Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

性別を特定しないとき、また、特定する必要のないときに用いられる3人称単数の代名詞they(ドナルド・トランプ銃撃事件で警官は……)

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ものすごく久しぶりに、元々このブログでやっていた書き方でのエントリを上げようと思う。つまり報道に出てくる英語の実例と、英文法の解説だ。さくさくと、20分くらいで書き終えようと思う。

久々にあれをリンクするぞ。どーん。

といっても、20世紀のあいだに編まれたこの文法書では、今回ここで取り上げるような21世紀に入ってからの英語はフォローできない。著者も2006年に没している。

あんまり余計なことを書いてると20分では書き終わらないので先に行こう。以下、敬称の類は略して書く。

7月13日、米ペンシルヴァニア州に設営された野外ステージで、支持者を集めて集会をおこなっていたドナルド・トランプに向けて、近くの建物の屋上から銃弾が発射された。何発かの銃弾で、トランプは右耳を負傷したが大事には至らず、家族を伴って聴衆の中にいたトランプ支持者の男性が、銃声でとっさに家族に覆いかぶさって被弾して絶命、他2人が負傷している。

銃撃があってすぐにトランプはステージから降りて車で病院に向かったそうだが、このときに聴衆に向けて拳を掲げてみせる瞬間をとらえたAPのフォトグラファーが撮影した写真がバイラルした。それが日本語圏で「王者の風格」云々ときゃっきゃきゃっきゃと取りざたされているのを見てしまったが、あの写真の写真としてのすごさと完璧さ*1はさておき、連写されている写真の1枚で、トランプの背中側にいるSP(男性)がトランプの背中を強く押すような様子で、さらに手前にいるSP(女性)が「お願いですから、そんなことやってないで、身を低くしてください」という表情で必死にトランプにしがみついているのに相手の体が大きすぎて何ともなっていない様子がうかがえて、痛ましいと思った。あのときさらにまた銃弾が発射されていたら、と考えるとぞっとする。米国のSPは、トランプのような「本質的に『俺様』をアピールすることにはすごい反射神経を持っているショーマン」を普通に警護するにはどうしたらいいかということに、頭を悩ませていることだろう。「カメラの前にさっそうと登場して笑顔を振りまく」タイプとは違う。常に「強い俺」をアピールしたがるタイプだ。

 

さて、その銃撃事件、捜査を担当するFBIも、容疑者(その場で射殺された)の動機が全然わからないうちから「暗殺未遂 assasination attempt」と呼んでいて、メディアでもそのように扱っているが(下記キャプチャにあるウェブ検索結果なども山椒……は小粒でピリリと辛い参照)、あの銃撃が動機が政治的なもの、つまり「政治的暴力 political violence」*2かどうかは実ははっきりしていない。

最初に「屋外の臨時ステージの演説会場近くの建物の屋上から撃ってきた」「銃弾はトランプの頭のすぐそばをかすめた」と聞いたときには「どんなジャッカルだよ」と思ったのだが、その場で射殺された容疑者が20歳と聞いて、心底びっくりした。百戦錬磨の暗殺者じゃないのかよ。しかもその20歳、特に政治的過激主義の人だったりしたわけでもないらしい(過去をさかのぼっても出てくるのは学生時代に民主党系の団体に15ドルを寄付していたという程度だった)。

と同時に、「コロナ禍の前に大騒ぎされた『軍事キャンプを設営している極右集団』のようなところとのつながりがなさそうな20歳の一般人が、ガチの銃で、至近距離じゃないところから銃撃して、標的の生命を脅かす」という事態に、これはいわゆる「銃社会アメリカ」について十分な知識がないと何とも言えないんだろうなと思った。

そこで私の関心は途切れた……はずだったのだが、今日、Twitter/Xで、さらに「驚愕の真相」としか言いようのないことを知ったので、紹介されている記事を読んでみることにした。

そして、@RawheaDさんが参照しておられるこのリンク先で、実に現代的な、21世紀に入ってからの英語の用例を見つけて帰ってきたのである。なお、記事の内容は私には理解できない。意味がわからない。ウィル・フェレルとかが出てくる、ひねりとかのないべったべたのコメディの台本かな、としか言えない。そういう世界の出来事だとでも思っていないと、頭がおかしくなる。

ともあれ、英語の実例を見てみよう。

https://nypost.com/2024/07/14/us-news/local-cop-confronted-sniper-thomas-matthew-crooks-before-he-shot-former-president-trump-report/

キャプチャ画像の第2パラグラフから、第3パラグラフ:

After rallygoers spotted Crooks on the roof of a manufacturing plant just 130 yards from the stage where Trump was speaking just after 6 p.m. Tuesday, police were notified and one officer climbed a ladder to investigate, law enforcement officials told the Associated Press on the condition of anonymity.

The officer — whose department had been enlisted by the Secret Service to help with security — encountered Crooks, who pointed his AR-style rifle at them.

ここで太字で示したものが、全部同一人物(同一の警官)を指す。

最初の "one officer" は、《不定冠詞》を用いていう "an officer" と意味的には同じで、ただ警官が1人であったこと(その時点で実は私にはよくわからない。警官が単独行動するもんなんですか?)をわりと強めに言う表現になってはいる。

続いての "the officer" は、《定冠詞》の表現で、「先ほど述べたofficerと同一のofficer」「そのofficer」の意味である。

ここまでは、20世紀どころかその前の19世紀の文法書にも説明されていることだろう。

21世紀的なのはその次の代名詞 "them" である。これについては、1年ほど前にも書いているのだが、性別を特定せずただ単に「その人は(その人を)」などと言いたいときの代名詞they, their, them, theirsの用法である。

つまりここまでで説明されているのは、トランプの演説が行われるステージから130ヤード(約120メートル)しか離れていない場所にある工場の屋上に不審者がいると集会に来た人々から警察に通報があったか何かで、警官が1人、その工場の建物の梯子を上って様子を見に行った。そしたら屋上に容疑者がいて、その警官に対して銃を向けた、ということである。

そこまでは私でもわかる。わからないのはその先だ。

参照しているのがタブロイド紙で、文章は短くぶった切られて間にでっかい写真や関連記事リンク集が入っているレイアウトなので、キャプチャした部分のずーっと下の方に続きの記述があるのだが、そこには: 

The officer then backed down the ladder, and Crooks immediately took aim and loosed about eight shots at the former president — grazing him in the ear, killing one bystander in the rally crowd and gravely wounding two others, the source said.

「その警官はそこで梯子を下り、容疑者はすぐさま狙いを定めてトランプに向けて8発を発射」とある。

意味わかんないよね。

警官の頭が屋上のへりからのぞいた瞬間に、容疑者が気づいて、こっちに銃を向けてきたので、警官が思わず頭をひっこめた、ということかなと思ったが、それはback down the ladder(この "back" は動詞で「下がる」の意味)とは言わない。

この話をマスコミに漏らしている当局筋がそういう言葉を使っているのだろうが、もしそうでなければ記事を書いているマスコミが大げさに書いているだけかもしれない。

ここで参照しているタブロイドNew York PostはAPの報道を参照しているので、APの記事を見ればいいのかもしれないが、あいにく、NY PostにはAP記事へのリンクはないみたいだし、とすれば自力で探さなければならないわけで、そこまで時間をかけられるほどの関心は私にはない。

というか、他にやることが山積みだ。

というところで、今回はここまで。

 

 

 

 

 

*1:撮影したフォトグラファーはステージの反対側からあそこまですっ飛んで行ってあの1枚をものした。「その場にいる」こと、「構図を決める」ことなど、訓練とスキルの賜物の1枚だと思う。

*2:私はpolitical violenceという英語表現は、北アイルランド紛争に関して覚えた。IRAが英国に対して行使していた暴力がそう呼ばれていた。要するに「テロ terrorism」なのだが「テロ」よりは中立的な表現と言えるだろう。

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