今回の実例は、前回見たのと同じ素材から、字数オーバーで扱えなかった部分を。(前回「おかしいな、なぜこの項目の解説をしないんだろう」と疑問に感じられた方もおいでかと思いますが、そういうことです。字数オーバー。)
記事というか、その記述があるページはこちら:
Twitterを使っていない方は知らないかと思うが、Twitterでは、https://twitter.com/i/events/***** のURLで、1つのまとまったできごとやイベントに関するツイートをまとめている。これはユーザーが作る「まとめ」(momentと呼ばれるもの)ではなく、Twitterサイドが提供しているもので、報道記事における「リード文」(記事の冒頭に置く文で、その記事の内容を端的にまとめてあるもの)のような短い文がついている。今回の実例はそこから。
前回は、このリード文の第1文に含まれる表現(下記太字部分)をみた:
On Sunday, Buckingham Palace announced that the Queen would not attend the Remembrance Sunday service at the Cenotaph in London after spraining her back.
語句以外のことでいうと、この文には《時制の一致》が含まれている。すなわち、主節の動詞 "announced" (過去)に合わせて、従属節の助動詞willが過去形の "would" になっている。
そして第2文:
The service would have been her first public appearance since being advised by doctors to rest until mid-November.
この文の "would" は、第1文とは異なり、時制の一致によるwillの過去形ではない。《仮定法》である。
この文にはif節がないが、それでも仮定法である(《if節のない仮定法》)。
具体的には、"The service would have been her first public appearance" の下線部が《仮定法》の表現で、「その礼拝は(もし女王の出席が実現していたら)彼女の最初の公の場への出席となっていただろう」という意味。これは、この記事が書かれた時点ですでに過去のことになっていたので、《仮定法過去完了》の形、すなわち《助動詞の過去形+have+過去分詞》が用いられている。
この文の後半部分:
since being advised by doctors to rest until mid-November.
"since" は、中学校で現在完了を習ったときに必ず出てきている《前置詞》のsinceで(例: I have known her since childhood. 「子供のころから彼女を知っている」)、太字で示した "being" は、前置詞の目的語になっている(前置詞の直後に来ている)から《動名詞》だ。
そしてこの動名詞句は、下線で示してあるが、《be+過去分詞》のbeが動名詞化していて、すなわち《動名詞の受動態》だ。
つまり、"since being advised" は《前置詞+動名詞の受動態》の形になっている。直訳すれば「アドバイスされたという事実のあと(ずっと)」ということになるが、そんな日本語は普通には使わないので、「アドバイスされたあと」「アドバイスを受けたあと」などと訳出する。
エリザベス女王にアドバイスしたのが医師団だから、ここでは《行為者》を示すbyが用いられている。これも中学校で《受動態》を習うときに必ず教えられるあのおなじみのbyである。
また、adviseという動詞は《advise + 人 + to do ~》の形をとるが、ここではこれが受動態になっているので、《be advised by ... to do ~》。文意は「医師団によって、11月半ばまで休息するようアドバイスを受けてから」。
つまり、女王にとって日曜日の戦没者追悼礼拝は、先月、11月まで休息した方がいいですねと言われて以来、初めての公務となるはずだったが、腰を傷めてしまったので出席できなかった、ということをこのように表しているわけである。
※1868字。明治維新か。