Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

等位接続詞, 助動詞+受動態, 前置詞のover, など(ローマ教皇が同性間のシヴィル・ユニオンを支持)

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今回は、前回の続きで、同性カップルの権利についてのローマ・カトリック教会のフランシスコ(フランチェスコ教皇の発言から。

前回は、marriage(結婚)と、civil union[partnership] は、日本語では安易に「同性婚」「同性結婚」と言われるが、両者はキリスト教においては別のものなので、特に宗教家の発言について扱う場合には両者を同一視してはならないということをざっと説明し、現在世界的なニュースになっているフランシスコ(フランチェスコ)教皇のドキュメンタリーでの発言について、少しだけ見た。今回はその続きである。

記事はこちら: 

www.irishtimes.com

フランシスコ教皇のご発言は、下記キャプチャの第3パラグラフと第4パラグラフに抜粋掲載されている。

f:id:nofrills:20201022163934j:plain

https://www.irishtimes.com/news/world/pope-francis-backs-civil-unions-for-same-sex-couples-in-documentary-1.4387301

第3パラグラフの引用符内、最後の文: 

Nobody should be thrown out or be made miserable over it

太字にした "or" は《等位接続詞》で、同じ性質の(等しい)もの同士をつなぐ。"or" の直後が "be made" なので、"or" の前にある《be+過去分詞》を見つけることが、文の構造をつかむうえで必須だ。といっても、こんな短い文でそこでつまづくことはあまりないかもしれない。自分はこんなところで間違えたりしないと思っても、こういう基礎の部分をおろそかにしてしまわないよう、遭遇したらいちいち細かく確認しておくことは有益である。

というわけで、この文は次のような構造になっている。

Nobody should be thrown out or be made miserable over it

文全体は《助動詞+受動態》で、「だれも~されるべきではない」。その「~される」のところにorで接続されたもの2つがきている。前半はthrow A out(「Aを放り出す」)の受動態でbe thrown outとなり「放り出される」。後半はmake A miserable (「Aをみじめな気分にさせる」)の受動態で「みじめな気分にさせられる」。"over it" は「そのことをめぐって」で、この《前置詞》のoverの使い方は覚えておくとよい。

ちょうど今、武力紛争が起きているナゴルノ=カラバフについて下記のような記述をよく見る。

  a dispute over control of the mountainous region of Nagorno-Karabakh*1

  (ナゴルノ=カラバフの山岳地帯の支配をめぐる争い)

また、先ほど行われた米大統領選でのトランプとバイデンの討論について報じる記事の見出しで: 

  US Election 2020: Trump and Biden row over Covid, climate and racism*2

  (2020年米大統領選挙: トランプとバイデン、コロナ、気候、人種差別をめぐって舌戦)

 

教皇の発言の最後にある "over it" の "it" の内容は、前文までで述べられている「家族に属すること、家族を持つこと」で、「(同性愛者を含め)人はだれであろうとも、それ(=家族に属し、家族を持つこと)をめぐって、放り出されたり、惨めな気持ちにさせられたりすべきではない」と直訳される。

なお、この件を報じる英語記事は、私が見た限りではどれも、助動詞のshouldをたくさん使っていた。さながら「should祭り」であるが、どれも特別注意が必要な用法とはいえないので、そこにフォーカスしてブログにするのはやめた。興味がある方は下記記事をざっと見比べてみると面白いかもしれない。

www.bbc.com

www.theguardian.com

www.nbcnews.com

www.rte.ie

 

さて、話を元に戻して、第4パラグラフの第1文: 

What we have to create is a civil union law. 

文頭の "what" は《関係代名詞》で、下線部がその節全体。文全体で、「わたしたちが作り出さなければならないものは、シヴィル・ユニオンの法律です」となる。

 

civil unionについては、前回説明したので、そちらをご参照いただきたい。わかりやすく言えば、教皇同性カップルには、(「神の法」によるmarriageとは別に)「俗世の(人間の)法」によるcivil unionがある、という見解をはっきり示しているわけだ。これは案の定、「同性愛は許容されない」という考えのカトリック保守派を憤慨させ、私が検索したときにYouTubeはかなりなことになっていた。

英語圏ニュースに出てくる英文テクストのソースも明らかでないし、なぜこんなdivisiveな発言がこういう形で(バチカンと離れたところで)全世界に広められたか、謎は深まるばかりで、実際、そういった話も持ち上がっている。

Question swirled Thursday about the origins of Pope Francis’ bombshell comments endorsing same-sex civil unions, with all evidence suggesting he made them in a 2019 interview that was never broadcast in its entirety.

The Vatican refused to comment on whether it cut the remarks from its own broadcast or pressured the Mexican broadcaster that conducted the interview to follow suit. And it didn’t respond to questions about why it allowed the comments to be aired now in the documentary “Francesco,” which premiered Wednesday. ...

The official 2019 Vatican News transcript of that interview (with Mexican broadcaster Televisa), as well as the official Vatican edit, contains no such comment on the need for legal protections for civil unions. The official edit does include his comments on the need for gay people to feel they are part of a family, as he has said previously. ...

www.independent.co.uk

このニュースのこういった方面のことについては、当ブログで扱うトピックの範囲外となるので、これ以上深入りはしないが、フランシス教皇のこのご発言を、日本の東京都足立区の区議会議員のトンデモ発言などと比較対照して「日本はダメだ」とだけ言うために参照することは、どうなのかな、と思う。実際、教皇が「シヴィル・ユニオン」を支持したということは、「結婚」は支持しないということであり、その点では同性愛者の人権(婚姻の平等)にとってはよいことではないという考えもある

 

※3400字

 

資料集(前回のエントリ末尾につけてあったのと同じ): 

件のドキュメンタリー映画の予告編: 


Francesco Documentary 2020 Trailer

 

映画公式サイト。イタリアおよび北米でのオンライン上映の日程など。日本から視聴が可能かどうかは確認していない。

www.francescofilm.com

 

映画について告知するヴァチカンニュース: 

www.vaticannews.va

 

IMDB

www.imdb.com

 

アイルランド、RTEのニュース: 

www.youtube.com

 

参考書:   

英文法解説

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