Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

連鎖関係代名詞, やや長い文, make + O + C, など(また新たな変異株、B.1.525: その2)

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今回の実例は、前回の続きで、報道記事から。

今回は前置きなしで、いきなり本題に入ろう。記事はこちら: 

www.bbc.com

前回見たところの続きを読んでみよう。

 

f:id:nofrills:20210217192336j:plain

https://www.bbc.com/news/health-56082573

キャプチャ画像の2番目のパラグラフ(文):

Other alterations make it similar to the UK 'Kent' variant that experts say is more contagious than the original version of coronavirus that started the pandemic.

やや長い文だが、本体部分は "Other alterations make it similar to the UK 'Kent' variant" で、そのあと、太字で示したthatから後は修飾節である。thatは《関係代名詞》で、先行詞は "the UK 'Kent' variant". これは、前回説明したように、日本では「英国株」などと呼ばれている変異株のことである。

"make it similar ..." のitは、前出の "B.1.525" を指す。このように、代名詞が何を指しているのかを丁寧に確認しながら読むことは、正確な読解には欠かせない。”また、"make it similar" は《make + O +  C》の形で「OをCにする」。ドナルド・トランプが中身もないのにうんざりするほど繰り返していた "Make America Great Again" というキャッチフレーズと同じ構文だ。この文は「そのほかの変異が、それ(=B.1.525)を英国変異株に似たものにしている」という意味である。

"alteration(s)" は同語反復を避けるための言い換え表現だろう。すぐ上のパラグラフ(文)の "changes", "mutation" と同意で、「ウイルスに生じている変化、変異」のことを言っている。こういう言い換えは学術論文のような用語に厳密な文よりも、ニュース記事のような一般的な、人に読んでもらうための文でよく見られるのだが、語彙力がないとつらいものがある。現にこの "alteration" という単語もここで初めて見たという人が多いのではないかと思うが、見て推測できるように、これはalterという動詞の派生語で、形容詞のalternativeともつながっている。ひとまとめにして覚えておくと効率がよい。辞書で確認しておこう。

さて、関係代名詞の部分。

... that experts say is more contagious than the original version of coronavirus that started the pandemic.

順番が逆になるが、下線部の "that" から説明しておこう。これはシンプルな《関係代名詞》で、先行詞は "the original version of coronavirus" だ。意味は「パンデミックを引き起こした最初のバージョンの(新型)コロナウイルス」。ちなみに英語圏の報道記事などでは「新型コロナウイルス」を丁寧に the novel coronavirus と表記することは今やまれで(パンデミックがWHOによって宣言されたころはまだ、こういう表記があったのだが、その後、毎日大量のニュース記事になるなかで、"novel" が落ちてしまった)、単に "the coronavirus" と言えば「新型コロナウイルス」のことになっている。これは、パンデミック終息後に書かれるものでは話が変わってくるだろうし、そうなるとAI頼みの機械翻訳などではかなり面倒なことになりうる。

閑話休題。太字で示した "that" の方。これも関係代名詞なのだが、ここが多少把握しづらいのではないかと思う。

ぱっと見て構造がわからなかった人は、"is" の主語はどれかを考えてみてほしい。

わかっただろうか。

この部分は、次のような構造になっている。

... that ( experts say ) is more contagious than the original version of coronavirus that started the pandemic.

青字にしたものが《主語+動詞》の関係で、間に入っている赤いカッコで示した部分はその主語と動詞の間に挿入されている、と考えてよい。

こういうふうになっている関係代名詞を《連鎖関係代名詞》と呼ぶが、この文法用語は「覚えられれば/覚えたければ、覚えておいて損はない」という程度で、別に無理をして覚える必要はない。覚えていれば参考書を読むときやネットで調べものをするときに便利になる、という程度で、必須の文法用語ではない。だが、この構造そのものは極めて重要で、絶対に押さえておく必要がある。文法用語がめんどくさいからという理由で文法項目自体を敬遠しがちな人は、特に、この「連鎖関係代名詞」という用語がさしている構造がわからないのなら、用語そのものは見るだけ見て忘れたっていい。

この構造の特徴は、 "experts say" の部分を取り除いて、 "that is more contagious ..." としても十分に意味が通る、ということにある(取り除いてしまうと、情報が減ってしまうのだが)。

別な例文を挙げると: 

  The smartphone which the shop assistant said was the latest cost over 100,000 yen. 

これは、構造を浮き立たせるために太字などを使うと:

   The smartphone which the shop assistant said was the latest cost over 100,000 yen. 

  (店員が最新だと言っていたスマホは、10万円以上した)

これも、"the shop assistant said" を取り除いても十分に意味が通る。

   The smartphone which was the latest cost over 100,000 yen. 

  (最新のスマホは、10万円以上した)

というわけで、"that experts say is more contagious than the original version of coronavirus that started the pandemic." は、「専門家たちが、パンデミックを引き起こした最初のバージョンの新型コロナウイルスよりもより感染力が強いと述べている(英国株)」という意味である。

 

【補足】

この連鎖関係代名詞の構造で、関係代名詞がwhichやwho(m) でなくthatが用いられている例文は、参考書にはなかなか載っていないために「使えないのではないか」と思ってしまうのも無理はないのだが、実際にはthatで連鎖関係代名詞ということも、今回見た実例のように、わりとよくある。Googleで検索してみたら、〈人〉が先行詞である場合に連鎖関係代名詞としてthatが用いられる頻度についての論文が見つかったので、関心がある方はチェックしてみてほしい。ただし今回の実例は先行詞は〈人〉ではなくウイルスだが。

福島一人「連鎖関係詞節における that 節の使用頻度: who 節、 whom 節、 接触節の使用頻度と比較して」

 

【補足、ここまで】

 

この次の文(パラグラフ)も丁寧に見てみる価値があるので、次回はそれを見てみよう。

 

※2860字

 

参考書: 

英文法解説

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