Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

let ~ down, let + O + 動詞の原形(ブカヨ・サカのステートメント)

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今回の実例は、PK戦にもつれこんだEURO 2020の決勝で、最後のキッカーとなったブカヨ・サカ(イングランド)がTwitterに投稿したステートメントから。

既に当ブログで何度か述べたように、イングランドPK戦で最初の2人が決め、次の3人が連続で外して優勝を逃した。この3人が全員黒人選手だったことで、試合終了直後からネットには人種差別の暴言があふれかえることとなった。

今回の大会では*1イングランド代表が人種差別への反対の意思を示すために、試合前に、片膝をつく (taking the knee) ということが行われていたが、これに対して、ジョンソン政権の閣僚を含む保守党の政治家たちの一部(例えば内務大臣のプリティ・パテル)がかなり強く反発するなど、「人種差別への反対」をめぐる空気は、とてもぎすぎすしたものとなっていた。大会終了後は、「代表の片膝つきをめぐる政治家たちの態度」が国会でも焦点化されるなど(しかも、北アイルランド紛争について極めて深刻で重大な決定がなされているのに、それをそっちのけにして、スポーツ選手が人種差別反対を表明しているのを明確に支持するかどうかというようなことが党首討論の議題にされてて、立法府とは何ぞや、北アイルランドとはUKにとって何ぞやという気分にさせられたのだが)、PKの3人への怒涛のような人種主義者の暴言を前に、3人を支えるFA(サッカー協会)やファン、選手たちやサッカー界の重鎮たちの発言が続き、試合から何日も経った今もまだ、リアルタイムで、英国からはそれに関連するツイートが次々と流れてきている。見ている間に私まで引き込まれてしまうほどに、それは(イングランドで起きていることとしては)パワフルな動きである。

そういう中で、5人目のキッカーとなったブカヨ・サカがTwitterステートメントを投稿した。今回はこれを読んでみよう。

2001年生まれで現在19歳のサカはロンドン生まれ・ロンドン育ちのちゃきちゃきのロンドンっ子で(西ロンドンが地元なので、コックニーではない) 、両親がナイジェリアからの移民で、今回、本当に容赦のない暴言にさらされることとなった。それへの返事がこのステートメントである。とても落ち着いていて、冷静で客観的で、誠実な言葉である。リプライに寄せられている支持のメッセージも併せて読んでいただきたいと思う。

 

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https://twitter.com/BukayoSaka87/status/1415692762708680717

実例として見るのは4番目のパラグラフから: 

My reaction post match said it all, I was hurting so much and I felt like I'd let you all and my England family down, but I can promise you this.. I will not let that moment or the negativity that I've received this week break me.

動詞のletが2つ出てくる。

最初の(太字の)は、《let ~ down》という成句表現で「~を落胆させる、がっかりさせる」という意味。特に人の期待にこたえられなかったときに使える表現なので覚えておこう。曲のタイトルや歌詞などでもよく見る成句だから、今ちょっと検索しただけでたくさんの曲が出てくる。


www.youtube.com


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もうひとつ、後半の

I will not let that moment or the negativity that I've received this week break me

は、《使役動詞》の《let + O + 動詞の原形》の構文で「Oに~させる」の意味。サカのこの声明では、「あの瞬間や、今週僕が受けたネガティヴな言葉に、僕を壊させはしない」、つまり「こんなことにへこたれたりしない」と強い決意を表明するために "I will not let O do ~" が用いられている。

 

サカのステートメントは平易な英語で書かれていて内容も具体的でわかりやすいので、あとは各自で全文をぜひ読んでいただきたい。読むこちらが勇気づけられるような前向きな言葉である。

 

※2340字

 

 

*1:イングランドが片膝をつくようになったのは大会前からなんだけど。