Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

イギリス英語のhave got, 【ボキャビル】have ~ on one's hands, those one's age (選挙を前に、「首相のおひざ元」の有権者は……)【再掲】

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このエントリは、2019年11月にアップしたものの再掲である。非常にナチュラルな「イギリス英語」の文例を見てみよう。

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今回の実例は、総選挙を前にしたとある選挙区情勢について、現地の有権者の声をまとめて綴った記事から。

今年7月下旬、保守党の党首選挙でボリス・ジョンソンが党首に選ばれ、自動的に英国の首相となったときには「10月31日には何が何でもEU離脱する。期限延期などするくらいなら、どっかそのへんでくたばった方がまし (I would rather die in a ditch)」という勇ましい態度だったのだが、その後、あれこれ策を弄したのがどれもこれも失敗して、結局ずるずると、10月31日の期限はまたもや延期となった。そしてジョンソンは野垂れ死になどせず、英国下院を解散して総選挙に持ち込む特別立法にこぎつけた*1。投票日は12月12日(木)。クリスマス直前に総選挙を行うなどということは、異例のことだ。

というわけで、今回の実例は、選挙が決まった英国の有権者の声は……という、これからたくさん出るであろう記事の嚆矢となるガーディアンの記事から。この記事で、記者はボリス・ジョンソンの選挙区であるロンドン西端のアクスブリッジの情勢を細かく伝えている。

www.theguardian.com

 

アクスブリッジについては、今日の記事にも説明が出てくるが、より基本的な概略は10月に選挙関連で面白おかしい話題が出たときにちょっと書いたので、そちら(下記記事)をご参照いただきたい。

matome.naver.jp

今回実例として見るのは、記事の上の方、見出しに取られている有権者の言葉がある部分から。ここで出てくる "the Crown and Treaty" は、現在ガストロ・パブ(食事を重視したパブ)となっているが、建物自体は元マナー・ハウス(領主のお屋敷)で、17世紀半ばのイングランド内戦時に、国王チャールズ1世と議会派との交渉が行われ、重要な条約が結ばれた。詳細は、この記事のもっと上の方(書き出し部分)でも説明されているが、英語版ウィキペディア参照。

f:id:nofrills:20191104181101j:plain

2019年11月3日、the Observer/Guardian

I think the youth vote will go against him and I think he’s got a battle on his hands

"he's got" は "he has got" の短縮形で、意味は "he has" である。この《have got》 (= have) は、アメリカ英語で全く使わないというわけではないにせよイギリス英語に特徴的な語法である。形式としては現在完了形に見えるが、gotに意味はなく、単なる現在形のhaveの意味である。ちゃんとした喋り方をしなければならないような場面では用いられず、日本語の感覚でいうと「タメ口をきいてもよい間柄」で用いられる表現だ。

  Do you want to watch Joker this evening? I've got (= I have) a spare ticket. 

  (今晩『ジョーカー』見ない? チケットが1枚余ってるんだ)

  Have you got time? 

  (時間わかる?/今、何時?)

  She's got a great sense of humour. 

  (あの人のユーモアのセンス、すごくいいよね)

  They haven't got a lot of money, but they're enthusiastic. 

  (彼らには金はあんまりないけど、熱意はある)

 

続いて、同じ文から《have ~ on one's hands》という表現。これはケンブリッジ辞書の定義がわかりやすいので見ていただきたい。

If you have a difficult situation on your hands, you have to deal with it

https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/have-sth-on-your-hands

 「何か困難な状況をhave on your handsしているというのは、それに対処しなければならないという意味である」という説明。

この実例では、"He's got a battle on his hands" で、「彼(=ジョンソン)は戦いに対処しなければならない」という意味。battleは「戦い」だが、それでは抽象的すぎて意味がわかりづらいかもしれない。この場合、「保守党党首だからといって選挙で楽勝できるような感じではない」といった感じになる。

 

というわけで、12月の選挙で初めて選挙権を行使する18歳のメアリ・ジェーン・プレンダーガスト=リスターさん(とても品の良い名前である)は、ここで、「若者はジョンソンに反対して投票すると思う。楽勝というわけにはいかないのではないか」と自分の考えを述べているわけだ。

 

次のパラグラフ: 

She said the focus would be on Brexit. For those her age, “this is their first opportunity to have their say, though maybe there’s no point now,” she said...

太字で示した部分の "those" は、例えば "those who are interested in football" (「サッカーに関心のある人々」)といった表現で使われるthoseと同じで「人々」を意味する。

そして、"those her age" は「彼女と同年代の人々」という意味になる。これは少々独特な形なのだが、前置詞のofが脱落したものと考えられる(those of her age)。

これについて『ジーニアス英和辞典(第5版)』には次のようにある(46ページ):

When I was your age, ... 私があなたの年には…… (◆ when I was of your ageのofが脱落したもの。→ of 2b) 

ここで参照するように指示されているofの項目(1463ページ)を見ると、"We are (of) the same age[height]." という例文が挙げられて「ofを省略する方がふつう」との解説がある。 

ジーニアス英和辞典 第5版

ジーニアス英和辞典 第5版

 

 

ではなぜこのofが省略されるのか、ということになると、このクラスの学習英和辞典ではカバーしきれないし、当ブログでカバーできる範囲でもないので説明はしない。

説明はしないが、具体例は示しておこう。ウェブ検索結果より: 

Among those her age and younger she serves as a role model, but to the elders she is an anomaly

https://www.culturalsurvival.org/publications/cultural-survival-quarterly/women-and-identity-modernization-and-changeover-market

 

For someone Greta Thunberg’s age, 16 now, and by 2050 triple that, it means for the majority of her existence climate change will very much be front and centre making her life, and those her age and younger, far less comfortable than the one I will have experienced. 

https://www.21stcentech.com/teenagers-adults-climate-change-this-working/

 

ここでインタビューに応じているのは18歳のメアリ・ジェーン・プレンダーガスト=リスターさんだが、彼女の年齢だと2016年のEU離脱可否レファレンダム(国民投票)のときは参政権がなかったので(英国の参政権は18歳以上)、"this is their first opportunity to have their say" (「今回の選挙が、自分の意見を示す初めての機会である」)ということになるわけだ。だが、既にEUを離脱するという結論は出されてしまっているので、"though maybe there's no point now" (「今となっては[意見を示すことに]意味はないのかもしれないが」)と付け加えているわけだ。

 

記事ではこのあと、20代やそれ以上の年齢の人に話をきいていく。日本式に言えば「首相のおひざ元」の選挙区で、首相を支持していない人々が何を根拠にどのような考えを持っているか、どのような意見を示そうとしているかといったことが綴られている。あまり読みやすくはないかもしれないが、全文を読んでみるとおもしろいだろう。

 

 

A Short History of Brexit: From Brentry to Backstop (Pelican Books) (English Edition)

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Brexit and British Politics (English Edition)

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ブレグジット秘録?英国がEU離脱という「悪魔」を解き放つまで?

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*1:英国の現行法では、日本のように憲法上、内閣に「解散権」があるわけではないので、解散・総選挙のために特別立法が必要となったのである。

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