このエントリは、2020年10月にアップしたものの再掲である。
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今回は前回の続きで、新たに発見されたナスカの地上絵についての英語の報道記事を読んでみよう。
前回は、「ナスカの地上絵」についての英語のニュース記事を探すための下準備として「ナスカの地上絵」を英語でどう書くか(言うか)をウィキペディアを使って調べる手順について説明したあと、Googleのニュース検索で報道記事を探す手順について簡単に説明し、そうして誰でも簡単に見つけられる記事のひとつであるガーディアンの記事を読み始めたところで字数が尽きてしまっていた。今回はいよいよその記事を読んでみよう。全部を読んでも、350ワード程度なので、分量的にはすぐに読み終わる。センター試験の長文問題の一番短い設問と同じくらいだ。
記事はこちら:
記事の最初のセクション:
前回はこの記事本文の最初の文に出てくる見慣れない単語について、安易にGoogle翻訳を使うととんでもなく的外れな語義が表示されるということを示したところで文字数をほとんど使い果たし、最後にこの文の構造(主語と述語動詞)をざっと見た。
The dun sands of southern Peru, etched centuries ago with geoglyphs of a hummingbird, a monkey, an orca – and a figure some would dearly love to believe is an astronaut – have now revealed the form of an enormous cat lounging across a desert hillside.
「ペルー南部の灰褐色の砂地は、今、~を明らかにした」というのが文の骨格だ。
"Peru" と "have" の間に入っている部分は《挿入》で、通例、コンマとコンマで挟む形になるところが、さらにダッシュで付け足しが行われているために2番目のコンマが脱落した形になっている。つまりこういうこと。
Brian, born in 1989, has never heard about the Warsaw Pact.
Brian, born in 1989 – the year the Berlin Wall fell – has never heard about the Warsaw Pact.
英語の句読法(パンクチュエーション)はこのような、少しイレギュラー気味に感じられることが起きることもある。大学受験生ならあまり突き詰めて考えなくてもよいが、自分で英語で学術論文などを書くようになったら、その論文で要求される表記基準に従うようにする。表記基準は掲載媒体ごとに指定されていることが多いので、確認をしたほうがよいだろう。 受験生の段階では、「このようなものがある」ということだけ知っておけば十分だが。
さて、このような《挿入》の構造をつかんだところで、その中をみてみよう。
The dun sands of southern Peru, etched centuries ago with geoglyphs of a hummingbird, a monkey, an orca – and a figure some would dearly love to believe is an astronaut – have now revealed ...
《挿入》の句のの最初にある "etched"は過去分詞。etch A with Bで「AにBを刻みつける」だから、A, etched with Bというここにあるような形になると「Aは、Bが刻みつけられているが」といったように解釈すればよい。
その with B のBの部分が、"geoglyphs of a hummingbird, a monkey, an orca – and a figure some would dearly love to believe is an astronaut –" と長くなっているのだが、ハイフンの前後で分けてしまおう。まずハイフンの前までで「ハチドリ(ハミングバード)や猿、シャチ(オルカ)の地上絵」、ハイフンの後(下線)は、これまた《挿入》で、カッコを使って示すと次のようになる:
a figure ( some would dearly love to believe ) is an astronaut
カッコの中が挿入で、諧謔的な調子で書かれているので言葉数が多くて長たらしいが、「一部の人が宇宙飛行士だと考えたくて仕方のない図像」という意味。。。と、今打鍵しながら思ったのだが、これ "a figure which some would dearly love to believe is an astronaut" の関係代名詞の主格が落ちているのではないか。believeという動詞に引っ張られて目的格の関係代名詞のような気がするので落としやすい(省略してしまいやすい)のだが、実際には "is an astronaut" のisの主語になる関係代名詞なので省略できないはずである*1。
まあ、実際の英語(「生きた英語」)には、こういうこともある。
というわけで、この長たらしい文の主語、"The dun sands of southern Peru, etched centuries ago with geoglyphs of a hummingbird, a monkey, an orca – and a figure some would dearly love to believe is an astronaut –" は、直訳すれば「ペルー南部の灰褐色の砂地は、何世紀も前にハチドリや猿、シャチ、そして一部の人々が宇宙飛行士だと考えたくてしかたのない図像の地上絵が刻みつけられているが、それは」という感じになる。
続いて動詞からあとの部分:
... have now revealed the form of an enormous cat lounging across a desert hillside.
太字にした "lounging" は《現在分詞》で《分詞の後置修飾》。loungeは名詞としては「ラウンジ」というカタカナ語で日本語の中にも取り入れられているが、ここでは動詞で「ゆったりと座る」といった意味。「草木の生えていない丘の腹にゆったりと身を横たえた巨大な猫の形を明らかに(あらわに)した」と直訳できる。
というわけで、この文、読んだときは2秒もかからなかったのだが、いざ細かく読んでみると4000字近くを要してしまった。英語の報道記事は、このように、最初の1文・1パラグラフが、英文を読みなれていない人には非常に読みづらいということがよくある。「つかみ」の部分なので、読者をひきつけるように、情報量てんこ盛り&感情に訴えかける記述(この例では「ナスカの地上絵には宇宙飛行士が描かれていると信じている人々がいる」ということをユーモラスに扱っている)がなされることが多いためだ。
というわけで、書き出しのパラグラフが少々読みづらく感じても、そこで止まらずに、どんどん先に行くとわかりやすくなってくるものだ。英語の文章は、最初に「トピック」を置いて、そのあとにそれを具体的に述べる「サポート」があり、「トピック」が抽象的で何のことかよくわからなくても、そのあとの「サポート」で具体的に述べられているのでよくわかる、という構造になっている。
実際に英語報道記事を読むときは、今回見た第1パラグラフがわからなくても、次に:
The feline Nazca line, dated to between 200BC and 100BC, emerged during work to improve access to one of the hills that provides a natural vantage point from which many of the designs can be seen.
と具体的な話が続いているので、そこから読むということもできる。
続きはまた次回に。
※4500字
サムネイル用画像 via いらすとや:
参考書:
*1:つまりこれは、文法用語でいう《連鎖関係代名詞》を使った形である。「連鎖関係代名詞」などというと難しそうだが、これもまた《挿入》と考えてカッコでくくるとわかりやすい。実際、私もこの文法用語はわりと最近まで聞いたこともなかったし、高校生向けのいわゆる「総合英語」の参考書(文法書)でも、当ブログがいつも参照している江川の『英文法解説』でも『ロイヤル英文法』でも、索引にこの用語は見当たらない。そのかわり、「関係代名詞+挿入節」(『ロイヤル英文法』p. 651)や「関係代名詞の後ろに〈S+V〉がはさみこまれた形」(『アトラス総合英語』p. 237)と解説されている。私自身も高校のときにはこの『アトラス』の説明のように習っている。