Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

【再掲】やや長い文, so ~ that ...の構文, 前置詞+動名詞, 形容詞の後置修飾, など(デヴィッド・グレーバーの語る「経済とは何か」論

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このエントリは、2020年9月にアップしたものの再掲である。

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今回は、前回の続きで、急逝が伝えられたデイヴィッド・グレーバーによる、私たちが「経済 economy」と呼んでいるものについての、2015年の文章から(続きというか前回文字数超過で扱えなかった部分を取り上げる)。

記事はこちら: 

gawker.com

筆者のグレーバーについて、またこの文章のタイトルやその意味については、前回書いてあるので、そちらをご参照いただきたい。

 前回見た、"Put another way" で始まる文: 

f:id:nofrills:20200904173644j:plain

https://gawker.com/ferguson-and-the-criminalization-of-american-life-1692392051

Put another way, this means that the profitability of America's banks is based on knowingly creating rules so complicated that they know a significant portion of their customers won't to[sic]*1 be able to follow them—and then punishing those customers for failing to do so.

少々長い文だが、落ち着いて構造を取ってみよう。まず、最後の方にある "—and then ..." の部分は、付け足しの部分なので、全体の構造を取るときは外してしまって構わない。また、書き出しの "Put another way" も、前回見たように分詞構文、つまり副詞句なので、構造を取るときは考えなくてよい。

これらを外すと、次のような形になる。

this means that the profitability of America's banks is based on knowingly creating rules so complicated that they know a significant portion of their customers won't to be able to follow them

かなり短くなったが、それでもまだちょっと長くダラダラと続いた文に見えるかもしれない。では、スラッシュをいれるなどしながら、この文の構造を取っていこう。

this means  [ that ( the profitability of America's banks ) is based on  / knowingly creating rules so complicated / that they know ( a significant portion of their customers won't to be able to follow them ) ]

どうだろうか。

まず最初の "this means" は見ればわかるレベルで何の問題もないだろう。この "means" という動詞の目的語になっているthat節が本題だ。

このthat節内が、太字で示したように、《so ~ that ...》の構文になっていることは、この文を見たときに気づくだろう。

そして、that節の主語は、"the profitability of America's banks" である。

ここまで把握できれば、あと一息で読解できる。要素を順番に見ていこう。

"the profitability of America's banks is based on ~" の《be based on ~》は、熟語として暗記する(暗記させられる)対訳は「~に基づいている」だが、その日本語にとらわれてしまうと何のことかわからなくなってしまうかもしれない。「~の上にbaseされている」という原義を考えると、「アメリカの銀行の収益性の基礎は、~にある」「アメリカの銀行の収益性は、~という基礎の上に立っている」という意味が見えてくるだろう。つまり「アメリカの銀行が収益を上げるためには、~が欠かせない」ということを筆者は言っている。(これ、大学受験で「下線部の英文を書き換えたらどうなるか、次の4つから選べ」という問題にできそう。)

その "is based on ~" のonの目的語の部分が、"knowingly creating rules ..." とやけに長いのだ。ここも丁寧に見ていこう。

onは前置詞なので、その後には名詞・動名詞が来る。だから "creating" という《-ing形》がここにあるわけだ。その前の "knowingly" も同じ -ing形が入っているからぱっと見はわかりにくいかもしれないが、knowinglyは「知っていて、わかっていて」という意味の副詞で、"knowingly creating ~" は「わかっていて~を作り出すこと」という意味である。

ここまでまとめると、「アメリカの銀行の収益性の基礎は、わかっていて~を作り出すことにある」となる。

 

その "creating" の目的語が "rules so complicated that ..." で、ここが《so ~ that ...》構文になっているのだが、そのほかに、"rules" という名詞を、"so complicated that ..." という形容詞句が後ろから修飾している(後置修飾)点にも注目しよう。形容詞が単独で名詞を修飾する場合は、"complicated rules" という語順になるが、その形容詞に他の語句がくっついている場合は、"rules complicated ..." という後置修飾になる。ここではその "complicated ..." の形容詞句に《so ~ that ...》構文が入っているので、"rules so complicated that ..." という形になっているわけだ。

この形容詞句の後置修飾については、『ロイヤル英文法』がスッキリと(というかあっさりと)説明している (p. 271. 以下引用文中の太字は原文のまま)。

名詞の後に置かれる形容詞

 限定的に用いられる形容詞は次のような場合に名詞・代名詞の後に置かれる。慣用的なもののほかに、強意的なもの、あるいは〈関係代名詞+be〉の省略と考えてもよいものなどがある。

……

(5) 修飾語句を伴って長くなる場合

 a friend worthy of confidence (信頼できる友人)

  *この場合who isを前に補って考えることもできる。 

今回の実例の "rules so complicated that ..." も、《関係代名詞とbe動詞の省略》 と考えると構造および意味が取りやすくなるかもしれない。すなわち、 "rules that are so complicated that ..." と頭の中で考えるのである。

ここまでまとめると、今回の実例の文は、「アメリカの銀行の収益性の基礎は、わかっていて、大変複雑なので…なルールを作り出すことにある」となる。

ここまで、いいだろうか。

 

ではその次、《so ~ that ...》構文のthat以下を見てみよう。

... so complicated that they know ( a significant portion of their customers won't to be able to follow them )

"they know" の目的語がthatの省略されたthat節で(朱字のカッコに入れた部分)、そのthat節の主語は "a significant portion of their customers" だ。portionは日本語にも「ポーション」というカタカナ語として入ってきているが(ただしゲームで出てくる「魔法の薬」の「ポーション」は、英語ではpotionで、綴りの違う別の語である)、日本語の「ポーション」がほぼ必ず「料理の一人前」や「1回分に小分けされたコーヒークリームなどの容器」の意味である一方で、英語のportionは「部分」の意味で広く用いられる(シソーラスを確認すると、partやsection, segmentといったものが類義語として出ている)。つまり、 "a significant portion of their customers" は「彼らの(=銀行の)顧客のかなりの部分」という意味である。

それを主語として、 "won't to be able to follow them" という述部がある。won'tはwill notの短縮形で、このfollowは「言っていることを理解する」といった意味。つまり「(~は)それらを理解することができないであろう」。

ここまでまとめると、「彼らの(=銀行の)顧客のかなりの部分は、それらを理解することができないであろう」。

これに "they know" がついて「顧客のかなりの部分は、それらを理解することができないであろう、ということを、彼ら(=銀行)はわかっている」となる。

つまり、内容的には、ここでグレーバーは、「アメリカの銀行は、ルールをややこしくすれば顧客はまず理解できないだろうということを知っていながら、わざとややこしいルールを作って、利益を上げている」と主張しているわけだ。

 

そして最後に、"—and then punishing those customers for failing to do so" の付け足しで、また動名詞 (punishing) を使っている。これは構造としては: 

this means  that the profitability of America's banks is based on knowingly creating rules ... and then punishing those customers for failing to do so

ということで、つまり「意図的にルールを作っておいて、そしてそれをし損なった(ルールを理解できなかった)ことについて顧客を罰することの上に、アメリカの銀行の収益性というものは成り立っている」というのが今回見た部分の文意となる。

 

またもや当ブログの既定の文字数を超えてしまったので、このへんで。

 

※4580字

 

参考書:  

英文法解説

英文法解説

 

 

*1:この "won't to be" は "won't be" の間違い(タイプのミスか、推敲時の見落とし)と思われる。英語では非常に砕けた表現で "won't to do ~" ということもないわけではないようだが、この文はそういうコンテクストの文ではないし、意味も「toは誤記」と考えないと通らないからだ。以下、ここでこの部分を書き写している箇所は、toをごく薄いグレーで表示し、このtoはないものとして扱うこととする。

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