Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

再帰代名詞を使った定番表現, 《挿入》に際するコンマの省略, 等位接続詞で書き始められた文, など(Twitterジャック・ドーシーCEO退任)

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今回の実例は、報道記事から。加えて、さっき設定を見たときに気づいたTwitterがユーザーの何をどこまでどういうふうに見ているのかということも書く。

大きく報道されているように、2006年にTwitterを設立したメンバーの主要な1人で、紆余曲折ありつつ長年にわたってTwitterのトップを務めていたジャック・ドーシーが、Twitterを離れた。

と、このジャック・ドーシーという人についてとっかかりとしてウィキペディアで調べようとしても、日本語版ではTwitter設立後のことについての情報量が少なすぎて(ほんとにびっくりするほど少ない)、結局英語版を参照しないとほぼ何もわからないというお粗末な状況だが*1、簡単にいえば、2006年に身内の連絡ツールとしてTwitterを開発し、そのツールが広く一般に公開されて「マイクロブログ」として多くのユーザーを集めつつあったころに同社のCEOを務めて「Twitterの顔」となり、2008年にいったんCEOを退任してほかの事業を興すなどしていたが、2015年にTwitterに復帰して現在に至る、という経緯である(この程度のざっくりした話でさえも日本語版ウィキペディアには書かれていない。何なんすかね、あの日本語版ウィキペディアってやつは……「そう思ったら自分で書け」って言われるんでしょうけど、ソースつけたりするのがめんどくさいからいやです。自分は英語版を見ればニーズは満たせるし)。

2008年のCEO退任はTwitterから完全に離れるという性質のものではなく、ドーシーはボード・メンバーとして社に残ったのだが、今回、2021年の退任はそれすらもなく、完全にTwitterを離れるということになっている。

ドーシー自身の発言: 

で、今回の英語の実例は、この退任を伝えるBBCの報道記事から。記事はこちら。

www.bbc.com

正直、(日本語であれ英語であれ)ウィキペディアなどを読むより、このBBCの記事1本をざっと見た方が、今回の退任というニュースに関して、彼の経歴など、必要な情報が手に入るという点ではずっと優れている。それこそが報道の真価なのだが……。

英語は特に難しくないので、普通に読めると思う。

英語の実例としてみるのは、記事中に入っているジェイムズ・クレイトン記者(北米IT事情担当)のAnalysis(「分析」の意味だが、日本の報道用語でいえば「解説」に相当する)の欄から。

この欄で、記者はまず、「ジャック・ドーシーという典型的なシリコンヴァレーの実業家」像を描き出す。立ち上げたIT企業が2つ、大成功をおさめており、本人は大富豪だが、服装はラフな感じでひげを長く伸ばし、その風貌が表すように「彼の内面はヒッピーである。テクノロジーが世界を良い方向に変えていけるのだという高邁な理想を抱いている」と説明する(ドーシーがヨガや瞑想を実践していることは広く知られている通りで、米西海岸において「ヨガ」はただの「健康法」以上の意味を持っている)。

そしてその「世界を変える」という点で、Twitterは確かに実績がある。特に政治家と有権者のコミュニケーションのやり方を劇的に変えたのだ、と記者は展開する。間に具体例も入っているが、その具体例が次の主要なトピックになるというスタイルで(一種「伏線」的な構造になっている)するすると流れるように読める記述で、いわゆる「斜め読み」の練習をするのにちょうどよいのだが、ここで「政治家の情報発信」の例として個別具体的に参照されているのがドナルド・トランプの事例で、今年1月6日のワシントン議事堂襲撃暴動事件後に、暴力を扇動していたトランプを永久出入り禁止にしたことで、ドーシーに対する非難があいついだ、ということを述べている。

そしてこの話題はそこで終わって、その次の展開: 

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https://www.bbc.com/news/technology-59465747

キャプチャ画像の第1パラグラフ: 

The nature of his departure is also interesting. He is extricating himself from the company, even giving up his board seat.  

このパラグラフの第1文の "also" は、トピックが変わったことを示す論理マーカーとして機能している。日本語でいうと接続詞の「ところで」くらいの機能がある。ただこれは大学受験レベルでははっきり知らなくてもいいのかもしれない。講演とか聞くようになると、これ知ってると便利、って感じ。

第2文、"is extricating himself" (extricate oneself) は《再帰代名詞》を使った定番の表現で(extricateが他動詞なので、その目的語としてoneselfが必要となる)、意味は「出る」。これは、例えば他動詞のhideを使った hide oneself という表現で、「隠れる、身を隠す」という自動詞的な意味になるのと同じ理屈である。

第2文の後半、 "even giving up his ..." は《分詞構文》。evenは《強意》の副詞で「重役の座を捨ててまで」の意味。

次、第2パラグラフ: 

That's very different to say, Jeff Bezos, who retains much influence at Amazon despite stepping down as boss earlier this year.  

太字にした部分、うちらのようにガチガチに学んでいると表記がわかりづらくなっているのだが、ここは本来、 ”That's very different to, say, Jeff Bezos, ..." と、"say" の前にもコンマ(米語読みすれば「カンマ」)を置く《挿入》の用法のsayで、「例えば」の意味。ここでは、直後の "Jeff Bezos" もコンマで挟まれているので、"say" の前にもコンマを置いてしまうとコンマコンマコンマコンマで読みづらくなるから省略されている。実際の英語(「生きた英語」)ではこういうことがあるからめんどくさい。機械翻訳はよくこれについていけるよなと思う(ついていけなくなることもしばしばであるが)。

このsayのように、文中に「例えば」の意味の語句を挿入している箇所は、キャプチャした画面の外だが、同じ文中にもう1か所ある。どこかお気づきだろうか。

そう、もう少し上にある次の記述: 

He genuinely believes, for example, that Bitcoin has the ability to create "world peace".

両サイドにコンマがあるこの形式なら《挿入》ということは一目瞭然であろう。

第2パラグラフのジェフ・ベゾスについての修飾語句(節)にも、《関係代名詞の非制限用法》や《depite -ing》という見どころはあるのだが、飛ばす。

次、第3パラグラフ: 

Mr Dorsey claims this is his decision. But at a multi-billion dollar company, there could well be more at play behind the scenes.  

《等位接続詞》のbutで文が書き始められている。80年代にはすでに言われていたことだが、日本では、このように等位接続詞で文を書き始めるのは「誤り」である、というわけのわからない神話が横行していて、ここ15年ほどは「Butの代わりにHowever*2を使いましょう」という意味不明の指導がなされている(あるいは学生がそう理解してしまっている)ことすらあるのだが、このように、《文頭のBut》は普通に「生きた英語」に出てくるものである。

問題は、接続詞の使い方が日本語と英語では全然違っていて、日本語では特に意味なく接続詞を「つなぎの言葉」として使うのが自然である一方で、英語でそれと同じ感覚で接続詞を連発すると意味のよく分からない英文になりがちだ、ということである。言葉による論理構造の作り方が違うので、日本語の一字一句全部そのまま英語にしたところでうまくいかない、ということを説明しなければならない場面で、「英語ではこの単語は使いません」みたいにわかりやすくしちゃうから、めちゃくちゃになるのだろう。

"there could well be more at play behind the scenes." の "could" は《仮定法》由来の表現で「本人は今回の退任は自分の意思によるものだと言っているが、大企業のことだし、水面下(舞台裏)ではより多くのことが進行しているのかもしれない」という意味の、含みを持たせた文面になっている。

そして最後のパラグラフでは、ぐるっと回って、記者のこの文の最初のところ(ドーシーのヒッピー性)に戻っていく、というふうにまとめられた文である。

ぜひ、全体をざっと見て、必要な情報を拾って、筆者が述べていることを把握するという「斜め読み」の練習をするのに使ってみていただきたい。ああ、英語ってこういうふうに書くんだなあということもわかると思う。

 

本文はここまで、4450字。ちょっと多かったね。

 

さて、このあとはおまけ。

普段ならTwitterに連投して終わらせるのだが、今ちょっと厄介な人たちに水面下で付きまとわれている可能性があるので(言いがかりをつけて他人を誹謗中傷しておいて、それに異義を申し立てると開き直って「こちらを誤解させるお前が悪い」「お前の被害者意識が問題だ」と言ってくるタイプがいますよね、そのタイプ)、一時的にTwitterをprivateモードで運用していて、連投の意味がないのでこちらに持ってくることにした。

さて、当アカウントはTwitterは全部英語で使っていて、ロケーションもUKかアイルランドに設定してある。ただしVPNを常時使っているわけではないし、アクセスポイントだけは日本のままだ。

つまり、アクセスポイント以外はUKかアイルランドにいることになっていて(そのときどきで切り替えている)、サイドバーには常時英国かアイルランドのトピックスが表示されている当アカウントだが、ジャック退任のニュースがあったとたんにサイドバーが日本語での日本の話で埋め尽くされた。私は何も触っていないのに。

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伊藤詩織さんの訴訟はよい結果が出てよかったと思うが(名誉棄損は金額の問題ではない)、単に、私がここに表示させておきたいのは、ここ日本では普通にTLに流れてくることがあまりないUKやアイルランドの細かいニュースであり、日本のはTLに流れてくるものやほかのサイト/アプリで事足りているから、トピックとして表示してもらう必要はない。

……というわけで、この欄を元通りにすべく、[Settings(設定)]をチェックしてみた。前もTwitterでは、こちらが何もしていないのに勝手に[設定]が変わって表示が変更になっていたことがあったと思うが、今回もそのようだ。

以下、私の画面なので、全部英語である。

1) まず、[Settings] → [Privacy and safety] → [Content you see] へ進む。

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2) [Content you see] → [Explore settings] と進む。

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3) [Explore settings] の中で、こちらが操作したわけでもないのに勝手に、[Show content in this location] がオンになっている(普段、これをオフにしているので、UKやアイルランドのトピックが表示されているのである)。

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4) [Show content in this location] のチェックボックスをクリックしてチェックを外すと、その下に [Explore locations] が出てくるので、そこで地域を設定する。今日はUKで設定しておく。

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5) これでサイドバーが元通り、UKのトピックスになった。

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こうして、日本語圏というタコツボに何とかこじ開けている窓が再び開けられたのである。めでたしめでたし……。

で終わらないのが今回。

この再設定の過程で、今まで見なかったような気がするものを見た。

それがこれ、[Settings] → [Privacy and safety] → [Content you see] で出てくる場面にある [Interests] である。今まであった? 私が気づいてなかっただけ? 

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これを見て「ふむふむ、BrexitとかGood Friday Agreementとかが並んでるわけですね」とにやにやしながら中を見てみたら、なんと……

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は?

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I didn't know I was known for interests in "Olympic Athletes", "Olympic Swimming", "Olympics", and "日曜討論"!!!!!!! 

そしてこれについてこういう説明があって:

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直訳すると、「あなたは下記の項目に関心をお持ちのようです。これらは、これらの分野に関心のある人々にあなたのコンテンツをより多く見せるために用いられています。何かおかしなところがあれば、調整していただけます。調整を行った場合、反映されるまでには少し時間がかかるかもしれません」

という方向性は理解できるのだが、この結果を見ては、「ああ、ご自慢のAIのタコ判定っすね」と涼しい顔でやり過ごすことすら無理がある。全然かすってもいない。

だって今年のオリンピックなどニュースフィードを見てもいなかったし、何ならTwitterではワード単位でミュートしていた(今もミュートしたままの語句がある)。

今も覚えているのは、病院に行ったときに待合室で流れていた画面の中でスケボーやってて、そのときに日本の選手がメダルを取った(そして「ニホンスゴイ」の大合唱になったにもかかわらず、スケボーパークみたいなのは「迷惑」として計画が中止されて開設されもしない)ということと、英国の飛び込み選手、トム・デイリーが悲願の金メダルを達成したということ(彼は若いころからアイドル的な存在で、BBCやガーディアンでもよく取り上げられていたのでなじみがある。親との濃密な関係も、カムアウトの経緯も報道されていて……スポーツ界のティーンアイドルだった彼は最初自分がゲイだということを認めていなくて、「バイだ」とカムアウトしたんだけど、そのあとで「ゲイだ」ということを認めて、それからすっと楽になったみたい)、デイリーが日本では「編み物王子」として人気になっているということくらいだ。あと、ボートでアイルランドが英国に勝ったっけ。ほかの競技のことは何一つ思い出せない。見てなかったんだから当然だ。

で、Twitterでは私は一番うるさかった時期(7月~9月)に、"IOC" だとか "Olympics" だとか "Games" だとかいったワードを片っ端からミュートしていたんだけど、そういった「ワード単位でミュートする」というインプットを、タコなシステムが「このユーザーからのインプットがあったので、このユーザーは関心があるんだ」と判定しているに違いない。

日曜討論」に至ってはこの10年見たこともないし(2011年以降うちにはテレビがない)、人がそれについて話しているのをリツイートしたりすることもめったにないと思うのだが……。

AIだシンギュラリティだと騒いでいるものの中味はこの程度か……。

 

さらにこの [Interests] 欄、[Known for] のタブの隣に [Interested in] というタブがある。こちらこそが本命で、きっとここに "Brexit" や "Good Friday Agreement" が並んでいるに違いない……と見てみると: 

f:id:nofrills:20211130222332p:plain量多すぎ、質ばらけすぎ、クソワロタ。

しかも "Africa" がダブっている。

もちろん、関心など1ミリも示したことがない項目(Adventure travelなど)も入っている。人名や会社名などはデータベースにあるものを片っ端から並べているとしか考えられない。何ら重みづけがなされていない。

この調子で、ランダムなキーワードがずらずらとアルファベット順に並んでいる。最後は: 

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松重豊」はこないだ、『孤独のグルメ』のドラマを見ながらだと、小食の子供が「おじさんと一緒なら食べる」といってぱくぱく食べる、というツイートがバズっていたときに、適当なコメントをつけてQTしたのが多くリツイートされたりしたから出てきたのだろう。だがそれだけだ。それ以外にこの役者さんに言及した記憶はない。

松任谷由実」に至っては、CMで使われていた有名な3曲くらいしか知りませんけど? ずっと昔から、ラジオで流れてきたら特に消しはしてないけど、自分からは絶対に聞かない音楽。

あと日本語で並んでるテレビ番組の題名らしきものは、全然知らない。見たこともない。

なぜこんな判定が? 

AIっていうかコンピューターだけど、怖いよね。

全然かすってもいない。よく見ると、「私が関心を持っていること」ではなく「私がリツイートなどしたもののうち、多くの人が反応したこと」のようで、「私の関心」ではなく「私のフォロワーたちの関心」で決められているように見える。

当人とはほぼ関係ない。私が一番高い関心を持っているのは北アイルランドなんだけど、それをツイートしても日本語圏では反応なんかまずないから、私が北アイルランドに関心があるというふうには見られない、ということが生じうるわけだ(実際にはこの一覧のNの項にNorthern Irelandはありますが)。

こんなふうにプロファイリングされてるんだね。

 

でも、"Peppa Pig" が3連発されているのには笑ったけど。

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これ↓な。Twitterで私をフォローしてて、今も閲覧できる方は 

https://twitter.com/nofrills/status/1463503038061056007 からどうぞ。

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*1:「日本人Twitter大好きだなwwwww」みたいな言説はあふれているが、実はTwitterについての情報らしき情報はこの言語圏にはない。あと、英語版も問題のある記述があって、特に2009年のイランについての部分はソースになってる記事に書かれてないことがウィキペディアに書いてあるんじゃないかと……あとでゆっくり見て、必要なら修正してきますけど。(-_-;) あのころのイラン情勢とTwitterの関係は、ほんとにわからんね。当方、外国のいちユーザーとしては、「お祈りされる」というわけのわからないスパムボム攻撃を受けてTwitterがまともに使えなくなるくらいに深いところで見てたんだけど。

*2:ちなみに、完全に偶然なのだが、howeverの用例はこのキャプチャ画像の下の方、今回実例として見ている部分のさらに下に入っている。howeverは接続詞ではなく接続副詞なので、両サイドにコンマを伴って文中に置く。

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