Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

同じことを伝える報道機関のTwitterフィードを、16件見比べてみよう(EasyJetにサイバー攻撃、顧客情報流出)

↑↑↑ここ↑↑↑に表示されているハッシュタグ状の項目(カテゴリー名)をクリック/タップすると、その文法項目についての過去記事が一覧できます。

さて、今回は前回の続きで、英国に拠点のある格安航空会社のEasyJetに、「高度に洗練された」(と同社が描写している)サイバー攻撃があり、顧客の情報が大量に流出したことについての各メディアのTwitterフィードを見比べてみよう。

何が目的でこんなことをするかというと、同じことを言うための表現の幅がどのくらいあるのかを具体的に示すためだ。というか実際にこのニュースをTwitterで見ていたときに、そういう点でとてもおもしろい(興味深い)と思ったのを書き留めて、広くシェアできるようにしておきたい。

まず、EasyJet社が拠点を置く英国の公共放送、BBC

省略されているthatを補うと、次のような文になる:  

EasyJet says (that) a "highly sophisticated cyber-attack" has affected nine million customers

この、どこか他人事のような突き放した「〇〇社がこう言ってます」調の書きっぷりは、いわゆる「客観報道」というものだ。ここでも前回説明したような引用符の使い方をしていることに注目されたい。つまり、「『高度に洗練されたサイバー攻撃』というのはBBCが言っているのではない、EasyJetが言っているのだ」という事実がこの記述で共有されている。

EasyJetの「高度に洗練されたサイバー攻撃」と顧客の情報の流出については、BBCのこの記事がよくまとまっていて読みやすいので、ここでこの記事をざっと見ておいていただきたい。記事見出しは、sayではなくadmitを使うなど、Twitterとは少しトーンが違っている。

www.bbc.com

何があったかを、この記事からかいつまんで説明しておくと、次のようなことだ。

 EasyJetに対する「高度に洗練されたサイバー攻撃」の結果、およそ900万人の顧客に被害が出た。顧客のメールアドレスと旅程詳細が盗まれたほか、2,208人についてはクレジットカードの情報が「アクセスされた」(と、BBC記事は引用符を使って記述している)。同社は自社で調査を進める一方で、当局にも通報しているが、同社が最初にこの攻撃に気づいたのは1月のことだった ("EasyJet first became aware of the attack in January.") ――というわけで、人々からは「これまで何してたん?」というツッコミが入りまくっている。

そしてBBC記事は、上では「アクセスされた」というEasyJet社の発言を引用していたことについて、次のように地の文で書いている。

It told the BBC that it was only able to notify customers whose credit card details were stolen in early April.

1月に攻撃に気が付いて、それから調べて、クレジットカード情報が盗まれた顧客が特定できたのは4月上旬だったということで、攻撃者は侵入の痕跡を残さないようにしてサーバに侵入したのだろう。だから「攻撃された」ということはわかっても「どのくらいの範囲がどの程度攻撃にさらされたのか」がわからなかったのだろう。それゆえ、「高度に洗練された highly sophisticated」という表現をEasyJet社は使っている。

このほか、盗まれたカード情報はカード裏面の「セキュリティコード」を含むとか、メールアドレスが流出してしまった人々はフィッシングのターゲットとされる可能性があるから気を付けてほしいとか、5月26日に影響を受けた人全員に連絡を入れるとか、攻撃者の目的は顧客情報というより会社の知的財産だったと見られ、これまでのところ盗まれた情報が悪用されたという証拠はないとかいったことがこの記事には書かれている。

 

いずれにせよ、非常に多くの人々が日常的に利用している格安航空会社のEasyJetはサーバに侵入され、900万件もの顧客情報を盗まれた。その事実を報道各社がTwitterのフィード(多くの場合は記事の見出し)でどう伝えているかを並べてみるとしよう。

 

ガーディアンは見出しだけの機械的なフィードで、「サイバー攻撃で900万人の顧客の情報がさらされたとEasyJet社が明かした」。revealは「これまでは黙っていたが、ここに来て明らかにした」というニュアンス。

 

 

インディペンデントも見出しだけの機械的なフィードだと思うが、意外にもEasyJet社寄りで、引用符も使わず「900万人の顧客の詳細情報がアクセスされた」と打っている。

 

衛星放送系民放スカイニュースの「速報」アカウントは記事リンクの送信をするのではなく、Twitterの280字を最大限に活用するスタイルで短信の速報を打っているが、そこはこう。これだけ読めば何があったのかはだいたいわかる。トーンはBBCとよく似ている。

 一方スカイニュースの通常アカウントは、記事とニュース映像へのリンクの配信を主な目的とするアカウントだが、次のようにフィードしている。

 

地上波系民放のITVはこう。前回見た文法項目、《have + O + 過去分詞》を使っている。何か唐突なようなのでこの前にツイートがあったのかなと思ったが、ITVのアカウントをさかのぼってもEasyJetに言及したツイートはこれしかない。EasyJet側の言い分を一切入れず、淡々と被害の数字だけをフィードするというのは、なかなか厳しい。

 

タイムズはこう。「EasyJetサイバー攻撃された」という受動態ではなく「ハッカーが個人情報を盗んだ」という能動態で書いているのと、EasyJetの「高度に洗練された攻撃だった」という言い分を引用符で示しているのが特徴。

 

さて、ここ数年でどんどん極右ポピュリスト・メディアに変貌してきたかつての名門新聞デイリー・テレグラフだが、この時点では「独自路線を突っ走っている」としか言いようのないことをTwitterという拡散の場でフィードしている。

 

これを見たあとにアルジャジーラのフィードを見たので笑ってしまったのだが、実際にはアルジャジーラの方がデイリー・テレグラフより早い時間に投稿されている。

 

もっと早いのがロイター。この内容については記事を読まないとわからないが、当ブログではそこまでは扱わない。関心がある方は各自、記事をお読みいただきたい。

 

経済誌のフォーブズは淡々としているが、「被害に遭った企業」にやや寄り添った感じのスタイルだ。

 

EasyJetの利用客が多いドイツのメディアDWの英語版。見出しだけの配信で、「EasyJetが~された」の受動態ではなく「ハッカーが~した」の能動態で書いているので、すっきりしている。

 

経済方面が中心の通信社、ブルームバーグは「EasyJetは~と述べた」という形で速報をフィードしている。英文法としては、《付帯状況のwith + 過去分詞》が入っている。

 

米CNNは「ハッカーが~した」の能動態で: 

 CNNの「速報」アカウントも能動態だが、表現が少し異なる。

 

そして前回見たニューヨーク・タイムズ。これが最も情報量が多い。280字で、よくこんなに入るなというくらい入っている。

 

最後に、EasyJetステートメント

 

f:id:nofrills:20200521092306j:plain

2020年5月20日, Twitter @easyjet