Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

【ボキャビル】wrongという単語の意味(ネット情報の真偽チェック #ファクトチェック )

↑↑↑ここ↑↑↑に表示されているハッシュタグ状の項目(カテゴリー名)をクリック/タップすると、その文法項目についての過去記事が一覧できます。

今回は、トピックとしては前回と同じことについての記事から。

現在、全米の各都市で激しい抗議行動とそれに乗じた暴力的な活動を引き起こしたのは、ミネソタ州ミネアポリスで先週月曜日(5月25日)に起きた、白人の警官による黒人男性殺しだ。

加害者の白人警官デレク・ショーヴァンは(彼の加害を黙って見ていた他の警官たちとともに)即日職務停止となり、翌日には解雇された。ショーヴァンはミネソタ州で初めて、黒人殺しで処罰された警官となったが、29日には逮捕・起訴された(ミネソタ州法での第3級殺人罪および第2級過失致死罪)。被害者のジョージ・フロイドさんについては、6月1日に正式な検視結果が公表され、死因は(暴行を受けての心臓発作などではなく)殺人行為であると認められた。

首に膝でのしかかられ、「息ができない」という言葉を最後にこときれたフロイドさんは46歳、数年前にミネアポリスに来たが、その前はずっとテキサス州ヒューストンで暮らしていた。背の高い彼は、高校時代はアメフトで活躍し、卒業後はフロリダ州立大学(カレッジ)でバスケをプレイしていたが、テキサス州に戻ってきて大学は学位を得ずにドロップアウトしたようだ。それから犯罪に染まり、武装強盗で禁固5年の判決を受けるほど荒れたが、そこで信仰に出会い、その流れで人生を仕切り直すために故郷のヒューストンを離れ、ミネアポリスに引っ越したそうだ。ヒューストンで彼が育った地域はインナーシティの貧しい黒人街で、今回事件を受けて非常に活発に発言している歌手のビヨンセも、フロイドさんと同じ地域の出身だという。そういったことは、BBCの下記記事を参照。

www.bbc.com

本題ではないのだが、この記事に前回見たのと同じ用法のseeが入っていることに今気づいたので、そこを抜き出しておきたい。

Marred by segregation in the 20th Century, the Third Ward Floyd left in recent years has seen gang violence and tensions over housing.

 

さて、本題に入ろう。このあまりにもむごい死によって全米で抗議行動が起きている中、米国の最高責任者は、前回述べたように、危機にあって国民をまとめていこうなどという気などさらさらなく、逆に対立を煽ることしかしていない(あと物理的に自分に難が降りかからないようにすること)。対立を煽り、恐怖心を有権者に植え付け、自分への支持を固めることが、今年11月の選挙で有利に働くのだろう。普通の(正常な)意味での「リーダーシップ」など取られておらず、あちこちが混乱している。さらにネット上では、大統領の不穏当な発言をめぐってSNSのプラットフォーマーがついに重い腰を上げて「とりあえず非表示。読みたい人はクリック/タップでどうぞ」とするという措置を発動するなど、普段からこういうのを見慣れている人でなければ「正直、もうわけがわからない」と思ってしまうかもしれないような混乱した状況だ。

そして、何が目的なのかはわからないが(というか、目的はさまざまなのだろうが)、そういう「情報の混乱」を狙ってニセ情報をばらまく輩がいる。新型コロナウイルスに加えてこの抗議行動と暴動が同時に起きている今のアメリカは、そういう「ニセ情報」ばらまきのかっこうのターゲットだ。

ニセ情報にもいろいろある。災害があると面白半分で「洪水で道路が川になってるからサメが泳いでる」とか「動物園からライオンが逃げた」とかいったことを(場合によってはフォトショップで加工するなどした)写真をつけてTwitterに投稿したりする人がいるが、そういうのは「イタズラ」(ネットスラングでいう「釣り」)目的にすぎない。それはそれでタチが悪いのだが、そういういわば娯楽的なものではなく、政治的な意味合いのある情報攪乱や誰かの信用失墜を目的としたニセ情報の拡散は、特に冷戦期にソ連が得意としたもので、英語ではロシア語から直訳したdisinformationという表現で呼ばれ、単なる勘違いなどによるものを含めた広義の誤情報 (misinformation) とは区別される。

特に2016年の英国でのEU離脱可否を問うレファレンダム(国民投票)と米大統領選のあとは、米大統領となってしまったドナルド・トランプの幼稚な口ぶりでいう "fake news" が定番の表現となってしまったが*1、そのいわゆる post-truth(真実によって判断がなされ、事態が動いていた時代が過去のものとなったあと)の時代に、報道機関などは、それまでは舞台裏での仕事であった事実確認、つまり「ファクトチェック」を表に立てるようになってきた。

「ファクトチェック」自体は2016年より前に、写真や映像の撮影ができる携帯電話の普及とSNSの普及で個人が自分の目の前で起きていることを伝えることが当たり前になった時代に、どこの誰ともわからない誰かが流している情報が真正なものであるかどうかを確認したいというニーズにこたえるものとして注目されていた。そのころ(2015年)の様子を下記ページに記録してある。

matome.naver.jp

BBC Newsのような押しも押されぬ報道機関もこういった「ファクトチェック」を直接情報の受け手に届けるという取り組みを行うようになっており、今回実例として見るのはその「BBCのファクトチェック」のコーナー、Reality Checkの記事だ。

記事はこちら: 

www.bbc.com

BBCのこの記事は、ジョージ・フロイドさん殺害への反応として米国各地で起きていることについてネット上に流れている誤情報・ニセ情報や曖昧な情報をいくつか列挙している。一読するだけで、こういうときの、世間の情報を混乱させることを目的とした誤情報・ニセ情報のパターンみたいなのが見えてくると思うから、どなた様にもご一読をおすすめしたい。

今回、実例として見るのは、列挙されている項目の3番目の小見出し。 

f:id:nofrills:20200602170409p:plain

2020年6月1日, BBC News

 

Wrong year, wrong country

この "wrong" の意味がわかるだろうか。

wrongというと「悪い」の意味が真っ先に頭に浮かぶかもしれない。実際、英和辞典を見ると、wrongの語義は最初に「悪い、不正な」がある。

だが、実際にはこの単語はそういう「善悪」の話ではなく「正誤」の話について用いられることが多い(もちろん「善悪」の意味でも用いられる)。英和辞典で2番目に載っている「誤っている、間違った」の語義だ。電話で "wrong number" といえば「間違い電話」のことだし(例文などはここを参照)、"wrong person" は(「悪い人」ではなく)「人違い」だ。

  A New Jersey hospital admits giving a kidney transplant to the wrong person*2

  (ニュージャージー州のある病院が、誤って別の患者に腎臓を移植してしまったことを認めた)

 

今回の実例では、「5月28日、炎上する警察署、アメリカで撮影」としてTwitterに投稿されたビデオが、実は今年撮影されたものではなく (wrong year)、場所もアメリカではない (wrong country) と指摘している。

実際にはこの映像は2015年、中国・天津で発生した爆発事故のものだそうだ。

というか、この映像は2015年の爆発事故当時にあちこちの報道機関で流されたもので(現地在住のアメリカ人技術者がタワーマンションの自宅から撮影していた)、あんな大ニュースのこんな有名な映像を、今回のアメリカでの騒乱の映像だといって流すのは、人をなめているとしか思えないが、実際にはそのくらいのことは普通に行われる。

こういうときだから、英語圏で情報を得ようとする人が多くなると思うが、特に漠然と「海外情報」としか認識できないくらいの下地で英語圏に飛び込むと、かなりの確率でニセ情報に釣られてしまうのではないかと思う。それを避けるためには、確実な情報源に絞って情報に接するのがよい。BBCなど評価が定まっていて信頼できるとわかっている報道機関だけを見ておくのが最も安全だ。

 

参考書:  

フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器 (角川新書)
 

 

 

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*1:普通の大人はfakeではなく、falseとかbaselessとかunfoundedとかいう概念・語彙を使いこなすものだった。ましてや米大統領となればなおのこと、いわゆる「品格」のある表現を使うのが当たり前だったし、それゆえに米大統領のスピーチなどは「大統領の英語」として英語学習者に親しまれてきたのである。

*2:英文出典: https://edition.cnn.com/2019/11/26/us/nj-hospital-kidney-transplant-wrong-person/index.html