Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

thatの判別, become used to -ing, make + O + Cの構文でOが長くてCを見落としがちなパターン, など(パンデミック下の旅行はどうすべきか)

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今回の実例は、Twitterから。

今日の午後、山でしば刈りを済ませて川で洗濯をしながら画面を眺めていたら、北村一真・杏林大准教授のツイートがどんぶらこどんぶらこと流れてきた。

北村准教授は、ある程度の規模の書店ならだいたいどこでも平積みになっている下記の著作で著名である。

「入試に出そう」とおっしゃられている通り、ここで参照されているNYTのフィードは、実にいろいろとてんこ盛りである。旬の素材の特製天丼にえび天追加した感じでてんこ盛りである。「文法なんかやったって実務には役立たない」派の人たちは、これを見たら自分たちの言ってることの浅さを認めるだろうか(いや、認めないだろう。だってあれはプロパガンダだから)。

文法事項がてんこ盛りであることは確かだが、このくらいは自力で30秒もかけずに読めないと実務では使い物にならない、という程度の英文だ。

しかも、元々は単なる原則論だが、人から人へ伝えられていくうちにどんどん単純化されて今ではすっかりよくありがちな「神話」となっている、「日本語は最後まで読まないと意味が取れないが、英語は前の方で言いたいことを言う」という一般的なルールみたいなのに、いい感じで「本当にそうですかね」という疑問をつきつける実例である。

英語の英語らしさというか、エッセンスが詰め込まれているので、ざっと読んで意味をとり、そしてそれだけでなく、いちいち細かく解析してみることで、とてもよい勉強になると思う。

なお、最近は何でもかんでも機械翻訳に投げてみるというのが流儀なのかもしれないが(実際、北村准教授のツイートへのリプライで機械翻訳の報告が寄せられている……検証報告のつもりかもしれないが、ここでは北村さんは機械翻訳の「き」の字も出していない)、英語を使って情報収集するならこの程度のものは自力で読めないと話にならないし(そもそも機械翻訳は「正しく翻訳してくれるシステム」では全然ない)、こんなに少ないボリュームのものをいちいち機械翻訳に投げて、その出力結果(「訳文」)が正しいかどうかをチェックしていたら、30秒で済むものが何分もかかるというえらく非効率的なことになって、機械を使う意味がない。PDFでどさーっと来たものを機械翻訳にかけて斜め読みするのは用途として正しい使い方だろうが、ツイート程度の長さのものであっても「英語だからとりあえず機械翻訳に投げてみる」というクセをつけるのは、望ましいことでは全くない。

というわけで本題。

Most people have become used to making health-risk assessments during the pandemic, but that doesn’t make the decision about whether to travel or not easy — especially with a new variant circulating. 

やや長い文だが、要となっているのは太字で示した《等位接続詞》のbutで、一度にざっと読んで意味が取れなかったり、取れているかどうか不安だったら、ここで前半と後半に二分割して詳しく読み直せばよい。

と、これを書いていて気付いたのだが、私は最初に一読した段階でこの "but" が文と文をつないでいるということがわかったんだけど、それはどういう根拠なのか、と問われたら意外と難しいかもしれない。"but" の後ろが、"that (S) doesn't make (V) the decision (O) ..." という《文》だから、この等位接続詞は文と文をつないでいると考えられる、というのが定型的な回答になるが、そう判断する前に、それこそ光の速さでそのほかの可能性を打ち消して読んでいる。この場合、「この "that" は関係代名詞ではない」とか「この "that" は動詞の目的語となる名詞節を導く接続詞のthatではない」といったことを、文字列を目にするのと同時に判断している。私に限らず、この英文を読める人はみなそうしているだろう(「ネイティブ」であろうと「非ネイティブ」であろうと)。これが「文法力」の中身である。

というわけで、大きく二分割した文を、前半と後半に分けて見ていこう。まずは前半: 

Most people have become used to making health-risk assessments during the pandemic,

ここでの大きな文法ポイントは2つ。

まずは下線で示した "most" で、これは読むときだけでなく自分で英語を書くときにも自信をもって使えるようにしておかなければ困るというレベルの単語なのだが、実際の大学受験生の答案では理解が曖昧だったりぐだぐだだったりすることがよくある。"Most people" の意味は「ほとんどの人々」なのだが、これを "most people" と書ける人は意外と少なくて、 mostの代わりにalmostを使ってみたり(うろ覚えのケース)、入れる必要のないofを入れてしまったり(最初に教科書などで "most of ~" の連語として覚えてしまったケースに多い)といった間違いが非常に多い。わかっているつもりの人も、一度、辞書でmostの項を引いて、語義だけでなく用例も全部しっかり読んでみてほしい。

 

次。太字で示した箇所は、《現在完了》+《become used to -ing》の合わせ技。《become used to -ing》は《be used to -ing》のbeがbecomeになった形で、beだと「~に慣れている、~には慣れっこになっている」という《状態》を示すところ、become*1にして「(以前はそうではなかったが)~に慣れる」と《動作》を示し、それがさらに《現在完了》で時間的な推移を含んだ視点からの語りになっている……って、何言ってるかわかります? うまく言葉にできてないかもしれない。つまり、単に「慣れている」というのではなく「時間をかけて慣れてきた」ということを表している表現。これを時制と動詞の選択で処理しちゃうのが英語で、こういうところの感覚は日本語との違いが大きいかもしれない。

そのあとの部分、 "health-risk assessments" はハイフンを使った複合語が形容詞的になっていて「健康上のリスクに関する評価(アセスメント)」。

次、butの後ろの部分(文の後半): 

..., but that doesn’t make the decision about whether to travel or not easy — especially with a new variant circulating. 

ここは構造が少々めんどくさいので、カッコを入れてみよう。

..., but that doesn’t make the decision ( about whether to travel or not ) easy — especially with a new variant circulating.

カッコでくくった修飾語句は、下線で示した "the decision" にかかっている。この修飾語句の中に《whether to do ~》「~するかどうか」が入っているのだが、それがさらに "or not" を伴っていて「~するかしないか」となっている。

そして、これが重要なことだが、この文は《SVOC》の形、具体的には《make + O + C》の形だ。つまり: 

  S = that 

  V = doesn't make 

  O = the decision about whether to travel or not 

  C = easy

こういう構造になっている。それが取れるかどうか。この場合、O(目的語)だけがやたらと長いから、前から素直に読んでいったときにC(補語)を見落としてしまう可能性がかなり高いし、その上、ぱっと見、"make a decision" と誤認しやすいから(実際にはaじゃなくてtheなんだけどね)、「そのことは旅行に行くか行かないかについての決断をしない」と解釈して、それで終わりにしちゃうかもしれないが、そうすると誤訳になる。

たぶんこれ、大学受験どころか翻訳の勉強をし始めてている人でもひっかかるんじゃないかなと思う(ある翻訳書で意味不明なところがあったので原文を確認してみたら、これの構文把握ができていなかった、というケースがある)。

実際には、これはSVOCの構文だから、「そのことは、旅行に行くか行かないかについての決断を、易しいものにしはしない」という意味になる(直訳)。

そのあと、《ダッシュ(―)》を挟んで補足されている部分: 

... — especially with a new variant circulating.

はい、《付帯状況のwith》と《現在分詞》。「新しい変異株が広まりつつある〔出回っている〕状態では特に」。

この "especially" の使い方なども、「英訳」の観点からは非常に勉強になるのだが*2、もうとっくに当ブログ規定の4000字を超えているのでこの辺で。

 

※4500字

 

f:id:nofrills:20211227115836p:plain

https://twitter.com/nytimesworld/status/1466547963375849476

 

 

 

*1:ここはgetを使っても意味は変わらない。ニュアンスや雰囲気はgetとbecomeでは少し違うかもしれないが、「違う」と「異なる」くらいの違いしかない。

*2:日本語話者はやたらと「特に」と言うクセがあるが、それをいちいち英訳するとアホみたいな文面になるよ、ということは、「翻訳」というか「英作文」を本気で勉強すると、かなりうるさく言われる。大学受験でも京大対策の問題集などではそれ、書かれてるよね。