Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

"Couldn't agree more" という表現(一般家庭に引き取られたレース犬)

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今回の実例は、先日のエントリに出てきた "I couldn't agree more." という表現が実際に使われている例。

こういう「わかりづらい」表現に遭遇すると、「自分が必要とする範囲ではこんなレトリカルな表現は使わない」とか、極端な場合は「ネイティブはこんなに文学的な言い方はしない(のではないか)」とかいった反応をする人がいるが、あなたが考えるほどこれらの表現は「わかりづらい」ものではない。日本語で「とんでもなく誤った主張」の「とんでもなく」という副詞の表現を「わかりづらい」と感じる人はあまりいないと思うが、「とんでも」って何、みたいなことを突き詰めて考えたら、このありふれた日常的な表現だって「わかりづら」くなる。そういうことだ。

さて、今回の実例はこれ。ツイート3つで1つの流れとなるので少々長くなるが: 

ここで@DavidOlusogaさんが参照しているツイートは、英国で人気のドッグレースに対し、動物を残酷に扱っていると批判する立場からの発言で、「レースが好きで好きでたまらなくて、スターティングゲートに入るのが待ちきれないという犬たちの様子をごらんください」というような文面だが、これは皮肉で言っているだけで、ここに示されている写真は、ゲートに入るのをものすごくいやそうにしている犬たちの写真である。

それを受けて、@DavidOlusogaさんは、自分の家にいるグレイハウンド(ドッグレースで使われる犬種)が、この上なくまったり、だらだらとしている写真を投稿し、2匹ともレース産業から救出した犬であることを説明し、最後に "Make no mistake - greyhound racing is a blood sport." と締めくくっている。「念を押しておきたい。グレイハウンド・レーシングはブラッド・スポーツである」("blood sport" は「流血をともなうスポーツ」、「選手たちの流血を見て観客が楽しむスポーツ」をいう表現で、ここでは「レースに出る犬たちは身を削っている」ということ)。

このツイートには「おうちでまったりしているグレイハウンド」の写真が何点もリプライとして寄せられているのだが、"I couldn't agree more." が使われているのもそういったリプライのひとつ。

最初に、一人称単数の代名詞(主語)が省略されているので、それを補って、口語的な(しゃべっているままの)パンクチュエーションを書き言葉的に修正すると: 

I couldn't agree more. We rescued Fionn a few months ago. His fave place is the sofa.  

さらっと「主語が省略されているので」と書いたが、これは《日記や手紙の文》で、主語が「私」だと誰もがわかりきっているときに起きる《省略》である。

あと、"I couldn't agree more." というフレーズはほぼ常に主語が「私」なので、それが省略されて "Couldn't agree more." の形であらわれることが多い。

この表現の "couldn't" は《仮定法》由来の語句で、直訳すれば「これ以上(強く)同意しようとしてもできない」の意味なので、言っていることは「強く同意する」「この上なく同意する」である。

ツイートのそのあとの部分は、特に難しくないだろう。ツイートしたジェニーさんは、このグレーハウンド(「フィオン」という名前である)を数か月前に救い出した(引き取った)。そして今や、ジェニーさんが引き取っていなかったらまだレースで走らされていたかもしれないこの犬は、ふかふかのソファーでこの様子である、という内容だ。

このように、"couldn't agree more" という表現は、たとえ論文に出てこなくても、日常的なやり取りで頻繁に用いられる。見たときに記憶しておくようにしよう。

 

※今日は短い。2150字

 

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https://twitter.com/jen_shevlin/status/1465295330354909188