Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

イレギュラーな関係代名詞, 強調の助動詞, no ~ but ..., on -ing, など(ボリス・ジョンソンが国会で嘘をついていたことが事実として確定)

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今回は、前回の続きの予定だったのだが、イスイス団の思想にかぶれたテロリストの話よりもより緊急性の高いことが起きたので、予定を変更する。ボリス・ジョンソンが国会で嘘をついていたことが事実として確定した。

英国の政治になど特に関心がなくて、何が重要なのかがイマイチわかっていない人は、このニュースを「罰金刑」のニュースと文字通りに解釈し、Yahoo! Japanなどではそのように書きたてられた見出しが並ぶことになるだろうし、日本ではおそらく「ドジっ子ボリスのほほえましいニュース」「愉快なキャラ」扱いもされるだろうが*1、そうではない。

このニュースの何がポイントなのかを、ジョンソンと意見を異にして2019年総選挙のときに保守党を追放された(ボリス・ジョンソンという政治家は、そういうことをやってきてるんですよ、日本では知られてないから「ゆるキャラ」扱いする人がいるんだけど)ローリー・スチュワート元議員が箇条書きでまとめている。ちなみにこの人はガチのインテリで、19世紀的な上流階級である。

特に口頭で、強調し、また噛んで含めるように言うときの文体なので、同じ語句の繰り返しが効果的に使われている。「重要なのは~ではありません。重要なのは…です」のスタイルだ。日本語ではこれは不自然に響き、どうしてもこの文体を使うなら第1文と第2文の間に「そうではなく」などつなぎになる言葉を入れるものだが、英語では必ずしもそうしない。

文意は、「重要なポイントは、ボリス・ジョンソンが罰金納付告知書を受け取ったということではありません。そうではなく、罰金が科されたことで、ジョンソンが何度も繰り返し、自身のコロナ禍での行動について、議会に対して嘘をついていたということが、事実として立証されたことです。民主主義においては、説明責任に票を投じるわけですから、真実を述べる者が指導者にならねばなりません。ジョンソンは首相職を去らねばなりません」

そう。「法律違反したんだから、首相とはいえ罰金くらい払わないとねー」で済む話ではないのである。嘘をついてはならない職についている者が嘘をついていたことが立証されたのだから、その職にとどまることはできない。

同じことを、@yunodさんも次のように指摘している。

この「倫理規定」はThe Ministerial Codeといい、英国政府のサイトにPDFでアップされていて、だれでも読めるようになっている。表紙なども含めて36ページある文書だが、目次の次、本文の1ページ目に次のようにはっきりと書かれている。

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https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/826920/August-2019-MINISTERIAL-CODE-FINAL-FORMATTED-2.pdf

だがここで規定されているのは、「閣僚」の行動で、最終的な決定権を持つ首相が嘘をつくということは、英国の制度では想定されていない。一種のバグだね。小賢しい奴なら攻略しようとするだろう。

スチュワート元議員が指摘するまでもなく、広く知られていることだが、ボリス・ジョンソンという人物には、遵法精神のかけらもないし、事実というものへの敬意もまったくない。「だがそれがおもしろい」みたいにして支持された人物である。「英国のドナルド・トランプ」と呼ばれたのはダテではない(が、トランプなどよりよほど頭がよい)。 

こんな人物であるにもかかわらず、ボリス・ジョンソン「憎めないキャラ」などと呼ばれて人気を得るのは*2、(和製英語で言う)パフォーマンスが天才的にうまいからである。

それと、うちら日本の英語学習者のように、英国に対して時には屈折した憧憬の念を抱いている者には、あの華麗で効果的な言葉遣いは魅力的にうつる。教材に使いたくなるくらいだ。実際、常にはっちゃけているわけではなくトーンを抑制すべきところでは抑制できる、といった点で、言葉遣いはうまい。大学では「箸にも棒にも引っかからん奴」扱いされていたのが、その文章力のおかげで報道機関に籍を得たことでキャリアをスタートさせたわけだが、要するに口がうまいだけ、「巧言令色鮮し仁」である。それを指摘するBBC Newsnightのルイス・グッドールさんのツイート。

文法・語法的には、地の文に《one of the + 複数形》や《sicken oneself》、《it transpires (that) ~》などが入っているが、辞書さえ引ければ特に難しくはないだろう。ボリス・ジョンソンの発言の引用部分は、無駄に美文体みたいになっているので少し読みづらいかもしれない。

多少意訳すれば、「首相にとっての問題は数多くありますが、そのひとつは、過去の発言が山のように存在しているということです。例えば12月8日、Allegra Strattonが辞職したあと、首相は国会に対し、『官邸スタッフが事態を深刻に受け止めていなかったという印象を与えてしまったことを謝罪いたします。私自身、あの件では胸の悪くなるような思いをし、また怒りも覚えております』と述べています」、「しかし今や、首相自身がそれを笑っていたわけではなく、それどころか違法行為を行っていたということが知れ渡っているのです」

Allegra Strattonは首相官邸のスタッフで、2021年12月にITVにリークされた映像(下記)で、2020年12月の官邸スタッフによる記者会見の模擬応答の際、国民はまじめに守り、そのために肉親の死に目にも会えず葬儀にも参列できずにいたようなCOVID対策の厳格なルールを軽視して「ネタ」扱いしていたと問題視され、辞職を余儀なくされた。「トカゲのしっぽ切り」にあったわけである。

www.youtube.com

新型コロナウイルスの最前線で仕事をしてきたレイチェル・クラーク医師は、「悲惨さ」を強調した患者の写真を使った英国政府の(つまりジョンソンの)ポスターを提示し、「彼の作った広告。彼の作ったルール。彼の嘘。彼の侮蔑」として、「辞職を求める人はリツイートを」と呼びかけている。

というわけで、最後にまた別のジャーナリストのまとめ的なツイートを見ておこう。ロバート・ペストン。どういうことが起きているのかをしっかり説明してくれている。文中の "PM" はPrime Ministerの、"MP" はMember of Parliamentの頭文字をとった略語で、ニュースを読むには必須の語彙である。

"the PM, the Chancellor and the PM’s wife all attended illegal parties, that breached Covid laws written by the PM" の、太字にした ", that" は《関係代名詞の非制限用法》だが、本来whichを用いるべきところでthatを用いているというイレギュラーな例である。「グラマー・ナチ」とか「文法警察」と呼ばれる人は眉を顰めるだろうし、受験でこれをやってしまうとおそらく減点されるだろうが、このように、thatを関係代名詞の非制限用法で用いる実例は、ニュース英語でもときどき見かける。

文字数制限でツイートを分割しているので読みにくいが、このツイートの書き出しは前のツイートの続きで、"because it was he who told MPs on 8 December that he had been..." という文である。

このツイートでは、toldの目的語のthat節が2つあって、"told MPs ... that he had been “repeatedly assured” there were no parties and that no Covid rules were broken" という形になっていることに注目しよう。この場合、1つ目のthatは省略してもよいのだが、2つ目のthatは省略できない。

"he did deliberately mislead MPs" のdidは《強調》の助動詞。「本当に意図的に国会議員たちを誤誘導したのなら」。

同じく、書き出しは "he has no choice but to resign". 《no ~ but ...》は「…以外の~はない」。これは "Nobody but you can do it." (「あなた以外の人は誰もそれをできない」=「それをできるのはあなただけだ」)という文で覚えてしまうのがよい。

"on becoming prime minister" は「首相になったときに」。《on -ing》は「~したときに」の意味。"prime minister" が無冠詞なのも要注目だが、もう7500字に達そうとしているので説明は割愛する。

書き出しは、" in the British constitution of my lifetime." このツイートは、文法的に特筆すべきものはないと思う。単語が難しいね。

書き出しは "the charge will stick that this or any party with a big majority". これは、日本のことを言われているような気がするね。 "the bottom of the slope" は「坂道の一番下」で、「これ以上落ちようがない」「最低地点」の意味。

 

おまけ: ジョンソンらに罰金、というニュースが出たときの英メディアの様子。

 

 

 

*1:英国でもそういうふうに解釈する一般庶民はいると思う。

*2:個人的にはあの人の傲岸な喋り方が我慢ならないくらいに嫌いで、「憎めない」などとは到底思えない。