紛争がバルカン半島で起きており、国際社会、とりわけ西洋社会は、そちらに関心もリソースも割かれていた。例えば英BBCは、先日PTSDのため第一線から退くことを表明した紛争・戦争取材の第一人者、ファーガル・キーン記者が、虐殺がまだ進行中だった1994年6月に現地入りして詳しく取材していたし、虐殺が終わったあともスティーヴ・ブラッドショー記者による検証報道があったが、この虐殺についての関心が高まるのには、「国際社会はなぜ見過ごしてしまったのか」という観点と長い年数を要したが、多くの人が体験を語り、多くのことを考えてまとめ上げた書籍などや、2000年代前半に作られた質の高い物語映画*1が、今もこの大量殺戮について人々が知るための足掛かりとなっている。 

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隣人が隣人を殺戮の対象とし、刃物をふるって惨殺するというこのすさまじい暴力を引き起こすうえで大きな役割を果たしたのが、ラジオというメディアでの憎悪煽動だった。

ルワンダ虐殺当時、ルワンダ国民の識字率は50%台であり、政府が国民にメッセージを配信する手段としてラジオは重要な役割を果たした。ルワンダの内戦勃発以降からルワンダ虐殺の期間において、ツチへの暴力を煽動する鍵となったラジオ局はラジオ・ルワンダとミルコリンヌ自由ラジオ・テレビジョン (RTLMC) の2局であった。……1993年の暮れにミルコリンヌ自由ラジオ・テレビジョンは、フツ出身のブルンジのメルシオル・ンダダイエ大統領の暗殺事件についてツチの残虐性を強調する扇情的な報道を行い、さらにンダダイエ大統領は殺害される前に性器を切り落とされるなどの拷問を受けていたとの虚偽報道を行った……。さらに、1993年10月下旬からのミルコリンヌ自由ラジオ・テレビジョンは「フツとツチ間の固有の違い、ツチはルワンダの外部に起源を持つこと、ツチの富と力の配分の不均一、過去のツチ統治時代の恐怖」などを強調し、フツ過激派の出版物に基づく話題を繰り返し報道した。また、「ツチの陰謀や攻撃を警戒する必要があり、フツはツチによる攻撃から身を守るために備えるべきである」との見解を幾度も報じた。1994年4月6日以降、当局がフツ過激派を煽り、虐殺を指揮するために両ラジオ局を利用した。特に、虐殺当初の頃に殺害への抵抗が大きかった地域で重点的に用いられた。この2つのラジオ局はルワンダ虐殺時に、フツ系市民を煽動、動員し、殺害の指示を与える目的で使用されたことが知られている。

 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%AF%E3%83%B3%E3%83%80%E8%99%90%E6%AE%BA#%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%91%E3%82%AC%E3%83%B3%E3%83%80 

 「ミルコリンヌ自由ラジオ・テレビジョン」の「ミルコリンヌ」はフランス語でMille Collinesで(ルワンダは19世紀の西欧列強によるアフリカ分割の結果、フランス語圏となっていた)「千の丘」の意味で、これは(日本について「日出処」とするような)ルワンダの異称である。「美しいわが国土」的なナショナリスティックな響きを持つこの放送局が、率先して、憎悪煽動とデマの拡散を行なった。

その放送局を設立し、放送局と殺戮の当事者たちに資金を提供していた実業家が、虐殺から26年も経過した今になって、潜伏中のフランスで見つかり逮捕されたという報道が、今週末あった。彼はこれまでケニアで密かに暮らしていると考えられていたが、何とパリ近郊で偽名で暮らしていたという。(フランスとルワンダのジェノサイドの関係は掘れば掘るほどいろいろ出てくるが、そこまで突っ込んで見ている余裕は今のところはない。)

www.bbc.com

ルワンダ虐殺については隣国のタンザニア国際法廷(ルワンダ国際戦犯法廷)が設けられ、虐殺の容疑者は逮捕されるとこの法廷で起訴されて裁判を受けていたが、すでにこの法廷が2015年末をもって閉鎖されているので、今回逮捕されたフェリシアン・カブガ容疑者は、オランダのハーグに設置されている「国際刑事裁判メカニズム」*2(2015年で閉鎖されたルワンダの戦犯特別法廷と、2017年で閉鎖された旧ユーゴスラヴィアの戦犯特別法廷を引き継ぐ機関)で裁判を受けることになる。

つまりこの逮捕の知らせは、逃げて隠れていた戦争犯罪人が、26年の時間を経てようやく法の裁きを受けることになるという知らせであり、虐殺の被害者たちはこの逮捕を歓迎している。今回みるのはそれを報じる記事だ。記事はこちら: 

www.bbc.com

 記事の最初のところ: 

f:id:nofrills:20200518130258p:plain

2020年5月17日, BBC News

 

第一文: 

Rwandan genocide survivor groups have welcomed the arrest in France of one of the most wanted men accused of being behind the mass killings.

太字にした部分は《one of the + 複数形》の形に最上級の形容詞がついているパターン。最上級を使うからには1つに限定されそうなものだが、現実にはそうではなく、「最も~な…」は1つとは言い切れないことが多いので、このような表現が毎日どこかで見るレベルでよく使われるわけだ。

  Brad Pitt is one of the most famous actors in Hollywood. 

  (ブラッド・ピットは、ハリウッドで最も有名な俳優のひとりである)

  Berlin is one of the biggest cities in Europe. 

  (ベルリンはヨーロッパ最大の都市のひとつである)

下線で示した "accused" は過去分詞で、直前の "men" を修飾している(分詞の後置修飾)。ここは、《accuse A of B》が受動態の形《A is accused of B》になって、そのaccusedが過去分詞の後置修飾になっている。つまり: 

  He is accused of ~

  → one of the most wanted men accused of ~

ということになっているのが読み取れればよい。

ofは前置詞なので、直後は名詞になるのでbeingという動名詞が来ている。「大量殺戮の背後にいたとして責任を問われている最重要手配者のひとり」という意味になる。

 

次の文: 

Félicien Kabuga, 84, was detained near Paris, where he had been living under a false identity.

太字にした部分は《関係副詞の非制限用法》。下線で示した "had been living" は《過去完了進行形》で、逮捕された時点の前まで「継続して~していた」ことを表している。「フェリシアン・カブガ(84歳)はパリ近郊で身柄を確保されたが、その地で偽のアイデンティティのもとで暮らしていた」という意味。つまり旅行で訪れていたといった状況ではなく、そこで暮らしていたということだ。

 

次の文: 

He is alleged to have been the main financier of the ethnic Hutu extremists who slaughtered 800,000 people in 1994.

《be alleged to do ~》は犯罪の疑いがある人について使う報道の常套句で、「~の疑いがある」の意味。裁判で結論が出るまではそういうことをしたという事実は確定しないので(推定無罪の原則)、客観報道では必ずこのような形をとる。allegeされていることの内容は過去に行われたことだから、自然、このto do ~の部分は《完了不定詞》となる。

  The man is alleged to have murdered the shop owner. 

  (その男は、その商店主を殺害した疑いがかかっている)

というわけで、この記事の文は「彼は、1994年に80万人を殺戮したフツ族過激派の主要な資金提供者だったとの疑いがある」の意味。

 

次: 

"Every genocide survivor is happy he is arrested," the leader of widows' group Avega told the BBC.

 《every + 単数形》である。

また、この文は接続詞のthatが省略されており、それを補うと: 

  Every genocide survivor is happy that he is arrested

となる。このthatは《感情の原因・理由を表すthat節》で「彼が逮捕されて、ジェノサイドの生き残りは全員、喜んでいる」という意味になる。

 

 参考書:  

英文法解説

英文法解説

 
ロイヤル英文法―徹底例解
 

 

*1:ドキュメンタリーではなくフィクションであることに注意。

*2:the International Residual Mechanism for Criminal Tribunals: IRMCT