Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

「仮定法はこう使え!」というお手本が、ガザからやってきた。

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久しぶりにログインしました。

 

今回のエントリは、表題通り。下記です。初見で、あまりの美しさにしばししびれました。英語の仮定法独特の、ちょっともっちゃりした余韻が重なり合うところに、等位接続詞andを使う(べき)《列挙》の構造が絡んできて、気取らない、身近で素朴な言葉の連なりが美しい絵を描く。そこに "siege" とか "F-16" といった、いわば「ガザ用語」が、現実というものを突き立てるようにして、自然に織り込まれている。

 

とにかく、読んでください。医用生体工学専攻で義足の技術を学んでいる大学生、マフムードさんの投稿。彼にとって英語は外国語です。私にとってもそうだけど、私が彼の年齢のときに英語でこういう表現力を持っていたかというと持ってなかったし、今だってたぶん、かろうじて足元に貼りつけてはいるかなっていうくらいの能力しかない。

 

一応、当ブログらしく英文法解説めいたことをしておくと、下記の太字のところが《仮定法》です。あと、下線で示した "used to" もきれい。

What if there were no war on Gaza?
Perhaps I would be telling you about the beauty of Gaza — about its calm sea and its kind-hearted people.
I would have spoken about our beautiful traditions, about thyme and olives, about the traditional dabke we dance in joy,
about our simple celebrations that filled our homes with laughter,
about how we used to play and have fun in our little neighborhood in Beit Hanoun, running freely, laughing wholeheartedly.

...

 

本来は、一字一句に真剣に向き合って、粗訳して寝かせて推敲して訳しなおして……というプロセスを経て日本語化して公開するような性質の文(というか「散文詩」ですよね)なのですが、今は事情があってスピード優先なので、ざっと仮訳したものをnoteにアップしてあります

note.com

なぜ「スピード優先」かというと、マフムードさんは緊急にお金(クラウドファンディング)を必要としているから。私にできることとして、ガザからの言葉の翻訳に使っているTwitter/Xやnote以外のチャンネルにも彼の言葉を流して、彼への投げ銭を1人でも多くの人に検討してもらいたいから。

chuffed.org

何が起きているかというと、ガザでは今が「物資入手のチャンス」(それも今後ないかもしれないようなチャンス)になっているのです。

 

数か月前に完全に封鎖されて物資がまったく入らなくなったガザ地区には、基本的に、食べるものも生活必需品もずっと入っていません。ひどい兵糧攻めです。GHFとかいう「人道支援を称するデス・トラップ」と称される詐欺的な目くらましの事業と、「人道危機を憂慮してま~す」というアラブ諸国のポーズのための物資の空中投下で、焼け石に雀の涙を垂らすような物量の物資を、加害者自身が焼け石を火炎放射器であぶりながら入れてくる、という状況で、それを加害者は「物資は入っている」と言っているんだけど、「なんがつなんにちなんじなんぷん、何を何キロ?」と小学生のようにツメたら、相手は黙るんじゃないかなという程度でしかない。ガザとイスラエルまたはエジプトの境界のこちら側には、普通に物資を積んだトラックが列をなして待機しているのに、境界線を越えることを、ガザ地区の外周部を制圧している/支配するイスラエルが許可していない、というか、イスラエルの一般市民のうちの過激派が、道路をふさぐなどして積極的に妨害している。

 

私がフォローしているガザの人たちも、自撮り写真を見る限り、「細い」んじゃなくて「薄い」という印象になっていて、赤ちゃんは体が大きくなるどころか痩せ始めていて、こちらとしても不安と焦りでどうしようもなくなっているんですが、昨日8月7日に唐突に、支援物資のトラックがある程度の意味を成すくらいの数量でまともに(略奪されずに)入って、何人もの人が「市場に物が並んでいる」という報告をしている、という状況です。物価も、小麦粉やお米1キロが日本円に換算して数千円、という法外な価格から見れば大幅に下がっていて、多くの人が、数か月ぶりにお砂糖を買って、甘くしたお茶を飲んでいると報告している。

 

しかしマフムードさんは、つい先日、避難先としていた南部ハンユニスの学校がイスラエルに爆撃されてお身内が犠牲になり、イスラエル軍が殲滅作戦の最終段階に入ったハンユニスを出て、中部デイル・アル=バラハに移動したはいいものの身を寄せる場所も見つからず、ようやく見つけた家は大家が法外な家賃を要求……という状況で、本人ふらっふらの状態で必死にネットで呼びかけてお金を集め、ようやく家を確保したばかりです。つまりこれまで集めたお金は使い果たしている状況と思われます。ちなみに彼は彼の核家族では長男で、お父さんは怪我のため働けず、長男の彼が大黒柱です。まだ大学生なのに。ジェノサイドなんか起きていなくて順当に技師になれていたら、専門職として安定した収入を得ていたかもしれないけれど(←仮定法で書いてみた)、今はその見込みもなく、頼れるのは本当にクラファンだけという、めちゃくちゃ不安定な状況です。しかも、彼が面倒を見る責任を負っているのは、彼自身の核家族の他に5家族(近縁の親族)。というわけで、物価が下がっているこのチャンスに必需品を調達するために、1家族あたり100ドル、6家族分で合計600ドルの支援要請が出ています。

 

 

というわけでの「スピード優先」での仮訳公開です。何卒、よろしくお願いします。

 

マフムードさんのクラファンはこちら: 

https://chuffed.org/project/mahmoudmassri

クラファンの要請文の文面は日本語化してあります。下記画像です。これは自由にダウンロードして印刷等していただいてかまいませんし、これをネタに金儲けをしようというのでない限りは訳文は自由にお使いいただいて構いません(訳文の権利は私は主張しません)。

https://chuffed.org/project/mahmoudmassri

しかしまあこの人たちのこの英語力は本当にすごいと思う。日本で「12年間もやって英語がしゃべれないのはどういうことだ」というルサンチマンのにきびみたいなものから噴出した怨念が作り出した、間に合わせの、「道具としての英語」という美名で呼ばれるようなものではないので。

 

(ほぼ全編現地語の映画『ノー・アザー・ランド』でもバーセルが一瞬だけ英語を使うシーンがあって、そこで彼は自分の教育的なバックグラウンドに言及していたんだけど、ガザの人たちの状況は西岸のバーセルとはまた違う。)

 

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