Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

【再掲】so ~ that ...構文, sourceという動詞, it is ~ that ...(形式主語), やや長い文, など(私たちが使っている綿製品とウイグル人弾圧・人権侵害)

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このエントリは、2020年7月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は、いくつもの人権団体がまとまった連合体が出した報告に関する報道記事から。

英語圏では*1、人権団体などNGOの報告のようなものについての報道を行うとき、報道機関の記者は、前半ではその報告の内容を端的にまとめ(多くの場合、その報告書からの引用をたっぷり入れる)、その上でその報告のトピックとなっている事柄の当事者や政府当局者に取材してコメントを取ったものを後半に記載することが多い。

例えばある地域で野生生物による農作物への被害が増加しているという報告書が出た場合、その報告書の内容をまとめた記述のあとに、報告書を出した団体の人や、その地域の農家、その地域で活動する他の野生生物保護団体や研究者のコメントを記載する、という形だ。

学術誌に掲載された論文についての報道を行うときも、同じ形式をとる。学術論文の場合は、後半でコメントを求められるのは論文執筆者であることが多い。現在進行中の新型コロナウイルスに関する研究でもその形式の記事は探せば難なく見つけられるだろう*2。この場合、扱っている論文は1つでも、報道機関の側がどこにどう注目するか(つまり切り口)によって、全然別物みたいな記事が書かれることもある。例えば、「あることをしたらある川の水質が改善されたが、50年前の水質には遠く及ばず、失われた生態系は回復していない」という論文があったとしよう。ある新聞社は「水質改善」に注目してポジティヴな記事を書くかもしれないが、別の新聞社は「生態系は回復していない」ということに注目して悲観的な記事を書くかもしれない。論文を書いた研究者としては、何かそういう価値判断をしたいのではなく、単に事実を観察し報告しているだけだとしても、世間に提示されるときには何らかの価値判断がつけられてしまうものである。

 

閑話休題。というわけで今回の記事だが、ここで報じられている報告は、1つの団体によるものではなく、200もの団体の連合体が出したもので、記事の後半の「当事者のコメント」の部分には、報告で名前が挙げられているいくつもの企業のコメントが入っている。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

記事内に細かくリンクがはられているが、スマホタブレットで見るとかなりわかりづらいので、リンク先を改めて列挙しておくと: 

今回、実例として見るのは、記事の上の方、4番目のパラグラフから。

f:id:nofrills:20200727073155j:plain

2020年7月23日, the Guardian

左側に "More on this topic" という欄があって狭くなっているところの文: 

Global fashion brands source so extensively from Xinjiang that the coalition estimates it is “virtually certain” that as many as one in five cotton products sold across the world are tainted with forced labour and human rights violations occurring there.

やや長い文だが、構造は取れただろうか。文を頭から読んできて、書き出しから5語目にある "so" に注目してあることを予期しておけば、構造を取るのは難しくないはずだ。つまり: 

Global fashion brands source so extensively from Xinjiang that the coalition estimates ...

《so ~ that ...》の構文である。この構文では、"so" の後には形容詞や副詞が来るが、ここでは "extensively from Xinjiang" という《副詞+句》が来ている。一方で "so" の前にある "source" は、名詞ではなく動詞である(これを把握するのが、この文では一番難しいところかもしれない)。

sourceは、名詞(「源」)では古くから用いられているが、動詞で用いられるようになったのはかなり最近である。メリアム・ウェブスター英英辞典を参照すると、名詞では14世紀から用いられているが、動詞の初出は1957年だそうだ。しかもその初出のは今回のとは微妙に意味が異なり、「源をはっきりと示す」の意味(例えば「偉人の名言」の類について「どの本に書いてある」ということを示すことを言う)。だから動詞のsourceは、手元にある古い辞書(『ジーニアス英和辞典』の改訂版、つまり最初のジーニアスの改訂版なので、今流に表記すると「G2」となる版。1988年初版)には載っていない。新しいの(「G5」)には載っている。

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今回のsourceの意味は、「原材料を(ある源から)調達する」の意味で、"source from Xinjiang" は「新疆から原材料を調達する」となる。これに "extensively" がかかっていて、それに "so" がついているという構造だ。

extensivelyは報道など実用英語では非常によく遭遇する語だが、アカデミックな文脈ではあまり用いられないかもしれない(これの元になっているextensiveという形容詞はアカデミックな文脈でもそこそこ見るかもしれないが)。意味は「広範に、大規模に」で、"source extensively from Xinjiang" は「大規模に、新疆から原材料を調達している」。それが《so ~ that ...》の構文になっていて「たいへんに大規模に、新疆から原材料を調達しているので、……」というのが意味の骨格になっている。

 

そのthat以降の部分: 

... that the coalition estimates it is “virtually certain” that as many as one in five cotton products sold across the world are tainted with forced labour and human rights violations occurring there.

長いね。スラッシュを入れてみよう。青字で示したのは省略されていたのを補った個所。

... that the coalition estimates that / it is “virtually certain” that ( as many as one in five cotton products / sold across the world ) are tainted with forced labour and human rights violations / occurring there.

"the coalition estimates ..." は「連合体は…と見積もっている」の意味で、"estimates" の目的語になっている名詞節を導くthatが省略されている(青字)。

そのthat節の中身が、"it is ..." 以下最後までで、下線で示したこの "it" は形式主語。真主語は後続の "that" (下線)以下最後までである。

"it is" と "that" の間に入っている、引用符付きの "virtually certain" は、このフレーズが報告(プレスリリース)からの引用であることを示した形である。

"virtually certain" というのはちょっと珍しい表現だと思うが、直訳すれば「事実上、確信している」。つまり「確信している」と断言する一歩手前で、後述する数値には事実に裏付けされた完全な根拠があるわけではないが、という意味だろう。「ほぼ間違いがないと確信している」とか「ほぼ確実に~であろうと考える」といった意味だ。

 

そろそろブログ記事の上限目安の4000字に迫っているので、このあとはスピードアップしていく。

そのthat節の内容。

as many as one in five cotton products sold across the world are tainted with forced labour and human rights violations occurring there

太字にした "as many as" は熟語で、直後に《数》 を表す表現を伴って「~もの」と、《数が多いこと》を言う。

下線で示した "one in five" は「5つの中の1つ」。

青字で示した "sold" は過去分詞で、《分詞の後置修飾》。「全世界で販売されている綿製品のうち5つに1つは」という意味になる。

朱字で示した "are" がこの文(節だが)の述語動詞で、"are tainted with ~" は受動態で「~によって汚点がつけられている」という意味(訳語はもっとこなれたものがあるかもしれないが)。

その「~」が "forced labour and human rights violations occurring there" で、この "occurring" も《分詞の後置修飾》(現在分詞)。「そこで起きている強制労働と人権侵害」という意味である。

 

次回もまた、この報道記事について。

 

※4280字

 

参考書:  

英文法解説

英文法解説

 
ウイグル人

ウイグル人

 

 

 

 

 

 

 

*1:日本語圏ではどうだか、私は知らない。

*2:ただしワクチン開発のような守るべき機密がある研究開発が進行中の場合は、当事者は取材には応じないので、そういう形式の記事は出ていないと思う。その場合、報道記事が、研究機関から出たプレスリリースをほぼそのまま引き写したようなものになってしまうこともあるかもしれないし、後半に入る誰かのコメントは、その研究をプッシュしている政府当局者のコメントになるかもしれない。つまりやたらとアゲアゲな感じの記事になることもある。

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