Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

ガザ地区の停戦は続いているが、これで「終わり」ではない。

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今日も引き続きイレギュラーな感じで。

ガザ地区に攻撃を加えているイスラエル軍と、ガザ地区からイスラエルに攻撃を加えているガザの武装組織(ハマス武装部門と、イスラム聖戦)の間での停戦(休戦、武力行使の中止)は、破られることなくもっている*1。停戦しておいて境界線(国境)沿いで銃撃や砲撃を行うのがイスラエルの常ということで、停戦して24時間の間はTwitter上の英語圏で何か発言しているガザ地区の人々や「ガザ地区とともに立つ」という態度を明確にしている人々の間では疑心暗鬼の声が目立っていたが、やがて40時間になろうかというところでもまだ停戦は続いている。この「続いている」は一般的に(continueではなく)holdを用いて表す(コロケーション)。

停戦に際しては交渉が行われたわけだが(仲介者はエジプト)、その交渉にあたった双方が「勝利」を宣言している。これは、unwinnable warというもので、つまり明確な勝者は誰もいない、いるのは犠牲者だけという武力行使である。北アイルランド紛争がそうだったのだが、2005年にProvisional IRA北アイルランド紛争が激化して以降、報道などで一般にIRAと呼ばれた組織)が武装闘争の停止を宣言したときに、unbeatable, unwinnableという表現が多く見られた。

一方で、こういう局面では「せめてガザ地区に支援物資を」という流れが起きるが、その「せめて支援物資を」という気持ちは、政治的な現実においては「どんなことが行われようと、事後的に支援物資さえ送ればOK」というものに変容し、それが「常識」化し「定石」化してしまうもので、ガザ地区の中からは「支援物資」という善意に対するやりきれない気持ちが聞こえてきたりもしている。ジャーナリストのオマールさんは全部大文字で叫んでいる。これを見て私は、ガザ地区の人々が世界的な二級市民として扱われている現状こそがガザ地区の人々にとっての問題を引き起こしているのだと改めて思う。

英語的なことを書いておくと、"Could you please do ~?" は「頼むから、~してくれないか」くらいのニュアンスの表現で、いわゆる日常会話でもよく使われる基本的な表現である。いわゆる「中学英語」ではpleaseがあれば「丁寧な表現」と習っているだろうし、couldは「丁寧な表現」というのも教えられるから、この言い方をすれば「~していただけないでしょうか」くらいのニュアンスになると思っている人もいるかもしれないが、実際はそれほど「丁寧」ではない。文脈にもよるし、話し手と聞き手の関係にもよるが、これを「相手に失礼のない丁寧な表現」と思っていると、いろいろと齟齬をきたすかもしれない。

今回の、ガザ地区イスラエルの武力集団の間での、マスコミなどのいう「衝突 clash」は、5月7日から21日まで続き、その間に少なくとも274人の人命が失われた。うち243人はガザ地区の人々で、71人は子供である。その全員の名前(アルファベット表記)と年齢、男女の別を、Middle East Eyeのアカウントが連続ツイートしている。

35件のツイートから成るこのスレッドを1ページで一覧できるようにしたのが下記。

threadreaderapp.com

パレスチナを何度も訪れ、現地の人々とのつながりを築いてきた写真家の高橋美香さんが、声に出してこのお名前を読み上げるのに20分くらいかかったそうだ。 

私は目で追うことしかできなかったが(文字を見てもお名前の読み方がはっきりとはわからない)、20分では済まなかった。

こんなふうに、同じ名前(名字)ばかりが連続し、年齢もさまざまな「一家全滅」に近いようなものを、止まらずに最後まで淡々と事務的に読んでいくことは、目で追うだけでも、とてもつらかった。

 

高橋さんと皆川万葉さんのご著書で、この人はお菓子売り、この人は農民、この人は自動車修理工、この人は俳優、この人はレストランのウエイター、この人はジャーナリスト、この人は出稼ぎ労働者……と、ひとりひとりの人間の顔と名前と、その生業、その生き方がまとめられたページを繰りながら、274ページ分のそれを想像する。

パレスチナのちいさないとなみ

パレスチナのちいさないとなみ

 

北アイルランドでそういうことをやったのが、Lost Livesという名著であり(「定番だからいつでも買える」と思っているうちに絶版になり、価格が高騰して買えなくなってしまった)アードイン地区の犠牲者についての分厚い本である。

 

 ※約4100字

 

*1:ガザ地区イスラエル」というのが重要で、エルサレムや西岸地区はここに入っていない。そしてそのことこそが、問題の永続化の原因である。