Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

【再掲】時制の一致の例外, など(新疆ウイグル自治区で生産される綿と、無印良品、ユニクロ、H&Mなど世界のアパレルブランド)

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このエントリは、2020年7月にアップしたものの再掲である。

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今回も、前々々回前々回前回に続き、新疆ウイグル自治区で人々を強制労働させることで生産されているとしか考えられない素材が、世界中のアパレル企業によって、私たちの着る衣類に使われていることについての報告を報じる記事から。

最初の回(前々々回)で説明したように、何らかの報告についての報道記事では、前半でまずその報告の内容を端的にまとめたあと、後半で当事者や当局者に取材して得られたコメントなどを記載するのが基本形である。

今回はその後半部分から、当事者、つまりこの報告書で名前を上げられている企業がこの報告を受けて語ったことを書いている部分から。

ちなみに、この報告にある問題企業のリストは下記。出典はこの報告を行った人権団体連合体のプレスリリース(2020年7月23日付)である。

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https://enduyghurforcedlabour.org/news/402-2/

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https://enduyghurforcedlabour.org/news/402-2/

アバクロ、カルヴァン・クライン、トミー・ヒルフィガーといったデザイナー系ブランドも、GAP, Zara, H&Mといったファストファッションも、コストコ(米)、マークス&スペンサー(英)、ウールワース(豪)といったスーパーマーケット系も、アディダス、ナイキ、プーマといったスポーツブランドも入っているが、この中に、日本のブランド/企業が2つ入っている。無印良品(国際展開しているブランド名はMuji)とユニクロだ。

今回は、この報告を報じるガーディアン記事から、この2企業のコメントを紹介している部分を読んでみよう。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

実例として見るのは、記事のかなり下の方から。

ここでは無印良品ユニクロのコメントを紹介している部分を見るが、その前のパラグラフで、H&Mとイケアが出した「新疆ウイグル自治区からの原材料調達を停止する」とのコメントが、別の媒体(インディペンデント紙)の記事をソースとする形で、簡単に紹介されている。 またH&Mは、ガーディアンに対し、同社がウイグルとつながっていたのは直接的な形ではなく、間接的な形で(つまり下請け、孫請けのような形で)取引のあるのがウイグルで生産活動を行っている綿糸メーカーだったという具体的なことを語り、このメーカーとの関係を見直していくというコメントを出している。H&Mもイケアもスウェーデンの企業だ。

その後で、日本企業2社のコメントが紹介されている。これが、期待している人がいるといけないので念のために書いておくと、正直、ガッカリの内容である。というか日本国内ではこれで通るのかもしれないが、国際企業(特にヨーロッパで事業展開する企業)としてはどうなのかな、という内容だ。

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2020年7月23日, the Guardian

2つのパラグラフがそれぞれ無印良品ユニクロにあてられているが、まず、どちらも《時制の一致の例外》の形になっていることに注目しよう。

Muji confirmed that it continues to use ... but denies that its cotton and yarn are connected to forced labour...

A Uniqlo spokesperson said that no Uniqlo product is manufactured in the region and insists that all production partners in its supply chain uphold their codes of conduct on human and workers rights.

黒の太字にした動詞が過去形なので、その目的語であるthat節内の動詞(青の太字)も過去形になるのが《時制の一致》だが、ここでは現在形のままになっている。

これは、コメントを出した時点は確かに《過去の一点》だが(黒の太字が過去形なのはこの理由による)、そのコメントの中身は《過去》の話ではなく、記事が書かれた時点・記事が読まれる時点でもなお続いていることだからだ。

江川泰一郎『英文法解説』ではこれについて、「現在も変わらない内容を表す場合」は時制の一致の例外になると説明した上で、「時制を一致させることもよくある」と書き添えている (p. 467)。さらに、こういうふうに時制を一致させることもさせないこともあるという摩訶不思議なことについて、「話者の視点の置き方で決まる」と述べ、その上で、いずれにせよ「惰性の一致になる傾向があるようである」と解説している (p. 468)。《時制の一致》をもじったこの「惰性の一致」という表現が、実にわかりやすくてよいので、ぜひ江川の本を手に取ってみてほしい。 

英文法解説

英文法解説

 

ただしこの名著、残念ながら書かれたのが何十年か前なので(最新の版でも1991年の改定である)、例文が今の感覚にそぐわない(古い)。今回のこの《時制の一致》ないし「惰性の一致」の解説も、コロンブスと地球球体説の例文で、確かにこれは90年代までは学習者が文の内容に何らひっかかりを覚えることなく文法だけを見ることができるという点で優れた例文としてあちこちの参考書などに出ていたと思うのだが、現在の一般的な知見からは、例文が変すぎて文法が頭に入ってこないタイプの例文になってしまっているかもしれない。その背景については下記などを参照のこと。

ja.wikipedia.org

 

話が脱線したが本題。

無印良品ユニクロのコメントの内容は、それぞれ何もつっかえずに読めると思う。

Muji confirmed that it continues to use cotton yarn from Xinjiang but denies that its cotton and yarn are connected to forced labour. Our business partner [assures] us that the people who make our products have good working conditions and are treated with respect, the independent auditors have conducted on-site audit on these cotton spinning mills and have confirmed that there is no evidence of forced labour and discrimination of ethnoreligious minorities at their facilities. 

無印良品は、新疆産の綿糸を使い続けていることを認めたうえで、その生産には強制労働は関わっていないと断言している。その内容が具体的に、上で朱字にした引用符を使って書かれているのだが、この引用符をトジ忘れているあたり、「またガーディアンのタイポか」という感じでご愛敬である(Guardianは記事の内容はシリアスなのに、妙にマヌケなタイポを量産することで有名な新聞で、おちょくってGrauniadと呼ばれることもある)。

その引用符内で "Our business partner [assures] us ..." と唐突にブラケットが出てきているのは、元の記述・発話では "assures" という語ではない個所を、新聞記者が改めたということを示している。元発言の分詞構文を普通のS+Vの文に改めるなど、意味を変えない形式的な操作が行われていることが多い。だから、読んで内容を取るときには、ここはあまり考えなくてよい。

無印良品のコメントの内容は、「弊社の取引先は、弊社製品の生産にあたる人々はよい労働条件を有し、敬意をもって処遇されているのは事実であると述べていますし、利害に関わりのない(独立した)監査が綿糸工場に立ち入り調査を行ったうえで強制労働や差別の証拠はないと断言しています」ということ。まさにこういうことについて、今回の報告を出した人権団体連合体は「それを真に受けますか」的に疑問を呈しているのだが。

 

 

無印良品オーガニックコットンを導入したときはインド産でした。2010年5月5日(10年前)の同社の説明記事: 

www.muji.net

オーガニックコットンは大量生産による土壌汚染を引き起こさず、つまり水源汚染をしないということで、このころ、水をめぐる利権のあれこれが深刻化していたインドでこういう取り組みを率先して行っているのは、無印のキャッチコピーふうにいえば「良いこと」だと思っていたし、現に無印のオーガニックコットンはとても快適なので私も愛用している。ただ、ここ1年ほどで価格がぐっと下がった*1ことに微妙な気持ちになったことは確かだ。だが、それは、縫製工場を中国からカンボジアに移したといったことが理由だろうと思っていた。だが、こうなるとどうなのかわからないというのが正直なところ。

 

他方、ユニクロは: 

A Uniqlo spokesperson said that no Uniqlo product is manufactured in the region and insists that all production partners in its supply chain uphold their codes of conduct on human and workers rights.

新疆ウイグル自治区で生産されている製品はない」と断言し、同社製品に関わる現場はすべて人権・労働者の権利についての規範を守っている、と述べている。

あ、そうですか。 

ユニクロ潜入一年

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ユニクロ帝国の光と影 (文春文庫)

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  • メディア: 文庫
 

 

今回は大幅に文字数をオーバーした。4780文字。次回はもっと短くしたい。

 

参考書:  

英文法解説

英文法解説

 

 

 

 

*1:2枚組キャミソールが990円から790円になったりしている。