Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

英語圏のパロディニュースに釣られない日本人になるための、たったひとつの冴えたやり方。

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今回の実例は、「そんなのに吊られるなよ、日本語圏……」っていう実例。

今日の午後、鉄道情報などをチェックするかとYahoo! Japanを見てみたところ、トップページにある「リアルタイム検索」の欄に、「ドナルド・トランプ・ジュニア」という文字列があった。

昨日から今日にかけて、英語圏のニュースでは、ドナルド・トランプ(息子ではない方)と1月6日の暴動に関して大きな動きが報じられていたのでその絡みで何かあったのかなとも思ったが、よく見ると、下の行(一緒にTrendsしている言葉)に「イーロン・マスク」とか「CEO」とかがある。

マスクはTwitterのアンケート調査で、「TwitterのCEOは交替すべきだと思うか。このアンケートの結果にはおいらは従うよ」と問うたところ、優に過半数が「Yes」と答えるという事態に陥っていた。

なので、この語群を見て「マスクが退陣して後任にドナルド・トランプJr」という話になっているのだなということはすぐに判断できた。

問題は、そんな話は英語圏ではまったく見ていないということだった。

見れば疲れるのはわかりきっていたのでそっ閉じしようとも思ったのだが、ある意味義務感みたいなものを感じて、ソースなどを確認してみようと思った。

結論としては、「こんなのに釣られるなよ」としか言いようのないものだった。

【書きかけ】

「マスクの後任にドナルド・トランプ・ジュニア」説の火元

ドナルド・トランプ・ジュニア」という文字列をクリックしてみると、下記のような光景になっていた(写真には一部ぼかしをかけてある)。

ああ、もう「光景」と書いて「ありさま」とルビを振りたい。むしろ「じごく」でもいい。ドナルド・ダックへの言及が、一縷の光明だ。

ページ全体を見渡してみたが、この中にある open.substack.com のURLが、「マスクの後任にドナルド・トランプ・ジュニア」説のネタ元のようだった。

この時点で頭を抱えたのだが、しかも "smattering" とか自称してるサイトじゃん。

なんで、真に受けられるのか。

順番に説明を書いておこう。

Substackとは何か

まず、ネタ元のサイトURLに含まれるsubstack.comについて。

これは、Substack(サブスタック)というウェブサービスを利用して運営されているサイトであるということを示している。

Substackは「パーソナル・パブリッシング」という形での情報発信(それも収入を目的としたもの)を可能にしてくれるサービス。日本でいうとnote.comに近い存在だが、完全に同じではない。サイトのトップページには、 "A Substack combines a blog, newsletter, payment system, and customer support team — all integrated seamlessly with a simple interface." と書かれているが、「中の人」はSubstackでアカウントを取ると、同サイトでブログを書いてニューズレター(日本語でいうと「メルマガ」)を発行し、収益化を図ることができる(読者からお金を取らなくても運営はできる)。文字で書くブログの代わりに音声のポッドキャストを使うこともできる。

ついこの間まで、Twitterでは書ききれないことを書きたいと思っている学者やジャーナリスト、評論家、企業家・起業家といった人々が使っているプラットフォームといえばMediumだったのだが(その前はWordpressだったりLive JournalだったりBloggerだったりした)、ここ2年くらいの間で、それが急速にSubstackに替わってきた。たぶん使い勝手がよいのだろう。

Substackは日本語には対応していない(投稿はできるだろうけど、投稿画面や管理画面などは日本語だけしかできない人には使えない)ので、日本語圏ではいわゆる「インフルエンサー」が言及することもなく、ほとんど話題にもなっておらず、したがってsubstack.comというURLを見ても何のことだかわからないかもしれない。そのように「海外版のnoteみたいなもの」と認識しておけば間違いのないサイトはあまたあり、Substackもそれらのサイトのひとつである。

別な言い方をすれば、URLにsubstack.comとあったら、初見では「ああ、個人でやってるところね」くらいに受け止めておくのがよい、ということだ。その「個人」が、例えば著名なジャーナリストだったり、料理研究家だったりするかもしれないが、どこぞの詐欺師かもしれないし、某国政府のエージェントかもしれないのである。

なお、「URLを見る」という当たり前の動作は、ソーシャルメディアでニュースをチェックするのが当たり前になって以降、一連のフローに組み込まれないままに記事を見ることも一般化しているかもしれないが、URLをチェックするのは、ばかばかしいジョーク等に釣られないための最低限の第一歩である。

記事を読む前に、まずはURLを見て、信頼性を(大まかにでも)判断する

「URLを見る」とはどういうことか。例えば、当ブログはhoarding-examples.hatenablog.jpというURLだが、これはhatenablog.comというサービスを利用させてもらっている。twitter.com/nofrills/status/********というURLなら、twitter.comというサービスを利用したページであることを示す。

hatenablog.comもtwitter.comも、インターネットにアクセスすることができさえすれば誰でも、メールアドレスとユーザーネームなどを登録するだけで使うことができる。したがって、そういうURLは、そこに書いてある情報が間違いのないものかどうかは特段、保証されていないことを意味する。つまり、それだけでは信頼できないのだ。

それが、かわいい猫の動画だとか、美しい風景の写真だとか、モチベーショナルな一言だとか、コスメの使用レポートだとか、カレーの食べ比べといったものだったら、情報が間違いのないものかどうかは別に保証されていなくてもいいかもしれない。そのアカウントの中の人が見たものや使ったもの、食べたものがどうだったか、という話には、厳密な検証はなくてもいい(もちろん、「他人の投稿のパクリ」という問題はそれとは別にある)。

しかし、ニュースのような、「どこかでこういうことが起きています」という事実を客観的事実として伝える記事の場合は、そこに書いてある情報が間違いのないものであるということが保証されていなければならない、というのが大原則だ。その大原則を揺るがしたのが、2016年以降明確に言語化されたいわゆる「フェイクニュース」なのだが、それはまた別の話。

大手報道機関の場合

BBC NewsやThe Guardian, The Washington Postといった大手報道機関のサイトなら、おおむね、その情報の間違いのなさは保証されていると考えてよい。もちろん、ときには誤報もあるし、誤誘導(ミスリード)などはしょっちゅうだし、また、外部の書き手に依頼して文章を書いてもらうOpinion欄は "opinion" という位置づけが示す通り、"fact" ではない、という注意点はあるが、普通に報道記事として出ているものは、事実であることが客観的に確認できているものである。

そういうものの中で、インターネット上で起きていることについてのゴシップのような記事は、読者ひとりひとりが確認を取る(ファクトチェックする)こともできる。

例えばイーロン・マスクが「おいらはTwitterのトップを辞めるべきでしょうか」というアンケートをTwitter上で取って、「Yes」が多数を占めるという結果が出たあと、「敵対勢力のbotがー」などと言い逃れて最終的に「botがうざいから、今後はTwitter運営方針の話は有料登録ユーザーだけでやるようにしますです」と言い出した、などという記事は、英語圏の報道機関ではソースとなる元発言(この場合はツイート)を明確に示しながら書かれるのがお約束で、それを見ながら、読者は記事が話をすり替えたり、文脈を違えたりしていないかを確認することができる。このような、公開の場での発言を扱ったゴシップ記事は、ツイートのエンベッドという形で元発言が示されていなくても、記事内のどこかに元発言へのリンクがあるのが普通で、クリックして元発言を読む気力と能力と時間があれば、誰でもファクトチェックできるように書かれているのが通例である。

報道記事には、情報源を明らかにできないものもあるが(「匿名を条件に政府高官が語った」などの形で書かれる)、それらも報道機関に所属するジャーナリストがファクトの確認を取ったうえで書かれる。(まれに、その上で生じる「偽報道」もある。NYTが、超有名メディアであるわりには、その辺がザルでひどいのだが――ジェイソン・ブレアの捏造記事とか、ルクミニ・カリマキのイスイス団に関するポッドキャストでの事実確認のずさんさ*1とか。)

個人でも登録するだけで使えるブログのような場の場合

さて、こういうふうになっている大手報道機関と違い、hatenablog.comやtwitter.comのような、誰でも登録するだけで使えるようなサイトに掲載されている情報を見る場合は、それが間違いのないものであるかどうかを判断する手がかりとなるのは、ソースが文中に示されていなければ、運営者・筆者の信頼性である。

報道機関が運営しているブログなら、報道機関のサイトと同じようなプロセスを経て事実確認がとられていると考えられるので、信頼性は高いだろう。ジャーナリストや著名ビジネスマン、弁護士や医師といった社会的な地位のある人が、名前を出して書いているブログやツイッターは、書いている記事の分野がその人の専門分野かどうかにもよるが、言ってることに共感できるかどうかといったことは別として、信頼性は高いと判断してもよいだろう。企業が、自身の専門分野について書いているブログ(例えば製陶業者が陶器や磁器の性質について書いているものや、石鹸・洗剤メーカーが台所の油汚れを落とす洗剤のメカニズムについて書いているものなど)も信頼できる。

大手報道機関であれ、個人ブログであれ、共通していること

だが、それだけでは不十分で、その上で、書かれていることの妥当性や正確性を確認しなければ、読んでいる記事を完全に信頼することはできない(そのスキをついてくるのが「フェイクニュース」や「陰謀論」の類である)。

それは、個人ブログの類だけでなく、大手報道機関の記事についても同じなのだが、その点、記事を書いた記者の名前も出さないことが長く慣例化されていて、記事内で取材に応じている役人や企業の広報担当者といった人々も「○○省○○課は」とか「○○社の広報では」といった形で匿名化されているのがデフォの日本語報道しか知らない人には、確認なんかしたことがないからすごくめんどくさくて難しい作業に思えるかもしれない(日本のメディアリテラシーの問題の大部分は、この「匿名性」と、あとアーカイヴのなさに起因していると思いますよ、マジで)。

実際には、そこまで厳密にとらえてニュース記事を読んだりメモったり、SNSで「拡散」したりしている人はあまりいなくて、「この記事は○○新聞だから信頼できる」とか「この記事は○○スポーツだから話半分で」とか「また○スポか」といったように判断していると思うが。

 

【書きかけ】

smatteringとは何か

*1:ジャーナリストが、「テロリストになりすました詐欺師」に釣られたという考えられないほどひどい事案だったが、英国でも同じようなことがもっと深刻なレベル(警察を含む)で起きたので、特定のジャーナリストや特定の報道機関だけの問題ではなく、どこででも誰にでも起きうることだと思うが。

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